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2015年2月26日 (木)

東日本大震災で役に立ったGPS波浪計、当時の価格は1基3億5000万円

当記事は福島原発沖日本海溝での地震津波を前提​にGPS波浪計を設置していた国土交通省の補足(備忘録を兼ねる)である。

前回記事ではGPS波浪計そのものは十分紹介できなかったのだが、東日本大震災で全く役立たずであったかと言うとそうでもない。

沖側の海底水圧計TM1は、まず地震による海底の震動を記録し、引き続く6分間に海面が約2m上昇し(津波第1波)、その後約4分後から2分間でさらに3m上昇した(津波第2波)ことを記録している。三陸の沖合では、地震後約15分のうちに高さ5mもの津波が記録されていたのだ。この2段階の津波は、約5分後に陸側の海底水圧計TM2で記録され、さらに7分後には国土交通省によって設置された釜石沖のGPS波浪計(水深200m)でも記録された。

気象庁は、地震発生3分後に宮城県沿岸で6m、岩手県沿岸で3mという大津波警報を発令したが、3分間で巨大地震の全貌を捉えるのは難しく、津波の高さの予測が過小評価となった。上で述べたような大きな津波が沖合で記録されたことから、気象庁は15時14分に津波高さの予測値を2倍に引き上げた。ただし、地震直後に停電したこと、また沿岸の住民はすでに避難を始めていたことなどから、この情報は十分には伝わらなかった。

事前に記録されていた津波」 海洋政策研究財団

気象庁の予報失敗に関しては色々レポートも出ており、「津波高が遅れて訂正され、現地への到達には間に合わなかった」という筋で批判されている。しかし、15時14分に警報を引き上げたのであれば、15時半以降に到達した地域ではその情報を活用する余地はあり、被害者の減少に寄与したのではないかと思われる。例えば「携帯でニュースを聞きながら避難行動」と言うパターンもあり得るから。

そもそもGPS波浪計の記録が無ければ第一報の津波予報が訂正されるきっかけを得ることが出来ず、より被害が拡大した、という点にはもっと関心が向けられて良い。下記でも紹介するが、GPS波浪計製造元の日立造船は

東日本大震災による大津波発生時には、岩手県釜石沖約20Kmなどに設置されたGPS波浪計が津波を観測し、気象庁が津波警報を更新することに役立ちました。
新型GPS海洋ブイの実証試験を開始」 日立造船HP 2014年11月13日

と明記している。

なお、2005年から配備されたGPS津波波浪計の初期型は3億5000万円との報道である。2011年より価格を1億円に低減したモデルがラインナップされた(「日立造船、沿岸用に特化したGPS波浪計を開発-サイズ半分・価格1/3」『日刊工業新聞』掲載日 2010年12月16日)。この情報は重要だろう。国土交通省に問い合わせればGPS波浪計による観測事業がどの程度の予算であったかを確認するのは容易であるが、そこまでは確認できていない。しかし、機器の一つとっても、東北地整管内では3.5億x11基で40億円余りの設備投資+調査費、間接費、地上設備費等々であったことが伺える。

ちなみに、『原発と大津波』著者の添田孝史氏が、福島第一の直流電源維持に最低限必要だったとしているバッテリー代が数百万円(但し部屋代は別途)である。予備の海水ポンプ電動機、電源車、移動変電所等も各々精々数千万円のオーダーと思われる。建屋の防水工事も規模によりけりだが、扉を変えるとか、空気取り入れ口のダクトを上に持っていく程度なら精々数億円レベルだろう。国交省が出した40億の予算と、東電や経済産業省が渋った原発の安全投資額を比較することは意味のある行為と考える。

ちなみに、GPS波浪計の現物と開発経緯は次のリンク先に書かれている(「GPS海洋ブイの概要」 第10回津波予測技術に関する勉強会 資料3 平成25年7月2日)

こちらに17基納入と書かれているのが震災で活躍したタイプだろう(「GPS海洋観測システム」 日立造船HP)

近年は従来のRTK測位法をPPP-AR測位法に変更した新型の実証試験を2014年から開始しているが、これが先の日刊工業新聞掲載のタイプを指すのかどうかは分からない(「新型GPS海洋ブイの実証試験を開始」日立造船HP 2014年11月13日)

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