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2016年11月28日 (月)

【30年前から】東電老朽OFケーブル火災で勝手な広報を行ったへぼ担当氏【ほったらかし?】

東電新座地中送電線火災と老朽OFケーブルQ&A集」で、火災を起こしたケーブルが防災シート(防火シート)未施工であったことを取り上げた。高度成長期以降に大量建設された社会資本の老朽化は、1990年代頃から予告されてきた。一般向けにもNHKスペシャル「テクノパワー」で取り上げるなど、先行して問題提起を行ってきた人達がいる。

その老朽化が現実の事態となった2010年代に我々は生きている。従ってこの点を中心に再度、問題の深掘りを行うことで、検証報道の質を高め、社外・専門外の我々が事故を回避するにはどのような視点を養って行けばよいか、一つのモデルケースになれば良いと考える。

なお、東京電力パワーグリッドは11月4日、「第2回「新座洞道火災事故検証委員会」開催について」、続いて11月10日にもプレスリリースを公表している。何時も通り、立派なフォーマットに美しい写真とグラフ。大抵の人はここで追及を辞めてしまう。だが、それは問題だ。

今回は、下記の疑問について更に調査を加えたので、大幅に加筆して再掲する。

【2021年までに防火シートを巻く予定だったので無為無策では無い?】

Togetter_com_li_1039761_comment OFケーブル他備忘-Togetter 当該ツイート(その1その2)。

彼のことを取り上げるのは、大学院で原子力工学を学んだ後、原発に勤務していることを公言、自らの技術力を過信し、ネット炎上を糧にする右翼系軍事マニア達と結託して日々原発事故被害者への中傷をバックアップしているからである。そして、上記の東電対応への評価だが、私に言わせれば極めて疑わしい。防災シートを地中送電施設の要注意個所に巻く対策は2000年の、電気系資格受験雑誌に既に載っていたから。

(2)難燃性・不燃性電力ケーブルの採用
CVケーブルの採用、ケーブルシース・介在物に難燃性を付加、ピットへの砂の充填、
難燃材料(防火シート)のケーブルへの巻き付け、塗布、OFケーブルを用いる場合は密閉型防災トラフ内への収納などを実施する。

「地下式変電所の変圧器,遮断器,開閉器等の電気工作物に対する火災対策に関するキーポイント」『電気計算』2000年8月P32

なお、第一報写真では一般部が写っていたが、どうも事故が発生したのは防災トラフに覆われた一般部ではなく、新洞26というナンバリングをされた接続部のようだ。OFケーブルでも接続部は一般部と構造が異なる。

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別紙2「電気関係事故報告」の概要」東京電力パワーグリッド 2016年11月10日

送電は交流3相で行うため、OFケーブルは一般部では3本1セットで俵積みし、密閉型防災トラフで覆われている(当ブログQ&A参照)。公開された写真を見ると一般部では密閉型防災トラフを覆うように3本まとめて防災シート一巻、接続部では1相、つまりケーブル1本につき一巻の形で行われているようだ。

ただ、考えるべきはメンテナンス費の不当な削減で2021年まで伸びていたのではないか、という疑問である。

そのため、この問題を10月21日に当ブログで取り上げてからも、資料調査は続けた。目的の一つは「地中送電線に防災シートを施工することが何時から一般化したのか?」、を明らかにするためである。

その結果、次のことが分かった。

まず、東京電力パワーグリッドの公開資料によれば、防災シート対策は2002年より着手したものだという(電力用防災シートについては古河テクノマテリアルのカタログ「電線・ケーブル線路における延焼防止対策にプロテコシリーズ」を参照してほしい)。

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第2回「新座洞道火災事故検証委員会」開催について」東京電力パワーグリッド2016年11月4日

計画の完了は2021年だったから、20年の長期プランということになる。経年30年超過の設備を山のように抱える状況で、この設備投資計画は無いだろう。せめて、10ヶ年計画程度に短縮出来なかったのだろうか。

もっとも、発表資料に書かれていないだけで、元々は2016年より前に終わっている筈の計画が、何らかの事情で延期されたのかも知れない。ただ前回記事でも触れたように、設備の老朽化を放置せざるを得ない原因として全電力に共通するのは、原発事故では無く、失われた20年と呼ばれる長期不況と電力自由化なのだが。

さて、具体的な設備の問題を考えるにあたって、『東京電力北東京電力所三十年史』という資料を入手した。火災を起こした設備を含め、東電の送配電設備を扱っていた部署の記念誌である。ここから防災シートに関係する事項を拾ってみよう。

通信用ケーブルは1980年代前半までに、防災シートを覆う工事が施工済みであった。

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『東京電力北東京電力所三十年史』P226 1989年

OFケーブルは送電用なのでその放熱が問題となる。東京電力パワーグリッドの公開資料を見るとトラフごと防災シートで覆っているように見えるが、大気並に熱放散性の良い素材を開発するのに時間を要した可能性は考えられる。

なお、城北線、北武蔵野線を所管していた東京電力北東京電力所(1989年各支店に移管)によると、1978年にOFケーブルの気中布設部への防災テープ巻きについて、1985年にケーブルが集中布設されている個所への防災テープ等の巻き付ける旨、対応策を決定している。

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『東京電力北東京電力所三十年史』P187 1989年

1985年の方針については、東電が電気学会の研究会にその理由を一段詳しく報告している。

4.東京電力における電線路の難燃防火対策の現状

 ここでは、以上のような電線路に対する難燃防火対策の一般動向にあって、東京電力における現状を述べることにする。

4.1送配電線路における対策
 昭和50年代前半の対策として(中略)地中送電設備については、154kV以上のすべてと66kVで系統面から地絡電流の大きい場合には、既設および新設のOFケーブルおよびCVケーブルの洞道部、人孔内オフセット部、シャフト部ならびに気中立ち上がり部に防災テープを採用することとしていた。
 昭和59年11月の世田谷区内で発生した洞道内のケーブル火災の発生を契機に、消防法の見直しが行われることになるが、社内的にも洞道防災対策検討委員会を組織し、対策の強化について検討が進められた。それまでの設備でも、電力ケーブルの被覆材は既に難燃性のものを使用し、さらにケーブル事故電流によりケーブルが出火しないような対策を実施しており、防災レベルは比較的高いものと言えた。しかし、

  • 変電所の引出し部等ケーブルの集中箇所で万一火災が発生した場合は極めて大きな影響がでる
  • 当社ケーブルが他企業設備と同一空間に布設されている場所では、他企業設備からの類焼と他企業設備への加害の危険性がある。
  • 洞道換気口付近のケーブルは、第三者からの被害を受ける危険性がある。
  • 共同溝と当社洞道との連系部は、隔壁がないために出入りが可能であり、第三者からの被害を相互に受ける危険性がある

ことから、従来の対策に加えて、万一の失火による火災の拡大防止、第三者による被害の防止など主に人為的な火災による被害を防止するための対策がさらに必要であるとの結論を得、対策の見直し強化が実施されることになった。
具体的な見直し強化策から本稿に関する部分を抜粋すると、以下のとおりである。

  • 重要箇所の変電所引出洞道、ケーブル処理室、オープンピット、配電用地下孔等ケーブルが集中する個所については、敷設されている全てのケーブルに防災テープ等の難燃材の巻付け又は消火装置の設置を行なう。
  • 洞道内多条垂直布設部分については、全てのケーブルに防災テープ等難燃材の巻き付けを行なう。
  • 他企業設備と同一空間にケーブルが布設されている場所については、耐火壁の設置又はケーブルに防災テープ等の難燃材の巻き付けを行なう。
  • 洞道換気口付近の全てのケーブルに防災テープ等の難燃材の巻き付けを行なう。
  • 洞道内に布設されているケーブルの給油管に防災テープ等難燃材の巻き付けを行なう。


また、この時の対策として、地中線部門が洞道内に新設するケーブルは、密閉型防災トラフを使用するものを除き、防災シースケーブル(酸素指数35程度)を使用することとした(後略)

藤本孝(東京電力)「電力設備(主として電線路)の難燃防火対策及び動向」『電気学会研究会資料 電線・ケーブル研究会』1991年3月P5-6

この説明を今読見直すと、次のことが分かる。

  • 1985年当時は、他社の設備に類焼しないことを優先し、自社設備しかない新洞26は対象外だったように読み取れる。しかし、ケーブルの集中する処理室に新洞26は該当すると考えられる。
  • 消火装置を設置することとなっているが、実際の記録を読むと消防の到着まで消火装置は作動していない(設備もされていない?)
  • 密閉型防災トラフを採用した城北線一般部は1985年の方針に照らすと防災テープ・シートの対象外であり、2002年以降の設備投資計画で対象となったと考えられる。

下記に東京電力パワーグリッドが発表した時系列を示す。

 

Tepcopg_161110j0102_6

別紙2「電気関係事故報告」の概要」東京電力パワーグリッド 2016年11月10日

電気技術者が法規制(省令)として思い浮かべるのものに「電気設備の技術基準の解釈」というものがある。最新の版と2006年の版でチェックしてみた所、120条に防火措置の方法が規定されており、「地中電線に耐燃措置を施す」「自動消火設備を施設する」のいずれかの方法によれば良いとなっていた。

Dengikaishaku2016120jou3

第120条の3『電気設備の技術基準の解釈

恐らく、この規定が現在の形になったのが1985年なのではないだろうか。

だが、275kVの送電線まで一律にこの規定で済ますことには疑問がある。より油量の多いPOFケーブルで事故が起きていたら爆導索のようになり、地上への延焼なども深刻化していたのではないだろうか。防災シートばかりでなく、消火装置が30年前に設置の必要性を謳っておきながら、今回記録に無いというのは本当に驚きだった。勿論、事故前からウェブ上にもメーカーの資料は存在している(「自動消火装置システム」株式会社エステック。PDFは2014年に作成)。規制の緩さに驚いたのだ。

先ほど紹介した東京電力パワーグリッドが公表した対策には、自動消火設備の設置を2019年までに完了させるとあるので、恐らく新洞26には無かったのだろう。ただ、それが30年越しの宿題であることは事故後のリリースを見ているだけでは、絶対に分からない。これが、調べることの意味と言える。

さて、へぼ担当のツイートについて、「極めて疑わしい」と書いたが、上記を鑑みると完全な虚偽広報と言えるだろう。30年かかって完了しない防災シート計画など、何もやってないに等しい。そもそも、彼はこの事故に高い関心を示しながら、防災シートについてはわざわざ事故から12日も経過してから追記した。そして、柏崎刈羽を始めとする原発にOFケーブルが採用されてきたこと、そのリスクについて何も語っていない。また、彼がツイートしていたケーブル火災消火に関する蘊蓄も、城北・北武蔵野線に関しては虚偽である。身内弁護の垂れ流しは毎度のことだが、全く呆れてしまう。

【余談】検証委員会に委託先の東京電設サービスが出てこない

『東京電力北東京電力所三十年史』は1980年頃より、変電、地中送電設備共に子会社の東京電設サービス(1979年設立)への社外委託を進めたとしている。同時期に東電全体で進められていた子会社化による経営スリム化の一環であろう。この時点では設備の良否判定は東電社員が実施となっている。今回も東京電力パワーグリッドが検証委の取りまとめをしており、2000年代以降も事情は同様であろう。

Kitatokyodenryokujo30nensi_p154

『東京電力北東京電力所三十年史』P154,196-197 1989年

ところで、検証委員会名簿には東京電設サービスの技術者が一人もいない。同社が2015年に投稿した記事では同社による保守サービスの完結性と劣化診断技術を誇示し

今後もCVケーブルだけでなくOFケーブルも含めた電力ケーブルの異常診断技術の研究開発に努め、その成果で電力安定供給確保に貢献していきたいと考えている。

研究グループ紹介:東京電設サービス(株) ES本部 分析・診断リサーチセンター」『電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌)』Vol. 135 (2015) No. 1 P NL1_8

と述べていた。東京電力パワーグリッドというフィルターを通し、現場との距離感ができていないか、本当に有用な声(例えば、新しい診断ツールの導入提案を東電本体に潰された、など)が届かなくなっていないか心配である。

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