電力各社の原発外部電源-関電美浜・原電東海第二は開閉機器更新の実施未定-
当記事は「地震で壊れた福島原発の外部電源-各事故調は国内原発の事前予防策を取上げず」の続編である。
前回記事まとめ:発電所の外部電源(開閉所)にはABB(空気遮断器)やGIS(ガス開閉装置)などの形式があり、福島第一では耐震性に劣るABBを使っていた為地震で破壊されてしまった。GISはABBより耐震性に優れ、1980年代半ばより主流となっている。
今回もこの問題に焦点を当てる。
【桜井淳氏の間違い-電力会社による違いはある-】
ところで、原研出身の技術評論家、桜井淳氏はテーマによっては自己の経験とオリジナリティある調査に基づいた鋭い指摘を行うが、逆に的外れな指摘も目立つ。
近著では、次のような言葉が気になった。
4 吉岡斉発言の虚構性
吉岡斉さん(九州大学教授、科学技術政策専攻)は、民間事故調査委員会の聞き取りに対し、「東電の安全対策は他社と比べて最低ラインでやっている」(福島原発事故独立検証委員会「調査・検証報告書」三一八頁)と指摘していますが、事故後の印象を主観的に表現しているだけで、客観性は、まったくありません。
なぜかと言えば、日本の原子力は、具体的には、九電力会社による原子力発電では、電気事業連合会(電事連)を中心とし、「横並び主義」を貫徹しているからです。ですから、特定の電力会社がよくて、特定の電力会社が悪いということは、絶対にありません。もし、悪いのであれば、全部悪いのです。
『日本「原子力ムラ」惨状記』(2014年)P207-208
同書は他書に無い新事実を含む意欲的な内容でもあるが、この点では桜井氏の認識は間違いで、吉岡氏のコメントは事実を反映したものである。今回は以前の記事の続編として、外部電源を例に各社の対応に差があることを示し、併せて原発事故から3年半の間にまともな対策を行わなかった原電東海第二のような「悪しき例」を紹介する。
私は、電力会社による性格の差を認めた上で、脱原発を進めていくような考え方が採られるべきだと思う。簡単に言えば、旧ソ連のような極端に危険性の高い原発を運転する例は論外として、ある程度の対策を施したとしても、僅かな残余のリスクが大きな社会的損失に繋がるから、原子力は廃止するべきであるとか、九電力の安全対策の質にはばらつきがあり、いい加減な認識でお茶を濁す不穏分子が主導する会社は確率論的にゼロに出来ないといった認識である。
桜井氏のような「皆が悪かった」という議論は過去の戦争・事故でもしばしば見られたが、責任にはウェイトがあるので使わない方が良い。実際には利害関係者や要路の責任を免責する根拠に使われることが多いからである。余談だが武田徹も同種の屁理屈を弄する上に、桜井氏より悪質なのは証言者の多くを匿名化していることで、ルポタージュとしての価値が殆ど無い。気分だけを高揚させる駄本と言ってよい。
さて、外部電源の耐震問題に入る前に事故前から、耐震全般の姿勢に差があったことを示す。下記の日経産業新聞記事である。
特に現在の耐震指針(注:1978年制定のものを指す)策ができる前に作られ、東海地震時の危険性が絶えず指摘されていた浜岡1、2号機は〇八年三月まで運転を止めて補強する計画。珠洲原発(石川県珠洲市)の計画凍結や浜岡5号機の運転開始で、財務と電力供給の両面で見通しが得られたことなどを理由にしている。
東京電力のある幹部は「発電を三年近く止めたうえ百億円単位の資金を投じるのは電力自由化が進む今、大変な経営判断だと思う」と評価。その一方で「当社は原発の基数が多いし、耐震には十分な余裕があるから…」と言葉を濁す。
「原発安全再構築<上> 耐震指針見直し リスクの算出巡り迷走」『日経産業新聞』2005年2月15日8面
次の記事は続報的な位置にあり、更に詳しい。
急ぐべきか、急がざるべきか―。新潟県中越沖地震で被災した柏崎刈羽原発の耐震補強工事を巡り、東京電力はそんなハムレットの心境に陥るかもしれない。想定を上回る揺れを受けた同原発は、国が昨年改訂した新耐震指針に基づく耐震性評価が先決。ただ、その結果待ちでは工事着手は遅くなる。「まず補強ありき」で臨んだ中部電力浜岡原発方式も時間短縮の手法として浮上するが、電力業界の「盟主」としての立場が東電の判断を難しくしている。
(中略:中越沖地震による柏崎刈羽停止で)赤字転落の可能性すら出てきた東電と、温暖化ガス削減計画に暗雲が立ち込める政府。(中略)運転再開までのオーソドックスな手順はこうだ。まず耐震性再評価を通じ、各原発ごとに設計の基準となる地震動を改めて策定。その地震動に耐えられるよう必要なら補強工事をする。
想定外の揺れに見舞われた柏崎刈羽は何らかの補強工事は不回避。地元住民の不安を考慮し、補強が終わるまで再稼働の合意が得られない可能性も高い。そうなれば運転再開がいつになるのか見当もつかない。
そこで考えられる「変化球」が「浜岡方式」。東海地震の想定震源域上にある浜岡は指針改訂前の〇五年、いち早く工事に着手。もともと岩盤上で六百ガルを前提にしていた耐震性を、千ガルでも耐え得るよう補強に取り組む。
浜岡の場合、新指針に沿う基準地震動は八百ガルで千ガルあれば十分なことも確認済み。あらかじめ大幅なのりしろを見込んだ分、工事費がかさむが、東電にとっても耐震評価の結果を待って工事に着手するより、運転再開には近道と言える。
(中略)先月二十日の記者会見で浜岡方式を選択する可能性を示唆した勝俣社長の胸中を、ある東電幹部は「言い方は悪いが、カネに糸目をつける気はない」と代弁する。
ただ中部電と東電では置かれた状況が違う。
例えば実効性。浜岡は工事のためには運転停止せず、定期検査時に計画的に工事を進めてきた。同社にとって唯一の原発であり、全面停止すれば経営に致命傷となるという判断からだが、すでに停止している柏崎刈羽にはこの利点はない。
想定する地震動も課題だ。(中略)起こりえないはずの地震が起きてしまった柏崎刈羽の場合は「仮に千ガルでやりますと言っても、それで十分かと言われると反論できない」(東電役員)
何よりも中部電と東電の影響力の違いがある。「業界の三男坊」の中部電と違い、盟主・東電が補強工事に見切り発車すれば、それが業界標準となる。「糸目はつけない」投資は、他の地方電力には重くのしかかる。
「東電の立場を考慮すれば、説明責任を果たせないような拙速な補強は避けるべき」。ある東電の技術系OBは浜岡方式への追従を「急がば回れ」と戒める。
高橋徹「原発耐震補強 迷う東電」『日経産業新聞』2007年8月21日32面
このブログでは何時も書いていることだが、良い情報源は自分の立場と反対のものでも使い倒すことが大切である。日経産業新聞の記事は高橋徹記者の正しい問題意識も感じられる。民間事故調は他の事故調と同じく資料を軽んじ後取り証言ばかり採用する傾向があったので、吉岡斉氏に対しても聞き取りだけで終わらせてしまった。桜井氏の指摘は誤っているが、事故調に疑問を感じたことまでは誤っているとは言えない。
なお、日経産業新聞の記事に不足していたのは東電が引き伸ばし戦術を採ることで却って経費を浪費し、他の対策を後手に回す心理的な背景になったこと、財務状況や業界での立ち位置と無関係に災害はやって来ることなどのマイナス面に触れていない事である。「内輪の盟主論」と東電OBの戒めとの間に関連性も見いだせない。しかし、これ以上は今回のテーマから外れるのでこれ以上の突っ込みは止めておく。
問題提起だけではただのケチ付けとなってしまうので好例も示すが、薬師寺克行氏は政治家のオーラルヒストリーへの参加に当たって当人から証言を引き出すだけではなく、新聞の過去記事検索で事実関係の整合性をチェックしていた。各事故調に欠けていたのはこのような裏取の姿勢であり、脚注での補足などはもっと充実していた方が良かった。どうせPDFファイルやHTMLならクリック一つで本文と注を行き来出来るのだから。
畑村の方法を悪用して責任の所在を曖昧にした政府事故調を除く各事故調は、上記のような「時制上」決定的なソースを採用しなかったことで東電の責任論に踏み込めなかった。今後の責任論争に当たっては是非参考にして欲しい。
【各原発サイトのGIS採用状況】
会社間の相違はあることは再認識した。さて、対象を外部電源に絞った場合については実は、どこの事故調も調べ切れていない。各事故調の構成はどれも似たところがあり、地震対策や津波対策については事故前の経緯がそれなりに時系列化されている。しかし、福島事故で露呈した全ての問題点に対して事故前の経緯が書かれている訳ではない。単に科学的な因果関係の記述に留まっている場合も多い。外部電源もその一つであることは前回記事で触れ、予防更新の事例が各事故調では掬い上げられていない事実を再発見した。
この傾向は現在でも継続しており「福島第一原子力発電所事故に対する 前兆事象の検討」(『JAEA-Review 2014-031』)でも各事故調・初期2年程のメディア報道で報告された事象の取りまとめレベルに留まっている。確かに、予防更新は前兆事象とはいい難く、著者の渡邉憲夫氏も今後の可能性に含みは持たせているが、同論文の主題である「学ぶべきであった教訓や知見」という点からは、当ブログのようなアプローチも有用だろう。
ここで、新たな疑問が沸いてくる。一つは、事故前にABBを採用していた原発はどの程度予防更新されていたのか、ということ。もう一つは、仮に事故時点でABBのままだった場合、この3年半余りでどの程度の改善が見られたのか、ということである。
さて、事故前の開閉所について簡単に確認しておこう。下記は『火力・原子力発電所土木構造物の設計(増補改訂版)』(1995年)に掲載された、当時比較的経年の若い発電所の開閉設備一覧である。
前回記事でABBに拘った東電が柏崎刈羽以降はGISに移行したことを示したが、この表を見ても分かる通り、1980年代後半以降の新設炉は全電力がGISに移行していると考えられる。
「表20-4-1 開閉所の所要面積(実績)」『火力原子力発電所土木構造物の設計(増補改訂版)』1995年P975
上表は一部サイトのみを抽出しており不完全なのが玉に傷だが、この時点でGIS設備を採用していなかった原子力プラントは下記と分かる。
- 中部電力:浜岡(275kV回線)
- 北陸電力:志賀1号機
- 中国電力:島根1号機
- 九州電力:玄海1,2号機
- 日本原子力発電:東海第二
一方、北海道電力泊発電所、東北電力女川原子力発電所、関西電力大飯発電所、九州電力川内原子力発電所は1号機からGIS化されている。
また、前回ブログ記事を読めば分かるように、東京電力は福島第一、福島第二の275kV,500kV全回線がGIS化されないまま東日本大震災に至ったが、柏崎刈羽原子力発電所は全回線GIS化されていた。
1995年と2014年でのサイト条件の変化は主に3つある。
- 1995年時点で存在していなかった東通原子力発電所が加わったこと
- 各サイトで増設機が運開しその電力を送電するための外部電源も増設されたこと。例えば、浜岡5号機の増設に伴い、第二浜岡幹線(500kV2回線)が増設された。
- 浜岡1,2号機の廃炉。これにより同サイトからABBの開閉所は無くなった。
また、福島第一原発が事故により全号機廃止された。
【電力各社の旧式開閉設備更新状況を聞いてみた】
さて、震災直後2011年、旧原子力安全・保安院は開閉設備の再評価を命じたため、各社は関連するリリースを出している。しかし、予防更新についての情報は無い。
上表でGIS化されていなかったプラントを中心として、現在の状況を探るため、各社に次のような質問メールを送付し、回答を得た(強調は筆者)。
【北陸電力】
1)
御社の場合、志賀1号機が新設時GISではなかったと思います
(過去の『電力土木』文献による)。
http://www.rikuden.co.jp/press/attach/12092802.pdf
上記を読むと志賀1号機を含めGISとなっているようですが、予防更新
されたのでしょうか。
出来ましたら更新時期を含め回答ください。
【回答】
過去の『電力土木』文献は確認できませんでしたが、
志賀1号機は、運転開始時からGISを使用しています。
志賀2号機も同様に、運転開始時からGISを使用しています。
2)変圧器もブッシングなどが弱点ですが、耐震性強化の更新または
改造を東日本大震災前に講じておられたでしょうか。
【回答】
志賀原子力発電所の変圧器については,建設時より日本電気協会
「変電所等にける電気設備の耐震設計指針」に基づき設計,製作
しており,必要な耐震性を有しています。
(2014年12月3日:北陸電力回答メール)
【関西電力】
1)建設時、美浜・高浜がABB/GCBのいずれを採用していたのか御回答お願いします。
【回答】
美浜発電所・・・1~3号機全て、気中(ガス)。
高浜発電所・・・1,2号機は、気中(ガス)、3,4号機はGIS。
2)下記のリリースによると東日本大震災直後にもかかわらず高浜は全機、美浜3号機がGISとなっています。
http://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2012/__icsFiles/afieldfile/2012/02/17/0217_4j_02.pdf
東日本大震災発生前、予防更新でGISに替わっていたのでしょうか。
出来ましたら更新時期を含め回答ください。
【回答】
美浜発電所・・・東日本大震災発生前後に、GISに更新している部位もございます。
高浜発電所・・・東日本大震災発生前に、GISに更新しております。
大飯発電所・・・建設時よりGIS設備となっております。
3)美浜はGCBが残っているようですが、GIS更新計画がありましたらご回答願います。
【回答】
申し訳ございませんが、今後の設備計画につきましてはお答えいたしかねます。
(2014年12月10日:関西電力回答メール)
【中国電力】
GISに関して、政府、国会、原子力学会、東電等の事故調から聞き取りなどはありましたでしょうか。
→事故調査委員会は,福島第一原子力発電所の事故の原因や再発防止策を低減するために設置されたものと認識していることから,ご質問の趣旨が分かりかねますが,当社としてはこれらの報告書も含め,新たな知見が反映された新規制基準をクリアするだけでなく,さらなる安全性向上に取り組んでまいります。
(2014年11月17日:中国電力回答メール)
【四国電力】(2017年2月13日追記)
福島第一原発事故とその対策についてお聞きします。
外部電源が破壊された一因としてGIS化されていなかったことが保安院に指摘されて
います。
一方で、同業他社では1990年代の予防保全時にABBから更新したところがあります。
さて、御社では伊方1、2号機が比較的早期に建設されたと思います。
これらの開閉設備は当初からGISだったのでしょうか。そうではなくABB等であった
場合、予防更新されたのでしょうか。出来ましたら更新時期を含め回答ください。
【回答】
伊方発電所1,2号機のGIS化前の遮断器は、GCBでしたが、
設備の予防保全的な観点から、
1号機については、22回定期検査時(H16.9~H17.3)、
2号機については、17回定期検査時(H16.4~H16.8)に
GISに更新しております。
(2015年2月13日:四国電力回答メール)
【九州電力】
福島第一原発事故とその対策についてお聞きします。
外部電源が破壊された一因としてGIS化されていなかったことが保安院に指摘されています。一方で、同業他社では1990年代の予防保全時にABBから更新したところがあります。
1)御社の場合、玄海1,2号機が新設時GISではなかったと思います(過去の『電力土木』文献による)。
http://www.kyuden.co.jp/library/pdf/nuclear/nuclear_notice120928.pdf
上記を読むと玄海1,2号機はGISとなっていますが、予防更新されたのでしょうか。出来ましたら更新時期を含め回答ください。
2)変圧器もブッシングなどが弱点ですが、耐震性強化の更新または改造を東日本大震災前に講じておられたでしょうか。
【回答】
(1)について
玄海1,2号機の220kVの開閉所については、1号機が平成21年度に、2号機が平成20年度にGISへの更新が完了しています。また、1,2号機で共用としている66kVの開閉所についても、平成21年度にGISへの更新が完了しています。これは、保守用部品の調達が難しくなること、設備の信頼性向上の観点から予防保全更新を行ったものです。
なお、66kVの開閉所については、外部電源の信頼性確保対策として実施した予備変圧器の高台設置にあわせて、平成25年度に新たなGISへの更新が完了しています。
(2)について
変圧器等の電気設備につきましては、従来よりJEAG5003「変電所等における電気設備の耐震設計指針」に基づく耐震設計をしております。
なお、平成19年7月16日に発生した新潟県中越沖地震に伴う柏崎刈羽原子力発電所3号機の変圧器火災が発生した事象では、変圧器の基礎部の沈下による油漏れが原因であったため、玄海の変圧器の基礎構造を調査し、沈下等を起こしにくい構造であることを確認しています。
(2014年12月8日:九州電力回答メール)
【日本原子力発電】
原子力関係で1点質問させていただきます。
御社では敦賀1号、東海第二など日本の原子力開発初期に建設されたプラントがあります。これらの外部電源は建設時いずれも気中開閉式(ABB)の機器を使用しておりガス開閉装置(GIS)ではなかったようです。
http://www.nsr.go.jp/archive/nisa/shingikai/800/28/001/1-3-1.pdf
一方上記旧保安院の報告ではABB系の機器は耐震性が脆弱とのことで、GISへの更新を推奨しています。
御社の原発の開閉所、また最初に接続する一次変電所にてGISへの更新は実施していますでしょうか。
【当社発電所の開閉所設備について(現在)】
■東海第二発電所
・154kV‐気中(ガス遮断器)
・275kV‐気中(空気遮断器)
今後、ガス絶縁開閉装置に変更予定
■敦賀発電所1号機
・77kV‐気中(ガス遮断器)
■敦賀発電所1,2号機
・275kV‐気中(ガス遮断器)/ガス絶縁開閉装置
■敦賀発電所2号機
・500kV‐ガス絶縁開閉装置なお、当社は卸電気事業者のため、送電線は所有しておりません。一次変電所については他社の設備となりますので、お答えしかねます。
(2014年11月18日:日本原子力発電回答メール)
御回答有難うございます。追加質問で申し訳ありません。
2)東海第二のGIS化は再稼働とも絡むと思われますが、何年度位までに実施するか予定は立っていますでしょうか。
3)敦賀サイトはGIS/GCB化されているようですが、東日本大震災前に自主的・予防的に更新された物でしょうか。
分かりましたら更新された時期などもご回答いただきたくお願いします。
【回答】
2.東海第二発電所においては、今後ガス絶縁開閉装置を設置する予定です。3.敦賀発電所2号機のガス絶縁開閉装置は運開時に設置しています。また、敦賀発電所1号機の気中(ガス遮断器)については、2004年度に設置しています。(自主的・予防的に更新)
(2014年11月26日:日本原子力発電回答メール)
各社の担当者にはこの場にてお礼申し上げます。
他の問題も検証しなければならないので(というより、多くの人達は他の問題に主たる関心を抱いている)、開閉機器が改善されたからと言って再稼働のお墨付きにはならないが、震災前にGISへ予防更新を行った関西電力、中国電力、九州電力は率直に評価出来る。特に、九州電力の対応は意外なことにベストである。やらせメール事件という失敗がプラスに働いたのだろうか。一方、更新を怠っているサイトについては再稼働を考える上で大きな制約として立ちはだかる。関西電力美浜、日本原子力発電東海第二の2サイトは老朽化も進んでおり、益々不利な条件となる上、更新計画についての具体的回答が無い。既に福島事故から3年半以上の時が経過している。教訓を活かした九州電力との差は著しい。
取分け、東海第二の対応が極めて不可解である。同サイトは4000万近い人口を擁する首都圏の原発である。しかも外部電源は女川などより軽微な地震動で損害を受けている。それにもかかわらず、電源喪失対策としては堤防を嵩上げし、非常電源を強化することばかりに意識が集中している。精々震度5か6弱でも破壊される可能性がある状態を放置している同社の姿勢は「狂っている」と評しても過言ではない。
今回の記事で終わりにする予定だったが、外部電源(変電機器、開閉機器)はもう1回「開閉機器メーカーの活動実態-各事故調が食い込まなかった更新提案、津波対応、カルテル-」で取り上げる。
なお、東海第二については日本原電が一般向けには説明しない東海第二電源喪失対策先送りの過去という追跡記事を書いた。
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