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2014年12月28日 (日)

開閉機器メーカーの活動実態-各事故調が食い込まなかった津波対応、更新提案、カルテル-

当記事は「地震で壊れた福島原発の外部電源-各事故調は国内原発の事前予防策を取上げず」、「電力各社の原発外部電源-関電美浜・原電東海第二は開閉機器更新の実施未定-」の続編である。

前回までのまとめ:発電所の外部電源(開閉所)にはABB(空気遮断器)やGIS(ガス開閉装置)などの形式があり、福島第一では耐震性に劣るABBを使っていた為地震で破壊されてしまった。GISはABBよりは耐震性に優れている。事故前にGISへ予防更新した電力会社がある反面、東電福島の他原電東海第二、関電美浜など未だに更新していない原発もある。

これまでは電力側の経緯ばかり見てきたが、メーカーの対応はどうだったのだろうか。今回は、事故調が報告しなかった点も意識しつつ、そこを研究してみた。

【開閉機器の津波対策は1980年代には確立済み】

敷地高を提示するのは電力会社や地質を専門とする土木系コンサルタントであり、地震対策はともかく、直感的には津波想定の不備を電機メーカーに求めることは難しいように思える。しかし、次のような事実はもっと知られるべきだろう。

以前の記事で、私は原子力安全・保安院の報告から開閉機器の問題を引用したが、そこには次の一文があった。

○(社)電気協同研究会による遮断器の耐震性能調査によると、タンク型遮断器(ガス絶縁開閉装置 (GIS)等)は、がいし型遮断器(気中遮断器(ABB等)等)に比べて耐震性能が高いとの結果が得られている。

原子力発電所の外部電源に係る状況について」原子力安全・保安院 2011年10月24日

この件を保安院が発見できたのは電気協同研究会が年数回研究誌『電気協同研究』を発行し、工学系大学でも受入するような対外活動を継続していたからと思われる。『電気協同研究』は主に水力、変電、送配電機器を対象とし、毎号数十ページに亘る研究記事を掲載しており、メーカーからの主体的な姿勢が見られる。なお、遮断器の耐震性能調査が最初に行われたのは1970年代後半のことであった。

しかし、3・4号機開閉所が津波で被水したにも関わらず、保安院は『電気協同研究』にて下記の対策が常識化したものとして掲載されていたことには触れていない。保安院だけではなく、各事故調も同じである。

3-1-1 水害対策の考え方
変電所は基本的には水害対策が不要な地点を選定するが、立地条件の制約などから水害のおそれのある地点となる場合は、山地、平野においては洪水、山くずれ等、感潮地域においては、洪水、高潮等、海岸地域においては高潮、津波等の現象を十分把握して対策する必要がある。

「変電所防災の実効策」『電気協同研究』No.40Vol.5 1985年P26

「水害対策の考え方と具体的事例」という表から津波について抜粋してみよう。

高潮・津波
対策の考え方:
〇計画潮位以上または過去の最大潮位(台風時)以上の敷地地盤高さとする。
〇敷地地盤高さが上記値以上にできない場合や局地的浸水などにより被水する恐れのある場合は機器や建物で対策を行う。

具体的対策例:
(1)敷地の嵩上げ
(2)機器の対策
 〇基礎の嵩上げまたは高架台化
 〇操作部の嵩上げ
 〇GIS化
(3)建物の対策
 〇防水扉
 〇角落し
 〇防水壁
 〇ケーブル類引込口の防水処理
 〇ケーブル類引込口の嵩上げ
 〇排水設備(ポンプ容量は過去の実績より算出)
 〇排水管の逆流防止設備(ストップ弁)

変電所防災の実効策」『電気協同研究』No.40Vol.5 1985年P26

電気協同研究の記事は幅広い災害のパターンを想定しており、雪害の場合も頁を割いているが高架台化などは津波の他雪害にも有効であることを教えている。

Denkikyodo1985_no40vol5_p27 「変電所防災の実効策」『電気協同研究』No.40Vol.5 1985年P27より高架台に載ったキュービクル

また、電気協同研究会が記事作成に当たり電力各社に実施した調査によれば、敷地高は既往最大の高潮・津波以上としていたという。一方、歴史津波の調査が進展したり、既往の事例は無いが地震学の観点から今後発生し得る最大津波をも想定に入れた場合などには、想定値が更新される。この対応が問題となったのが福島だが、想定津波が大きくなっても対処法は1980年代には確立していたのが実態であった。

大津波の想定を行った時点で福島第一の開閉機器は更新期を迎えていた。前回記事の九州電力回答を参考にすると、陳腐化した設備を維持し続けた場合、コストパフォーマンスすら予防更新より劣っていた可能性がある。そうであれば、設備更新に合わせて高架台化程度は実施しておくのが筋だったろう。

実は、最近の知見を活用して津波被害を回避した開閉設備の事例がある。

東北電力八戸変電所は津波ハザードマップを作成した際、浸水が予想されたため、架台にGIS機器を載せていた。

Tohoku_20110928_hatinohe 出典:「設備被害の状況分析について(火力発電、流通、配電設備) 参考資料集」東北電力株式会社平成23年9月28日(本文はこちら

この事例が有名にならなかったのは、「設備被害の状況分析について(火力発電、流通、配電設備)」で区分されたからであり、報告は2011年秋にはなされていた。八戸変電所は流通設備に区分されたのだろうが、同様の機器は原発にも設けられる。

なお、東北電力が経済産業省に提出した資料ではGISの製造元、設置年は書かれていないが、次に述べる日立製作所の工場史と照合することで明らかとなる。

図2-43は津波対策かさ上げ架台上に設置となる仕様であったため、耐震解析による設計検証ならびに架台の地元発注により顧客ニーズに答えた12回線の大形受注であった。

以上(注:他にも注力した案件の説明があるが割愛)による実績の積上げ、顧客ニーズへの積極対応、また、営業・技術の絶大なるバックアップにより、2005年(平成17年)(納入)会津変電所12回線ならびに2007年(平成19年)(納入予定)南仙台変電所10回線他、2変電所(従来形への新形増設)を受注することができた。

Kokubu50nen_p104_fig243
「第2章 遮断器 3.2 168kV GIS」『国分ものづくり半世紀』2007年P103-104

経済産業省に提出した資料の作り方も相変わらず問題であると言えるだろう。経緯解明の妨害にしかなっていない。2003年なら福島第一の津波想定問題と同時期である。

八戸変電所の事例を通じ、少なくとも日立にはハザードマップ利用の経験も蓄積されたはずで、それを他でも活用するのは当然の発想と言えるだろう。

地震の他、津波に対しても対処法があったのが分かったところで、次節ではメーカーの視点を軸に述べていく。

【日立製作所にみるメーカー側の更新提案活動】

開閉設備のメーカーが事故調からほぼ見逃されてきたのは、官僚や一部技術者による意図的な無視を除くと、次のような理由による。

  • 電気機器の寿命は20年以下を想定しているケースが多く、予防保全更新の機会を経ていることが知られていない
  • 政府事故調は畑村洋太郎の意向により「責任を追及しない」方針を立てた結果、報告書ではメーカー側の調査報告がおざなりとなった
  • 各電力が最終納入者(一次コントラクター、主幹会社)の名前で納入されたことのみを回答し、詳細を商業機密の名の元に隠しているため

予防保全で更新需要があるところがポイントだ。日立製作所の変電機器製造拠点であった国分工場(現国分事業所)は興味深い記録を残している。

2.1 電力会社への展開
(1)電力会社に対しては、まず本店で予防保全キャンペーンを実施し、その後保守担当者の所属する電力所ベースで健全性点検を含め実施。

(2)健全性点検は187kV以上の機器に対しては1回/年、154kV以下の機器に対しては1回/3年の頻度で実施。その後、1995年度(平成 7年)より500kVは1回/年、275kVは1回/2年、187kV以下は1回/3年の頻度で実施し、1998年度(平成10年度)にて終了した。

2.2 一般産業会社への展開

(中略)2006年(平成18年)4月から納入後約30年以上を経過する約440サイトの再訪問を展開中である。

一般に電力会社の場合には設備改善に対する認識は高く、計画的に予算をとり実施されている。しかし電機一般産業の場合は設備保守担当者の理解が得られても、上層部の受変電設備の改善に対する認識が低く、生産設備に対し高い関心を示す傾向がある。

このような傾向を打開するため、トップダウンによる予防保全セミナで顧客の保全意識改革を図るとともに、顧客担当者の意向を健全性点検結果に反映さ せ営業、事業部、SSセンタと一体で既納設備の事故未然防止のための設備改善、老朽設備のリプレースモダニ更新提案活動を展開した。

「第10章 品質保証 第5節 予防保全サービス活動」『国分ものづくり半世紀』2007年

中国電力島根1号のような例は確かに「設備改善に対する認識は高い」好例であるだろう。では、何故この記述者は「一般に」と前置きしたかと言えば、東電原子力部門や原電東海第二のような事例があるからだろう。東電は既納品の保守は五月蠅いかも知れないが、更新提案を示されても引き伸ばしていたのだろう。場合によっては「手間のかかる既納品の保守」という仕事を残すことで地元に雇用を与えたつもりになっていたことも考えられる。1990年代末以降、定期検査の合理化によって地元への雇用効果は以前ほどは無くなっており、雇用不安の声に別の形で応える必要はあったためだ。

なお、微細な部分まで拘る方は2.1に更新提案活動が記載されていないことを以ってそのような活動をしていないと主張するかも知れないが、GISに関しては当該機器のページで発電所向けに活動を行っていたことが記載されている。

2000年(平成12年)からは、72~168kVGISと同様に顧客の最大ニーズであるコストダウンに対応するため、大幅な構造変更による開発を推進した。

(中略)GIS-CBの上部に主母線を配置する形の、これまでにない斬新な構成により、大幅な縮小化を達成した。初号器を以下に納入済みであるが、今後遮断器を輸出362kVと共用とし、さらなるコスト低減を図る予定である。現在リプレース案件の取込み活動を推進中であり、特に日立超高圧GIS初号器である九州電力(株)川内発電所へご採用いただけるよう活動中である。

「第2章 遮断器 3.3 300kV GIS(240kV GIS共用) 」『国分ものづくり半世紀』2007年P105

福島第一で多用されている275kV機器は電圧階級的に同レベルなので、当然同様の活動を行ったものと思われる。

最近、政府事故調査委員会ヒアリング記録(第3回)が公開されたが、私が気になったのは、日立の技術者達が証言した際、持参した計装機器の参考資料がメーカーカタログであったことだ。実際にはもっと詳細な納入仕様書を要求、電力に提出している可能性がある。問題になるスペックなどは詳細資料にのみ書かれていることもあるだろう。カタログは可読性の面では有用だが、このような資料を持参してきたことに疑問を持たない時点で、聴取側の能力に疑問符が付くのである。

ヒアリング記録公開の例は今回の記事に関係しないが、メーカーから引き出すべき情報を如何にして着想し、リストするか、という問題としては一脈通じるものがある。日立が行っていた活動は私にとっては予想の範囲内だったが、世間一般にはそうではない人の方が多いのではないかと思う。今後の事故調査および訴訟に当たっては、各原発サイトに対する日立、東芝、三菱、明電舎等の開閉機器更新提案活動の記録開示も必要と思われる。

なお、日立に関しては更新提案を受注した場合の対応余力は十二分にあったと判断出来る。

1995年(平成7年)には(中略)為替レートはついに1ドル80円台に突入するなど、社会的にも経済的にも未曾有の事態となった。さらに期待された景気の回復は実現しなかった。また、円高や価格破壊により受注環境は悪化し、上期の受注高月額105億円であったが、下期の受注高は月額98億円とついに100億円の大台を割ってしまった。

1996年(平成8年)の景気は依然として回復への軌道には乗れずに厳しい状況であった。上期は受注高月額102億円、発送高月額98億円で下期は受注高月額103億円、発送高月額95億円となり、ついに発送高については年度としても月額100億円を割るといった事態になり、状況はますます悪化の一途をたどった。

1997年(平成9年)の日本経済は一進一退を繰り返しながら穏やかな景気回復基調にあったが、政府の公共投資抑制策および4月からの消費税引き上げ、さらには複数の金融機関の経営問題から景気が冷え込む事態となった。このため、上期は受 注高月額101億円であったが、下期には受注高月額90億円と大幅に落ち込み、100億円事業所の座からの転落が現実のものとなった。

1998年(平成10年)の日本経済は金融機関の経営に対する信頼の低下、雇用不安などが重なって、家計や企業のマインドが冷え込み、消費、設備投資、住宅投資といった最終需要が減少するなど、きわめて厳しい状況となった。(中略)このような景気の落ち込みに加え、市場環境の著しい変化および製品ニーズの多様化の動きもあり、(電力本)としてはオイルショック以来の23年振りの赤字予算を組まざるを得ない状況となった。

1999年(平成11年)の日本経済は前年11月に緊急経済対策を決定し、財政、税制、金融、法制のあらゆる分野の施策を総動員して金融危機、経済不況の克服に取り組んだが、民需の回復力は未だ弱く、(中略)国分工場は1998年度については紀伊水道直流連系などの過去の大口受注品売上もあり、収益の確保を実現できたが、1999年度以降は売上高が激減することより、痛みを伴う軽量化が待ったなしの状況となっていた。

「沿革編」『国分ものづくり半世紀』2007年 P24~26より抜粋

「第5章 総務」にはこんな記述もある。

1991年(平成3年)以降バブル崩壊とともに景気は不況局面に入り賃上げ率は2~3%台で推移し、2002年(平成14年)から2005年(平成17年)までは賃金体系の維持(ベアなし)となった。

「第5章 総務 」『国分ものづくり半世紀』2007年

その他、同書の従業員数、出荷額等全ての指標が、1990年代後半以降工場の生産力に余剰が生じ、引き合いの獲得に苦労していたことを示している。特に、島根1号機でGISを予防更新してから2年程経った1999年の12月は最悪で、「休業5日発生」と記載されている。工場の操業を早々に切り上げ、年末休みの拡大を行ったものと思われる。

開閉機器の出荷額減少は国内の電力設備増強が一巡したなどの時代的な要因とメーカー各社の競争力と言う要因が混ざっている。時代的な要因は業界に共通するので他社も生産力には余裕があった可能性がある。その一例として、『国分ものづくり半世紀』によると三菱は2005年までの一時期、東芝の製造設備を利用する形で技術提携していたという。他社の能力はともかく余剰生産力をフイにしたのが東電で、利用したのが予防更新を行った電力各社と言うことだ。

老朽原発サイトは2011年時点で納入から30年以上経過した開閉機器が多い。以前の保安院資料で見た通り、福島第一や新福島変電所はそれに当て嵌まる。従って、メーカーによる積極的な更新提案活動の記録は、メーカー側には有利に働くことも考えられる。

では、メーカー側に取って不利な事実とは何だろうか。

【更新機器は製造物責任法施行後に納入】

追記:15/1/22

この節の論を書く前に大事なことを書き忘れていたがPL法が制定された際も、原賠法で原子炉の瑕疵が製造物責任から除外されていることは知っている(第138回 原子炉メーカーの製造物責任)。

ただ、ここで疑問なのは外部電源のような周辺設備の扱い。制度の趣旨や過度の判官贔屓である日本の司法制度から考えると、やっぱり除外されるんだろうとは思う。原産協会は損害の様態について解説ページを載せているが、地震のケースにはめようとするだろう(原賠法適用の条件と原子力損害の形態)。

しかし、自民党政権が何時までも力を得ているとも限らない。グレーゾーンの設備損傷が引き金の場合、他の政権であれば解釈を検討してからある程度責を負わせるかもしれない。また、この規定の問題点を指摘するためにメーカー訴訟を行っている反対運動団体もある(原発メーカー訴訟とは?)。

ただし、原賠法を解釈変更するなどの対応を通したとしても、まだ問題はあるように感じた。鬼が笑うような話だが、一読頂きたい。

アメリカでは製造物責任法(PL法)は1960年代から発達し、近年の訴訟では社内メールまで保全開示が要求されている。一方で、日本での法制化は1990年代の事であり、アメリカに比較するとまだ発展途上である。法の不遡及原則から言えば、福島第一建設期はPL法でカバーすることができない。カバーし得るのは建設時の契約書であり内容を再検証する必要があるが、商業機密として通常は開示されていない。

だが、予防更新を行った部位に関しては(原賠法を考えなければ)PL法の範囲に包含される可能性がある。最近、某社に就職した同窓と飲みに行った際に聞いたことだが、アメリカでは真空遮断器の交換時の不具合で発電所所員に死者を出した案件があり、製造元の重電メーカーは警告義務違反で訴えられたとのことだ。

そのような事例がある以上、開閉所、配電盤、非常用電源の予防更新に関する再検証は必須と言えるだろう。何せ、前回紹介した桜井淳『日本「原子力ムラ」惨状記』その他に記されているように圧力容器と建屋以外の全ての部位は更新を受けているのだから。

【カルテルによる需給調整、機会喪失】

この件についてJETROは興味深いレポートをまとめている。

07年1月24日、欧州委員会は、ガス絶縁開閉装置(GIS)の市場でカルテルを結んでいたとして、日本企業を含む11企業グループに対し、総額約7億5,000万ユーロ(1ユーロは155円)の支払いを命じた。11社はABB、アルストム、アレバ、富士電機、日立製作所、日本AEパワーシステムズ、三菱電機、シュネデール、シーメンス、東芝、VAテックである。

(中略)本件は、関与企業の1社であるABBが自首減免(リニエンシー)制度を通じて通報を行ったことが摘発のきっかけとなった。欧州委員会はABBが提供した多数の内部資料や企業情報、抜き打ち査察で押収した資料に基づき制裁を決めたが、決定的証拠として88年に関与企業間で交わされたカルテルの合意書2点が見つかっており、カルテルの存続期間全体にわたる証拠資料は約2万5,000ページに及んでいる。

EU側のカルテル関与企業は、88年から04年にかけて、調達入札の不正操作、価格固定、プロジェクトの受注割当、市場分割、機密情報の交換などを行っていた。受注するプロジェクトを各社間で割り当て、これに応じてプロジェクトを受注できるよう入札調整を行っており、事前に最低入札価格を合意するケースもあった。方針や戦略は管理職レベルで定期的な会合を持って決められ、プロジェクトの割当や偽造入札の準備などの実務は下位レベルで行われていた。また、連絡を取り 合う場合は、企業や個人を特定できないようコード名を使用し、Eメールも暗号化して会社や自宅のほか、すぐに個人との関連が分かるようなコンピューターから受送信することは固く禁じられていた。こういった周到さを欧州委員会は悪質とし、違反の重大性と結びつけた。

このケースで制裁金を科された日本企業5社は、実際には偽造入札や価格操作には参加しておらず、欧州では88~04年の当該製品納入実績もほとんどないと されている。それにもかかわらず、欧州委員会が巨額の制裁金を科したのは、同カルテルでは「日本企業は欧州での入札を手控え、欧州企業は日本市場に参入しない」という合意があったと判断したためである。日本企業が合意の上でEU市場に参入しなかったこと自体が国際的カルテルへの参加であり、本来ならばEU市場に生じていたはずの競争の阻害に加担した日本企業の罪は重いとみなされた。

EUにおける最近のカルテル制裁の動向」『ユーロトレンド』2007年4月

典型的な利益相反行為である。

『国分ものづくり半世紀』は2006年度までを対象としていることもあるようだが、発行は2007年5月なので制裁決定後である。同書は技術的な瑕疵なども本音ベースで記述するなど社史としては極めて良心的であることは強調しておく(同業他社にはパンフレットレベルで済ませているケースもある。一例は『東芝府中工場50年史』で配電盤に関する記述は数ページの図絵のみ。)が、本件には触れていない。

上記の通り、カルテルが1988年から2005年までの長期にわたり存続した結果、GISで国外メーカーが日本市場に参入することは無かった。このことは、海外企業による防災への視点を電力に意識させることも妨害したと言える。まだ私は調査し切れていないが、政府事故調関係者や奈良林氏が盛んに宣伝している津波対策の海外事例などと同じような、「有用な先進事例」が存在していた場合、このカルテルは海外技術の取り込みを妨害した形で、直接的に事故の遠因となるだろう。また、東電のような大型の顧客に関する類似の情報交換が無かったかどうかも検証する必要がある。カルテルによる需給調整で更新が延ばされている場合などが想定し得るからである。

なお、欧州委員会は2009年にも変圧器の市場分割カルテルを指摘している(「欧州委員会,市場分割カルテルを行った電圧変圧器メーカーに総額約6760万ユーロの制裁金を賦課」『公正取引』2009年12月 )。

原発事故後、反対派は無論の事、東谷暁氏のようなコテコテの推進派人士からもメーカー責任を問う声があったことを思い出す。推進派なら原賠法を盾に議論すら忌避するだろうが、予防更新という課題に対して電力・メーカーがどのように対応したのかは興味深い。メーカー側が様々なリスクを明示して提案を行っていた場合には、責任の所在はそれらを無視した電力側に傾く。逆に上記のカルテルのようなものに規制官庁や電力側が加担し、能力・知見のあるメーカーを活用することが出来ない状況が作られていた場合には、カルテルに関与したメーカーの責任は重いだろう。

社会に出て最初の数年間、日立の原子力部門に在籍したことのある大前研一氏は、「究極の事故原因は外部電源がすべて崩壊したことだ」の一言で片づけ、『原発再稼働 最後の条件』でも外部電源について碌な分析が無かった。これらの不作為に対してどのように答えるのだろうか。まぁ、例え著名人から同様の問いかけが為されても、無視するだろうが、どんな手段を用いてでも聞いてみたいとも思う。

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東京電力福島第一原子力発電所事故」カテゴリの記事

コメント

オブスレにでしゃばってくる「岩見アンチ」ですが、いよいよ統失の域に達してきたようです。
なんでもオブスレの書き込みは全部「アレ」の自演だそうです。

私には「岩見アンチ」が1~2人の自演に見えて仕方がないのですが。

(何しろ書き込みの内容が「半島に帰れ」「○ねばいいのに」「在日犯罪コピペ貼り」の三種類しかないんので)

情報有難うございます。

私も褒められた性格ではありませんし、過去に間違いも犯しました。
(その節は当該スレでもご迷惑おかけしました)

ただ、彼はどうしようもないです。
向こうでは話してませんが、彼がWikipediaで暴れていた時も全てのアカウントとIP(自宅回線と勤務先)でずっとあんな感じでしたし、
2012年秋頃、複数人を装って小生のブログに書き込みしていました。
全部IPアドレスは見えてたんですけどねぇ。
そのIPがWikiで確認した分の内自宅からの回線のみだったので、こちらが要求した通り、最低でも勤務先の監視が入ってるのは確実と判断し、
ブロック設定して放置することにしました。

御承知の通りブログでやることもありましたしね。
まぁモデルとしてはヨーゲンのような人格を想定しています。
人間100人1000人集めてくればあーいうしょうがないのはおりますよ。

大体あれだけのネタを私が集めてこれると思ってるのがおかしい。
ネタの方向性も違うし、もっとセンスのある名無しさん方が拾ってるに決まってるじゃないですか。

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