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2017年4月23日 (日)

【フェミもネトウヨも】スイスの鉄道の10年以上前にPC対応キャラを登場させていた鉄道むすめ【上辺だけ】

以前、【みぶなつき】駅乃ちかこ萌え路線で炎上した鉄道むすめ【あなたは多分偉かった】という記事を書いた。

2016年秋、トミーテックが鉄道各社と打ち合わせた上で商品展開している「鉄道むすめ」に東京メトロの新キャラを登場させたところ、絵師の伊能津がエロゲー的描写を露骨に持ち込んでネット炎上してしまったという事件である。

この時は主に擁護する側が表層的で毎度おなじみPCに対して感情的に反発するだけという反応を示していたので、みぶなつきの場合はより実態に近い姿で商品化してきたことで、炎上を起こさなかった事実を紹介した。

今回はその延長戦として、スイスのレーティッシュ鉄道が萌えキャラを採用し、フェミニストとネット右翼がこぞって賞賛するという出来事があった。

スイス最大級の私鉄が欧州で初めて日本の萌えキャラを正式採用「マジか!」「スイスはじまったな」

スイスの鉄道萌えキャラは「みちかと違う」のか?「まなざし村」的には正しいのか?

一言で言えば、そこで騒いでるネトウヨは鉄道むすめを商品として購入したこともなければ愛着も無いであろうこと、対するフェミニストは過去色々批判されてきたように本質は自分を洋画に投影した名誉白人に過ぎず、舶来ブランドの時だけ珍重する傾向が露骨に出てしまったと言える。勿論どちらもTwitterではしゃいでいる人達の事で、特定の主義思想に染まっている全員に該当するとまでは思わないが。

togetterには収録されてないが、フェミニストとしては比較的マイルドなこのざまんぐ(@konozama347890)氏が積極的に引用していた。多分彼女等の間ではほぼ共通認識なのだろう。

しかし、スイスの鉄道がこのようなコンセプトで臨んでから好意的に取り上げる辺り、彼女等の日本観は歪んでいる。後からもっともらしい理論武装をしても、最初で躓いてるので無駄。何故かと言えば、マニッシュなキャラ(端的にはズボン姿)は10年以上前に登場させているからだ。そもそも、鉄道むすめは10以上のシリーズを重ね、数10名から100名前後のキャラクターが登場している。従って、容姿のバリエーションもそれなりに多様化しているのだが、それを知っていたら、スイスのデザインを見てむしろ「後退」したとすら主張していたのではないだろうか。

その後、更にマニッシュさが増した事例が下記だが、これも9年程前に登場している。

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朝倉ちはや(鉄道むすめシリーズVol.6より)

駅野ちかこにしても、姿勢を職業人らしく修正すればシリーズを展開する側から見て、事は足りることを上記の例は示している。

朝倉のようなキャラクターはPC対策を意識した面もあろうが、リアリティを持たせた結果、より現実の日本社会を反映されたことが大きい。基本的には実在事業者の制服を再現しているに過ぎない。制服がマニッシュであるかどうかは、事業者次第ということだ。特に乗務員を対象とした場合はズボンの比率が高い。

東武の場合、駅係員が登場しているが、制服刷新時にズボンに変更し、等身を見直している。

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栗橋みなみ(鉄道むすめシリーズVol.8より)

栗橋みなみ(鉄道むすめシリーズVol.2より)(旧制服)

彼女等とスイスのキャラを比較し、後者が再現性・PC上劣っている点を列挙すると次のようになる。なお、アートに係る部分は評価ポイントにしていない。

  • 何か動作をしてる訳でもないのに内股である。
  • 制服が非実在。お洒落のために制服を創作・改造するのは萌えアニメの特徴だが、それ以前から女性でもそういう願望をコメントする方をネットの内外で見聞したものだ。
  • 髪が腰まであり、服務上巻き込み危険がある。日本なら恐らく美観上も問題視され、「服装の端正」を運転安全規範10項に組み入れている西武ならば即乗務を外されるレベル(最近同社現業職と話したが、相変わらず厳しいそうでご苦労なことである)。なお、フェミニストが軽蔑するであろう『出発シンコー』には巻き込み危険について啓発した回が存在する。
  • プロとしては謎の敬礼ポーズ。二の腕が上過ぎ、親指が揃っておらず指先も内側過ぎる。何かの動作中でもないのに全体として崩れている。イベントで頭の軽い若手女優が一日駅長をしているような。事業者によっては打ち合わせ時に敬礼動作も教えるから場合によっては一日駅長以下だな。
  • 評者が考える「受け手側へのメッセージ」が時代遅れ。「女の子も車掌さんを目指していいんだよというエンパワメント」を目的とした女性鉄道員採用活動など、2000年の雇用均等法改正による深夜労働解禁以来、リクルート活動等で幾らでも行われており、昭和鉄道高校、近年では岩倉高校(いずれも専門校)も受け入れ態勢を整えている。今更人形の出る幕は無い上、出すなら朝倉や栗橋のようなスタイルが正当だろう。
  • 極初期のシリーズを除き、等身は現実に近くなるようにデザインされているが、スイスのキャラクターは概ね1等身低い。なお、初期のシリーズは等身は低かったが手足等もデフォルメされており、全体としては成人女性の印象が与えられているが、スイスのキャラクターは単なる少女のようにしか見えず、身長制限で車掌が出来ないのではないかという不安すら抱いてしまう。

特に受け手認識の件。2014~15年頃Twitterなどで批判の的になっていた、「同僚へのお客汲み」が、21世紀にはほぼ絶滅していると分かった時、一転して「あんなものはもう絶滅した」などと合いの手を入れる現象があった。雇用におけるM字カーブの犠牲者が家で騒いでいたのかなと思っていたが、この件も、それに近いものを感じる。

なお、アートな部分の評価とは「全員ではないにせよ多くのキャラクターには製作側の『本物の女性鉄道員』に対する真摯なリスペクトと期待が滲んでおり、現場での受けも私が聞いた範囲では悪くは無いこと」「3次元化した際に破綻しないようなデザインへの留意が必要であり、基礎的なデッサン力を要すること」である。

あるフェミニストによるとスイスのキャラクターは次のように見えるらしい。

ルーズな制服は警察官や自衛隊員同様、採寸の際に推奨される。軍装ゴロと仲の良い筈のネトウヨは何故突っ込まないのだろうとは思うが。だから、リアル側に振ればバストの大きな人以外は上記ツイートの通りとなる。しかし「はつらつとした表情でぴしっと敬礼」とは何の冗談だろうか。洋画のイケメン軍人はフォーマルな場であんなことやってるのか(笑)。頭の花もスイス製とくれば無視することを含めて、こういうのをダブルスタンダードという。

そういった点を考慮すると、みぶなつき氏の絵はありそうな動作を元に創作しており、リアルさも客先に応じて振り幅を持たせるなど、やはり水準が高い。スイス人が絡んだから誉めてる連中には物を見る目も、商品について理解する能力も、調べる力も無い。キャラ紹介を見ることすらしていない。

彼女等をバックアップしているインテリ連中も同様だ。例えば2016年の映画『サフラジェット』のエンドロールには女性参政権付与国リストが出てくる。だが、その出来栄えが適当過ぎ、本編での感動も興ざめであった。具体的にはアジア圏の記述がほぼ無く、当ブログ記事執筆時点でWikipedia英語版以下。ちなみにに日本語版のアジア圏の記述は英語版に無い国複数への言及がある。フェミニストに加え、英語版盲信者が目を塞ぎたい不都合な現実といったところか(どちらにも記載が無いのは北朝鮮。男女共に実態は奴隷だが、形式的な話を言えば存在している)。しかしそんな映画のリストですら、スイスの参政権付与は日本よりもずっと後だったことを明記している。スイスは日本語の情報源が少ない国だが、かの地の女性観を考える際、このことは恐らく基本認識だろう。ヨーロッパなら何でもチャラになるのだろうか。

少なくとも鉄道むすめシリーズに一円も投資したことのない私すらこれだけ指摘出来てしまうあたり、両者はつくづく無能だ。

コラム
そういえば、2000年代後半に放送されたNHK『熱中時間』の鉄道熱中人特集回も、最初に登場した女性オタクは腫物だった。どう腫物だったかというと、趣味が男性駅員の後姿撮影だったことである。鉄道マニアをギャラリーとしてスタジオ収録に参加させる番組だったので、渋谷に行った私の後輩が臨場感たっぷりにその様子を語っていたが、彼女の紹介になった途端、ギャラリーを含めてスタジオが凍り付いたという話を覚えている。確かに、ちきささ氏言うところの「公共の」番組に出すような代物ではなかったね。性別が逆だったら当時の開明的なNHKでも即ボツ企画だっただろう。

PCについては更に付け加えておこう。鉄道むすめは(少なくともみぶなつき時代は)事業者に配慮して再現性などに拘っていたが、それでも参加を見送った社は数多い。JR本州3社、大手民鉄などは参加していないか、現業職の登場を控えている社がかなりある。それはそれで、PC的にも一つの見識である、と取ることも出来る(「偉い」とまで言えるかどうかは、また別問題だ。)。

また、参加した大手民鉄を見ても、東武、小田急、西日本鉄道などは他社に比較しても現業職の性的ニュアンスが抑制されている。ここに彼等のプライドが垣間見える。それに比べると、東京メトロは社会的影響力の反面地方民鉄以下のPC対応だった訳で、確かに脇が甘い。

コラム
鉄道むすめは企画の発想自体はそこまで悪気を感じるものでもない、と思うところもある。PCの問題で炎上する前は、地域振興の件で御大層な説教をインテリから受けてきた。そういう批判を受けながら、地方民鉄や3セクが鉄道むすめとコラボレーションして集客に尽力してきた事情を多少は知っている。批判でよく覚えているのは、JTBの鉄道未成線シリーズで知られる森口誠之(とれいん工房主催)。結局関係者から「我々は収入確保に必死なんです」と反論されていた。

地方民鉄が苦境に陥っているのは大都市への人口集中、総人口の減少、新幹線開通による在来線切り離し、国庫助成の先細り、車社会等構造的要因があり、仕方ないことではある。だが、それを大都会に住む者が上から目線で小馬鹿にする醜態は見苦しく、不快なものでしかなかった。まともな萌えキャラ、ゆるキャラを使って何年かでも延命につながるのなら、それが苦境に陥ってる当の事業者にとっては、実行可能な数少ない施策となる。軍隊と結びついた連中と違って、外交や歴史に対する弊害も少ない。地方民鉄に社会制度の変革を要求するとか何を夢見てるんだろうあのバカは、と思ったものだ。

なお、同時期に炎上した週刊少年ジャンプの女性トイレロゴが過度に性的にデザインされた件については、弁護する余地は少ないと考える。大衆性のある雑誌で影響力の問題は否定出来ないし、何より社内で実用しているのはNG。下手をすると80年代にラブコメ路線へ転換する前の編集部より頭が軽くなっていやしませんか、とは思う。

2016年11月28日 (月)

【30年前から】東電老朽OFケーブル火災で勝手な広報を行ったへぼ担当氏【ほったらかし?】

東電新座地中送電線火災と老朽OFケーブルQ&A集」で、火災を起こしたケーブルが防災シート(防火シート)未施工であったことを取り上げた。高度成長期以降に大量建設された社会資本の老朽化は、1990年代頃から予告されてきた。一般向けにもNHKスペシャル「テクノパワー」で取り上げるなど、先行して問題提起を行ってきた人達がいる。

その老朽化が現実の事態となった2010年代に我々は生きている。従ってこの点を中心に再度、問題の深掘りを行うことで、検証報道の質を高め、社外・専門外の我々が事故を回避するにはどのような視点を養って行けばよいか、一つのモデルケースになれば良いと考える。

なお、東京電力パワーグリッドは11月4日、「第2回「新座洞道火災事故検証委員会」開催について」、続いて11月10日にもプレスリリースを公表している。何時も通り、立派なフォーマットに美しい写真とグラフ。大抵の人はここで追及を辞めてしまう。だが、それは問題だ。

今回は、下記の疑問について更に調査を加えたので、大幅に加筆して再掲する。

【2021年までに防火シートを巻く予定だったので無為無策では無い?】

Togetter_com_li_1039761_comment OFケーブル他備忘-Togetter 当該ツイート(その1その2)。

彼のことを取り上げるのは、大学院で原子力工学を学んだ後、原発に勤務していることを公言、自らの技術力を過信し、ネット炎上を糧にする右翼系軍事マニア達と結託して日々原発事故被害者への中傷をバックアップしているからである。そして、上記の東電対応への評価だが、私に言わせれば極めて疑わしい。防災シートを地中送電施設の要注意個所に巻く対策は2000年の、電気系資格受験雑誌に既に載っていたから。

(2)難燃性・不燃性電力ケーブルの採用
CVケーブルの採用、ケーブルシース・介在物に難燃性を付加、ピットへの砂の充填、
難燃材料(防火シート)のケーブルへの巻き付け、塗布、OFケーブルを用いる場合は密閉型防災トラフ内への収納などを実施する。

「地下式変電所の変圧器,遮断器,開閉器等の電気工作物に対する火災対策に関するキーポイント」『電気計算』2000年8月P32

なお、第一報写真では一般部が写っていたが、どうも事故が発生したのは防災トラフに覆われた一般部ではなく、新洞26というナンバリングをされた接続部のようだ。OFケーブルでも接続部は一般部と構造が異なる。

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別紙2「電気関係事故報告」の概要」東京電力パワーグリッド 2016年11月10日

送電は交流3相で行うため、OFケーブルは一般部では3本1セットで俵積みし、密閉型防災トラフで覆われている(当ブログQ&A参照)。公開された写真を見ると一般部では密閉型防災トラフを覆うように3本まとめて防災シート一巻、接続部では1相、つまりケーブル1本につき一巻の形で行われているようだ。

ただ、考えるべきはメンテナンス費の不当な削減で2021年まで伸びていたのではないか、という疑問である。

そのため、この問題を10月21日に当ブログで取り上げてからも、資料調査は続けた。目的の一つは「地中送電線に防災シートを施工することが何時から一般化したのか?」、を明らかにするためである。

その結果、次のことが分かった。

まず、東京電力パワーグリッドの公開資料によれば、防災シート対策は2002年より着手したものだという(電力用防災シートについては古河テクノマテリアルのカタログ「電線・ケーブル線路における延焼防止対策にプロテコシリーズ」を参照してほしい)。

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第2回「新座洞道火災事故検証委員会」開催について」東京電力パワーグリッド2016年11月4日

計画の完了は2021年だったから、20年の長期プランということになる。経年30年超過の設備を山のように抱える状況で、この設備投資計画は無いだろう。せめて、10ヶ年計画程度に短縮出来なかったのだろうか。

もっとも、発表資料に書かれていないだけで、元々は2016年より前に終わっている筈の計画が、何らかの事情で延期されたのかも知れない。ただ前回記事でも触れたように、設備の老朽化を放置せざるを得ない原因として全電力に共通するのは、原発事故では無く、失われた20年と呼ばれる長期不況と電力自由化なのだが。

さて、具体的な設備の問題を考えるにあたって、『東京電力北東京電力所三十年史』という資料を入手した。火災を起こした設備を含め、東電の送配電設備を扱っていた部署の記念誌である。ここから防災シートに関係する事項を拾ってみよう。

通信用ケーブルは1980年代前半までに、防災シートを覆う工事が施工済みであった。

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『東京電力北東京電力所三十年史』P226 1989年

OFケーブルは送電用なのでその放熱が問題となる。東京電力パワーグリッドの公開資料を見るとトラフごと防災シートで覆っているように見えるが、大気並に熱放散性の良い素材を開発するのに時間を要した可能性は考えられる。

なお、城北線、北武蔵野線を所管していた東京電力北東京電力所(1989年各支店に移管)によると、1978年にOFケーブルの気中布設部への防災テープ巻きについて、1985年にケーブルが集中布設されている個所への防災テープ等の巻き付ける旨、対応策を決定している。

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『東京電力北東京電力所三十年史』P187 1989年

1985年の方針については、東電が電気学会の研究会にその理由を一段詳しく報告している。

4.東京電力における電線路の難燃防火対策の現状

 ここでは、以上のような電線路に対する難燃防火対策の一般動向にあって、東京電力における現状を述べることにする。

4.1送配電線路における対策
 昭和50年代前半の対策として(中略)地中送電設備については、154kV以上のすべてと66kVで系統面から地絡電流の大きい場合には、既設および新設のOFケーブルおよびCVケーブルの洞道部、人孔内オフセット部、シャフト部ならびに気中立ち上がり部に防災テープを採用することとしていた。
 昭和59年11月の世田谷区内で発生した洞道内のケーブル火災の発生を契機に、消防法の見直しが行われることになるが、社内的にも洞道防災対策検討委員会を組織し、対策の強化について検討が進められた。それまでの設備でも、電力ケーブルの被覆材は既に難燃性のものを使用し、さらにケーブル事故電流によりケーブルが出火しないような対策を実施しており、防災レベルは比較的高いものと言えた。しかし、

  • 変電所の引出し部等ケーブルの集中箇所で万一火災が発生した場合は極めて大きな影響がでる
  • 当社ケーブルが他企業設備と同一空間に布設されている場所では、他企業設備からの類焼と他企業設備への加害の危険性がある。
  • 洞道換気口付近のケーブルは、第三者からの被害を受ける危険性がある。
  • 共同溝と当社洞道との連系部は、隔壁がないために出入りが可能であり、第三者からの被害を相互に受ける危険性がある

ことから、従来の対策に加えて、万一の失火による火災の拡大防止、第三者による被害の防止など主に人為的な火災による被害を防止するための対策がさらに必要であるとの結論を得、対策の見直し強化が実施されることになった。
具体的な見直し強化策から本稿に関する部分を抜粋すると、以下のとおりである。

  • 重要箇所の変電所引出洞道、ケーブル処理室、オープンピット、配電用地下孔等ケーブルが集中する個所については、敷設されている全てのケーブルに防災テープ等の難燃材の巻付け又は消火装置の設置を行なう。
  • 洞道内多条垂直布設部分については、全てのケーブルに防災テープ等難燃材の巻き付けを行なう。
  • 他企業設備と同一空間にケーブルが布設されている場所については、耐火壁の設置又はケーブルに防災テープ等の難燃材の巻き付けを行なう。
  • 洞道換気口付近の全てのケーブルに防災テープ等の難燃材の巻き付けを行なう。
  • 洞道内に布設されているケーブルの給油管に防災テープ等難燃材の巻き付けを行なう。


また、この時の対策として、地中線部門が洞道内に新設するケーブルは、密閉型防災トラフを使用するものを除き、防災シースケーブル(酸素指数35程度)を使用することとした(後略)

藤本孝(東京電力)「電力設備(主として電線路)の難燃防火対策及び動向」『電気学会研究会資料 電線・ケーブル研究会』1991年3月P5-6

この説明を今読見直すと、次のことが分かる。

  • 1985年当時は、他社の設備に類焼しないことを優先し、自社設備しかない新洞26は対象外だったように読み取れる。しかし、ケーブルの集中する処理室に新洞26は該当すると考えられる。
  • 消火装置を設置することとなっているが、実際の記録を読むと消防の到着まで消火装置は作動していない(設備もされていない?)
  • 密閉型防災トラフを採用した城北線一般部は1985年の方針に照らすと防災テープ・シートの対象外であり、2002年以降の設備投資計画で対象となったと考えられる。

下記に東京電力パワーグリッドが発表した時系列を示す。

 

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別紙2「電気関係事故報告」の概要」東京電力パワーグリッド 2016年11月10日

電気技術者が法規制(省令)として思い浮かべるのものに「電気設備の技術基準の解釈」というものがある。最新の版と2006年の版でチェックしてみた所、120条に防火措置の方法が規定されており、「地中電線に耐燃措置を施す」「自動消火設備を施設する」のいずれかの方法によれば良いとなっていた。

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第120条の3『電気設備の技術基準の解釈

恐らく、この規定が現在の形になったのが1985年なのではないだろうか。

だが、275kVの送電線まで一律にこの規定で済ますことには疑問がある。より油量の多いPOFケーブルで事故が起きていたら爆導索のようになり、地上への延焼なども深刻化していたのではないだろうか。防災シートばかりでなく、消火装置が30年前に設置の必要性を謳っておきながら、今回記録に無いというのは本当に驚きだった。勿論、事故前からウェブ上にもメーカーの資料は存在している(「自動消火装置システム」株式会社エステック。PDFは2014年に作成)。規制の緩さに驚いたのだ。

先ほど紹介した東京電力パワーグリッドが公表した対策には、自動消火設備の設置を2019年までに完了させるとあるので、恐らく新洞26には無かったのだろう。ただ、それが30年越しの宿題であることは事故後のリリースを見ているだけでは、絶対に分からない。これが、調べることの意味と言える。

さて、へぼ担当のツイートについて、「極めて疑わしい」と書いたが、上記を鑑みると完全な虚偽広報と言えるだろう。30年かかって完了しない防災シート計画など、何もやってないに等しい。そもそも、彼はこの事故に高い関心を示しながら、防災シートについてはわざわざ事故から12日も経過してから追記した。そして、柏崎刈羽を始めとする原発にOFケーブルが採用されてきたこと、そのリスクについて何も語っていない。また、彼がツイートしていたケーブル火災消火に関する蘊蓄も、城北・北武蔵野線に関しては虚偽である。身内弁護の垂れ流しは毎度のことだが、全く呆れてしまう。

【余談】検証委員会に委託先の東京電設サービスが出てこない

『東京電力北東京電力所三十年史』は1980年頃より、変電、地中送電設備共に子会社の東京電設サービス(1979年設立)への社外委託を進めたとしている。同時期に東電全体で進められていた子会社化による経営スリム化の一環であろう。この時点では設備の良否判定は東電社員が実施となっている。今回も東京電力パワーグリッドが検証委の取りまとめをしており、2000年代以降も事情は同様であろう。

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『東京電力北東京電力所三十年史』P154,196-197 1989年

ところで、検証委員会名簿には東京電設サービスの技術者が一人もいない。同社が2015年に投稿した記事では同社による保守サービスの完結性と劣化診断技術を誇示し

今後もCVケーブルだけでなくOFケーブルも含めた電力ケーブルの異常診断技術の研究開発に努め、その成果で電力安定供給確保に貢献していきたいと考えている。

研究グループ紹介:東京電設サービス(株) ES本部 分析・診断リサーチセンター」『電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌)』Vol. 135 (2015) No. 1 P NL1_8

と述べていた。東京電力パワーグリッドというフィルターを通し、現場との距離感ができていないか、本当に有用な声(例えば、新しい診断ツールの導入提案を東電本体に潰された、など)が届かなくなっていないか心配である。

2016年10月23日 (日)

【柏崎刈羽に】原発とOFケーブル火災リスク【大量敷設の実績】(追記あり)

前回記事「東電新座地中送電線火災と老朽OFケーブルQ&A集」より原子力発電所に関係するQ&Aを分離した。原発問題にてケーブル火災は以前から俎上に上がっているテーマだが、OFケーブルとその老朽化に関する議論は話題になってこなかったように思われる。しかし、今回の火災でそのリスクが顕在化した以上、今後は焦点を合わせる必要があるだろう。

なおOFケーブルに関する基本的なQ&Aは前回記事を参照されたい。当記事は新事実が分かり次第随時追加する。

【OFケーブルは大都市の他にどこで使われているの?】
周波数変換所や直流送電線、発電所で採用されている。新信濃の周波数変換所が竣工してしばらくは、電気新聞1982年1月1日7面下段の広告などに、「TMI事故対応で関電の原発を一時停止した時に電力融通で大活躍した」などと宣伝していた(リンク)。

しかし、直流送電線は北本連系のように海を渡る場所に使用されているので、防食の潜在リスクは内陸の設備より遥かに大きい。原発がスクラム等に陥った時、特に地方電力は会社間融通で脱調・停電(系統崩壊)回避を目指していると思われる。そういう観点からは北海道電力などには、今回の事故は有用な参考事例となる。

更に、瀬戸大橋のように橋梁に共架されている場合、他のインフラとの共用であるから、鉄道・自動車・電力のいずれかが重大事故を起こすと残りも不通となるリスクをはらんでいる。

発電所での使用については下記のQ&Aを参照。

【OFケーブルは原子力発電所でも使われているの?】
火力発電所および原子力発電所では主変圧器、起動変圧器に接続する動力ケーブルに使用されている。原子力発電所の場合、これらに加え予備変圧器が設置されている。これら変圧器と所内の開閉所間がOFケーブルとなっている。未更新の例が目に付くが、所詮は可燃性の液体循環に依存したシステムである点が本質安全の面からは懸念されてきた。ただし、POFケーブルはOFケーブルに比較すると耐震性は高い(『電力ケーブル技術発展の系統化調査』P129)。

今後、少なくとも原発向けは、CVケーブルなどのオイルレス化、トラフの不燃材料化を規制要求した方が良いだろう。トラフについても、砂埋は不燃性ではなく、酸素指数の低さ(20%)から難燃性も怪しいので、同様に取替を要する。外部電源の作業となるので、被曝作業は無い。

また、OFケーブルが独立している場合は火災が発生しても当該回線の破損だけで済むが、他のケーブルと洞道やダクトを共用している場合は注意が必要だろう。例えば伊方発電所は、予備変圧器用OFケーブルの上に制御ケーブルトレイが何段も敷設される構造となっている。下記は分かり易さのため1・2号機時代の図を示したが、3号機でも他の用途のケーブルと同じ洞道に収納する構成と考えられる(『火力・原子力発電所土木構造物の設計』1977年P569,『火力・原子力発電所土木構造物の設計増補改訂版』1995年P973)。

 

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出典:『火力・原子力発電所土木構造物の設計』P569(クリックで拡大)

【電力の資料は詳しいので、リリースを追っていればOFケーブルの状況も把握できるの?】

そうとは限らない。東海第二発電所のように停電で注目を集める前はケーブル関連の説明資料から除外していた例がある。

実際には下記のようにOFケーブルを使用。

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出典:『東海第二発電所設備概要』1972年P84

原発でこうした老朽OFケーブルの更新事例が無いか、以前のブログ記事で紹介した「島根原子力発電所1号機電気計装品の予防保全対策」『火力原子力発電』1997年9月を参照したが、OFケーブルは対象外だった。比較的更新に熱心な事例でもこのような状態であることは注意が必要である。

10/26追記:なお、メーカーの中にはOFケーブルや油入変圧器の更新を技報で謳っている事例もあるが(「原子力発電プラントの性能向上と寿命延長」『東芝レビュー』2010年12月)、実施場所は明らかにされていない。以前、日立国分でも同種の記述があることを紹介したが、311前に、どこも更新ビジネスに手を付ける動きが顕在化していたのだろう。各社の工事を積み上げて、どの程度の設備がカバーされているかは、私には分からない。

【原発のOFケーブルはどの位の長さなの?】

開閉所と主要な変圧器との距離による。福島第一5号機の場合、210m。

Furukawa197705_no61p21_ofcable_500kV OFケ-ブルの開発と布設」『古河電工時報』1977年5月P21

【最も長いOFケーブルが使用されているいた原子力発電所は?】10/26修正

最長であるかは分からないが、柏崎刈羽原発では5号機用に1800m使用されているいた。納入は古河電工で、同社が本機以前に敷設してきた福島第一5号機、福島第二1号機、川内2号機などと比較しても極端に長い。

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出典:「柏崎刈羽原子力発電所向500kV OF ケ-ブルの布設」『古河電工時報』1989年7月P54

私は通常のOFケーブルに生じる問題の他、下記のリスクがあると考える。

  • 敷設が1989年のため経年は27年で一般的なOFケーブルの設計寿命に近い。
    なお、先んじて敷設された1~4号機用OFケーブルは経年30年を超えていると推測。
    ※※10/26:中越沖地震での損傷を機に、CVケーブルに更新されたとのこと。
  • 亘長1800mは一般の送電線に準じる規模で高低差も40m以上あることから、地震の際は地盤変位の影響を受け局部的に過大なストレスがかかり、絶縁破壊→地絡するリスクがある。
    ※10/26:中越沖地震によりこのリスクが顕在化し、引き換えられた。
  • 洞道の温度上昇抑制に送風機を使用しており、送風機電源喪失時に適切に送電が遮断されないと、極短時間でケーブル焼損に至り火災発生の原因となる(通常の地中送電線でも起こり得る問題だが、電源喪失問題が注目されているため、記載)。
  • 敷設されているいたケーブルはアルミ被タイプで北武蔵野線などで使用されているものと同構造となるため、機械的疲労のリスクなども類似する上、ケーブルサイズは柏崎刈羽5号用の方が大きい。
    ※10/26:5号用は引き換え済みだが、他原発でも考えられるので注意喚起のため残す。
  • 洞道が5・6・7号機で共用されているため、一つが発火すると残りの2つも貰い火で機能を喪失する可能性が高い。また、油量も3回線分存在する(なお6号機のOFケーブル敷設はフジクラが担当し同社の技報に掲載されている)。
    ※10/26:中越沖地震で損傷後、新しい洞道を建設した。
  • 洞道の断面が他のケーブルを共架する構造になっており、1本が発火すると全て貰い火で機能を喪失する可能性が高い。
  • 500kV級ケーブルのため、敷設の際はケーブルドラムの陸送が出来ず船での輸送となった。今後OFケーブルをOFケーブルで引き換えることは無いと思われるが、不慮の事故などが発生した際、早急な復旧は望めないことを意味する。
    ※10/26:中越沖地震で現実化した。
  • 10/26:洞道で火災が発生した場合、煙を建屋に引き込む恐れがないか、確認の必要がある(後述)。

本年10月に実施された新潟県知事選挙は野党系候補の米山氏が当選したため、同県が原発に厳しいチェック体制を継続することが望めそうである。福島事故の原因究明の他、再稼働/廃炉問題に際してOFケーブルのリスクについても是非議論を深めて頂ければと考える。

10/26追記【原子力発電所でのOFケーブル損傷事例はあるの?】

ある。上記設問を書いた後気付いたが、中越沖地震で4号機の洞道を損傷したほか、一部ケーブルに傷などを確認した。そのため1~5号機はCVケーブルに引き換えし、5~7号機で共用していた洞道は狭いため、新しい洞道を建設したとのことである。

CVケーブルへの引換は良いことだが、完全ではない(311後に6・7号機用に手を入れたかは不明)。この施策を他原発が追従しているのかは、東海第二のような事例もあり注意が必要だろう。

・「2.4.2 屋外設備と地盤・埋設構造物の修復と耐震補強」2-20~2-23 日本技術士会
・「2.4.2 屋外設備と地盤・埋設構造物の修復と耐震補強」2-24~2-26 日本技術士会

10/26追記【原子力発電所のケーブル火災で今後警戒すべきケースは何?】
今回の発火事故と中越沖地震の被災例を見て分かることは、OFケーブル火災が現実の脅威となったことである。地震により送電をストップする前に地絡し発火、といった複合事例も考えられる。私見だが、脅威になるのは火災だけではなく、煙も注意が必要だ。

各原発の洞道がどのようになっているかは分からないが、まず確認すべきは利便性を重視し原子炉建屋の非管理区域などと接続するルート(メンテナンス・空調・計装等)が存在しているかどうか。存在していると、建屋内に煙を引き込む恐れがあるので、防火シャッターなどの設置が不十分ではないかどうか、閉じ込め機能維持のために負圧をかけているエリアとの関連などを点検しておく必要がある。OFケーブルや古いCVケーブルはノンハロゲン化もされておらず、発生する煙は人の他機材にも有毒と見なされているし、閉鎖空間での炎上は単純に一酸化炭素中毒の脅威にもなる。

※ただ、空調系が完全に別となっている格納容器内まで達するとは考えにくい。

【情報は公開すべきではないという自民党議員の談話は正しいの?】

政治家の発言としては適切ではない。

例えば、どこの送電線の何丁目何番地に入口があるとか、その入口の鍵は何処に置いてあるといった情報は明らかに公開するべき内容ではないし、今回の事故検証に必要な情報でもない。公開すべきでない情報は存在する。しかし、ケーブルの建設年やその組成、事前の更新計画などといった情報は公開してもテロの危険を高めることはないし、既に公開の場で研究発表済みの内容も多い。

そのような情報の性質を一切無視して「公開すべきではない」という言葉だけが独り歩きしている。これこそ、素人の暴言と言うべきだろう。

むしろ、社外のチェックの目を入れるためには、無闇に秘密をつくらないことである。実は、福島原発事故はテロ対策を名目に、法的根拠も無く都合の悪い情報を遮断し、物言わぬ推進派には内部を見せて回るという悪弊を続けて起こったという背景もある関係ブログ記事)。津波想定を公表していれば、対策は震災前に終わっていただろう。

井上リサのようなPA師が早速「反対派には公開するべきではない」と説いて回っている。彼女は賛成派の顔をしているが、技術研究の内情に関心が無い上、売国テロリスト予備軍と言える行動を取っており、最悪の存在と言って良い。

2016年10月19日 (水)

東電新座地中送電線火災と老朽OFケーブルQ&A集

2016年10月12日、東京電力新座変電所の地中送電線が経年劣化により出火し、58万件に達する大規模停電が発生した。

東電の発表では火元は洞道(地下トンネル)に敷設されていたOFケーブルで、設置から35年が経過しているという。詳細な事故検証を行うため、東電は「新座洞道火災事故検証委員会」を設置した。

今回は私がこの事故について調査した結果を示す。インフラの老朽化問題に関心のある方は是非参照して頂ければと考える。また、原発でも部分的に使用している個所があるのでそのことも取り上げる。長い記事だが、有益な史料紹介になる筈だ。

事実関係は正確を心掛けているが、詳細報告が東電等からなされた時点で「的外れ」になる事項も出てくるとは思う。例えば本記事公開時点で、私は事故を起こしたケーブルの種類を防災トラフに入ったOFケーブルと考えているが、実際は違うかも知れない。なお、本記事では砂埋OFケーブル、POFケーブルについても特別高圧での使用実績が多く敷設から年月が経過しているため予防的な意図で説明した。

なお、当ブログの他の記事も同様だが、下記は私個人の目から見た論評であって、特定のメーカーや電設業界等のロビー活動として行っている主張ではないことも付言しておく。

【OFケーブルって何?】
Oil Filledケーブルの略。導体の周囲を油に浸した紙によって絶縁しているためこの名称となっている。大学生向け電気工学の教科書では必ず載っているので、日頃から仕事にしている専門家でなくとも、少しこの分野を勉強した人達は皆目にした記憶がある筈である。インターネット上でも断面図などが多く公開されているが、下記の記事が歴史的概要を掴むのに良いだろう。

【OFケーブルは1種類しかないの?】
下位のカテゴリで数種類に分かれる。

導入初期から60年代位まで敷設されたのは鉛被OFケーブル。今回事故を起こした275kV用としては、70年代以降の主力であるアルミ被OFケーブル(OFAZV)、砂埋OFケーブル、POF(Pipe type Oil Filled cable)ケーブルが使用される。

今回、どのOFケーブルか特定に手間取ったが、当該送電線は「電力ケーブルのトラフ内間接水冷方式」を採用しているため、開発時に書かれた論文記載の仕様から、十中八九アルミ被OFケーブルと思われる。

砂埋OFケーブルは「トラフ内砂埋布設ケーブルの曲線部における挙動」(『日立評論』1971年4月)に断面図が掲載されている。北武蔵野線や城北線のものと類似しているが、別物。トラフにケーブルを収め、空隙に砂を充填している。

POFは『電力ケーブル技術発展の系統化調査』によると、絶縁体に油浸絶縁紙を用いた線心3条を金属被を被覆せず鋼管に収納し、絶縁油を加圧充填した構造である。

なお、上記「III. 超高圧低損失OFケーブル」には今回事故を起こした城北線では一部の管路区で低損失絶縁紙としてSIOLAP,PPLP(組成は同記事参照)を採用したと書かれている。その時限りの特殊仕様になったまま、放置されていないかも確認が必要だろう。

【トラフって何?】

トラフ(Trough)とはケーブルを収納する管路資材のこと。ケーブル保護の目的で使われる。後述するが、城北線・北武蔵野線には密閉型防災トラフ(Fire Resistance Trough)というものが採用されている。

地中送電線が本格的に建設され始めた当初は、上述のように砂埋トラフが使用されていたが、次の欠点があった。

  • ケーブルの熱伸縮対策にスネーク布設(蛇のように数mの波長で~~~形にくねらせて布設する方式)が一般化した結果、砂埋によりスネーク効果が低減されている
  • 砂の熱抵抗が大きい
  • 良質の川砂が必要だが、資源確保が困難となった(新幹線トンネルのコールドジョイントで話題になった、西日本のコンクリート構造物で川砂の代わりに海砂を使用していた問題と同根だろう)。

このため、1972年より東電と古河電工は砂埋無しの防災トラフを研究開発し、275kV用まで実用化した(「密閉型防災トラフ」『古河電工時報』1977年1月

東京電力は1976年頃には密閉型防災トラフを標準防災トラフに指定済みだった。詳細に関しては(リンク )を参照して欲しいが、概略下記のようになる。

  • 材質:不飽和ポリエステル樹脂
  • 碍子繊維:コンテニアスストランドマット、ロービングクロス
  • 酸素指数:47%(一言で言えば燃えやすさ。通常26%以上で難燃性とされる)

また、特徴として、酸素の供給を極力押さえているため地絡時のアークによるケーブル着火を数秒間で消火でき、かつトラフの難燃性を向上させたため外部火災に対しても十分対処できる、とされていた。

1970年代はJIS,IEC,IEEE等で難燃性試験規格の基本が確立された時期でもある。今回の結果に比べて随分差があるように見えるので、きちんとした検証が出るか注目したいところである。

また、当時のJIS K 6911に基づき燃焼速度試験を実施した結果によると、砂埋トラフの火災脆弱性は密閉型防災トラフより高い事が分かる。つまり、老朽トラフとしては、あれでもかなりマシな方だったということだ。だから、更新が後回しにされたのかも知れない。

なお、現在の電力ケーブル用FRP製防災トラフはACGマテックスのウェブサイトに掲載がある。耐水、耐火性、内部燃焼に対する自己消化性を謳う。ただしフジプレコンは、FRP製では燃えてしまうとアピールする。今回の火災でケーブルを収納していたトラフの材質が気になるところだ。

難燃性とは「燃えにくい」ですが「燃えない」訳ではありません。(中略)
FRP(樹脂・プラスティック)は燃えます!
石油製品ですから当然です。耐燃性とか難燃性とか自消性とかなんとか言いますが熱が加わわり続ければ燃えます。(中略)コンクリートまたは陶磁器などの燃えない素材を用いたケーブルトラフを使用することをお薦めします。

ケーブルトラフに求められるものは? 」フジプレコン株式会社 2015年1月26日

【OFケーブルに使われている液体は油だけなの?】
水を用いた数種類の強制冷却方式が実用化されている。北武蔵野線の場合、ケーブルをトラフに収め、トラフに冷却水の配管を通して冷やす「トラフ内間接水冷方式」を採用している。

地中送電と言えば、いつも送電容量が問題になるが、地中線で使うアルミ被OFケーブルは架空線用の鋼心耐熱アルミ合金撚り線などと構造や機能が本質的に違う。例えば架空線が地上と適切な間隔をとり、空気そのものを絶縁体に出来るのに対し、洞道という密室の中に収められるケーブルの方は導体を特別の絶縁物でおおい、電気的に絶縁しなければならない。つまり、電気の流れる裸線に絶縁油をひたした絶縁紙などを何重にも巻きつける。電圧が高くなれば絶縁物も余分に必要になり、北武蔵野線練馬線で使う二十七万五千VのOFケーブルなどは絶縁紙の厚さが2センチにも達するほど。しかし、実はこれが地中送電のジレンマでもある。

「ケーブルに電気が流れると、導体の電気抵抗によって熱が発生するが、電気的に良い絶縁物も熱に対しては厚着をしている格好となり、熱の放散を妨げてしまう。送電容量が制限される一つの要因だ」(小杉欣之助・送変電建設本部地中線建設課長)。

したがって、地中送電では電気的問題、熱の問題、施工や運開にともなう機械的な問題に十分対処して、かつこれらの要素をうまく緩和させることのできるケーブルがあればいいわけだが、ひと筋縄ではいかない。どんなに金をかけようと、地下でどんなに大きいスペースを使おうと、構わないのなら別だが、そんなことは現実に望むべくもない。

そこで、いまは送電容量アップの一方策として水や油などを使ってケーブルで発生する熱を奪いながら電流を余分に流そうという、強制冷却方式が推進されている。

北武蔵野練馬線でも継ぎ目のない水冷管を使ってケーブルを冷やす方法をとった。「設備に若干費用がかかるが、送電容量は三〇%程度アップする。十万KW程度の送電線を一本つくったのと同じことだ(東京北工事事務所・関亦民夫次長)。

しばしば指摘されるようだが、地中線工事は決して安上がりではないかもしれない。たとえ話として、架空線の十倍かかる、などといわれたものだ。しかし、比較が悪い。前述したように架空線とケーブルはまるで違う。それに、鉄塔という”点”の支持物に電線を張る架空送電線に対し、地中の方はケーブルの容器ともいうべき洞道そのものを”線”状に連続してつくらなければならないし、ルートや工期も外部要因で大きな制約を受ける。(以下略)

「都心の動脈 建設進む地中送電線(7)」電気新聞1980年2月18日6面

『電力ケーブル技術発展の系統化調査』P139に断面図が引用されている。

Kahakuchousa080_cable_fig5_3 今回事故を起こした城北線で初採用した新技術だったためか、東電社報にも登場していた。

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出典:「スペース利用効率の向上をめざして~流通設備の効率化と技術開発~」『東電社報』1982年3月P10

ケーブルメーカーは古河電工で関連技報記事が2本ある。

  • 「電力ケーブルのトラフ内間接水冷方式の開発」『古河電工時報』 第61号(1977)
  • 「洞道内トラフ間接水冷の建設例」古河電工時報 第71 号(1981)

なお、「第7章 ケーブル•母線」(『電氣學會雜誌』Vol. 99 (1979) No. 5 P 443-449)によれば、トラフ間接水冷方式は1973年から開発を開始、1979年に完了。利点は下記などがある。

  1. ケーブルからの熱流を集中部分で効率良く奪うことができる
  2. 各種ケーブルが一緒に布設される洞道内で主要幹線(275kV線)のみを重点的に冷却できる

上の断面図には記載無いが、水冷管の材質は可とう性や電気誘導面から高密度ポリエチレンである。ケーブルは俵積みしている。なお、上図では冷却管が浮いているように見えるが、クリートで数m毎に固定されているのはケーブルと同様である。『古河電工時報』の試験モデル・計算例(リンク )をみると、スペック的には275kV 導体断面積1x1,000~1,800mm^2、最大電流1400Aを考えている。
※16/12/21追記 実用化された城北線では最大電流1600Aとなるなど、細部のスペックは更なる検討を経ていることを確認した。

やや気になるのは、通常0.5Mpaで通水されている水冷管をより高圧で運用する際、金属テープを巻いて補強されていたらしいことだ。金属テープを使用すると、ケーブルに流れる電流により誘導電圧が発生する。このため渦電流損失や水冷管の接続作業あるいは端末作業時には誘導対策が必要となる。この問題を解決しようとした1998年出願の特許「電力ケーブルの冷却装置」にその記載がある。高圧で運用するのは、高低差が大きい場合や冷却区間が長い場合とのことだ。

【OFケーブルの設計寿命は何年なの?】
154kVアルミ被OFケーブルの例だが、30年との記述がある(「アルミ被OFケーブルの劣化評価に基づく改修時期の検討」『電気学会資料 電線・ケーブル研究会』2007年)。同論文では、劣化評価を行うことで最長で60年までの使用を視野に入れていた。

一方で、沖縄電力の資料では、OFケーブルについて最長で40年の使用を前提に設備投資計画を立てている。

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設備投資計画について」沖縄電力 2015年9月10日

【特別高圧用OFケーブルの弱点はどこにあるの?】

アルミ被を含めたOFケーブル一般については「OFケーブルの絶縁体劣化現象の解明」(『SEIテクニカルレビュー』2014年7月)から抜粋すると下記のようになる。

  • 負荷変動に伴うケーブルの熱挙動により金属被に発生する機械的疲労。改修時期判定も機械的疲労=金属被歪みの評価による。
    ※ただし、2007年の研究「アルミ被OFケーブルの劣化評価に基づく改修時期の検討」では事前診断を充実させることで良好と評価された状態のケーブルは最大60年の使用に耐えるとしていた。東電がこの評価法を導入して35年目の運用に至った可能性は考えられる。
  • 振動・熱収縮によるケーブル本体や接続部の損傷・変形。
  • コアずれ。POFケーブルで述べるが、アルミ被OFケーブルでも発生する。
  • 絶縁紙の紙巻きギャップの広がりによる絶縁耐力の低下。
  • 絶縁紙の炭化およびワックス化。
  • 油中への不純物混入による絶縁耐力低下。静電誘接の上昇。

この他、シロアリによる外皮破損というトラブルもある。

Okinawadenryoku20150910p12_3

設備投資計画について」沖縄電力 2015年9月10日

劣化監視としては油量計確認や油中ガス分析を定期的に実施しているが、次のような盲点が指摘されている。

OFケーブルの劣化はかなり緩やかと考えられてきたが、調査の結果、条件によっては劣化が進行する可能性があることがわかった。(中略)欠陥部に局所的にガスが蓄積されている可能性があり、その場合には欠陥部の油を直接採油できておらず劣化の進展を必ずしも把握できるとは言えないとされる。(中略)X線調査によるコアずれ診断や部分放電測定などの診断を組合せ、保守管理するとともに、計画的な更新も必要と考えられる

OFケーブルの絶縁体劣化現象の解明」(『SEIテクニカルレビュー』2014年7月

後述する保守合理化手法であるアセットマネジメントが日本の電力業界でまともに議論されるようになって10年、『SEIテクニカルレビュー』掲載論文の発表から2年、東電は新しい知見に基づき従来のアセットマネジメントを修正することが出来たのだろうか。

その他のOFケーブルについては『電気学会資料 電線・ケーブル研究会』に2007年報告された東京電力の研究記事「経年ケーブル設備の診断・取替によるアセットマネジメントの一事例について」「地中送電線路の劣化と設備更新」を主たる参考として、まとめた。

砂埋OFケーブルは次のような故障を起こす。

  • 経年と共にケーブルの発生熱により乾燥し、g値(土壌固有熱抵抗)が上昇して、送電容量が低下する。
  • 砂のg値の上昇に伴いケーブルの熱挙動が大きくなり、砂埋トラフを破損させた事例がある。
  • ケーブルの砂埋ピット部において、ケーブル撤去工事のドラム巻き取り時にケーブル防食層が亀裂を生じた事例がある。高負荷運転により砂のg値が上昇したことが起因している可能性あり。
  • 砂の成分と砂の含有水分を起因とし、砂埋トラフ中のアルミクリートが腐食した事例がある。

POFケーブルの故障には次のようなものがある。

  • ケーブルのコア移動による接続部での絶縁破壊。導入当初のPOFケーブルはケーブルコアを固定する設計を採用していなかったため、敷設個所の傾斜や、波乗り現象と言った要因により、ケーブルコアが移動する。このことで、接続部において補強絶縁体等が接続部内部に接触し、最悪の場合絶縁破壊を引き起こす可能性がある。
    ※このため、ケーブルコアの移動量は管理対象となっており、管理値を超えた物は改修工事を実施している。
  • 防食の劣化。POFケーブルの防食層は当初コールタールエポキシが採用され、その後ポリエチレンに移行した。海外では特にコールタールエポキシ樹脂の防食層を採用したPOFで、防食層劣化から生じる鋼管腐食・漏油トラブルの事例がある。また、防食層の他に、外部電源装置や流電陽極を接続し鋼管の電位を負極性に保つ電気防食により、二重の対策を取っているが、気中敷設部や、直埋敷設部で外傷等により防食層と鋼管の密着性が悪化した個所などで、電気防食が効かず腐食が長期間で進展する可能性がある。

16/10/29追加【絶縁油を分析すれば寿命を評価出来たのでは?】

アセチレン、或いはCO2-COなどの油中ガス分析はOFケーブルの状態監視方法として定番のため、「アルミ被OFケーブルの劣化評価に基づく改修時期の検討」(2007年)においても指摘はされている。ただし、同論文は油中ガス分析を積極的に研究した内容ではない。90年代以前、油中ガス分析や部分放電測定(後述)など絶縁油分析によるOFケーブルの寿命評価は簡単に出来るものではなく、電力研究者達もそれを認識していた。

(1)油中ガス分析
変圧器分野では1970年代に実用化された(最近の油中ガス分析による油入変圧器の故障 と経年劣化の診断技術」『電気学会論文誌D(産業応用部門誌)』Vol. 107 (1987) No. 9 P 1137-1144)。問題は、分析対象の形状や運転条件により判断基準を一律化出来ないことであり、『新版 電気機器絶縁の実際』(初版1981年、新版1988年)でも「この方法はOFケーブルの保守管理に適用することも試みられているが、ケーブルの長さが長くなると可燃性ガスの薄められ方が大きくなるので、実用化はまだ先だろう」(新版、P31)と記されていた。つまり、城北・武蔵野線建設時には劣化や余寿命評価を行う方法としては使えなかったらしい。1994年の「電力機器の絶縁余寿命推定法の現状」(電気学会論文誌A(基礎・材料・共通部門誌)Vol. 114 (1994) No. 12 P 845-852)でも「比較的実用レベルに近い絶縁余寿命推定法が開発されている」のはCVケーブルとされている。

(2)部分放電
絶縁油の分析方法はガスの他コロナ-電力業界では油中で発生しているコロナは部分放電(PD)と称するようだ-がある。過去においては「電力設備の診断技術」(『電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌)』Vol. 112 (1992) No. 7 P 550-553)で「油中ガス分析で は困難な急激な絶縁性能劣化の診断のため,油中コロナ測定」の有用性が指摘されており、変圧器などでは実用化された(「イオン測定器、コロナ探知機」 コムシステム株式会社)。OFケーブルへの適用は1960年代に試みられていた(「OFケーブルのコロナ放電特性について」)。

2014年の『SEIテクニカルレビュー』掲載の上記論文(ネット公開)は今回の事態を予想したものとして週刊朝日など一般誌も注目している。だが、フィールドで30年使用したOFケーブルの入手は2000年代でも可能であり、先の「アルミ被OFケーブルの劣化評価に基づく改修時期の検討」(2007年)でカバーできなかった分野を補う部分放電の研究を2000年代に立ち上げ、『SEIテクニカルレビュー』での成果を数年早く得ることが出来たのではないかと考える。しかも、次回記事で述べるように、柏崎刈羽原発で撤去したOFケーブルの中には25年程度の経年のものもあり、500kV用ですら経年を経たサンプルの入手は可能だった。

よって、2000年代後半の劣化診断技術開発現場でどのような予算配分・研究者間の権力勾配があったのかは興味がある。

【OFケーブルが事故を起こした場合の影響は予想されていたの?】
下記のようになる。58万件でも30分で復旧出来れば「中程度」になると思っていたのだろうか。まぁ、今回の275kV線は超高圧設備だから、影響は大だろう。

アルミ被OFケーブルはトラブル頻度は比較的少なく、影響は中程度。

砂埋OFケーブルはトラブル頻度がある程度大きく、また超高圧設備の割合が大きいため影響も大きい。

地中送電線路の劣化と設備更新」『電気学会資料 電線・ケーブル研究会』2007年P35

東電は同様にPOFで事故が起きた際の問題については次のように課題を示していた。

  • トラブル頻度は少ないが万一の時に事故復旧が難しい。影響が極めて大きい。
  • 漏油事故時に、大漏油となる可能性があり、社会的影響が大きい。また、微小漏油の場合には、漏油警報による発見が遅れる可能性があり、その間かなりの絶縁油が環境に排出される懸念がある。
  • 工事量が少ないため、ケーブルメーカーの設計・製造・施工能力、及び電力会社の設計・工事技術の維持警鐘が難しい。

また、POFの設備更新に際しては、充填油を循環・冷却することで大きな送電容量を得ており、設備更新のためには同等の送電容量を確保することが必要で、技術面、ルート確保面から課題となっていた。

【火災を起こした地中送電線の同世代は都内にどのくらいあるの?】
275kVのOFケーブルは少なくとも430㎞以上建設されている。なお、報道発表で1000㎞という数字が挙げられていたのは、90年代位までは地中送電線の増設が盛んだった結果だと、私は考えている。

高度成長期以降、首都圏の電力需要は激増していった。しかし都内の発電所で賄える電力は1970年代末でも20%程に過ぎず、現在では更に低い。一方で、人口密度が高く、地価が高騰して架空送電線を建設する用地は取得が困難だった。そこで東京電力は郊外では従来通り架空送電線によるネットワークを建設するものの、23区内とその周辺では、基幹系統に使用する特別高圧送電線を地中にトンネルを掘る形で増強していくこととした。

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出典:「安定した系統をつくる 系統計画の概要」『東電社報』1979年10月P17

これを東京電力は「基幹系統13ルート計画」と称し、盛んに宣伝した。架空送電線と比較すると、冷却にネックがあり、1回線辺り数分の1の容量しか持たないため(当初25万kW/回線、その後系統構成を充実させ1980年代初頭で45万kW/回線)、多数のルートが設けられた。

傘下の工事会社である関電工も地下トンネルでの作業をイメージした広告を盛んに打っていた。

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出典:電気新聞1978年11月29日広告欄(クリックで拡大)

1979年某日の電気新聞に、「13ルート計画」の進捗状況が載っているので下記にまとめてみた。採用ケーブルは『電力ケーブル技術発展の系統化調査』による。

竣工済
江東変電所~城南変電所 1973年10月 OF
城南変電所~新宿変電所~北多摩変電所 1973年10月 POF
京北変電所~豊島変電所 1977年5月
豊島変電所~池上変電所 1979年5月
荘田開閉所~世田谷変電所 1979年5月
工事中
京浜変電所~潮田変電所~池上変電所

北武蔵野変電所(1979年5月新座変電所として運開)~豊島変電所 1980年5月竣工予定 OF(城北線)
北武蔵野変電所~練馬変電所~九段変電所 1980年5月竣工予定(北武蔵野線)
城東~日本橋線

計画完成:約30%、工事中を含めると70% 1980年代前半に80%完成予定

上記13ルート計画の延長は約430㎞。これ等の路線は事故を起こしたものと同世代のOFケーブルで建設された。2016年現在全く交換していないと仮定すると35年以上の経年に達したケーブルが殆どで、最長は43年経過している(154kVまで対象に含めると、上記「III. 超高圧低損失OFケーブル」に1966年南太田線で採用との記述がある)。報道によれば、完全に放置している訳では無く、防火シートによる火災対策やケーブルの更新工事なども段階的に進めているとされている。

なお、OFケーブルの後継に、絶縁油の循環を必要としないCVケーブルがある。275kV用のCVケーブルは1980年頃には開発を完了していた(『電氣學會雜誌』Vol. 104 (1984) No. 11 P 944-947)。しかし、吸湿対策等の改良を経て、長距離送電でCVケーブルを初採用したのは1989年の東電南池上線である(「電力を支える先端技術 下 電力の輸送と供給 大きく進歩した送電技術 」『電気学会誌』Vol. 116 (1996) No. 10 P 651-653)。

なお、1970年代、東京電力は全国の地中送電線工事の大半を手掛けていた(電気新聞1980年2月8日6面に当時の状況の証言が載っている)。

【事故の起きた城北・北武蔵野線に、固有の特徴はあるの?】
地下水が多い。当時の電気新聞に見学記事が載っている。

東京工事事務所の城東日本橋線が洞道工事なら、東京北工事事務所の北武蔵野練馬線などは、いまケーブル工事の最盛期だ。すでに洞道のほうは昨年末に完成し、ケーブル引き入れやケーブル接続作業に取り組んでいるところ。予定通りの仕上がりだが、洞道工事は一筋縄にはいかなかった。ルート周辺が地下水の豊富な地域で現場に湧水が多いためだ。当然、工事に支障のないよう止水するとともに、住宅用の井戸水を枯渇させないよう対策を講じなければならない。

一つは地盤改良といわれる薬液の注入。地山の崩れや湧水を防ぐ場合、工法面で解決できない時に採用する苦肉の策だ。水ガラスを注入して掘削現場周辺の地盤を固めるやり方である。むろん、地質に悪影響を与えないよう薬液は建設省”認可”のものを使うし、事前・事後に近辺の井戸の水質検査も念入りに行なう。この薬液注入、思ったより手間がかかるし、一ヶ所の現場で億単位の経費も必要とか。

とにかく水の多いところ。それだけ地下水量に恵まれているわけで井戸水を利用する家が多い。練馬地区では約三〇%が井戸を飲料水に使っているほど。したがって、ケーソン工法を採用するなどして工事による井戸の枯渇や水質変化がないよう、万全を期した」(東京北工事事務所土木課・鈴木慶三課長、青島忠男副長)。

井戸の枯渇もあるが、湧水が多いと現場作業は難航をきわめる。たとえば練馬変電所に隣接した三井建設施工の練馬九段線。初期発進のせいもあるが、切り羽の部分では水が吹き出している感じだ。湧水量は毎秒約一トン。切り羽でピックやショベルで手掘りしている作業員は土砂と泥水でどろんこのありさま。水分は塵埃を防ぐ役目もするが、始末が悪い。湧水を放っておいたら洞道内が水びだしになるから、六トンのポンプ三台でいったん汲み上げる。「手間がかかるが、沈殿槽を通して土砂をおとし、下水などへ流すようにしている。泥水のまま流したら、周囲へ迷惑をかけてしまう」(鳶谷研三三井建設作業所長)。

こんな現場では通常でも湿度が八〇~九〇%。夏になると九〇%を超え、不快指数はぐんと高まる。地下の深いところは一年を通じて寒暑のきびしさが極端に出ないものだが、湿度が高いのは疲労感を増長させがちだ(以下略)。

都心の動脈 建設進む地中送電線(5)」電気新聞1980年2月15日6面

新座でも事情は大差無いようで、湧水を「新座の元気 森透水」としてペットボトルで売っているほどである。勿論、長期にわたる防食管理の点からは条件が悪いということになる。湿度環境が悪いと状態監視機器の作動にも支障するかも知れない(ただし、平時の湿環境データは持っている筈である)。

【アスベストは地中送電線に使われているの?】
報道の通り法規制前の建設なので使用されている。なお報道とは別に既存資料を見直したところ、ケーブルを収納する構造物が幾つかのタイプに分かれていることが分かった。この中で、洞道(ケーブルダクト)ではないが、電気管路と呼ばれる方式の中に、石綿セメント管を使用した物がある。

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出典:電気新聞1979年9月21日広告欄より

石綿セメント管は1孔1条の単心ケーブルに使用され、電気管路の構成上、洞道と異なり、人が立ち入って見ることは出来ない。一定の距離を開けてマンホールを配置し、そこを起点に作業する(『火力・原子力発電所土木構造物の設計増補改訂版』1995年P972)。

改修工事や解体工事の他、火災の際には得てして高温になることは珍しくないため、セメントと言えども石綿が飛散するかも知れない(セメントに関して私は知識を殆ど持っていないが)。

【福島原発事故後の東電叩きのせいで更新出来なかったという話は本当?】
2つの理由から事実ではない。

まず、近年の東電の収支状況は報道発表等の通り、大幅な黒字である。多くの人に指摘されている通り、廃炉費用の負担で税金の支援を受けながら、このような過大利益を計上することは社会倫理的に許されない。仮に、半期で1000億の利益を計上していたとすると、その利益額を500億に抑制し、経年を超過した設備の更新に500億を投じるといった選択肢は当然あり得たからである。

次に、設計寿命を超えた設備の使用は電力業界全体で見られる傾向だった。背景は失われた20年と、2000年前後の電力自由化である。

近年低成長あるいはゼロ成長と言われる経済情勢を迎え、増容量のための交換を行う機会が少なくなったことから、一旦設置された機器を寿命ギリギリまで使用する傾向が現れている。この傾向は10年以上前から指摘されているが、電力自由化に伴うコストダウンへの要請と相乗し、ますます現実的な事態として捉えられている(P31)。

電気設備の最適診断周期に関する基礎検討」『電気学会研究会資料 電力技術研究会』 2007年

上記を背景に2000年代後半盛んに議論されたのはアセットマネジメントという概念である。

地中送電線路の劣化と設備更新」を参考に私なりの説明を行うと、経年を超えた設備を直ちに更新して行った場合、短期間に集中整備された設備の更新は短期間に集中することになる。このため、随時劣化診断を行って、比較的良好な状態にあると判断した設備の更新は後回しにするといった施策がアセットマネジメントの名の元に推奨されていた。

この施策のメリットには、専門技術者を常に一定数プールし、技術を絶やさない効果がある。特別高圧OFケーブルの敷設も専門的技術を要する工事の1つなので、一概に否定するべきではないだろう。ただし、アセットマネジメントには設計寿命以上に設備を限界まで酷使することで、コストを低廉に抑制する目的もあるため、工事量の平準化を考慮しても、毎年の更新工事量を適正な量まで増やすなどして早期に更新を完了すべきだったものと思われる。

今回、記録は残せなかったもののYahooニュースのコメント欄でも業界団体資料を情報交換しながら「素人は黙っていろ」というような書き込みが多数あった。インフラ業全般に電力業界の宣伝を鵜呑みにすることで生まれた独特の蔑視感情が膾炙していると考える。それがこのような作り話の根にあるのだろう。

【電力業界は更新投資について、外国から学んでいないの?】
学んでいるが、真剣に取り組まなかった期間が少なくとも4年ある。

下記の論文はガス絶縁遮断器を例示した内容だが、前提となる設備環境の記述にそれが現れている。

日本よりもさらに経年の進んだ設備を多数抱えるヨーロッパにおいて検討が先行しており、CIGRE(国際大電力会議)を始め、関連する分野の国際会議においておおむね2000年前後から議論が活発化している(P2)。

国内の動きで注目されたものとしては、2007年11月28日に開催された電気協同研究会主催の研究討論会をあげることができる。同様の討論会としては2003年にライフサイクルマネージメントが議題とされているが
、このときは必ずしも欧米のアセットマネジメント導入の動きに追随するわけではなく、日本独自の事情を考慮した対応をすべきとの意見が大勢であった(が、国際規格化の動向などを考えると内向きの対応だけではいけないとの意見も出された)。その4年後となる2007年の討論会では、いかにしてアセットマネジメント技術を導入するか検討し、他産業の先行例にも学ぶという姿勢に変わってきた(P3)。

電力流通設備の維持・更新計画策定支援プログラムの開発(Ⅱ)」電力中央研究所 研究報告書(H07013) 2008年7月

論文で問題になっているアセットマネジメントは保守を系統だてて行うことにより、無駄な保守費(重複など)を削減する意味もある。従って失われた10年を経過した2003年時点で日本独特の国内事情を挙げることには無理がある。

【一般向けに地中送電線の更新を課題と示していた電力会社はあるの?】
中国電力は研究記事ではなく、一般人向けのサイトでそのように述べていた。

Chugokuden2013csrp6_2安定供給に向けて ~送配電部門の取り組み~」『2013エネルギアグループCSR 報告書』中国電力

中国電力の記述では、架空送電線よりも地中送電線の方が優先順位が上になっている。

16/10/29【2021年までに防火シートを巻く予定だったので無為無策では無い?】

16/12/21追記本問を発展させた後日記事を執筆しています。

Togetter_com_li_1039761_comment OFケーブル他備忘-Togetter 当該ツイート(その1その2)。

極めて疑わしい。防火シートを地中送電施設の要注意個所に巻く対策は2000年の雑誌に既に載っていたから。

(2)難燃性・不燃性電力ケーブルの採用
CVケーブルの採用、ケーブルシース・介在物に難燃性を付加、ピットへの砂の充填、
難燃材料(防火シート)のケーブルへの巻き付け、塗布、OFケーブルを用いる場合は密閉型防災トラフ内への収納などを実施する。

「地下式変電所の変圧器,遮断器,開閉器等の電気工作物に対する火災対策に関するキーポイント」『電気計算』2000年8月P32

なお、OFケーブルでも接続部は一般部と構造が異なることも留意すべきだろう。従って、ここでも考えるべきはメンテナンス費の不当な削減で2021年まで伸びていたのではないか、という疑問である。へぼ担当は放水など他の問題には既知の知識と書いてあるが、防火シートについてはわざわざ事故から12日も経過してから追記したのに、既知の対策と書いていないので、改めて指摘した次第。ま、彼は何時も身内弁護しか垂れ流しておらず、今回もその一環に過ぎないのでしょう。

【OFケーブルは他にどこで使われているの?】

【OFケーブルは原子力発電所でも使われているの?】

【原発のOFケーブルはどの位の長さなの?】

【情報は公開すべきではないという自民党議員の談話は正しいの?】

いずれも【柏崎刈羽に】原発とOFケーブル火災リスク【大量敷設】に移転。

16/10/22:全般見直し

16/10/23:原発関係を【柏崎刈羽に】原発とOFケーブル火災リスク【大量敷設】に移転。

2016年10月18日 (火)

【みぶなつき】駅乃ちかこ萌え路線で炎上した鉄道むすめ【あなたは多分偉かった】

トミーテックが発売している「鉄道むすめ」シリーズで、東京メトロのサービスマネージャの駅乃ちかことコラボしたところ、絵師の伊能津がエロゲー的描写を露骨に持ち込んで炎上してしまうという事件があった。

そして、とうとう比較絵が2万件以上RTされるに至る。

このシリーズ、2005年からやっているが、昔つけていた日記で2007年頃、「いつか炎上する」と書いたのを思い出した。

最近のアニメは、どういう認知の歪みがあればあんなキャバ嬢のような格好で学生だの軍人だの設定できるんだ?と思うような作品がとても増えた。鉄道むすめはそういうことをしないだけマシと評価していたのだが、遂に「超えてはならない一線を認識出来ない馬鹿」が投入されてしまったわけである。

しかし、一行コメントしてる連中にまともな評価を下せる者がいないのもどうかなと感じている。特に伊能津を擁護する側。本当に消費者なのだろうか。

今回の絵は、駅乃ちかこが何をしようとしているのかがサッパリ分からない。接客中に見えなくもないが、マネージャーがあんなふざけた態度取るか?という指摘はその通り。だから違和感を感じた人が多いのだろう。

これに対して、初期のシリーズは「仕事中のワンショット風」を意図しているのが明確だった。公式サイトのキャラ紹介を見るとよく分かる(例:船橋ちとせ羽田あいる)。シリーズを重ねてポーズのパターンに困り、休憩、控室での決めポーズ、移動、観光客相手の記念写真と思しきタイプも含めるようになったが、今回問題になったようなポーズは、キャラ紹介では取っていなかった。なので、トミーテックとして内部で明文化しているのかと思っていたが、そうでは無かったようだ。開始当初から数年前まで担当していたみぶなつきという絵師の個人的技能に終わってしまっている。

みぶなつきも個人ではエロ同人も手掛けており、鉄道むすめのイメージに慣れた目からするとかなりきつい。ただ、同シリーズとの切り分けははっきりさせていたように思われる。

擁護派は何のかんのと言い訳しているようだが、問題になってるスカートの部分もみぶなつきが担当した物と比較すると一目瞭然。そのため、鉄道会社公式キャラの流用でも、東武から拝借した姫宮ななは何のトラブルも起きてない。東武に対してはトミー側もかなり配慮したらしく、カメラ小僧をたしなめる身内叩きの派生小説を書いていたのを思い出した(その構造自体をエンタメ化したという批判はあり得るだろう)。

ところで、私はこのシリーズに一円も投資したことがない。趣味的には萌え系アニメ絵も好きな物の一つではあり、買うだけの金はあった。だが、当事者を侮辱するような表現の羅列に走りそうな危うさは、最初から感じていた。当時はコップのフチ子さんは無かったが、まぁ、ああいう感じに徹底して堕ちる危険ということ。

元々、駅名を人名に流用し自然な形で擬人化もどきを行う方法は、鉄道むすめの2年程前、『出発シンコー』というエロ漫画で商業的に提示していたものだ。鉄道むすめの企画者達も、当然知っていたと思われる。鉄道員の手になるだけあり、非エロパートはとても勉強になる珍品だが、商業的には実際の鉄道とのコラボなど、とてもできた代物ではなかった。そういうエロ同人絵師と鉄道業界との繋がりはずっと以前からあったので、ゲームキャラの流用で恥をかいた鉄道会社がニュースになった時も、いかにもなことだなと思った。それにしても、『第二次世界大戦 欧州海戦ガイド』で中々の挿絵を描いていたチャーリーにしなかがどうして方向転換したのか、今でも不思議である。

地方私鉄が客寄せのため続々参加する一方で、大量の乗務員や駅員を抱えるJRがキャラクター化を拒否し続けているらしいことも、引っかかていた(接客サービスに特化した職員は登場しているが)。彼女等が、グループ本体の正社員で組合員であったことも、理由の一つじゃないのかねぇ。

そんなこんなで、みぶ時代は何とか切り抜けたが、遂に炎上してしまったわけである。

私の周囲には、色々買い揃えるオタクの友達が何人かいた。そのため、自分が買わなくても上記のことは覚えていた。今、Twitterで伊能津を擁護しているアニメ大好きそうな連中、皆、忘れちゃったのかなぁ。バカ揃いなのは知ってるけれど、そんな程度の頭なら、情報強者を自称するの、辞めちゃえばいいのに。

それはともかく、遊んでる学生の延長気分で「これ位いいでしょ」が通用する世界ではないよね。ま、ああいうことをする絵師は再犯率も高いと思うので、一発退場が妥当。起用しない方が良い。

今この絵師のキャラをチェックしてみたが、豊川まどか南ふうかと徐々にきわどい方向に影を付けようと試した形跡がある。

 Toyokawamadoka_2

 豊川まどか:直立しているので殆ど目立っていないが、足に沿って影がある。

 Minamifuuka_2  南ふうか:やや動きのある姿勢となり、影がより詳細についている。

また、中山ゆかりのカバンの角度(振り回しでもしない限りああならない+左足が変)、杜みなせのダイヤの持ち方(あんな風に持ったら真ん中で折れる)など、物理的に不自然さを感じる絵が目に付く。また、みぶなつきにも共通するが、一部キャラの髪が不自然に長い(例:南ふうか、門田さくら)。現実には精々胸位だろう。車掌・運転士・ホーム要員は風による巻き込みの点からもリアリティが無い。

案外、デッサンやキャラデザ指南書などで基本を学ばず、人間の骨格も理解していないデザイナーだったのかも知れない。愚かな萌えマンガ家などにしばしば見られるタイプ。先に紹介したチャーリーにしなかの方がグルメ本(本当に美味いかどうかは知らん)ではまともに描いていることが、伊能津と彼を擁護するネット右翼達をより悲劇的な存在にしている。階級章外してる当たりもどこぞの海兵気取りの親脛齧りより謙虚。

しかし冒頭の代替案として提示された絵、公共的な制服を着せる業種にありがちな、服装チェックの図その物になっていたのは笑った。確かに正しいけど、女性絵師が陥りがちな記念写真ポーズで、萌え以前に絵として何の面白味も無いんだよね。

ところで、制服という物の性格上、ビシっと決めると軍隊的な性格がもろに視覚化される。私はその程度は許容するけど、フェミニズム的な人達は反軍的思想と親和性が高い人が多い。だから、この辺は興味はある。例えば、今回の火付け人にも混ざっていた、日頃から欧米ではどうのこうのと日本の悪いところを指摘し、衰退を予告する親切な人達。確かに有難いと思う反面、外国の良いとこだけつまみ食いを重ねるクリームスキマーに映らなくもない。悪いけど、米英仏辺りなどは、軍隊の弊害を現在進行形で撒き散らしたり、映画で立派なことを語って、社会制度が整っている割には治安が悪かったりもするから、そういう国のメリットだけを主に享受してるらしい彼等は、何だかなぁというのは思っている。

追記:後日、次の記事を書いた。
【フェミもネトウヨも】スイスの鉄道の10年以上前にPC対応キャラを登場させていた鉄道むすめ【上辺だけ】

2015年1月22日 (木)

~報道ヘリは爆音の主役だったのか~阪神大震災の自衛隊員証言(ソース:ryoko174さん)への疑問(追記あり)

阪神大震災から20年を迎え、様々な追悼行事が行われ、メディアで検証報道も行われた。

そのような中、次のような書き込みが人気を博していることを知った。

原発事故以来奇妙な藁人形論法を駆使して弁護の論陣を張ることでおなじみの、ryoko174氏である。

撃ち落とせとまで罵る自衛官の証言は初耳だ。

もっとも、報道ヘリに対する悪評は確かに当時から存在した。

05.救出現場では、周囲の人の証言や生き埋め者の声が生き埋め箇所特定の頼りだった。静寂確保のために、取材用ヘリコプター等の騒音が問題だったとの指摘もある。

01) 現場へ駆けつけた警察・消防職員は、家族や周囲の人から情報を集めながら生き埋め箇所の見当をつけ、呼びかけに応える声を頼りに掘り進んだ。
02) ヘリコプターなどの騒音が救助者発見の障害となったとして、サイレント・タイムを設ける必要性も指摘された。
阪神・淡路大震災教訓情報資料集(内閣府)

「政府としてはマスコミをたしなめる機会は逃がしたくないだろう」とうがった見方も出来るが、1回目は「取材用ヘリコプター」とあるが2回目は「ヘリコプター」としか書かれていない。

次に、大学での問題提起を見てみよう。

東京や大阪から乗り込んだマスコミに対しては、被災者の辛い気持ちをまったくかえりみない取材態度だとか、首都圏が大地震に襲われたときの参考にしたい思惑が見え見えだ、というような悪評が少なくなかった。とくにヘリコプター取材は、その騒音が倒壊家屋の下敷きになった人たちの救出活動の妨げになったとして、現地での評判はいちじるしく悪かった。

災害報道はどうあるべきか - 東京大学

ここで、敢えてヘリ以外の「悪評」まで引用したのは理由がある。悪評と言うものは、時としてデタラメな論理すら正当化してしまうものだからだ。現地入りした際に被災者を刺激する様な言動を控えるべきなのは当然だが、「首都圏が大地震に襲われたときの参考にしたい」のは当たり前で、理の通らない感情論である。

更に調べてみると、時期による違いを挙げる記録もある。

震災直後の飛行目的のほとんどは、報道取材、偵察飛行だったが、その後物資搬送、人員輸送などに利用された。
第1期・初動対応(地震発生後初期72時間を中心として)

しかし、偵察するのも、爆音を立てているのも、報道ヘリだけなのだろうか。

災害にあった直後怪我をしながらも大きな声で助けを求める人がいても取材のヘリ救助のヘリなどの音で声だとかき消されることが多いからです。 私はこの話を聞いた時ものすごいジレンマが起こっていると感じました。 情報を伝えるため、人を助けるためのヘリが助けを求める命の声をかき消しているからです。
阪神淡路大震災20年感謝と希望を伝え、オリジナル笛を作りたい

伝聞ではあるが、多少ニュアンスは異なっている。

やはり、定量的な検討が必要だろう。震災時、どんなヘリが神戸上空を飛んでいたのだろうか。

某所で知ったが、西川渉氏は当時のヘリに関する報道記録をまとめている。初期の3日間に着目し、機数への言及があるもの、報道以外に反感を買いそうな目的の飛行を抜粋してみた。

17日12時すぎ、近畿管区機動隊など県外の警察官2,418人とヘリコプター7機が出動。
15時40分、小沢国土庁長官らが自衛隊機で伊丹空港に到着。ヘリコプターで災害地域を上空から視察。
19日9時すぎ、スイス災害救助隊員25人が捜索犬12頭を連れて関西空港に到着、自衛隊ヘリコプターで直ちに神戸入りした。
11時40分頃、羽田空港を自衛隊機で出発した村山首相が被災地視察のため大阪空港に到着、土井たか子衆議院議長とともに政府専用ヘリコプターで上空から視察。
17日午前、東京消防庁、千葉、川崎、横浜、名古屋、京都各市消防局に対し防災ヘリコプターの派遣を要請。計6機が現地に向かった。
ヘリコプターをチャーターしている企業もある。セブンイレブン・ジャパンでは、ヘリコプター7機をチャーターした。
18日、経団連は被災地への救援物資輸送を円滑に進めるため、業界団体や企業に対しトラックやヘリコプターの提供を要請する。
朝日航洋では東京に駐機しているヘリコプター12機を急きょ大阪の八尾空港に送り込んだ。

阪神大震災とヘリコプター ――5年前の報道記事を再読する――

数の上では圧倒的に災害対応活動のためのヘリが上空を舞っていたようだ。例えば消防関係に限っても27機も参じていたことが下記からも分かる。これに方面隊全力で活動した陸自他の自衛隊機、警察、民間業者が加わる。

阪神・淡路大震災は、多数の消防・防災ヘリコプターが大規模に救援救助活動を行った我が国の初めての事例であり、全国から16団体(計27機)の消防・防災ヘリコプターが参加して救急搬送、物資輸送、人員輸送、調査等に活躍した。(延べ活動機数1,336 回)。

2 阪神・淡路大震災の教訓
  (1) 阪神・淡路大震災では、多数の消防・防災ヘリコプターが活躍した一方、通信連絡網の寸断により、応援ヘリコプターの把握やヘリコプターの参集拠点、補給場所の選定等の調整に時間を要した。
  (2) ライフラインの途絶などにより、ヘリポートの使用に著しく制限を受けたり、道路、 交通機関が遮断されたことにより、航空隊員の参集や燃料輸送が困難となり、初動措置対応に支障が生じた。

大規模災害時における消防・防災ヘリコプターの広域応援体制検討委員会報告書(概要)

教訓の記述は現場上空で無駄な旋回やホバーを強いられたのではないかという疑問を想起させる。

今度はネット上に公開されている消防関係者の手記を見てみよう。

1月17日は、情報収集が中心に実施された。救援物資搬送は当初2週間特に弁当パン等の食料を中心に実施した。18日に航空部隊の会議を実施した。18日早朝の段階では、山崎パンの工場から東遊園地(三宮)まで可能な限り運ぶという情報しかなく、準備不足の中で会議を始め、参加された方々に多大な迷惑を掛けた。

会議の途中で山崎パンの工場近くの中学校のグランドを半ば強引にお願いして臨時の離着陸場とさせていただいた。

山崎パンの工場近くの中学校のグランド~東遊園地のルートでは一度に投入できる機数は、5機が限界(飛行にかかる時間は10分程度なので離着陸時等に上空待機することになる)であるので午前午後の2班に分けることにした。

18日午後には六甲アイランドの生協から食料を出していただけることになった。また、臨時離着陸も増加させることができたので別のルートを作成することになった。臨時離着陸場では、民生局の職員により誘導等をしていただいたが、事前の打合せができなかったので大変ご迷惑をお掛けした。

19日からは、スケジュールを事前に作成することができるようになり作業の流れがよくなった。また、陸上自衛隊の大型ヘリコプター(チヌーク)が救援物資を王子公園まで運び、消防関係のヘリコプターが、各地点まで運んだ。

(中略)当初2日間各航空機は、それぞれの機長の判断とパイロット共通のコモンセンスにより運航されていたというのは、神戸市内の縦横5~10キロ高さ150~400メートルの間に常時10機以上のヘリコプターが飛行していたが事故もなく運航されていたからである。

阪神・淡路大震災 消防職員手記(消防局本部・消防機動隊)

あの狭い市街地上空に常時10機以上滞空となると、ヘリの爆音が聞こえない方がおかしい。また、離着陸場所も注目である。中学校のグランドや公園など、普段はヘリなど縁の無い市街地の中に入り込まざるを得なかったことが分かる。恐らく、「震災の帯」に響いた航空騒音の殆どは、救助活動の上で避けられないものだったのだと思う。

その一方で、初動対応が情報収集中心となり、市民のフラストレーションを高めたことも想像出来る。立ち上がりの事情は流通業者も同様だろう。

実は、震災当時場外場と呼ばれる臨時の着陸場が市内に多数設けられていた。

阪神大震災では垂直離着陸の出来る特性を生かし、不足する飛行場・ヘリポートを補う場外場が数多く設けられた。
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場外場の分布(●) 神戸市街地に多数設けられている
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阪神大震災におけるヘリコプタの離着陸施設の利用と今後の課題

上記論文によると神戸市内だけで各機関合計45か所。これだけ拠点が設けられていると、周囲の建物による反響音も半端ではない。

さて、ネット情報を調べるだけでは能が無いので「ヘリ=報道ヘリと誤判断した人は、何がそうさせたのか」を考えてみた。

  1. 現場は殺気立っている
    生きるか死ぬかの瀬戸際にある被災者や現場で作業する各機関の職員に取っては「ヘリが五月蠅い」というところが重要なのであり、そのヘリが何処の所属であるかは二の次だったのではあるまいか。そういった人達にとってはヘリをしげしげと眺めているヒマは無いとも考えられる。
  2. 民間ヘリの塗装は区別できない
    赤なら消防、濃緑系なら(陸上)自衛隊などは一般人でも判断出来そうである。しかし、警察辺りから塗装の判別は怪しくなり始め、民間業者の塗装が区別出来るのは常設ヘリポートの周辺住民・関係者・マニア位だろう。特に12機を専従で送り込んだ朝日航洋は要注意だと考えられる。理由は単純で社名に「朝日」と入っているから。長く使われている塗装は、リンク先の写真のように機体の脇にも書き込まれている。デマの発信源としては申し分ないように思われる。
  3. 報道ヘリを飛ばしているのは民間の航空会社
    2.とも絡むが、次のリンクを見て欲しい(報道取材 中日本航空株式会社ニュース現場にいち早く駆けつける、報道取材ヘリコプター 朝日航洋株式会社)。物資も運んでいた朝日航洋などは功罪両面があると言えるだろう。
    Asahikouyou_2
    資本力の大きなキー局などは専用機を所有してるのだろうが、この辺の事情を踏まえて批判している連中、どの位いるんだろうね。

真の原因は定かでは無いものの、多数のヘリが入っていた事実を無視して「SAM(キリッ」などと言う自衛官を釣れてくるryoko174氏は色々な意味で筋が悪い。そこに食いついたRTが3000に達しているのも問題だ。良く考えもせず賛同RTした割合が5割としても1500人はリテラシーなど無いということだろう。

まぁ、近年田母神、佐藤をはじめとして自衛隊出身者の中に残念な主義信条を持った人がいる現状を鑑みると、「今必要な物はSAM(キリッ」って隊員が実在する可能性は否定できない(勿論皮肉である)。

もう一点、時事に関連して指摘したいことがある。あの震災当時、神戸上空は多数のヘリが滞空する状況となった。これは見方を変えると、神戸市上空が普天間基地周辺のような状態になったとも見做せるだろう。経緯はどうあれ、人口増加の顕著な県で市街の真ん中にヘリ基地を設けると言うことは、相応のストレスを与えるということでもある。

軍オタやネット右翼が声高に糾弾しているが、例え金を貰っていても、騒音は消えないからねぇ。沖縄の住民がヘリを嫌がる理由位は理解した方が良いと思うね。

2014/1/24:追記
報道とそれ以外を切り分けたい向きもあるだろう。しかし、彼等の立場に近い目線で書かれた物を見ると本質的にはどこのパイロットも同じであることが分かる。

例えば、朝日航洋の業務紹介ページには次のような記述がある。

入社後の2年間は飛行訓練を受け、旅客輸送業務や測量送電線巡視など様々な業務を担当しました。幅広い仕事を経験できることは、当社の魅力の1つだと思います。

現在担当しているのは報道業務。テレビ局と契約し、事件・事故、資料映像を撮影するためにヘリの操縦を行っています。当社に常駐しているテレビ局のクルーから依頼を受け、天候に問題がなければ10分後には飛び立ちます。

報道はスピードが求められるので、迅速に対応することが重要です。そのために、毎朝搭乗するヘリの座席の位置を調整し、使い慣れた自分専用の地図やヘッドセットなどを装備しています。

基本的には待機している時間が多いのですが、待機中は仮想の目的地を決めてのフライトプランづくりや飛行シミュレーションを行っています。

心がけていることは、安全が第一ですが、テレビ局のクルーが求めている映像を撮れるようなフライトです。

(中略)目標は、高校時代から憧れていたドクターヘリの機長になることです。
朝日航洋の人と仕事 (航空事業)操縦職 ヘリコプター

キャリアを見る限り「報道は操縦がいい加減で、それ以外はまとも」というのは只の思い込みの可能性が大である。

事業用(仕事活用編)の免許(『ヘリコプター・飛行機パイロットの夢叶えませんか』内)の説明では特に飛行目的で格差のような記述は無い。それどころか「民間」というカテゴリーに「防災」と「報道」が並び「(テレビ局は民間のヘリコプターをチャーターすることが多い)」と補足されている。一方、養成学校の一つ「大阪航空株式会社」は八尾を拠点とし、警察出身者を教官に迎えている。説明には「ヘリコプターを運航する使用事業会社や新聞社のパイロット、航空機メーカーのパイロットなど、現在では多くの分野でパイロットの募集が行われております。」と、新聞社は自社で機体を持っていることもあるようだ。朝日新聞の募集ページが残っているのでそれも引用しよう。

募集職種     操縦士(小型ジェット機およびヘリコプター)
応募資格     1975年4月2日以降の生まれで、飛行機または回転翼航空機の事業用操縦士以上の技能証明書を有し、第1種航空身体検査の基準を満たす方。総飛行時間1000時間以上の経験を持つ方を歓迎しますが、それ以下でも、年齢や資格、経歴を考慮します。
選考方法     書類選考のうえ複数回の面接をします。1次試験は12月7日(日)に東京で実施します。
試験内容は面接、模擬飛行装置(FTD)での実技、筆記試験です。

2014年社会人採用試験 航空部 報道パイロット

他社で経験を積んだベテランを募集しており、内容はかなりしっかりしているように思われる。最近はそこらの書店で「パイロットになろう」的なムック本も売られているのに、したり顔で「マスゴミ糾弾」に便乗している一部軍事マニアや航空マニアは只のメカフェチであることが確定した。

パイロットの能力に差が無ければ、社有機か、チャーターか、防災目的の測量・撮影なのかを一見で判断することは益々難しそうだ。そもそも区別の意味がどれだけあるのか。

2014/1/26:追記2
さて、多くの方にご覧いただき感謝します。一部に元住民からの御指摘もあった。例えば、kumakuma1967氏には色々コメントを頂き「空中写真測量各社の市街地での緊急の自主空中測量は1/20からが中心」そうである。しかし、運航会社の存在とパイロットの問題については当方が調査した事実で説明には十分だと考える。彼は「ヘボ仕様では商売にならん」と言うが、西川氏の記録が示す通り、震災への適応性に憎悪に近い疑問を呈されたのは消防その他も同じである(『セキュリタリアン』は能力が無いことを以って反論したが、何時までもその状態では困る)。何にせよ開発するのは航空機材に手を突っ込んだメーカーである。

また、氏は「素早い対応で報道はテロップで撮影時刻入れるのやめたよね」と述べている。このように当時、メディアで反省が無かった印象があるが、上で出てきた手記にはこんな記述もある。

今回の震災に限らず事故現場上空において無理な飛行をする取材機が散見されるのが残念だが、今回は取材機相互が無理な飛行をするヘリコプターに注意を受けたパイロットもそれ以後反省して安全に配慮して飛行したことはすばらしいと感じた。
阪神・淡路大震災 消防職員手記(消防局本部・消防機動隊)

同職種という繋がりからは自然に思う。浅井久仁臣氏によると「マスコミ各社が消防関係者や被災者の苦情を受けて検討会を重ねていた(略)が、ハッキリした結論を出さぬまま立ち消えになってしまったらしい」(災害時の報道取材ヘリ問題)とのことだが、同じパイロットが雇い主によって操縦の仕方を変えると言う点にメスを入れないとどうしようもないだろう。事故を起こして真っ先に死ぬのはこの人達でもあるのだが。

この他、ラジオ関西は『震災報道の記録 『被災放送局が伝えたもの』』という記録を残している。問題点に触れている部分はリンク先で読んでいただくとして、1月17日20時42分に「この時間でも上空に取材ヘリがいる。」と書かれているのが注目点。夜間なら判別は不可能だろう。また、1月19日午前7時10分「長田区のリスナーからマスコミの取材ヘリがうるさくてラジオが聞こえない」との通報があったと書き残している。発災直後は救助活動とも競合しただろうが、決して当日だけが問題だったわけではない。

また、kumakuma1967氏は早野教授のRTが散見されるので思い出したが、東日本大震災当時、右派・軍事マニアを中心に「メルトダウンは無い」等とデタラメを吹聴してその後も平然としている者達がおり、メディアに対する敵愾心を持つ層とラップしている。彼等に報道ヘリを批判する資格があるかは疑問である。少なくとも阪神の報道ヘリは事実を映しており、その価値は比較にもならない。

逆に言えば、初期のヘリ報道にはそれなりに価値もあった。例えば、あの震災で鈍さが問題になった村山首相は偶々6時にTVを付けて第一報を知ったが現地の映像は無かった。その時点では当局関係の連絡網も首相の役には立たなかった。麻生幾『「情報」官邸に達せず』にはその後も「テレビさえ点けていなかった」と書かれているそうだが、このこと自体麻生幾氏が「映像を見たら違っていたかも」と感じたということ。村山(自社さ)政権は他の問題もあろうが、国民一般が事態を飲み込むのに果たした役割も似たようなものである。空撮にはそれだけの力があった。建築等の専門家も解説の参考にしていた。過剰取材は批判されるべきだが、全くメディアが無いのも問題だね(参考:「震災と政治(2)阪神・淡路大震災と政治」)。

2013年10月27日 (日)

我が家の防災対策

他にも色々書いてみたい題材があるが、今日は肩の凝らないテーマで。

9月に入って防災対策を見直した。

東日本大震災から2年経過し、メディアでも啓発記事がポツポツと出ている状況だった。震災対策はネット上にも指南サイトなどが多数あり、家族構成・地域等によっても重点を置くべきポイントは異なるが、一つの参考として御笑覧を。なお、避難経路などは家族全員確認しているが、今回はハード面中心の対策について書くこととし、割愛した。

※本記事については余裕のある時に適宜、ソースを書き足していく予定。ソースの無い記述については各位で検索してください。

我が家の場合、震災前から多少の備えはしており、震災後に物流が回復してから、相当に強化した。今回はそれから2年経過しての再強化となる。

従って、これまで準備してきた対策から、列挙してみよう。

【震災前】
○ヘルメットx2
○乾パンx1箱(10食分程度)
○20Lポリ容器x1:生活用水用。飲用ではないので雑菌対策はせず年1度入れ替え。
 ※水については他に洗濯機などは勿論活用。
○突っ張り棒x2本:寝室兼書斎の本棚に転倒防止用に設置。
○ガラス飛散防止シール:寝室兼書斎に
○古新聞・古雑誌:転倒防止のため一部の家具の下に敷く。

我が家は比較的本の数が平均的な家庭より多い。家族全員の分を合わせると2000~3000冊程度はあると思われる。だが、上記を見れば分かるように、地震対策は極めておざなりだった。まずはこの点について意識を変える必要に迫られた。

事前に実施しようと思えば自分で措置出来る対策ばかりので他人に転嫁するのは気が引けるが、私以外の家族はほぼ無関心だった。我が家は関東地方にあるが、甚だしい時には家族は「地震など来ない」と嘯く始末。勿論これは「面倒くさい」を言い換えたものに過ぎない。別の時には「その時が来たら運命」などとも言っていた。しかし、震災直後は生存欲求に満ち溢れた言動が多かった。

防災対策本や関連サイトでは、アドバイスはあるものの、家庭での対策に当っての最初の障害が意識の鈍さにある点はしばしばスルーされている。しかし、2011年8月の「震災対策に関する調査」でもQ3やQ6の回答を見ると震災前から何も対策をしていない人が3割おり、対策をしない理由として「何をすればよいか分からない」「面倒」「お金がかかる」といった理由が大きな割合を占めている。

震災後、私が強く主張したこともあり、上記のような言い分は我が家からは消え去った。そして、2011年の春から夏にかけて下記の措置を追加した。

【2011年の強化後】
○ヘルメット:数量見直し。人数分追加購入
○マジックバルブx2:電球用口金に装着可能なLED照明。
○AM/FMラジオx1:久しく携帯用のものが無かったので購入
○乾電池x10:単3他。10本は常時最低量と規定。

○乾パン:廃棄に合わせ数量見直し。1週間分を目標として逐次購入し約5日分程度
○20Lポリ容器x2、10Lポリ容器x1、5Lポリ容器x1数量見直し。スペースの問題もあるが、左記のように増強。
○2Lペットボトル水:飲用として3日分確保。ただし保存水ではないので賞味は1年。日光を避け保存。
○簡易トイレx5:断水対策に配備
○軍手x10:各種応急作業用にDIY店で一束。

○突っ張り棒:数量見直し。10本以上追加し、食器棚、冷蔵庫、本棚等に配置
○転倒防止チェーン:突っ張り棒が不向きの箪笥などに措置
○家具転倒防止安定板:一部既設タンス、食器棚の下に古雑誌に替えて設置
○耐震ゲルマット:棚上の電化製品対策として措置
○各種耐震金具:各種突っ張り棒等と併用し設置
○本棚用ストッパー:120cm以上の高さの棚の内危険度の高い50%に設置
 ※天板の上に荷物を載せている本棚には、天板上にも設置
○ガラス飛散防止シール:ガラス使用家具の90%、窓ガラスの50%に措置。
○エアゾール式簡易消化スプレーx1:消火器と平行配備し火災対策を複郭化。安価だが保管年限は2年程度。
○消火器x1:ミヤタのキッチンアイ。油火災に強く片付けの上では利点がある

この措置で計10万円程度はかかったが、次のような認識から、躊躇無く資金を投じた。

・地震は必ず来る「来る」「来ない」というレベルで言えば来るに決まってるとしておくのが安全側且つコスト面でも対応可能のため、想定外にはしない。
・救援はすぐに来ない:東日本大震災では関東の物理的被害は極一部に留まったが、物流は予想以上に混乱した。従来は3日分の準備が喧伝されていたが、最近は自治体などでももっと長い期間を推奨しているところもある。全ての項目で達成するのは難しい面もあるが、備蓄物資は3日ではなくもっと長期間を目安にする。
・他山の石:原発事故が良い例だが、不備を指摘し「想定外」を批判する世論が強まった。確かに想定外だったが、個人生活レベルの影響については、批判する側にも跳ね返る話。原発と一般家庭では想定すべきハードルも内容も異なるが、原発の失敗から一般家庭が学べることとして、「甘い想定によるしっぺ返し」ということは確実にある。
・忘れても良いように対策:「地震は忘れた頃にやって来る」のは事実だが、忘れていても何とかなるように考慮するべきと考えた。このような観点から、例えば保管年限のあるものはそのサイクルが長い方が良い。

【2年経過して見えてきたこと】

それから2年経過し、防災の日の前後に啓発記事を見て、改めて防災対策を見直したのである。まず、定性的な問題点としては下記があるように思われた。

・飲用水の備蓄が少ない:防災シーズンが盛夏の後だったことから、1年の約3分の1を占める夏シーズン(概ね6-9月)に発災した場合、(飲用)水の消費量が多くなるだろう、と予想するようになった。夏期はとにかく水分を取る。
・断水への供えが甘い:我が家は井戸や清流のある環境ではないので、水道依存度が高い。地元の役所などで調査した結果、断水のリスクは無視できないことも判明した。ただし、新鮮な水を多く保管出来るウォーターサーバーやエコキュートは導入コストもかかるため、別の方策を手当てする必要がある。例えば水を節約出来る対策。また、風呂・トイレは衛生にも関わる。
・栄養バランス:日常の買い置きが切れたら非常食に移行する訳だが、乾パンだけではバランスが偏る。
・停電への備えが甘い:配電網の損傷による停電や計画停電を考えた場合、数日間の電力を賄う必要があるが、マジックバルブと電池の増備だけでは不十分だった。ただし、携帯発電機の導入はコストが大きい割に、スペースを取る、火災リスクを高める等デメリットが大きいので別の方策を検討した。

上記の結果、追加した物資は下記である。

【2013年の強化後】
○ヘルメット:見直し無し。
○マジックバルブx2:見直し無し。
○LED懐中電灯x1:電池式。防水、高光量(100ルーメン以上の品から選定)。
○小型LED懐中電灯x1:外出時被災に備え鞄に収まる品を購入。
○AM/FMラジオx1:見直し無し。
○携帯電話充電器:乾電池式。通信連絡維持のため購入。機種変に合わせて必要あれば買い直しをしなければならない。
○乾電池x12単3他。12本は常時最低量と規定。
○乾パン:見直し無し。
○総合ビタミン剤:乾パンのみでは栄養が偏るため
○20Lポリ容器x6、10Lポリ容器x2、5Lポリ容器x1:数量見直し。スペースの問題もあるが、各部屋を片付けることで左記のように増強。
○2Lペットボトル水:見直し無し。
○ペットボトル保存水:5-6年保存可能なもの。計10L超。
○簡易トイレx25:数量見直し。断水対策に配備。水道の復旧には時間を要するため1パック(20回分)追加。ただし、トイレ回数を考慮するとこれでも十分ではない。
○水の要らないシャンプー:断水時の衛生対策に購入。資生堂の品が保存年限3年で可燃性ガスも使用していないので選定。
○清拭タオルx1パック:断水時の衛生対策に購入。保存年限5年の品を選定。
○ウェットティッシュx1:断水時の衛生対策に購入。

○軍手x10:見直し無し。
○突っ張り棒:見直し無し。
○転倒防止チェーン:見直し無し。
○家具転倒防止安定板:見直し無し。
○耐震ゲルマット:見直し無し。
○各種耐震金具:見直し無し。
○本棚用ストッパー:見直し無し。
○ガラス飛散防止シール:見直し無し。
○養生テープx2:ガラス・家屋損傷時の応急対策用に備蓄。
○エアゾール式簡易消化スプレーx1:見直し無し。
○消火器x1:ミヤタのキッチンアイ。見直し無し。
○業務用消火器x1:近隣に飲食店があるため、貰い火予防策としてFM1200Xを購入。緊急時の心理対策も考慮し把持力の不要な蓄圧式、10年メンテナンス不要。
○ホースx1:延長10m。庭用蛇口を風呂に常設し耐圧性を確保。近隣火災予防用。
○ロープx1:多目的用に配備。

他にも必要な物を検討次第、措置していく予定。ただし、実は、最も威力のある防災対策は、防災対策本の購入によりノウハウを深化させたことではないかとも思っている。

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