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2016年10月の4件の記事

2016年10月23日 (日)

【柏崎刈羽に】原発とOFケーブル火災リスク【大量敷設の実績】(追記あり)

前回記事「東電新座地中送電線火災と老朽OFケーブルQ&A集」より原子力発電所に関係するQ&Aを分離した。原発問題にてケーブル火災は以前から俎上に上がっているテーマだが、OFケーブルとその老朽化に関する議論は話題になってこなかったように思われる。しかし、今回の火災でそのリスクが顕在化した以上、今後は焦点を合わせる必要があるだろう。

なおOFケーブルに関する基本的なQ&Aは前回記事を参照されたい。当記事は新事実が分かり次第随時追加する。

【OFケーブルは大都市の他にどこで使われているの?】
周波数変換所や直流送電線、発電所で採用されている。新信濃の周波数変換所が竣工してしばらくは、電気新聞1982年1月1日7面下段の広告などに、「TMI事故対応で関電の原発を一時停止した時に電力融通で大活躍した」などと宣伝していた(リンク)。

しかし、直流送電線は北本連系のように海を渡る場所に使用されているので、防食の潜在リスクは内陸の設備より遥かに大きい。原発がスクラム等に陥った時、特に地方電力は会社間融通で脱調・停電(系統崩壊)回避を目指していると思われる。そういう観点からは北海道電力などには、今回の事故は有用な参考事例となる。

更に、瀬戸大橋のように橋梁に共架されている場合、他のインフラとの共用であるから、鉄道・自動車・電力のいずれかが重大事故を起こすと残りも不通となるリスクをはらんでいる。

発電所での使用については下記のQ&Aを参照。

【OFケーブルは原子力発電所でも使われているの?】
火力発電所および原子力発電所では主変圧器、起動変圧器に接続する動力ケーブルに使用されている。原子力発電所の場合、これらに加え予備変圧器が設置されている。これら変圧器と所内の開閉所間がOFケーブルとなっている。未更新の例が目に付くが、所詮は可燃性の液体循環に依存したシステムである点が本質安全の面からは懸念されてきた。ただし、POFケーブルはOFケーブルに比較すると耐震性は高い(『電力ケーブル技術発展の系統化調査』P129)。

今後、少なくとも原発向けは、CVケーブルなどのオイルレス化、トラフの不燃材料化を規制要求した方が良いだろう。トラフについても、砂埋は不燃性ではなく、酸素指数の低さ(20%)から難燃性も怪しいので、同様に取替を要する。外部電源の作業となるので、被曝作業は無い。

また、OFケーブルが独立している場合は火災が発生しても当該回線の破損だけで済むが、他のケーブルと洞道やダクトを共用している場合は注意が必要だろう。例えば伊方発電所は、予備変圧器用OFケーブルの上に制御ケーブルトレイが何段も敷設される構造となっている。下記は分かり易さのため1・2号機時代の図を示したが、3号機でも他の用途のケーブルと同じ洞道に収納する構成と考えられる(『火力・原子力発電所土木構造物の設計』1977年P569,『火力・原子力発電所土木構造物の設計増補改訂版』1995年P973)。

 

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出典:『火力・原子力発電所土木構造物の設計』P569(クリックで拡大)

【電力の資料は詳しいので、リリースを追っていればOFケーブルの状況も把握できるの?】

そうとは限らない。東海第二発電所のように停電で注目を集める前はケーブル関連の説明資料から除外していた例がある。

実際には下記のようにOFケーブルを使用。

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出典:『東海第二発電所設備概要』1972年P84

原発でこうした老朽OFケーブルの更新事例が無いか、以前のブログ記事で紹介した「島根原子力発電所1号機電気計装品の予防保全対策」『火力原子力発電』1997年9月を参照したが、OFケーブルは対象外だった。比較的更新に熱心な事例でもこのような状態であることは注意が必要である。

10/26追記:なお、メーカーの中にはOFケーブルや油入変圧器の更新を技報で謳っている事例もあるが(「原子力発電プラントの性能向上と寿命延長」『東芝レビュー』2010年12月)、実施場所は明らかにされていない。以前、日立国分でも同種の記述があることを紹介したが、311前に、どこも更新ビジネスに手を付ける動きが顕在化していたのだろう。各社の工事を積み上げて、どの程度の設備がカバーされているかは、私には分からない。

【原発のOFケーブルはどの位の長さなの?】

開閉所と主要な変圧器との距離による。福島第一5号機の場合、210m。

Furukawa197705_no61p21_ofcable_500kV OFケ-ブルの開発と布設」『古河電工時報』1977年5月P21

【最も長いOFケーブルが使用されているいた原子力発電所は?】10/26修正

最長であるかは分からないが、柏崎刈羽原発では5号機用に1800m使用されているいた。納入は古河電工で、同社が本機以前に敷設してきた福島第一5号機、福島第二1号機、川内2号機などと比較しても極端に長い。

Furukawa198907_no84_p54

出典:「柏崎刈羽原子力発電所向500kV OF ケ-ブルの布設」『古河電工時報』1989年7月P54

私は通常のOFケーブルに生じる問題の他、下記のリスクがあると考える。

  • 敷設が1989年のため経年は27年で一般的なOFケーブルの設計寿命に近い。
    なお、先んじて敷設された1~4号機用OFケーブルは経年30年を超えていると推測。
    ※※10/26:中越沖地震での損傷を機に、CVケーブルに更新されたとのこと。
  • 亘長1800mは一般の送電線に準じる規模で高低差も40m以上あることから、地震の際は地盤変位の影響を受け局部的に過大なストレスがかかり、絶縁破壊→地絡するリスクがある。
    ※10/26:中越沖地震によりこのリスクが顕在化し、引き換えられた。
  • 洞道の温度上昇抑制に送風機を使用しており、送風機電源喪失時に適切に送電が遮断されないと、極短時間でケーブル焼損に至り火災発生の原因となる(通常の地中送電線でも起こり得る問題だが、電源喪失問題が注目されているため、記載)。
  • 敷設されているいたケーブルはアルミ被タイプで北武蔵野線などで使用されているものと同構造となるため、機械的疲労のリスクなども類似する上、ケーブルサイズは柏崎刈羽5号用の方が大きい。
    ※10/26:5号用は引き換え済みだが、他原発でも考えられるので注意喚起のため残す。
  • 洞道が5・6・7号機で共用されているため、一つが発火すると残りの2つも貰い火で機能を喪失する可能性が高い。また、油量も3回線分存在する(なお6号機のOFケーブル敷設はフジクラが担当し同社の技報に掲載されている)。
    ※10/26:中越沖地震で損傷後、新しい洞道を建設した。
  • 洞道の断面が他のケーブルを共架する構造になっており、1本が発火すると全て貰い火で機能を喪失する可能性が高い。
  • 500kV級ケーブルのため、敷設の際はケーブルドラムの陸送が出来ず船での輸送となった。今後OFケーブルをOFケーブルで引き換えることは無いと思われるが、不慮の事故などが発生した際、早急な復旧は望めないことを意味する。
    ※10/26:中越沖地震で現実化した。
  • 10/26:洞道で火災が発生した場合、煙を建屋に引き込む恐れがないか、確認の必要がある(後述)。

本年10月に実施された新潟県知事選挙は野党系候補の米山氏が当選したため、同県が原発に厳しいチェック体制を継続することが望めそうである。福島事故の原因究明の他、再稼働/廃炉問題に際してOFケーブルのリスクについても是非議論を深めて頂ければと考える。

10/26追記【原子力発電所でのOFケーブル損傷事例はあるの?】

ある。上記設問を書いた後気付いたが、中越沖地震で4号機の洞道を損傷したほか、一部ケーブルに傷などを確認した。そのため1~5号機はCVケーブルに引き換えし、5~7号機で共用していた洞道は狭いため、新しい洞道を建設したとのことである。

CVケーブルへの引換は良いことだが、完全ではない(311後に6・7号機用に手を入れたかは不明)。この施策を他原発が追従しているのかは、東海第二のような事例もあり注意が必要だろう。

・「2.4.2 屋外設備と地盤・埋設構造物の修復と耐震補強」2-20~2-23 日本技術士会
・「2.4.2 屋外設備と地盤・埋設構造物の修復と耐震補強」2-24~2-26 日本技術士会

10/26追記【原子力発電所のケーブル火災で今後警戒すべきケースは何?】
今回の発火事故と中越沖地震の被災例を見て分かることは、OFケーブル火災が現実の脅威となったことである。地震により送電をストップする前に地絡し発火、といった複合事例も考えられる。私見だが、脅威になるのは火災だけではなく、煙も注意が必要だ。

各原発の洞道がどのようになっているかは分からないが、まず確認すべきは利便性を重視し原子炉建屋の非管理区域などと接続するルート(メンテナンス・空調・計装等)が存在しているかどうか。存在していると、建屋内に煙を引き込む恐れがあるので、防火シャッターなどの設置が不十分ではないかどうか、閉じ込め機能維持のために負圧をかけているエリアとの関連などを点検しておく必要がある。OFケーブルや古いCVケーブルはノンハロゲン化もされておらず、発生する煙は人の他機材にも有毒と見なされているし、閉鎖空間での炎上は単純に一酸化炭素中毒の脅威にもなる。

※ただ、空調系が完全に別となっている格納容器内まで達するとは考えにくい。

【情報は公開すべきではないという自民党議員の談話は正しいの?】

政治家の発言としては適切ではない。

例えば、どこの送電線の何丁目何番地に入口があるとか、その入口の鍵は何処に置いてあるといった情報は明らかに公開するべき内容ではないし、今回の事故検証に必要な情報でもない。公開すべきでない情報は存在する。しかし、ケーブルの建設年やその組成、事前の更新計画などといった情報は公開してもテロの危険を高めることはないし、既に公開の場で研究発表済みの内容も多い。

そのような情報の性質を一切無視して「公開すべきではない」という言葉だけが独り歩きしている。これこそ、素人の暴言と言うべきだろう。

むしろ、社外のチェックの目を入れるためには、無闇に秘密をつくらないことである。実は、福島原発事故はテロ対策を名目に、法的根拠も無く都合の悪い情報を遮断し、物言わぬ推進派には内部を見せて回るという悪弊を続けて起こったという背景もある関係ブログ記事)。津波想定を公表していれば、対策は震災前に終わっていただろう。

井上リサのようなPA師が早速「反対派には公開するべきではない」と説いて回っている。彼女は賛成派の顔をしているが、技術研究の内情に関心が無い上、売国テロリスト予備軍と言える行動を取っており、最悪の存在と言って良い。

2016年10月19日 (水)

東電新座地中送電線火災と老朽OFケーブルQ&A集

2016年10月12日、東京電力新座変電所の地中送電線が経年劣化により出火し、58万件に達する大規模停電が発生した。

東電の発表では火元は洞道(地下トンネル)に敷設されていたOFケーブルで、設置から35年が経過しているという。詳細な事故検証を行うため、東電は「新座洞道火災事故検証委員会」を設置した。

今回は私がこの事故について調査した結果を示す。インフラの老朽化問題に関心のある方は是非参照して頂ければと考える。また、原発でも部分的に使用している個所があるのでそのことも取り上げる。長い記事だが、有益な史料紹介になる筈だ。

事実関係は正確を心掛けているが、詳細報告が東電等からなされた時点で「的外れ」になる事項も出てくるとは思う。例えば本記事公開時点で、私は事故を起こしたケーブルの種類を防災トラフに入ったOFケーブルと考えているが、実際は違うかも知れない。なお、本記事では砂埋OFケーブル、POFケーブルについても特別高圧での使用実績が多く敷設から年月が経過しているため予防的な意図で説明した。

なお、当ブログの他の記事も同様だが、下記は私個人の目から見た論評であって、特定のメーカーや電設業界等のロビー活動として行っている主張ではないことも付言しておく。

【OFケーブルって何?】
Oil Filledケーブルの略。導体の周囲を油に浸した紙によって絶縁しているためこの名称となっている。大学生向け電気工学の教科書では必ず載っているので、日頃から仕事にしている専門家でなくとも、少しこの分野を勉強した人達は皆目にした記憶がある筈である。インターネット上でも断面図などが多く公開されているが、下記の記事が歴史的概要を掴むのに良いだろう。

【OFケーブルは1種類しかないの?】
下位のカテゴリで数種類に分かれる。

導入初期から60年代位まで敷設されたのは鉛被OFケーブル。今回事故を起こした275kV用としては、70年代以降の主力であるアルミ被OFケーブル(OFAZV)、砂埋OFケーブル、POF(Pipe type Oil Filled cable)ケーブルが使用される。

今回、どのOFケーブルか特定に手間取ったが、当該送電線は「電力ケーブルのトラフ内間接水冷方式」を採用しているため、開発時に書かれた論文記載の仕様から、十中八九アルミ被OFケーブルと思われる。

砂埋OFケーブルは「トラフ内砂埋布設ケーブルの曲線部における挙動」(『日立評論』1971年4月)に断面図が掲載されている。北武蔵野線や城北線のものと類似しているが、別物。トラフにケーブルを収め、空隙に砂を充填している。

POFは『電力ケーブル技術発展の系統化調査』によると、絶縁体に油浸絶縁紙を用いた線心3条を金属被を被覆せず鋼管に収納し、絶縁油を加圧充填した構造である。

なお、上記「III. 超高圧低損失OFケーブル」には今回事故を起こした城北線では一部の管路区で低損失絶縁紙としてSIOLAP,PPLP(組成は同記事参照)を採用したと書かれている。その時限りの特殊仕様になったまま、放置されていないかも確認が必要だろう。

【トラフって何?】

トラフ(Trough)とはケーブルを収納する管路資材のこと。ケーブル保護の目的で使われる。後述するが、城北線・北武蔵野線には密閉型防災トラフ(Fire Resistance Trough)というものが採用されている。

地中送電線が本格的に建設され始めた当初は、上述のように砂埋トラフが使用されていたが、次の欠点があった。

  • ケーブルの熱伸縮対策にスネーク布設(蛇のように数mの波長で~~~形にくねらせて布設する方式)が一般化した結果、砂埋によりスネーク効果が低減されている
  • 砂の熱抵抗が大きい
  • 良質の川砂が必要だが、資源確保が困難となった(新幹線トンネルのコールドジョイントで話題になった、西日本のコンクリート構造物で川砂の代わりに海砂を使用していた問題と同根だろう)。

このため、1972年より東電と古河電工は砂埋無しの防災トラフを研究開発し、275kV用まで実用化した(「密閉型防災トラフ」『古河電工時報』1977年1月

東京電力は1976年頃には密閉型防災トラフを標準防災トラフに指定済みだった。詳細に関しては(リンク )を参照して欲しいが、概略下記のようになる。

  • 材質:不飽和ポリエステル樹脂
  • 碍子繊維:コンテニアスストランドマット、ロービングクロス
  • 酸素指数:47%(一言で言えば燃えやすさ。通常26%以上で難燃性とされる)

また、特徴として、酸素の供給を極力押さえているため地絡時のアークによるケーブル着火を数秒間で消火でき、かつトラフの難燃性を向上させたため外部火災に対しても十分対処できる、とされていた。

1970年代はJIS,IEC,IEEE等で難燃性試験規格の基本が確立された時期でもある。今回の結果に比べて随分差があるように見えるので、きちんとした検証が出るか注目したいところである。

また、当時のJIS K 6911に基づき燃焼速度試験を実施した結果によると、砂埋トラフの火災脆弱性は密閉型防災トラフより高い事が分かる。つまり、老朽トラフとしては、あれでもかなりマシな方だったということだ。だから、更新が後回しにされたのかも知れない。

なお、現在の電力ケーブル用FRP製防災トラフはACGマテックスのウェブサイトに掲載がある。耐水、耐火性、内部燃焼に対する自己消化性を謳う。ただしフジプレコンは、FRP製では燃えてしまうとアピールする。今回の火災でケーブルを収納していたトラフの材質が気になるところだ。

難燃性とは「燃えにくい」ですが「燃えない」訳ではありません。(中略)
FRP(樹脂・プラスティック)は燃えます!
石油製品ですから当然です。耐燃性とか難燃性とか自消性とかなんとか言いますが熱が加わわり続ければ燃えます。(中略)コンクリートまたは陶磁器などの燃えない素材を用いたケーブルトラフを使用することをお薦めします。

ケーブルトラフに求められるものは? 」フジプレコン株式会社 2015年1月26日

【OFケーブルに使われている液体は油だけなの?】
水を用いた数種類の強制冷却方式が実用化されている。北武蔵野線の場合、ケーブルをトラフに収め、トラフに冷却水の配管を通して冷やす「トラフ内間接水冷方式」を採用している。

地中送電と言えば、いつも送電容量が問題になるが、地中線で使うアルミ被OFケーブルは架空線用の鋼心耐熱アルミ合金撚り線などと構造や機能が本質的に違う。例えば架空線が地上と適切な間隔をとり、空気そのものを絶縁体に出来るのに対し、洞道という密室の中に収められるケーブルの方は導体を特別の絶縁物でおおい、電気的に絶縁しなければならない。つまり、電気の流れる裸線に絶縁油をひたした絶縁紙などを何重にも巻きつける。電圧が高くなれば絶縁物も余分に必要になり、北武蔵野線練馬線で使う二十七万五千VのOFケーブルなどは絶縁紙の厚さが2センチにも達するほど。しかし、実はこれが地中送電のジレンマでもある。

「ケーブルに電気が流れると、導体の電気抵抗によって熱が発生するが、電気的に良い絶縁物も熱に対しては厚着をしている格好となり、熱の放散を妨げてしまう。送電容量が制限される一つの要因だ」(小杉欣之助・送変電建設本部地中線建設課長)。

したがって、地中送電では電気的問題、熱の問題、施工や運開にともなう機械的な問題に十分対処して、かつこれらの要素をうまく緩和させることのできるケーブルがあればいいわけだが、ひと筋縄ではいかない。どんなに金をかけようと、地下でどんなに大きいスペースを使おうと、構わないのなら別だが、そんなことは現実に望むべくもない。

そこで、いまは送電容量アップの一方策として水や油などを使ってケーブルで発生する熱を奪いながら電流を余分に流そうという、強制冷却方式が推進されている。

北武蔵野練馬線でも継ぎ目のない水冷管を使ってケーブルを冷やす方法をとった。「設備に若干費用がかかるが、送電容量は三〇%程度アップする。十万KW程度の送電線を一本つくったのと同じことだ(東京北工事事務所・関亦民夫次長)。

しばしば指摘されるようだが、地中線工事は決して安上がりではないかもしれない。たとえ話として、架空線の十倍かかる、などといわれたものだ。しかし、比較が悪い。前述したように架空線とケーブルはまるで違う。それに、鉄塔という”点”の支持物に電線を張る架空送電線に対し、地中の方はケーブルの容器ともいうべき洞道そのものを”線”状に連続してつくらなければならないし、ルートや工期も外部要因で大きな制約を受ける。(以下略)

「都心の動脈 建設進む地中送電線(7)」電気新聞1980年2月18日6面

『電力ケーブル技術発展の系統化調査』P139に断面図が引用されている。

Kahakuchousa080_cable_fig5_3 今回事故を起こした城北線で初採用した新技術だったためか、東電社報にも登場していた。

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出典:「スペース利用効率の向上をめざして~流通設備の効率化と技術開発~」『東電社報』1982年3月P10

ケーブルメーカーは古河電工で関連技報記事が2本ある。

  • 「電力ケーブルのトラフ内間接水冷方式の開発」『古河電工時報』 第61号(1977)
  • 「洞道内トラフ間接水冷の建設例」古河電工時報 第71 号(1981)

なお、「第7章 ケーブル•母線」(『電氣學會雜誌』Vol. 99 (1979) No. 5 P 443-449)によれば、トラフ間接水冷方式は1973年から開発を開始、1979年に完了。利点は下記などがある。

  1. ケーブルからの熱流を集中部分で効率良く奪うことができる
  2. 各種ケーブルが一緒に布設される洞道内で主要幹線(275kV線)のみを重点的に冷却できる

上の断面図には記載無いが、水冷管の材質は可とう性や電気誘導面から高密度ポリエチレンである。ケーブルは俵積みしている。なお、上図では冷却管が浮いているように見えるが、クリートで数m毎に固定されているのはケーブルと同様である。『古河電工時報』の試験モデル・計算例(リンク )をみると、スペック的には275kV 導体断面積1x1,000~1,800mm^2、最大電流1400Aを考えている。
※16/12/21追記 実用化された城北線では最大電流1600Aとなるなど、細部のスペックは更なる検討を経ていることを確認した。

やや気になるのは、通常0.5Mpaで通水されている水冷管をより高圧で運用する際、金属テープを巻いて補強されていたらしいことだ。金属テープを使用すると、ケーブルに流れる電流により誘導電圧が発生する。このため渦電流損失や水冷管の接続作業あるいは端末作業時には誘導対策が必要となる。この問題を解決しようとした1998年出願の特許「電力ケーブルの冷却装置」にその記載がある。高圧で運用するのは、高低差が大きい場合や冷却区間が長い場合とのことだ。

【OFケーブルの設計寿命は何年なの?】
154kVアルミ被OFケーブルの例だが、30年との記述がある(「アルミ被OFケーブルの劣化評価に基づく改修時期の検討」『電気学会資料 電線・ケーブル研究会』2007年)。同論文では、劣化評価を行うことで最長で60年までの使用を視野に入れていた。

一方で、沖縄電力の資料では、OFケーブルについて最長で40年の使用を前提に設備投資計画を立てている。

Okinawadenryoku20150910p10_4

設備投資計画について」沖縄電力 2015年9月10日

【特別高圧用OFケーブルの弱点はどこにあるの?】

アルミ被を含めたOFケーブル一般については「OFケーブルの絶縁体劣化現象の解明」(『SEIテクニカルレビュー』2014年7月)から抜粋すると下記のようになる。

  • 負荷変動に伴うケーブルの熱挙動により金属被に発生する機械的疲労。改修時期判定も機械的疲労=金属被歪みの評価による。
    ※ただし、2007年の研究「アルミ被OFケーブルの劣化評価に基づく改修時期の検討」では事前診断を充実させることで良好と評価された状態のケーブルは最大60年の使用に耐えるとしていた。東電がこの評価法を導入して35年目の運用に至った可能性は考えられる。
  • 振動・熱収縮によるケーブル本体や接続部の損傷・変形。
  • コアずれ。POFケーブルで述べるが、アルミ被OFケーブルでも発生する。
  • 絶縁紙の紙巻きギャップの広がりによる絶縁耐力の低下。
  • 絶縁紙の炭化およびワックス化。
  • 油中への不純物混入による絶縁耐力低下。静電誘接の上昇。

この他、シロアリによる外皮破損というトラブルもある。

Okinawadenryoku20150910p12_3

設備投資計画について」沖縄電力 2015年9月10日

劣化監視としては油量計確認や油中ガス分析を定期的に実施しているが、次のような盲点が指摘されている。

OFケーブルの劣化はかなり緩やかと考えられてきたが、調査の結果、条件によっては劣化が進行する可能性があることがわかった。(中略)欠陥部に局所的にガスが蓄積されている可能性があり、その場合には欠陥部の油を直接採油できておらず劣化の進展を必ずしも把握できるとは言えないとされる。(中略)X線調査によるコアずれ診断や部分放電測定などの診断を組合せ、保守管理するとともに、計画的な更新も必要と考えられる

OFケーブルの絶縁体劣化現象の解明」(『SEIテクニカルレビュー』2014年7月

後述する保守合理化手法であるアセットマネジメントが日本の電力業界でまともに議論されるようになって10年、『SEIテクニカルレビュー』掲載論文の発表から2年、東電は新しい知見に基づき従来のアセットマネジメントを修正することが出来たのだろうか。

その他のOFケーブルについては『電気学会資料 電線・ケーブル研究会』に2007年報告された東京電力の研究記事「経年ケーブル設備の診断・取替によるアセットマネジメントの一事例について」「地中送電線路の劣化と設備更新」を主たる参考として、まとめた。

砂埋OFケーブルは次のような故障を起こす。

  • 経年と共にケーブルの発生熱により乾燥し、g値(土壌固有熱抵抗)が上昇して、送電容量が低下する。
  • 砂のg値の上昇に伴いケーブルの熱挙動が大きくなり、砂埋トラフを破損させた事例がある。
  • ケーブルの砂埋ピット部において、ケーブル撤去工事のドラム巻き取り時にケーブル防食層が亀裂を生じた事例がある。高負荷運転により砂のg値が上昇したことが起因している可能性あり。
  • 砂の成分と砂の含有水分を起因とし、砂埋トラフ中のアルミクリートが腐食した事例がある。

POFケーブルの故障には次のようなものがある。

  • ケーブルのコア移動による接続部での絶縁破壊。導入当初のPOFケーブルはケーブルコアを固定する設計を採用していなかったため、敷設個所の傾斜や、波乗り現象と言った要因により、ケーブルコアが移動する。このことで、接続部において補強絶縁体等が接続部内部に接触し、最悪の場合絶縁破壊を引き起こす可能性がある。
    ※このため、ケーブルコアの移動量は管理対象となっており、管理値を超えた物は改修工事を実施している。
  • 防食の劣化。POFケーブルの防食層は当初コールタールエポキシが採用され、その後ポリエチレンに移行した。海外では特にコールタールエポキシ樹脂の防食層を採用したPOFで、防食層劣化から生じる鋼管腐食・漏油トラブルの事例がある。また、防食層の他に、外部電源装置や流電陽極を接続し鋼管の電位を負極性に保つ電気防食により、二重の対策を取っているが、気中敷設部や、直埋敷設部で外傷等により防食層と鋼管の密着性が悪化した個所などで、電気防食が効かず腐食が長期間で進展する可能性がある。

16/10/29追加【絶縁油を分析すれば寿命を評価出来たのでは?】

アセチレン、或いはCO2-COなどの油中ガス分析はOFケーブルの状態監視方法として定番のため、「アルミ被OFケーブルの劣化評価に基づく改修時期の検討」(2007年)においても指摘はされている。ただし、同論文は油中ガス分析を積極的に研究した内容ではない。90年代以前、油中ガス分析や部分放電測定(後述)など絶縁油分析によるOFケーブルの寿命評価は簡単に出来るものではなく、電力研究者達もそれを認識していた。

(1)油中ガス分析
変圧器分野では1970年代に実用化された(最近の油中ガス分析による油入変圧器の故障 と経年劣化の診断技術」『電気学会論文誌D(産業応用部門誌)』Vol. 107 (1987) No. 9 P 1137-1144)。問題は、分析対象の形状や運転条件により判断基準を一律化出来ないことであり、『新版 電気機器絶縁の実際』(初版1981年、新版1988年)でも「この方法はOFケーブルの保守管理に適用することも試みられているが、ケーブルの長さが長くなると可燃性ガスの薄められ方が大きくなるので、実用化はまだ先だろう」(新版、P31)と記されていた。つまり、城北・武蔵野線建設時には劣化や余寿命評価を行う方法としては使えなかったらしい。1994年の「電力機器の絶縁余寿命推定法の現状」(電気学会論文誌A(基礎・材料・共通部門誌)Vol. 114 (1994) No. 12 P 845-852)でも「比較的実用レベルに近い絶縁余寿命推定法が開発されている」のはCVケーブルとされている。

(2)部分放電
絶縁油の分析方法はガスの他コロナ-電力業界では油中で発生しているコロナは部分放電(PD)と称するようだ-がある。過去においては「電力設備の診断技術」(『電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌)』Vol. 112 (1992) No. 7 P 550-553)で「油中ガス分析で は困難な急激な絶縁性能劣化の診断のため,油中コロナ測定」の有用性が指摘されており、変圧器などでは実用化された(「イオン測定器、コロナ探知機」 コムシステム株式会社)。OFケーブルへの適用は1960年代に試みられていた(「OFケーブルのコロナ放電特性について」)。

2014年の『SEIテクニカルレビュー』掲載の上記論文(ネット公開)は今回の事態を予想したものとして週刊朝日など一般誌も注目している。だが、フィールドで30年使用したOFケーブルの入手は2000年代でも可能であり、先の「アルミ被OFケーブルの劣化評価に基づく改修時期の検討」(2007年)でカバーできなかった分野を補う部分放電の研究を2000年代に立ち上げ、『SEIテクニカルレビュー』での成果を数年早く得ることが出来たのではないかと考える。しかも、次回記事で述べるように、柏崎刈羽原発で撤去したOFケーブルの中には25年程度の経年のものもあり、500kV用ですら経年を経たサンプルの入手は可能だった。

よって、2000年代後半の劣化診断技術開発現場でどのような予算配分・研究者間の権力勾配があったのかは興味がある。

【OFケーブルが事故を起こした場合の影響は予想されていたの?】
下記のようになる。58万件でも30分で復旧出来れば「中程度」になると思っていたのだろうか。まぁ、今回の275kV線は超高圧設備だから、影響は大だろう。

アルミ被OFケーブルはトラブル頻度は比較的少なく、影響は中程度。

砂埋OFケーブルはトラブル頻度がある程度大きく、また超高圧設備の割合が大きいため影響も大きい。

地中送電線路の劣化と設備更新」『電気学会資料 電線・ケーブル研究会』2007年P35

東電は同様にPOFで事故が起きた際の問題については次のように課題を示していた。

  • トラブル頻度は少ないが万一の時に事故復旧が難しい。影響が極めて大きい。
  • 漏油事故時に、大漏油となる可能性があり、社会的影響が大きい。また、微小漏油の場合には、漏油警報による発見が遅れる可能性があり、その間かなりの絶縁油が環境に排出される懸念がある。
  • 工事量が少ないため、ケーブルメーカーの設計・製造・施工能力、及び電力会社の設計・工事技術の維持警鐘が難しい。

また、POFの設備更新に際しては、充填油を循環・冷却することで大きな送電容量を得ており、設備更新のためには同等の送電容量を確保することが必要で、技術面、ルート確保面から課題となっていた。

【火災を起こした地中送電線の同世代は都内にどのくらいあるの?】
275kVのOFケーブルは少なくとも430㎞以上建設されている。なお、報道発表で1000㎞という数字が挙げられていたのは、90年代位までは地中送電線の増設が盛んだった結果だと、私は考えている。

高度成長期以降、首都圏の電力需要は激増していった。しかし都内の発電所で賄える電力は1970年代末でも20%程に過ぎず、現在では更に低い。一方で、人口密度が高く、地価が高騰して架空送電線を建設する用地は取得が困難だった。そこで東京電力は郊外では従来通り架空送電線によるネットワークを建設するものの、23区内とその周辺では、基幹系統に使用する特別高圧送電線を地中にトンネルを掘る形で増強していくこととした。

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出典:「安定した系統をつくる 系統計画の概要」『東電社報』1979年10月P17

これを東京電力は「基幹系統13ルート計画」と称し、盛んに宣伝した。架空送電線と比較すると、冷却にネックがあり、1回線辺り数分の1の容量しか持たないため(当初25万kW/回線、その後系統構成を充実させ1980年代初頭で45万kW/回線)、多数のルートが設けられた。

傘下の工事会社である関電工も地下トンネルでの作業をイメージした広告を盛んに打っていた。

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出典:電気新聞1978年11月29日広告欄(クリックで拡大)

1979年某日の電気新聞に、「13ルート計画」の進捗状況が載っているので下記にまとめてみた。採用ケーブルは『電力ケーブル技術発展の系統化調査』による。

竣工済
江東変電所~城南変電所 1973年10月 OF
城南変電所~新宿変電所~北多摩変電所 1973年10月 POF
京北変電所~豊島変電所 1977年5月
豊島変電所~池上変電所 1979年5月
荘田開閉所~世田谷変電所 1979年5月
工事中
京浜変電所~潮田変電所~池上変電所

北武蔵野変電所(1979年5月新座変電所として運開)~豊島変電所 1980年5月竣工予定 OF(城北線)
北武蔵野変電所~練馬変電所~九段変電所 1980年5月竣工予定(北武蔵野線)
城東~日本橋線

計画完成:約30%、工事中を含めると70% 1980年代前半に80%完成予定

上記13ルート計画の延長は約430㎞。これ等の路線は事故を起こしたものと同世代のOFケーブルで建設された。2016年現在全く交換していないと仮定すると35年以上の経年に達したケーブルが殆どで、最長は43年経過している(154kVまで対象に含めると、上記「III. 超高圧低損失OFケーブル」に1966年南太田線で採用との記述がある)。報道によれば、完全に放置している訳では無く、防火シートによる火災対策やケーブルの更新工事なども段階的に進めているとされている。

なお、OFケーブルの後継に、絶縁油の循環を必要としないCVケーブルがある。275kV用のCVケーブルは1980年頃には開発を完了していた(『電氣學會雜誌』Vol. 104 (1984) No. 11 P 944-947)。しかし、吸湿対策等の改良を経て、長距離送電でCVケーブルを初採用したのは1989年の東電南池上線である(「電力を支える先端技術 下 電力の輸送と供給 大きく進歩した送電技術 」『電気学会誌』Vol. 116 (1996) No. 10 P 651-653)。

なお、1970年代、東京電力は全国の地中送電線工事の大半を手掛けていた(電気新聞1980年2月8日6面に当時の状況の証言が載っている)。

【事故の起きた城北・北武蔵野線に、固有の特徴はあるの?】
地下水が多い。当時の電気新聞に見学記事が載っている。

東京工事事務所の城東日本橋線が洞道工事なら、東京北工事事務所の北武蔵野練馬線などは、いまケーブル工事の最盛期だ。すでに洞道のほうは昨年末に完成し、ケーブル引き入れやケーブル接続作業に取り組んでいるところ。予定通りの仕上がりだが、洞道工事は一筋縄にはいかなかった。ルート周辺が地下水の豊富な地域で現場に湧水が多いためだ。当然、工事に支障のないよう止水するとともに、住宅用の井戸水を枯渇させないよう対策を講じなければならない。

一つは地盤改良といわれる薬液の注入。地山の崩れや湧水を防ぐ場合、工法面で解決できない時に採用する苦肉の策だ。水ガラスを注入して掘削現場周辺の地盤を固めるやり方である。むろん、地質に悪影響を与えないよう薬液は建設省”認可”のものを使うし、事前・事後に近辺の井戸の水質検査も念入りに行なう。この薬液注入、思ったより手間がかかるし、一ヶ所の現場で億単位の経費も必要とか。

とにかく水の多いところ。それだけ地下水量に恵まれているわけで井戸水を利用する家が多い。練馬地区では約三〇%が井戸を飲料水に使っているほど。したがって、ケーソン工法を採用するなどして工事による井戸の枯渇や水質変化がないよう、万全を期した」(東京北工事事務所土木課・鈴木慶三課長、青島忠男副長)。

井戸の枯渇もあるが、湧水が多いと現場作業は難航をきわめる。たとえば練馬変電所に隣接した三井建設施工の練馬九段線。初期発進のせいもあるが、切り羽の部分では水が吹き出している感じだ。湧水量は毎秒約一トン。切り羽でピックやショベルで手掘りしている作業員は土砂と泥水でどろんこのありさま。水分は塵埃を防ぐ役目もするが、始末が悪い。湧水を放っておいたら洞道内が水びだしになるから、六トンのポンプ三台でいったん汲み上げる。「手間がかかるが、沈殿槽を通して土砂をおとし、下水などへ流すようにしている。泥水のまま流したら、周囲へ迷惑をかけてしまう」(鳶谷研三三井建設作業所長)。

こんな現場では通常でも湿度が八〇~九〇%。夏になると九〇%を超え、不快指数はぐんと高まる。地下の深いところは一年を通じて寒暑のきびしさが極端に出ないものだが、湿度が高いのは疲労感を増長させがちだ(以下略)。

都心の動脈 建設進む地中送電線(5)」電気新聞1980年2月15日6面

新座でも事情は大差無いようで、湧水を「新座の元気 森透水」としてペットボトルで売っているほどである。勿論、長期にわたる防食管理の点からは条件が悪いということになる。湿度環境が悪いと状態監視機器の作動にも支障するかも知れない(ただし、平時の湿環境データは持っている筈である)。

【アスベストは地中送電線に使われているの?】
報道の通り法規制前の建設なので使用されている。なお報道とは別に既存資料を見直したところ、ケーブルを収納する構造物が幾つかのタイプに分かれていることが分かった。この中で、洞道(ケーブルダクト)ではないが、電気管路と呼ばれる方式の中に、石綿セメント管を使用した物がある。

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出典:電気新聞1979年9月21日広告欄より

石綿セメント管は1孔1条の単心ケーブルに使用され、電気管路の構成上、洞道と異なり、人が立ち入って見ることは出来ない。一定の距離を開けてマンホールを配置し、そこを起点に作業する(『火力・原子力発電所土木構造物の設計増補改訂版』1995年P972)。

改修工事や解体工事の他、火災の際には得てして高温になることは珍しくないため、セメントと言えども石綿が飛散するかも知れない(セメントに関して私は知識を殆ど持っていないが)。

【福島原発事故後の東電叩きのせいで更新出来なかったという話は本当?】
2つの理由から事実ではない。

まず、近年の東電の収支状況は報道発表等の通り、大幅な黒字である。多くの人に指摘されている通り、廃炉費用の負担で税金の支援を受けながら、このような過大利益を計上することは社会倫理的に許されない。仮に、半期で1000億の利益を計上していたとすると、その利益額を500億に抑制し、経年を超過した設備の更新に500億を投じるといった選択肢は当然あり得たからである。

次に、設計寿命を超えた設備の使用は電力業界全体で見られる傾向だった。背景は失われた20年と、2000年前後の電力自由化である。

近年低成長あるいはゼロ成長と言われる経済情勢を迎え、増容量のための交換を行う機会が少なくなったことから、一旦設置された機器を寿命ギリギリまで使用する傾向が現れている。この傾向は10年以上前から指摘されているが、電力自由化に伴うコストダウンへの要請と相乗し、ますます現実的な事態として捉えられている(P31)。

電気設備の最適診断周期に関する基礎検討」『電気学会研究会資料 電力技術研究会』 2007年

上記を背景に2000年代後半盛んに議論されたのはアセットマネジメントという概念である。

地中送電線路の劣化と設備更新」を参考に私なりの説明を行うと、経年を超えた設備を直ちに更新して行った場合、短期間に集中整備された設備の更新は短期間に集中することになる。このため、随時劣化診断を行って、比較的良好な状態にあると判断した設備の更新は後回しにするといった施策がアセットマネジメントの名の元に推奨されていた。

この施策のメリットには、専門技術者を常に一定数プールし、技術を絶やさない効果がある。特別高圧OFケーブルの敷設も専門的技術を要する工事の1つなので、一概に否定するべきではないだろう。ただし、アセットマネジメントには設計寿命以上に設備を限界まで酷使することで、コストを低廉に抑制する目的もあるため、工事量の平準化を考慮しても、毎年の更新工事量を適正な量まで増やすなどして早期に更新を完了すべきだったものと思われる。

今回、記録は残せなかったもののYahooニュースのコメント欄でも業界団体資料を情報交換しながら「素人は黙っていろ」というような書き込みが多数あった。インフラ業全般に電力業界の宣伝を鵜呑みにすることで生まれた独特の蔑視感情が膾炙していると考える。それがこのような作り話の根にあるのだろう。

【電力業界は更新投資について、外国から学んでいないの?】
学んでいるが、真剣に取り組まなかった期間が少なくとも4年ある。

下記の論文はガス絶縁遮断器を例示した内容だが、前提となる設備環境の記述にそれが現れている。

日本よりもさらに経年の進んだ設備を多数抱えるヨーロッパにおいて検討が先行しており、CIGRE(国際大電力会議)を始め、関連する分野の国際会議においておおむね2000年前後から議論が活発化している(P2)。

国内の動きで注目されたものとしては、2007年11月28日に開催された電気協同研究会主催の研究討論会をあげることができる。同様の討論会としては2003年にライフサイクルマネージメントが議題とされているが
、このときは必ずしも欧米のアセットマネジメント導入の動きに追随するわけではなく、日本独自の事情を考慮した対応をすべきとの意見が大勢であった(が、国際規格化の動向などを考えると内向きの対応だけではいけないとの意見も出された)。その4年後となる2007年の討論会では、いかにしてアセットマネジメント技術を導入するか検討し、他産業の先行例にも学ぶという姿勢に変わってきた(P3)。

電力流通設備の維持・更新計画策定支援プログラムの開発(Ⅱ)」電力中央研究所 研究報告書(H07013) 2008年7月

論文で問題になっているアセットマネジメントは保守を系統だてて行うことにより、無駄な保守費(重複など)を削減する意味もある。従って失われた10年を経過した2003年時点で日本独特の国内事情を挙げることには無理がある。

【一般向けに地中送電線の更新を課題と示していた電力会社はあるの?】
中国電力は研究記事ではなく、一般人向けのサイトでそのように述べていた。

Chugokuden2013csrp6_2安定供給に向けて ~送配電部門の取り組み~」『2013エネルギアグループCSR 報告書』中国電力

中国電力の記述では、架空送電線よりも地中送電線の方が優先順位が上になっている。

16/10/29【2021年までに防火シートを巻く予定だったので無為無策では無い?】

16/12/21追記本問を発展させた後日記事を執筆しています。

Togetter_com_li_1039761_comment OFケーブル他備忘-Togetter 当該ツイート(その1その2)。

極めて疑わしい。防火シートを地中送電施設の要注意個所に巻く対策は2000年の雑誌に既に載っていたから。

(2)難燃性・不燃性電力ケーブルの採用
CVケーブルの採用、ケーブルシース・介在物に難燃性を付加、ピットへの砂の充填、
難燃材料(防火シート)のケーブルへの巻き付け、塗布、OFケーブルを用いる場合は密閉型防災トラフ内への収納などを実施する。

「地下式変電所の変圧器,遮断器,開閉器等の電気工作物に対する火災対策に関するキーポイント」『電気計算』2000年8月P32

なお、OFケーブルでも接続部は一般部と構造が異なることも留意すべきだろう。従って、ここでも考えるべきはメンテナンス費の不当な削減で2021年まで伸びていたのではないか、という疑問である。へぼ担当は放水など他の問題には既知の知識と書いてあるが、防火シートについてはわざわざ事故から12日も経過してから追記したのに、既知の対策と書いていないので、改めて指摘した次第。ま、彼は何時も身内弁護しか垂れ流しておらず、今回もその一環に過ぎないのでしょう。

【OFケーブルは他にどこで使われているの?】

【OFケーブルは原子力発電所でも使われているの?】

【原発のOFケーブルはどの位の長さなの?】

【情報は公開すべきではないという自民党議員の談話は正しいの?】

いずれも【柏崎刈羽に】原発とOFケーブル火災リスク【大量敷設】に移転。

16/10/22:全般見直し

16/10/23:原発関係を【柏崎刈羽に】原発とOFケーブル火災リスク【大量敷設】に移転。

2016年10月18日 (火)

【みぶなつき】駅乃ちかこ萌え路線で炎上した鉄道むすめ【あなたは多分偉かった】

トミーテックが発売している「鉄道むすめ」シリーズで、東京メトロのサービスマネージャの駅乃ちかことコラボしたところ、絵師の伊能津がエロゲー的描写を露骨に持ち込んで炎上してしまうという事件があった。

そして、とうとう比較絵が2万件以上RTされるに至る。

このシリーズ、2005年からやっているが、昔つけていた日記で2007年頃、「いつか炎上する」と書いたのを思い出した。

最近のアニメは、どういう認知の歪みがあればあんなキャバ嬢のような格好で学生だの軍人だの設定できるんだ?と思うような作品がとても増えた。鉄道むすめはそういうことをしないだけマシと評価していたのだが、遂に「超えてはならない一線を認識出来ない馬鹿」が投入されてしまったわけである。

しかし、一行コメントしてる連中にまともな評価を下せる者がいないのもどうかなと感じている。特に伊能津を擁護する側。本当に消費者なのだろうか。

今回の絵は、駅乃ちかこが何をしようとしているのかがサッパリ分からない。接客中に見えなくもないが、マネージャーがあんなふざけた態度取るか?という指摘はその通り。だから違和感を感じた人が多いのだろう。

これに対して、初期のシリーズは「仕事中のワンショット風」を意図しているのが明確だった。公式サイトのキャラ紹介を見るとよく分かる(例:船橋ちとせ羽田あいる)。シリーズを重ねてポーズのパターンに困り、休憩、控室での決めポーズ、移動、観光客相手の記念写真と思しきタイプも含めるようになったが、今回問題になったようなポーズは、キャラ紹介では取っていなかった。なので、トミーテックとして内部で明文化しているのかと思っていたが、そうでは無かったようだ。開始当初から数年前まで担当していたみぶなつきという絵師の個人的技能に終わってしまっている。

みぶなつきも個人ではエロ同人も手掛けており、鉄道むすめのイメージに慣れた目からするとかなりきつい。ただ、同シリーズとの切り分けははっきりさせていたように思われる。

擁護派は何のかんのと言い訳しているようだが、問題になってるスカートの部分もみぶなつきが担当した物と比較すると一目瞭然。そのため、鉄道会社公式キャラの流用でも、東武から拝借した姫宮ななは何のトラブルも起きてない。東武に対してはトミー側もかなり配慮したらしく、カメラ小僧をたしなめる身内叩きの派生小説を書いていたのを思い出した(その構造自体をエンタメ化したという批判はあり得るだろう)。

ところで、私はこのシリーズに一円も投資したことがない。趣味的には萌え系アニメ絵も好きな物の一つではあり、買うだけの金はあった。だが、当事者を侮辱するような表現の羅列に走りそうな危うさは、最初から感じていた。当時はコップのフチ子さんは無かったが、まぁ、ああいう感じに徹底して堕ちる危険ということ。

元々、駅名を人名に流用し自然な形で擬人化もどきを行う方法は、鉄道むすめの2年程前、『出発シンコー』というエロ漫画で商業的に提示していたものだ。鉄道むすめの企画者達も、当然知っていたと思われる。鉄道員の手になるだけあり、非エロパートはとても勉強になる珍品だが、商業的には実際の鉄道とのコラボなど、とてもできた代物ではなかった。そういうエロ同人絵師と鉄道業界との繋がりはずっと以前からあったので、ゲームキャラの流用で恥をかいた鉄道会社がニュースになった時も、いかにもなことだなと思った。それにしても、『第二次世界大戦 欧州海戦ガイド』で中々の挿絵を描いていたチャーリーにしなかがどうして方向転換したのか、今でも不思議である。

地方私鉄が客寄せのため続々参加する一方で、大量の乗務員や駅員を抱えるJRがキャラクター化を拒否し続けているらしいことも、引っかかていた(接客サービスに特化した職員は登場しているが)。彼女等が、グループ本体の正社員で組合員であったことも、理由の一つじゃないのかねぇ。

そんなこんなで、みぶ時代は何とか切り抜けたが、遂に炎上してしまったわけである。

私の周囲には、色々買い揃えるオタクの友達が何人かいた。そのため、自分が買わなくても上記のことは覚えていた。今、Twitterで伊能津を擁護しているアニメ大好きそうな連中、皆、忘れちゃったのかなぁ。バカ揃いなのは知ってるけれど、そんな程度の頭なら、情報強者を自称するの、辞めちゃえばいいのに。

それはともかく、遊んでる学生の延長気分で「これ位いいでしょ」が通用する世界ではないよね。ま、ああいうことをする絵師は再犯率も高いと思うので、一発退場が妥当。起用しない方が良い。

今この絵師のキャラをチェックしてみたが、豊川まどか南ふうかと徐々にきわどい方向に影を付けようと試した形跡がある。

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 豊川まどか:直立しているので殆ど目立っていないが、足に沿って影がある。

 Minamifuuka_2  南ふうか:やや動きのある姿勢となり、影がより詳細についている。

また、中山ゆかりのカバンの角度(振り回しでもしない限りああならない+左足が変)、杜みなせのダイヤの持ち方(あんな風に持ったら真ん中で折れる)など、物理的に不自然さを感じる絵が目に付く。また、みぶなつきにも共通するが、一部キャラの髪が不自然に長い(例:南ふうか、門田さくら)。現実には精々胸位だろう。車掌・運転士・ホーム要員は風による巻き込みの点からもリアリティが無い。

案外、デッサンやキャラデザ指南書などで基本を学ばず、人間の骨格も理解していないデザイナーだったのかも知れない。愚かな萌えマンガ家などにしばしば見られるタイプ。先に紹介したチャーリーにしなかの方がグルメ本(本当に美味いかどうかは知らん)ではまともに描いていることが、伊能津と彼を擁護するネット右翼達をより悲劇的な存在にしている。階級章外してる当たりもどこぞの海兵気取りの親脛齧りより謙虚。

しかし冒頭の代替案として提示された絵、公共的な制服を着せる業種にありがちな、服装チェックの図その物になっていたのは笑った。確かに正しいけど、女性絵師が陥りがちな記念写真ポーズで、萌え以前に絵として何の面白味も無いんだよね。

ところで、制服という物の性格上、ビシっと決めると軍隊的な性格がもろに視覚化される。私はその程度は許容するけど、フェミニズム的な人達は反軍的思想と親和性が高い人が多い。だから、この辺は興味はある。例えば、今回の火付け人にも混ざっていた、日頃から欧米ではどうのこうのと日本の悪いところを指摘し、衰退を予告する親切な人達。確かに有難いと思う反面、外国の良いとこだけつまみ食いを重ねるクリームスキマーに映らなくもない。悪いけど、米英仏辺りなどは、軍隊の弊害を現在進行形で撒き散らしたり、映画で立派なことを語って、社会制度が整っている割には治安が悪かったりもするから、そういう国のメリットだけを主に享受してるらしい彼等は、何だかなぁというのは思っている。

追記:後日、次の記事を書いた。
【フェミもネトウヨも】スイスの鉄道の10年以上前にPC対応キャラを登場させていた鉄道むすめ【上辺だけ】

2016年10月10日 (月)

日本が韓国に学ぶべき点をまとめてみる

【はじめに】

1・2か月ほど前だったか、2ちゃんねるで私を批判している人が「韓国に学べってさ」と嘲っているのを見た。

私は自分自身が軍事マニアとの自覚を持ちつつも、日頃から軍事マニアやネット右翼の差別体質や御用体質を批判しているので、反対に私を批判する人達も必然的にそういう類の人達が主力である。軍事マニアやネット右翼は韓国に関する事物は何でも小馬鹿にしたがる。だよもんというTwitterアカウントのように、一人称を「ウリ」などと変えてふざけている一部の愚かな自衛官もその同類だ。

しかし、韓国の1人当たりGDPは今や30000ドルに迫り、落ち目の日本と比べてもそれ程差は無くなってきている(即ち潜在購買力も高い)。また得意な市場を模索し、日本製品が世界市場から駆逐された分野もある。経済情報を定期的にチェックしていれば多少は分かるものだが、ネット右翼は「パクリだから」「品質が悪いから」といった捨て台詞で片付け、当の日本企業が追い込まれていく過程でも何ら有効な対策を提言しなかったし、これまでは日本企業もネット右翼をまともに相手にはしなかった。

さて、最近気付いたことだが、私は日本より韓国の方が優れている点とは一体なんだろうか、という観点からの調べ物はしたことが無かった。その理由は幾つか思い当たる。

  1. 「××国は最近先進国になって日本より優れた点もあるから学ぶべきだ」という主張は、相手の経済力であからさまに態度を変えるという点で、余り褒められたものでは無いから(なお逆パターンは、百田尚樹の糞貧乏長屋発言である)。とは言え、必要に応じて優れた点に注目するのは良いだろう。
  2. ネット右翼の議論のペースに無意識に引き込まれ、反論のパターンが「右翼は日本が素晴らしいと言っているが、実際は日本は酷い国だ」というものに陥り易かったため。だがそもそも、マイナスとマイナスを比べて耳目を集めるという発想は、それを好んでやっている人の人生観の投影ではないだろうか、と思うことがある。
  3. 日本より(圧倒的に)貧しかった過去の韓国のイメージに、リベラル派まで囚われている。

韓国・朝鮮人への差別意識が剥き出しになった時代を迎える一方で、日本が国家としては衰退の道を辿っている以上、ささやかであっても、今回採用した方法で現実を知る必要はあるものと考える。

なお、料理の味・大衆の気質などの優劣や、製造業の比較は下記では取り上げない。定量的基準に乏し過ぎたり、新味が無いからである。

【1】映画ポスター比較

Birigyaru

内容ではなく、広告に関する比較である。絵を見比べれば説明不要かと思うが、日本側の、女子高生の容姿に必要以上に依存し粗筋まで分かってしまうというつまらなさ。「見逃した名作も見つかるかも…? #女性映画が日本に来るとこうなる」というまとめにより、おっさんに媚びたポスターが女性映画で濫造されるのが日本の日常風景と判明したため、数多くの名画が誤解されたのではないか?と疑われた中で紹介された一作である。

関連として「#女性映画が日本に来るとこうなる」の「女性映画」ってなに?~変わりゆく女たちの映画昨今」を読まれると歴史的背景も分かる。

それにしても、電通架空請求・女性社員過労死などの不祥事を見るにつけ、莫大な広告費をかけて禄でもない内容のポスターに改悪し、当の担当者達は超長時間残業に苦しむというのは、「日本の広告代理店は単にビラ配りのマージンを中抜きしているだけで、存在価値はありません」と宣言しているに等しい。

【2】記者クラブの廃止

一般論として、記者クラブは日本で特異的に発達・残存している制度と説明されるようだ。これがあるために、会員以外のメディアやジャーナリストは取材対象の会見に参加を許されない。韓国では日本統治時代に定着したそうだが、2000年代に政策として廃止している(参考:韓国で記者クラブが廃止されたいきさつ)。

調べ物をしてみると、記者クラブのメリットを謳う主張もあるが、よく読んでみると広報側の都合に基づいたメリットが挙げられていることが多い。その他、取材対象の理解度を上がるので、重要な情報を早期に掴むことが出来るとの擁護論もある。しかし新聞記者を経験した人達の意見を聞いていると、大抵は床の間の置物に終わっている。

今年の夏、『大本営発表 改竄・隠蔽・捏造の太平洋戦争』という新書がかなり売れたそうだが、同書を読むと戦時中から現代に通じる記者クラブの悪習が空疎な戦果発表を暴走させた原因であることを明らかにしている。韓国の記者クラブ解体を詳しく研究した同志社大の論文「韓国・盧武鉉政権による「記者クラブ」解体の研究」によると、日本でも民主党政権発足当初は党会見のオープン化を図るなど、記者クラブ解体の機運があったそうだが、その後自民党が政権を奪還し2016年に至る現在まで、そのような政策は無いまま。こう見てくると、米国のように元々記者クラブ文化が希薄であったり、或いは皆無だった国よりも、日本に類似した状況にあった韓国の事例はとても参考になるだろう。

勿論、盧武鉉政権を取分け嘲笑し、民主党(現民進党)を目の敵にしている何時もの連中は、こんな話は取り上げてこなかった。大手メディアもこの件は消極的なので、韓国の事例を初めて知る方は意外に多いのではないだろうか。

【3】裁判官のキャリア形成

裁判官でもある岡口氏が法曹一元が実現している事例を紹介した時の一言。TLを見てみると「そんなことを口にするあなたも裁判官以外のキャリアが無い」と反論されているが、揚げ足取りだろう。なお、同じような提言は『絶望の裁判所』などでも指摘されていることで、岡口氏が突然言い始めたことではない。日本にも弁護士任官制度などはあるが、絶対数は少なく、世論の批判を誤魔化すために導入したものとみなす向きもある。

それにタコツボ化を避けるため、中途採用や他業界への出向経験者の比率を高めてバランスを取るように努力している職業は、転職市場の盛況を見れば分かるように幾らでもある。

コラム
法曹一元が進まない一方で、行政たる官庁は自ら弁護士を中途採用し法的問題への対応(と言えば聞こえがいい建前だが)に従事させている現実もある(『公務員弁護士のすべて』参照)。行政の情報的優位性を考えると何とも言えない思いになるのだが。

【4】国際空港の比較

東洋経済が木を見て森を見ない類の鉄道マニアによる仁川・成田の比較記事「日本vs韓国「空港鉄道」はどちらが便利か」を載せたことに対する批判である。

2番目のツイートにあるような昔話なら、成田は駅から空港内への立ち入りにもパスポートが必要であり、漸く2015年廃止されたという話もあった。勿論成田の成立史に遠因があり、「左翼が悪い」で片付く話ではない。埋め立て地に建設した仁川では成田のような「経緯」は無いはず。

この他、記事には駅と空港が離れていると書かれているが、一方で私が少し検索しただけでも動く歩道や無料の移動車でその欠点を補完しており、日本向けの観光案内にも紹介されている。記者は私と違って仁川に行ったのは良いが、きちんと調べたのだろうか。

【5】完全に出遅れたハブ港化

名古屋は世界の三流港なのに 隅田金属日誌

日本勢のハブ港競争脱落は90年代には明らかとなり、釜山、高雄、香港、上海等の後塵を拝するようになってもう15~20年は過ぎている。上記は今更のように、しかも地方港に毛が生えた程度の規模に過ぎない名古屋港を取り上げ、「釜山に対抗せよ」と煽り立てる産経新聞をたしなめたブログ記事である。

「学ぶべき」という点からは、後追いで不徹底な港湾整備ではなく、何故韓国は港湾分野に活路があると判断出来たのか、どのようなブレーントラストやプロジェクトチームが計画したかなど、集中投資を決定した過程を分析した方が有益だろう。そうした研究・啓蒙に必要な投資額は港を作るより遥かに安価である。

コラム
既に、手際よくまとめたハブ港政策検証本は存在していると思われるが、仮に一から調べるとしても、古い『運輸と経済』『トランスポート』『コンパス』『港湾』などの専門誌を漁れば傍流扱いされた議論を含めて当時の港湾行政の推移は把握出来るだろう。

【6】性犯罪の事後対策

性犯罪発生率に関し、韓国を最低限クリアすべき規範の例と主張する者はいないだろう。ただし、この問題も手垢の付いたネタではあり、統計比較によっては韓国より強姦発生率の高い中進国、先進国が複数存在している中で、韓国がネット右翼に殊更クローズアップされている点は指摘しておく。

韓国の場合日本が評価すべき点は(事後)対策にある。例えば2013年に強姦を非親告罪化した。強姦犯罪の主たる問題は、被害者が被害届を出すまでに、精神的に消耗し尽くしてしまうという点にあり、この事が暗数(野放しの強姦)を圧倒的に多くしているのは常識だ。その対策が被害者に負荷をかけず立件出来る非申告化で、先進国の趨勢となっている。なお、韓国の対応は立法準備の段階で日本語でも報道されていた。その後計画通り制度化されたことが、ハングルの読めない私でも容易に確認できる(参考)。日本は2016年になっても法制審議会で議論している段階である。

また、「性犯罪を犯した人間の処遇」という点では、韓国は2000年代に犯歴のある者を電子的に監視するよう法制化した国の一つ(GPSを装着)である(参考)。韓国人の性犯罪者には必要だが日本人の性犯罪者に不必要であると主張しても理屈は通らないだろう。取り分け「アニメとゲームを与えておけば性犯罪に走る者はいない」と主張してきた連中、もちろん罪を犯した者への効果的なペナルティには諸手を挙げて賛成・・・・しないんだろうなぁ。

【7】軍事博物館

左翼の方は「こんなものが優れていても」と思われるだろう。私も今更この種の展示に熱中して安倍政権を下支えするのは御免と考える者だが、軍事マニアやネット右翼には口先だけの人物が多いため例示した。話の発端は、「日本に軍事博物館が無いのは脳内が最高にキマってる左翼の遺産破壊のせいだ」というようなツイートをしたあるネット右翼の発言(削除逃亡済み)による。

赤い豚氏は「日教組のDNA」を売り文句にする左翼系の大学研究者だそうだが、同時にウォーゲーマー上がりだけあって良く調べている。なお、日本でも「大和ミュージアム」は史料調査会出身の戸高一成氏が設立に関わり、学芸員を擁して沈没艦の調査に派遣するなど上記の条件を満たし、思想はともかく軍事博物館としては成功している(設立経緯は『戦艦大和の博物館』として上梓)。しかし、文谷和重氏のブログによると私財を集めて建設しようとしている軍事博物館はその資金収支が不透明で、ほぼ外れだそうである。その他遊就館とかいう、脳内が最高にキマってる信者による参拝(文字通りの)が絶えない、何か軍事博物館のようなものもあることはある。

【まとめ】

韓国の社会は日本以上に大企業や学歴への偏重がある、北朝鮮への対抗から徴兵制が敷かれる、デモの弾圧が日本より厳しいなど、問題も当然抱えている。もっとも、今挙げたようなマイナスの事象を日本で積極的に拡大しようとしているのは、安倍政権を支えているようなネオリベや右翼政治家だが。福島原発事故以降目立ってきたが、かつて韓国の建築を嘲笑ってきた者達が、国内の土木建築工事の不正や不手際を必死に庇ってみせるのも実に滑稽だ。

この他にも、専門家の目から見て韓国に学ぶべき点は色々あるだろう。私怨を疑われる仕事上の愚痴で右派を煽り立てるのは止めて、自分の得意な分野での知見を持ち寄ってみるのはどうだろうか。そもそも、上品でも技術力がある訳でもない奴が、自分が日本人というだけで「日本人は上品だ」「技術の日本スゴイ」と他人の事績を自分がやったように自慢するの、物凄く不愉快なんだよね。

【付録:日常に噴出する外国人差別】

それにしても、最近2週間ほどの間に起きた外国人差別事件

  • 「市場ずし」の店員が外国人観光客にワサビを増量する嫌がらせを繰り返す
  • 阪急電鉄の旅行代理店社員がチケットに「チョン」と印字し、「差別語とは知らなかった」とうそぶいた(関西という土地柄、同和教育もあり、あり得ない回答。会社ぐるみで舐めていることが良く分かる)
  • 南海電鉄の車掌が「外人」が多数乗車していることを理由に「日本人乗客にお詫び」した
  • 上記3件のニュースから日を置かず、道頓堀で韓国からの観光客が暴行を受けた。

はレイシストのデモより根深さを感じる。鉄道会社は地場資本・民族資本(日本人による資本の意)をルーツに持つところが多く、必然的に排他的になる要素を持っている。政治的に見れば、全て、産経新聞、そこまで言って委員会、橋下維新が10年以上に渡って煽り続けた結果だろう。これが観光立国を目指す国の姿とはどうしようもない。能無し差別芸人と目立つ事しか考えていない司会者を集めた政治色の強い情報番組を真に受けてはいけない。

16/10/12:全面見直し

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