不十分な東海第二原発の天井耐震化-単独立地ではより重要となる-
今回も東海第二を題材として、再稼働へ突き進む原発の技術的な問題提起を行う。
私は本業の傍ら余暇時間でブログ記事を書いているので、まずは死命を制するような決定的な問題を書いてきた。とは言え、よく指摘される、基準地震動や避難計画の問題は他の専門家が再三取り上げているので、お任せしている。よく、全ての問題を自分で書かないと気が済まない人がいるが、私なら良書をお勧めして手仕舞いにする。元東電で原発推進派の大石恵史氏は「全てが重要だということは、重要なことが一つも無いということ」と自著の帯に書いていたが、個人の行動に当て嵌めるなら頷ける。
さて、今回のテーマは、システム天井(以下、単に天井と称す)の耐震化である。これまで取り上げてきた問題に比べると若干優先度は落ちるが、東海第二が抱えている問題の一つだ。原電の対応は不十分であり、是正の余地がある。
結論だけ示すと、広範な建築物が天井の耐震改修を要するので、それを再稼働のコストに見込むべきということだ。
【1】はじめに
天井の耐震化が重要な理由は、後述する原電の耐震計算書では、機器の操作に影響を与えないという趣旨(具体的には落下物で人が死傷しない、操作ハンドルに破片が噛みこんだり、スイッチ、モニタ類を破壊したりしないことなど)で説明されているが、より上位の問題として、単独立地プラントという事情があるから、である。
つまり事故が起きても、隣の原子炉の手すきを集めて支援することは出来ない。だから、自プラントの要員保護は余計に大事ということだ。
福島事故では1号機爆発時に中央制御室の照明ルーバーが多数脱落した。
これは、オフィスなどの天井はコンクリート床が剥き出し(床スラブと言う)ではなく、間を空けてシステム天井が設備されているために起こったことである(ルーバーもそこに嵌め込まれていたもの)。間の空間には一般に空調設備、照明設備が整然と吊りボルトでぶら下げられ、システム天井の標準化されたパネルは意匠性を考えてデザインされており、そこで働く人達の心理的な負担を和らげる目的がある。一方で、工場の作業場などは、室内でも床スラブが剥き出しである場合が多い。
「福島1号機 雑然とした中央制御室の理由」『Response』2011年3月24日より
部材としてはルーバーは軽量だが、「だから良いのだ」とは言えない。これから述べていくように、他のプラントの事例を見ればとてもそんなことは言えなくなるだろうし、一般の建物ではもっと重い部材が落下した事例は数多い。原発内にも一般の建物と変わらない水準の建物はあるから、解決が必要だ。
なお、建築基準法施行令第39条には「風圧並びに地震その他の震動及び衝撃によって脱落しないようにしなければならない」という規定が元々ある。以前は緩く運用されてきたが、311後は事情が変わりつつある。今後は文言に沿って厳格な運用を心掛けていくべきだろう。
【2】単独立地プラントの人的特徴
集中立地の場合、同時多発的な原子炉災害のリスクがあり、福島事故で現実になったが、単独立地プラントは集中立地とは別のリスクを抱える。
天井の話に入る前に、まずは、プラントには個性があるという話を今一度取り上げよう。この記事からブログを読み始める人もたくさんいるだろうから。
原電の有する原子炉は全て炉形が異なる。ここで言う炉形とは、原理的な相違(GCR,BWR,PWR)だけではなく、例えばBWRの中でも細部で相違があるということ。エンジニア達に技術的な広がりを与えるには良い環境だが、一つの形を隅々まで理解しているスペシャリスト型人材を大量にプールするには不向きな環境だ。同じことは一部の地方電力にも言える。
原発の中央制御室は24時間3交代制である。休暇や再訓練の都合を考えて、90年代位までは5班体制がよくある風景だったが、近年では6班編成することが多い様だ。
また、原発の設備が一般論の理解だけでは使いこなせないことは、運転訓練にも現れている。例えば、東電、東芝、日立が大熊町に設けたBTC(BWR運転訓練センター)の設備がそれだ。初期に設置されたシミュレータは、過渡現象時に計器がノイズでぶれる様子も再現していた。
シミュレータは(中略)模擬中央制御盤とディジタル計算機とを中心に構成されている.模擬中央制御盤は原子炉,タービン,発電機の制御および監視を行うベンチボード形制御盤である.外形寸法,塗色,計器および器具の形状,配置に至るまで,モデル発電所の中央制御盤と同一であり,訓練効果を最大限に発揮できる.外観は福島第一原子力発電所3号機を模擬しているが,情報はすべてディジタル計算機との間で授受される.指示計,記録計などへの入力は,計算機アナログ出力電圧(DC0~±10V)で与えるため,計器類は直流計器を使用し,目盛についてのみ実際の発電所 と同様なものとしている.さらに,ホトセルを利用したノイズ発生器により,計器指示にノイズをのせて実感を出している.
塩官廣海「原子力発電所運転訓練用シミュレータ」『計測と制御』1977年7月P37
電気書院から1980年代に出版されていた『実務の計装技術』という参考書で昔の一般産業プラントの計装を勉強したことがある。読み返してみると、ノイズ問題はあり、解決することを前提とした記述となっている。しかし、どうしても消せないものについては、シミュレータに反映することで、運転員に教えていく形で対処していたことを塩官氏の記事は示している。
このような条件の元に、地震などで事故が起きたらどうなるか。
同じ炉形を有する電力会社から技術者を急派しても、元々いる習熟した技術者の完全な代役は務まらない(可能性が高い)し、細部まで的確な助言も難しいということだ。
福島事故後は電力会社相互の交流も深まったとPRされているが、プラント個別のノイズの癖(以前炉心流量で論じたようなノイズに対する対処法の相違もある)や部屋割り、機器配置を把握するには一時の交流では無理で、例えば半年など長期に渡る人の入れ替えを要する(ある事業者OBと話をしたところ、こうした細部での相違のためトラブル対策の水平展開で苦慮し、電力の運転や保修担当者であっても表面的な関わりになるとの厳しい見解を頂いた)。
特に地震の場合、発災1時間位で問題となるのが、運転員。上記の事情から、折角室内にいるのに落下物で怪我でもされてはたまらないのである。
また、東海第二の制御盤は設計が古く、第一世代と呼ばれるタイプに属し、一部は日立大みか工場で製作されたものである。東海第二の炉形はBWR-5で柏崎刈羽1~5号機などと同じだが、制御盤について一言で言うと、完全な別物。以前は東海第二と兄弟プラントの関係にある福島第一6号機や、ほぼ同じと言える福島第二1号機などがあったが、これらの主契約者は東海第二と違うので、制御盤の製造元が同じという確証はない。またこれら2基は廃炉となっており、全国的にも、第一世代制御盤で再稼働審査に臨んでいるプラントは東海第二と島根2号機位である。
つまり、現在残っている原子炉制御盤の中では、東海第二のものは少数派なのである。
『総合システム工場をめざして 大みか工場20年のあゆみ』日立製作所 1989年P60
※現在では中央の円形上のコア表示はCRTモニタに置き換えされるなど、細部で改造されている。
世界を見渡せばアメリカに同世代のものはあるが、日本メーカーの輸出品ではないし、それぞれ独自の小改造を繰り返してもいる。余り知られていないことだが、習熟した運転員は制御盤の裏面配線も深く理解することが求められる。例えば『エネルギーレビュー』1990年12月号には東電で裏盤の配置に改善要望があったことが記されているし、『火力原子力発電』1998年9月号ではそうした日頃の研鑽が緊急時に役立った例が述べられている。
仮に海外の類似プラントと技術交流を行っても、その種の盤設計、回路設計の詳細はブラックボックスとなる部分が出てくるだろう。一般に海外企業は装置の詳細情報を日本側に開示しないことがよくある。
【3】発災時のワークロード
また、ABWR開発時に行われた既存BWRのワークロード調査を見ると、発災時の運転員への負荷が高いことが明白である。
ABWR型中央制御盤の自動化範囲は,第2世代型中央制御盤における運転員のワークロード分析に基づいて決定した。(中略)この分析の結果,以下のことがわかった。
- スクラム直後にワークロードのピークが発生する。これは,スクラム直後は安全確保の観点からの緊急操作は不要であるが,実際には給水ポンプの切替えのようにプラントをより安全な状態に導くためにいくつかの定型操作が行われているためである。
- プラント起動停止時は,タービン・発電機の起動,再循環系での出力上昇,給水ポンプ切替え等,第2世代で既に自動化が導入されてきているが制御棒操作に運転員が長時間専従している。
岩城克彦,大塚士郎,三宅雅夫「ABWR型中央制御盤の開発と完成」『日本原子力学会誌』1997年8月P6
なお、発災がサイト至近の地震動である場合、揺れが収まるまで手動操作は不可能となる。このこともあって、地震動によるスクラムは自動化されている。それを実証した中部電力の研究を示す。
1 まえがき
(前略)プラントの安全性に影響を及ぼすような地震は、その発生が極めてまれで、ほとんどの人が未体験であるため、大地震が運転員のプラント運転操作性におよぼす影響の評価は難しいのが現状である。本研究では、このような背景のもとに、加振台に運転員を搭乗させ、模擬地震体験を通して制御盤の警報・計器指示値の確認及びスイッチの操作について試験し、地震時の対応性について検討した。
2 研究結果
2-1 地震時のプラント運転員の対応性
(1)試験方法(略)
(2)試験結果(略)
(3)結論
加振台に人を搭乗させ、模擬制御盤とパソコンによる確認及び操作性の試験を行った結果、以下の知見が得られた。
① 地震動が大きくなるに伴い、警報の確認、計器指示値の読取り及びスイッチの操作が徐々に困難となるが、地震による自動停止程度の加速度レベルまでは、顕著な影響は見られず、運転員の対応能力に期待できることがわかった。
② 設計用限界地震に対しては、運転員のアンケートでも操作は困難としており、歩行も容易でないため、運転員の対応能力に期待することは適当でなく、地震により自動停止することは妥当である。2-2 地震時の椅子の挙動試験(略)
「地震時のプラント運転員の対応性に関する研究」『中部電力株式会社研究資料』1995年11月
同論文を読むと分かるが、設計用限界地震としては凡そ水平800Gal,垂直400Gal程度のものが選ばれている。当時としてはかなり大きな値を採っており、内容的にも人の限界を試すものなので、現在でも参考になるだろう。
つまり、地震の場合スクラムは自動で行われても、『原子力学会誌』の岩城論文が言うような「プラントをより安全な状態に置くための定形操作」は、揺れが収まるまで出来ない。他の原因によるスクラムより、揺れが収まって直後の人的負荷は高いだろう。
このように中央制御室が向き合うべき脅威は、少し古い資料を漁ってもかなり見えるものなのだ。
なお、福島事故後、関係者に取材して当時を描いたノンフィクションが何冊か出ているが、「運転」と言う観点をじっくり意識して書いたものはない。これはむしろ幸運なことで、翼賛調の本からさえ、自然体の描写が採取できることを意味する。
【4】結束バンドでお茶を濁す日本原電
翻って東海第二はどうか。
日本原電は中央制御室の安全対策を説明した資料でこの問題に触れている。
『東海第二発電所 事故対応基盤について』(中央制御室への対応)日本原子力発電2018年11月19日
※茨城県原子力安全対策委員会東海第二発電所安全性検討ワーキングチーム(第11回)
福島事故の教訓としてルーバーを止めているレースウェイ(照明器具を留めている金属製の枠)等の部材からルーバーが脱落しないように結束バンドをしたのだという。
「V-2-11-2-11 中央制御室天井照明の耐震性についての計算書」『東海第二発電所 工事計画審査資料』2018年8月17日P2
結束バンド、調べると分かるが、ナイロン製のタイラップ(商標)ではないかと不安を感じる。ナイロン製は耐熱仕様でも経年劣化は避けられない。発熱体である照明や空調の近くで結束しているのであれば尚更だ。金属製なら別だが。
天井耐震化がおざなりとなったのは、福島事故への対応に囚われ過ぎてしまったためだろう。その一方で、天井が崩落したり、建屋内外で汚染が発生した際の応急対策は充実しており、素人目には文句の付けようがない。必要な物品が揃っている割にコストも建屋の大改造に比べれば大したことがないのは、ある意味魅力的だ。新たに配備した懐中電灯やバッテリーなどは目を引くので、世界最高水準と言いたくなる気持ちは分かる。
だが、肝心の最初の地震動には甘い。深層防護思想の基礎をなす前段否定論に従って後段の対策を充実させるのは大切だが、前段の対策も厚く取る必要がある。
何故ならば、基準地震動は建設時の3倍半を越え1000Galに達しているからである。そのような地震動を受けた際に天井部材を支える吊りボルトが折損・脱落しない保証はない。以前の記事で述べたようにあと施工アンカーの信頼が無いからである。また、次に紹介するように、女川の事例があるから計算では信用できない。
【5】女川では地震だけで化粧板や蛍光灯が落下
先に挙げたように原電は「V-2-11-2-11 中央制御室天井照明の耐震性についての計算書」を示している。だが、毎度お馴染み白抜き計算書なので、計算過程に信用を置けない。また、ボルトは新品評価と思われる(劣化に関する記述が無い)。
一方で、現在の基準地震動より遥かに小さな311の地震動で、女川の中央制御室では蛍光灯まで落下している。
3月11日午後2時46分,激しい揺れ。1号機から3号機まで,全て設計通りに原子炉が自動停止。揺れが続く中,関係者が事務棟内の緊急対策室に集合しました。
佐久間:2号機は起動したばかりでもあり,3分後には原子炉の水温が100度未満の冷温停止となりましたが,1号機と3号機の冷温停止に向けた運転操作が進められていきました。
中央制御室の天井からは化粧板や蛍光灯が落ちて床に散乱し,家族の安否もわからない。私たち運転員も平常心でいることはできませんでした。
そのような状況でしたが,非常用の電源は確保され,地震に対する訓練も念入りに行ってきていましたので,「確実に冷温停止までもっていける」と確信していました。
この記述には書かれていないが、レースウェイや吊りボルトの損傷を疑わせるに十分である。
【6】中央制御室天井を改修していた北陸電力
東北電力の場合は被災例だったが、他の事業者との比較でも原電の不適切な対応は明瞭となる。
一般のオフィス・公共施設における天井部材の脱落は阪神大震災から10年程の間に起きた強震動で何度も見られたため、2000年代には補強工事の検証論文や耐震対策を謳ったシステム天井のPRが強まっていた。その中で、桐井製作所が販売していた「耐震天井」というシリーズがある。先の原電資料の断面図には無い筋交い、クリップなどが目を引く。
「天井の耐震対策>KIRII耐震対策とは?」桐井製作所HP
同社はこの種の工事で先行していたのか、2013年までの適用事例を大量に掲載している。
「天井の耐震対策>導入事例 公共施設」桐井製作所HP
この耐震天井、納入実績を見ると北陸電力は2008年に志賀原発の中央制御室に導入(改修)していた。理由は分からないが、志賀原発は異なる炉形を1基ずつ有するプラント(BWR-5とABWR)で、中央制御室の世代も異なり、現場ノウハウに互換性が無い。そのため運転員保護の観点から実施したものと考える。
【7】一般電力施設への適用、震災復旧での天井改修も
この他に目を引くのは、東電の部門を問わない大規模導入(改修)。これは高く評価できる。東日本大震災で失点の山だった東電にとって、隠れた成功というべきだろう。柏崎刈羽の事務棟修繕工事(2007年、震災復旧工事か)などにも適用されている。
3原発の免振重要棟にも適用されている。相次ぐ余震と水素爆発で天井パネルの脱落が報告されていないのは、距離があったことの他、そもそも落ちないような工夫があったからだろう。
女川では新しい事務本館に採用していた。以下のリリースを参照すればわかるが、完成は311後だが、着工は2009年であり、増加傾向の所員全般を耐震保護する意図があったのである。
女川原子力発電所では、昭和59年に1号機が運転開始して以降、平成7年の2号機増設、平成14年の3号機増設、さらには平成18年に実施した原子力品質保証体制総点検を踏まえた再発防止対策の一つである「人的資源の適正配分」の観点から、発電所員の計画的な増員を図っているところです。事務本館については、これまで増築などにより適宜対応しておりましたが、今後の発電所員の増員計画を考慮すると、人員に見合った執務スペースの確保が必要となっております。
一方、発電所では、大規模地震発生などの有事の際に「緊急対策室」を拠点として、発電所設備の状況把握や復旧作業の指示、国・自治体への通報連絡など緊急時の対応にあたることになっております。この「緊急対策室」については、平成19年7月に発生した新潟県中越沖地震を教訓として、地震発生時に確実にその機能を確保するため、国から建築基準法の1.5倍の地震力で設計するよう求められています。
こうしたことから「新事務本館」を建設することとし、設計にあたっては、今後想定される宮城県沖地震も踏まえ、事務本館全体としての安全性向上を図るため、耐震性に加えて地震後の執務環境確保に優れる「免震構造」を採用いたします。
「女川原子力発電所「新事務本館」の建設について ~「免震構造」の採用により、耐震性の向上を図り、「緊急対策室」機能を確保~」東北電力HP 2009年10月29日
事務新館は2011年10月末に竣工した(「女川原子力発電所「事務新館」の完成について~「免震構造」の採用により、耐震性の向上を図り、「緊急対策室」機能を確保~」東北電力HP 2011年10月31日)。
リリースにはないが、在来の事務本館も大量のブレースを纏って耐震補強した状態で311を迎え、現場をよく支えた。
また、桐井製作所の耐震天井は火力発電所等の復旧工事でも導入されている。このような記録は復旧工事誌の類でも残りにくいのでとても参考となる。
【8】日本原電は天井の耐震化を真剣に検討せよ
原子力業界内で民間規格を定めた結果、却って審査などに時間がかかり、遅延要因となることがある。だが、耐震天井は実績を有する以上、そうはならないだろう。それに対し、補強金具すら使わず只の結束バンドでは、如何にも甘いということである。
なお、天井の耐震化に当たっては注意点が一つある。一般の建築物への法規制を所管する国土交通省は、2013年に告示を出した(平成25年告示第771号)。桐井製作所の「耐震天井」を始め、それまで各社が示していた商材は告示対応をしていないので、ラインナップのリニューアルが図られ、既存天井の耐震診断ビジネスも(ゼネコン系などを含め)盛況だ。
例えば、PWRの原子炉建屋受注実績で最大手(恐らく付帯事務施設も受注実績多数)の大成建設は告示771号に合わせT-Ceiling Gridを開発した。現在のあと施工アンカーで吊りボルトを増設する工法だ。
「既存天井の落下防止技術「T-Ceiling Grid」を開発」大成建設HP 2013年10月3日
東海第二の原子炉建屋を請け負った清水建設も、論文を発表している(「部分補強された在来工法天井の動的加振実験とシミュレーション解析」『日本建築学会構造系論文集』707号 2015年1月)。
告示771号の対象範囲は天井高さ6m以上などとなっており、高さ3m程度の中央制御室は対象外と思われる。だが、有用な部分は告示に準拠する価値はあるだろう。
原電は天井の耐震化を、再稼働のためのコストに入れるべきである。また、茨城県など立地自治体や規制庁も改修事例に準拠して、未改修のプラントには耐震計算での「証明」(告示771号でもこの方法は「計算ルート」として認められているが)ではなく、予防的改修を要求する方が賢明だ。
また、天井耐震化が求められる範囲は中央制御室に限らない。事務本館、協力企業棟、体育館、資機材倉庫で天井を有するものなどにも順次適用の必要がある。福島事故では、これらの建物も地震動で天井落下の被害を受け、使用に耐えなかった部屋(建物)が多数ある。5年前に外部電源の問題を論じた際にも書いたが、一般の建築物と同じ耐震Cクラスであっても、新旧の度合いや改修が入っているかどうかでかなり差が生じる。
311前と比べ、大量の可搬式設備を増強したことにより、東海第二も再稼働を前提とすると所員の増加を計算に入れなければならないだろう。また、福島第二と同じような人海戦術に頼るケースでは、待機・休憩場所が耐震化された緊急時対策所だけで収まるとは到底思われない。東北電力が事務本館工事のリリース副題に「緊急対策室」を掲げているように、事務本館自体も使用に耐えるものでなければならない。
なお、東海第二の場合サイトが東京に近いので、本社も同じ対策が必要だが、2018年に新築されたビルに移転しているので、準拠する法令・省令・告示は全て最新のものである。
【9】PWR陣営も無関係ではない
当ブログは特定の企業の天井工法をPRすることが目的ではない。告示に適合していれば何処でも良いのは当然である。だが、ここまで述べてきた問題は他社にとっても反映すべき点を多く含む。当ブログは市民運動家の他電力各社の社員による閲覧も多い。一度再稼働に入ってしまったPWRプラントも多数あり、また、既に耐震化を実施済みの場合もあるかも知れないが、是非参考にしてほしい。
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