« あり得た第三の選択肢-500Galの仕様も検討したのに実際は値切られた福島第一原発1号機 | トップページ | 東電事故調が伝えない事実-津波に対する考え方を整理出来なかった小林健三郎- »

2014年5月 6日 (火)

貰い事故で原子炉を1基失ったのに「安全性を損なうものではない」と匿名で意見する電力会社の「信用」

今回は下記の続きである。とは言え、全て参照の必要はない。特に「4号機の対策に無関心な東電事故調」と「こぼれ話⑥」の続報である。

水素が逆流して爆発した4号機の対策に無関心な東電事故調と推進派専門家達

長時間の電源喪失を無視した思想的背景-福島第一を審査した内田秀雄の場合-

福島第一原発の審査で外された「仮想事故」-予見可能性からの検討-

東京電力は非常用ガス処理をどのように考えてから福島第一原発を建設したか

福島第一3・4号機水素爆発にまつわるこぼれ話①②③

福島第一3・4号機水素爆発にまつわるこぼれ話④⑤⑥-舶来技術はどれほど信用できるのか-

原子力規制庁の新安全基準骨子案には「設計基準 2.(7)共用に関する設計」で原則禁止の規定が盛り込まれた。

1年数ヶ月前の話になるが、新安全基準骨子に対して2013年1月18日、電気事業連合会は各事業者の意見を取りまとめて(匿名化して)申し入れした

その中に4号機で問題になった非常用ガス処理系からの配管共用の件も意見が付けられているので「新安全基準 骨子(たたき台)に関する事業者意見」から引用してみよう。

骨子案においては、原子炉の安全性を損なうことのないことを示せない場合は、原則として共用を禁止する規定となっている。
現行指針では、指針7 共用に関する設計上の考慮において「安全機能を有する構築物、系統及び機器が2 基以上の原子炉施設間で共用される場合には、原子炉の安全性を損なうことのない設計であること」とあり、共用を禁止するものとはなっていない。

現状、国内プラントで共用している主な系統・機器・構築物の例として、以下がある。
排気筒(MS-1)、海水取水設備(MS-1)、使用済燃料ピット(PS-2)、放射性気体廃棄物処理系(PS-2)、送電線(PS-3)、起動用変圧器(PS-3)、原子力発電所緊急時対策所(MS-3) 等
これらの系統・機器・構築物の共用を禁止することは必ずしも安全性の向上につながるものではない。例えば、放射性気体廃棄物処理系をユニット毎に設置した場合、系統の機能としての信頼性は、動的機器であるポンプ等が多重化されることにより増加するものの、一方で、物量(配管、弁等)が増加し、リークパス増加の要因となる可能性がある(※1)。また、限られたスペースに設備を設置することになるため、当該系統ならびに他設備のメンテナンスに影響をあたえる可能性がある。

以上をまとめると、現状、共用する機器について原子炉の安全性を損なうものではない。

呆れて物が言えない、とは正にこのことである。指摘された設備の中には確かに共用しても影響度が低そうなもの(及び独立化の意義が見出しにくい)施設も書き込まれているが、何故わざわざ排気筒を含めてくるのかが分からない。勿論、「我が社のプラントは逆流防止ダンパを全て設置している」と言った反論はあり得るが、この意見には4号機の事故を踏まえた対応状況の説明すら無いのである。

また、ガスの扱いに係わる気体廃棄物処理系が指摘事項になるのは当然である。信頼性評価を議論するのであれば、増設配管の信頼性とその性質(本質安全設計の程度等)だけではなく、弁などによってインターロックを形成した際の信頼性との比較を行なうものでないと意味がないだろう。

もう一点注目するべきは、電気事業連合会を通す形で匿名化していることだ。この意見を書いた事業者がどこなのか、是非問い詰めたいものである。

なお、ネット上では規制庁の入札公告しか見つけることが出来なかったが、「平成24年度原子力安全業務委託(東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故を踏まえた諸外国における規制制度改善に係る動向調査・分析)」が日本エヌ・ユー・エスに発注され報告書も完成している。

報告書中では海外の規制状況がかなり詳細に調査されている。別の記事にも追記したが、米仏の安全基準では共用禁止規定は無いようだ(※)。

『東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故を踏まえた諸外国における規制制度改善に係る動向調査・分析 報告書』は事業者の動向をレビューする上でもかなり良い参考となる。興味ある向きは是非公共図書館、立地自治体の行政資料室などで一読されることをお勧めする。

※2014/5/6追記:事業者意見では米GDCに同様の規定があるが実運用は異なる旨が書かれている。日本エヌ・ユー・エスの担当者はその点を意識し何も記載しなかったのかも知れない。

« あり得た第三の選択肢-500Galの仕様も検討したのに実際は値切られた福島第一原発1号機 | トップページ | 東電事故調が伝えない事実-津波に対する考え方を整理出来なかった小林健三郎- »

東京電力福島第一原子力発電所事故」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1666926/56077125

この記事へのトラックバック一覧です: 貰い事故で原子炉を1基失ったのに「安全性を損なうものではない」と匿名で意見する電力会社の「信用」:

« あり得た第三の選択肢-500Galの仕様も検討したのに実際は値切られた福島第一原発1号機 | トップページ | 東電事故調が伝えない事実-津波に対する考え方を整理出来なかった小林健三郎- »

無料ブログはココログ
2017年4月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30