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2014年3月の1件の記事

2014年3月31日 (月)

茨城県の「要請」は明記せず日本原電の対応を「自主」「独自」と喧伝する危うさ(追記あり)

【要旨】
○日本原子力発電が行った津波対策は茨城県の要請に応じて実施したものだが、各誌記事などでは同社が自主的に県の評価を取り入れたように記されている。特に原子力安全推進協会の解釈が酷い。
○再稼動の是非に当ってはハードウェアの技術レベルの他、電力会社の自発性・自浄能力も勘案して判断することが必要だが、現状では後者も過大評価されている。
○今回県が手を出して上手くいったからといって、次回も上手くいくとは限らない。既にその兆候がある。

なお記事アップ後、色々事実確認を追記している。そちらも参照して欲しい。

【本文】

福島第一原子力発電所事故との比較でしばしば取上げられる例として、東北電力女川原子力発電所と日本原子力発電東海発電所の例がある。女川の場合は計画時に高台に建屋を設置するなど津波対策を考慮したことで危機を免れた例である。津波に対する注意は払われ続けたが、基本的に「敷地高」という固有安全性はOBの残した財産であったことは疑問の余地が無い。後輩達が実施した津波対策は、標高から見ると敷地高より下の土地に向けられたものばかりである。

一方、今回取上げる日本原子力発電の場合、現役世代が決め手となる事故対策を行って惨事を回避した。東日本大震災前、各電力会社が参考としたのは2002年に土木学会が策定した「原子力発電所の津波評価技術」であるが、同社も当初はこれを採用していたものの、その後に茨城県の津波想定から影響を受けた。東京電力は「原子力発電所の津波評価技術」の考え方に固執したため、新しい津波想定を受け入れることなく東日本大震災を迎えた。

しかし、下記に示すように茨城県が2007年に公表した津波想定を誰に言われるまでも無く自主的に確認して津波対策をしたかのような説明が流布している。例えば民間事故調は成功例として同社を取上げているが、その説明はこうである(以下強調は私による)。

このほか、地方自治体による津波想定が、原子力安全規制には反映されなかったものの、それを一つの契機として事業者が津波対策を行った例がある。茨城県が2007年10月に「津波浸水想定」を公表したことが、結果的に、日本原子力発電東海第二発電所の津波対策工事を早め、東日本大震災の津波の被害を緩和させた。同発電所にはもともと、残留熱除去系海水ポンプを津波から守るために4.9mの高さの堰が設置されていたが、これは日本原子力発電が土木学会の「原子力発電所の津波評価技術」により、延宝房総沖地震(1677年)を想定地震として解析した津波高(4.86m)の評価に基づいていた。しかし、茨城県による「本件沿岸における津波浸水想定区域図等」(2007年10月)において、同想定地震による茨城県沿岸の水位高が2~7mと設定されたことを受け、日本原電は独自に解析をやり直して5.72mという評価結果を出し、これに基づいて既設堰の外側に新しく6.1mの高さの堰を設置する工事を実施しているところであった。東日本大震災の際に同発電所を襲った津波高はおよそ5.4mであり、既設堰の高さを上回っていたため、海水ポンプエリア内に一部浸水が発生し、被水した一部の海水ポンプは使用不能となったが、新設堰の工事が完了していた区画は浸水を免れ、海水冷却機能喪失に至るのを回避することができた。自治体は原子力安全規制における権限を持ってないが、茨城県の持つ知見が日本原電の津波対策工事を早め、結果として冷却機能喪失という重大事象を防ぐ上で大いに役立ったといえる。

 「第7章 福島原発事故にかかわる原子力安全規制の課題」 『福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書』P274

業界内(いわゆる原子力村)においても同じような説明がなされている。

ここで、震災前の津波対策を見てみよう。茨城県津波ハザードマップ評価データから、地震だけでなく津波対策も重要であることが明らかになり、日本原電は自主的に津波対策の見直しを開始した。

それまでの津波対策は、二〇〇二年に土木学会が想定した一九七七年の延宝房総沖地震(推定マグニチュードM八.二、のちM八.三に変更)を基に津波の最高水位を約四.八メートルとしていた。しかし、二〇〇七年に海岸線の長い茨城県が住民安全のために、茨城県沿岸において土木学会よりも広い範囲の波源を考慮して津波高二~七メートルと見直したのを知り、同社は発電所近くの地形を独自に評価し、南側の一番低く港に近接して設けた非常用ディーゼル発電機の冷却用ポンプ室付近の津波高さを約五.七メートルと想定、二〇〇九年七月から想定よりも高く約六.一メートルの防護壁の設置工事に着手した。

成島忠昭「東日本大震災を乗り越えて 日本原電・東海第二発電所レポート 電源など多様化防護に挑む」 『エネルギーレビュー』2012年2月

次は業界団体の例である。

平成 19 年に茨城県が防災対策の見直しの中で、津波高さを従来よりも高く評価するよう見直しを行っていた。これを受けて、原電としても側壁の高さを+6.1m に嵩上げすることについて本店の土木部から提案があり、工事にかかっていたものである。この嵩上げを行っていなかったら、外部電源喪失の状態で非常用DG が全台機能喪失する事態になっていた可能性があり、この工事の実施が結果として大事故を未然に防いだこととなる。

女川原子力発電所及び東海第二発電所東北地方太平洋沖地震及び津波に対する対応状況について(報告)」P37 平成25 年8 月 原子力安全推進協会

日本原子力発電の説明は次のようになっている。

当社は土木学会の手法を用いて東海第二発電所の想定津波高さを評価していたが、二〇〇七年一〇月に茨城県から「本県沿岸における津波浸水想定区域図等」が公表された。当社は茨城県から評価に用いた波源等のデータをいただき、東海第二発電所における津波高さを再評価した。この結果、海水ポンプ室位置で海抜五.七メートルという津波高さが得られた。

剱田裕史「地震・津波被災を乗り越えた東海第二発電所 6.1メートルの津波防護壁が奏功 ガスタービン発電機を活用」『エネルギーレビュー』2013年1月

なお、同社がネットで発表した下記スライドには比較表は載っているが、経緯説明は載っていない。

東北地方太平洋沖地震発生後の東海第二発電所の状況及び安全対策について」11/39 2013年6月末現在

しかしながら、津波ハザードを公表した茨城県側の説明は微妙に異なる。

例えば茨城県議会では次のように説明されている。

◯山岡委員 いばらき自民党の山岡恒夫であります。
(中略)
震災直後,本県に計画停電はなかったし,日本原子力発電株式会社の東海第二発電所では,
平成19年に県土木部の提言を受け入れ,6.1メートルの高さを新設しておいたので,今回,5.4メートルの津波の被害を免れました。橋本知事初め,関係者の皆様に敬意を表します。

2011.09.30 : 平成23年予算特別委員会  本文

この点について先行して研究している私設サイトもあり、県の依頼が口頭(!)でなされたという情報は把握していたが、当該サイトではソースの分離をきちんと行っていないのが問題であった。そこで茨城県に質問したところ、次のような回答を得た。

原子力安全対策課は、県土木部及び農林水産部が行った茨城沿岸津波浸水想定区域調査(H19年3月公表)に照らし、原子力施設への影響はないか、主要4事業所に対し、調査を依頼しました。

※ 主要4事業所; 日本原子力発電(株)東海第二発電所
            (独)日本原子力研究開発機構東海研究センター原子力科学研究所
            同機構 同センター 核燃料サイクル工学研究所
            同機構 大洗研究開発センター

その後、日本原子力発電(株)東海第二発電所において、県津波浸水想定区域図を作成したデータから再計算した結果、当所の想定津波高さ4.86mを上回る5.7m(最大遡上口)との評価がなされました。

このため、県は、これに対応できるよう対策を求めました。

(2014年3月18日メール回答より抜粋)

※2014年4月4日追記:その後、県が2013年度に『東日本大震災の記録(原子力災害編)』をまとめたのを知った。下記の記載があったので重複を承知で引用する。

平成19 年3 月,県土木部は「茨城県津波浸水想定区域図」(通称,津波ハザードマップ)を作成したが,このときの想定地震が前述の「延宝房総沖津波地震(1677 年11 月4 日発生)」であった。

このことは新聞でも取り上げられたので,すぐさま津波ハザードマップを取り寄せ,日本原子力発電(株)東海第二発電所を南北に挟む地点津波の最大遡上高さ(津波が遡上する最大の標高)を確認したところ,

・東海村久慈川河口; 7.6m
・同新川河口; 6.6m

であった。

この数値は,東海第二発電所の建設に当たり,国が行った安全審査時の想定津波高さを超えているのではないかと不安になった(後略)。

このため,海岸沿いに立地する(中略)4 事業所に対し,県作成の津波ハザードマップに照らし,原子力施設への影響の有無について調査するよう要請した。

特に東海第二発電所については,県作成津波ハザードマップを取り寄せ,発電所における津波の最大遡上高さを算出するよう求めた。その結果,津波ハザードマップから推定した東海第二発電所の津波最大高さは,5.7mであり,安全審査時の想定津波高さ(4.86m)を上回ることが明らかとなった。

(中略)このため,海水取水ポンプ周囲の側壁の嵩上げが必要ではあったが,
当時は,国が津波に関する安全審査指針を改定していなかったこともあり,日本原子力発電(株)に対し,原子力安全協定に基づき要請するのは難しかったことから,口頭により要請した。原電は,社内で検討した結果,県の要請を受入れ嵩上げ工事を実施に移し,海水取水ポンプ周囲の側壁を6.1mとした。

(中略)今回,土木部が最新のデータ(延宝房総沖津波地震)により津波ハザードマップを作成したこと原子力安全対策課が津波ハザードマップの数値に気付き,日本原子力発電(株)に対し海水取水ポンプ側壁の嵩上げを要請したこと,原電が県の要請を受入れ自主保安の観点から嵩上げ工事を実施に移したこと,この3 つの動きが重なったことにより,全電源喪失という危機が回避出来たものと考える。

体験談44 生活環境部参事兼危機管理室長 山田広次

追記ここまで。

この話は、地元紙や大手紙の支局ならとっくに入手していたのだと思う(ただし、末尾に追記した通り調査したものの大手紙の報道例は未見である)。明らかに電力側およびその取巻きの発表は恣意的である。特に、「独自」という単語の使われ方に注意が必要だ。普通なら気付かない。日本原子力発電によると、この津波対策は震災前に外部にリリースしていないとのこと。過去のリリースに拘束されることがなかったとは言え、ここまであからさまだと呆れてしまう。

民間事故調は同社理事である北村俊郎氏から意見を聴取したことがミスリードに繋がったのだと思われる(ただし同氏は原発事故で強制避難を強いられており反省の弁もある)。多様な話を聞きとるのは重要だが、メール回答によると茨城県にはどの事故調も聞き取りに来なかったそうだ。

細かいことだが、原子力安全推進協会の文書と県議会会議録の双方に「土木部」という単語が出てくる。県会議録にある県土木部の方は都道府県レベルではよく設けられる組織であり、存在に疑問の余地は無い。日本原子力発電の方はというと、2007年10月時点での組織図は不明だが、偶々同社は2008年10月に五十年史を刊行しており、そこには2008年3月末の組織図が載っている。だが、土木部は無い。そもそも部制も採用しておらず室制である。2013年11月の組織図も同様である。

※追記:後日同社に確認したところやはり存在していなかった(詳細は後述)。

これまで、私は日本原子力発電を東京電力の犠牲者だと思ってきた。つまり、東京電力が社内外の新しい津波想定に対し、木で鼻をくくったような態度を続け、自社の事故調でも姿勢を変えなかったため、ネット上で東電擁護に狂った一部の反反原発派などから東北電力と同じく腫れ物扱いを受けていたからである。しかし、事故後に示した姿勢はそうした考えを改める契機になった。

組織の自発性は客観的に評価することが難しい反面、ハードウェアの充実以上に重要なチェックポイントであると言えるが、今回の一件は、評価の材料としては適当なものだった。本当の意味で自発性があったのは茨城県であり、日本原子力発電は殆ど言われたことをやっていただけである。県と言えども官側の組織であり、民間企業は風下に立つのが通例である(参考だが、安全協定をちらつかせて実質的な規制に手を染める行為が他県では観察される。上記の通りやはり県担当者は気にしている)。僅かな費用で実施可能な依頼を断る理由は乏しかったと見るのが妥当である。東京電力よりはマシだったものの、原発推進派や反反原発派が考える程立派だった訳ではない。担当者は謙遜しているが、津波被害は(専ら)茨城県の働きにより極小化されたと考えるべきである。 

ただし、この件を以って、茨城県を規制機関の代用品とみなして過度のチェック能力を期待するべきでも無いだろう。

【1】
例えば、県議会の知事答弁(2011.09.16 : 平成23年第3回定例会(第3号) 本文)にあるように、従来よりタイトな想定を行ったにも拘らず、県の想定を上回った自治体がある。反対派を中心に懸念のあった「後70cm高ければ防護壁も超えていた」は荒唐無稽な隕石直撃と同質の仮定、とは言えないだろう。

【2】
緊急対策所の最上階にはガスタービン発電機を設置したから津波が越波しても問題無かったかのような反論もあるが、その運用は綱渡りであった。

原子炉冷却の注水源として復水貯蔵タンクを用いたので、原子炉とサプレッションプールから成る系内の保有水量が増加した。主蒸気逃がし安全弁を使って原子炉を減圧していったが、サプレッションチェンバの圧力上昇を抑えるため、サプレッションプール水を廃棄物処理系に排出する必要があった。残留熱除去系のラインを使ってサプレッションプール水を廃棄物処理系のタンクに移送したが、そこから先、水処理のために次のタンクに水を送るためのポンプが常用電源であるため回せず、ふんずまり状態になった。

そこで用いたのが、新設の緊急時対策室建屋(福島第一原子力発電所の免震重要棟に相当するもの。以下「新緊対」)に設置していたガスタービン発電機である。

二〇〇七年の新潟県中越沖地震の教訓反映で、東海第二発電所でも免震構造の新緊対を作っていた。二〇一一年三月一一日の時点で、新緊対は通信設備の設置工事中だったが、建物や非常用のガスタービン発電機を含む電源工事は竣工していた。そこで、このガスタービン発電機から廃棄物処理系の電源盤に電気を送れるよう仮設ケーブルを敷設し、廃棄物処理系のポンプを運転できるようにした。三月一二日朝のことである。新緊対のガスタービン発電機の活用は、本店からアイデアをもらった。

剱田裕史「地震・津波被災を乗り越えた東海第二発電所 6.1メートルの津波防護壁が奏功 ガスタービン発電機を活用」『エネルギーレビュー』2013年1月

ガスタービン発電機は津波対策ではなく、中越沖地震対策で設置されていたのであり、上手くいったのは結果論である。

このガスタービン発電機の容量は500kVAに過ぎず、本設の非常用DG容量の大凡10分の1以下である。専門誌なのに、本来の使用目的と、何時間分の燃料を確保していたかは書かれていない(ただし、設置許可変更申請には書かれてるかもしれない)。恐らく、原子炉冷却に回したとしてもスイッチ一つで切替出来ず、ルーチン作業化されていないケーブル繋ぎこみを要する代物だったのなら、DG全滅の想定下では綱渡りである。また、越波した場合に配電盤が被水するかどうかも、この手の反論では不明確である。屋上に設置されていたのは良いとして、運用策は事前に定まっていることが必要。その場の思い付きで作業を重ねるとちょっとした事で簡単に危機的状況に陥る。

なお、DGの燃料は7日間分を貯蔵していたが、それでも不安があったためタンクローリーで補給を受けている。東北の震災であり、関東の道路網が機能していたからこそ可能だったことだ。

桜井淳『日本原子力ムラ行状記』には非常用電源に関し、ある事業者との問答が掲載されている。ガスタービンの他、待機させてある電源車の種類まで一致しているので著者の自宅から至近にある当所と見て間違いないだろう。この問答でも事業者側の回答は要領を得ない。

【3】
東海第二発電所も再稼動に当って安全対策を一覧化している。

Tokaidai2_image ※日本原子力発電ウェブサイトより記事執筆時点の模式図を引用

しかし、

『日立評論』2013年12月号で提案されたような再結合器の増設がない。
浜岡において計画されている可搬型窒素ガス発生装置によるベント設備の水素爆発対策がない
③同様に人口密度で劣る浜岡ですら計画している敷地外への放射性物質の拡散抑制対策(放水砲の配備)が無い

等、焦点を防災上最後の砦となり得る意味を持つ設備に絞っただけでも、大都市に近接する原子力発電所としては不十分な対策でお茶を濁そうとしている。県議会では関連する質問は無いようだが先手は打つべきだろう。私は建屋/格納容器容積に余裕が乏しく、UPZ内に政令指定都市並の人口を抱える同所の再稼動はするべきではないと考える者だが、研究機関を含めてお膝元に有為な人材を抱えているのであれば、例え推進派であっても厳しくチェックを行い、情報を得る努力をすべきである。

※2014/4/1:修正および追記。タイトルを語呂の良くなるように変更
その後主要新聞紙の記事DBを調査した。朝日、読売を筆頭に県の津波想定公表と防護壁の設置に触れている記事はあったが、「県が要請」したことまで言及している記事はヒットしなかった。「東海第二」「茨城県」「津波」といった説明するために必須の単語を2・3組み合せるだけである程度記事の絞り込みが可能であり、この手のDBは地方版まで収録する為、引っかかっていない可能性は極めて低いと思われる。

なお、反原発系メディアのサンプルとして『週刊金曜日』の関係記事も一読してみたが、せっかく防護壁新設の件を取り上げたにも拘らず、県からの要請に触れていない点は同様だった。意外とこの件、盲点だったようですね。赤字で示したような伝えられ方が幾つもある。

※2014/4/4:県担当者体験談を本文に追加。冗長部分を削除。および追記。
日本原子力発電社内に土木部があるのかを質問したところ「土木部という部所はございません。」との回答を頂いた。また、2007年6月の組織改正のプレス発表も教えてくれた。御担当の方には感謝いたします。

それにしても、原子力安全推進協会には呆れを通り越し笑いさえこみ上げてくる土木部という単語が何も無しに沸いてくるとは考えにくく、調査の際に県の要請のくだりを聞き間違え、脳内で都合良く経緯を再構成してしまったのだろう。てにをは・誤字の類ならともかく、一番間違えてはダメな場所で間違えて、無根拠な楽観を晒してしまっている。そもそもこの協会、設立趣旨をによると福島原発事故を教訓に組織されたそうなあの事故で国の関係機関から「安全」の文字が次々取り去られたのに大した推進振りである。しかも会員一覧を見ると日本原子力発電も参加しているのだ。このオウンゴールばかりは同社に対し同情を禁じ得ない。

もう一点、県担当者の回顧を追加した。この回顧により日本原子力発電の評価値が前後地点の想定遡上高より1~2m程低くなっていることも分かった。また、口頭で済ませた理由も明らかとなった。制度的な根拠付けの重要さを教えられた。それにしても、再計算まで県からの依頼だったとは、びっくりである。

※2014/4/9:画像を1枚引用。
記事の目的とは違うが「助かった原発の経緯は報じられてない、マスコミの陰謀」という俗論の方は全くの嘘であることが分かる。むしろ、調査した範囲では5大紙で東海第二に関して最も不熱心だったのは産経だった。記事DBで検索しても発災直後2011年4月3日の速報(「東電、津波被害再評価後回しで間に合わず 東海第2と明暗」、これはMSNでも配信されたので写しを取ったブログに残ってる)位しか引っかからない。したがって普段産経ばかり読んでいる人の目にはそう見えるのかも知れない。

※2014/4/13追記
『福島原発で何が起こったか 政府事故調技術解説』P125には福島第一の免震重要棟もガスタービン発電機を備えていた旨の記載がある。容量の記載は無いが、事故の推移において原子炉の冷却に用いられなかったことから、その用途は東海第二の新緊対に設置したものと同じく、重要棟の電源維持を目的とした小容量のものだったと思われる。この事実は、東海第二においてDGが全滅した場合、新緊対のガスタービン発電機がその代役となり得なかったことを示唆している。

※2014/4/22朝追記
【1】2014年3月に出版された日本原子力学会による『福島第一原子力発電所事故 その全貌と明日に向けた提言―学会事故調 最終報告書』を読んだが、比較事例として東海第二を出しているにもかかわらず、これまで取り上げた事例と同種の間違いを犯している。なお、学会事故調報告書は各章末に参考文献を載せているが、基準規定類、海外文献にはそれなりに明るいものの、サイト個別の事情を検討するための過去文献に相対しようとする意識は極めて乏しい。報告書では事故を回避した事例を載せた意図を「継続的改善」について考察するためだった旨述べているが、如何にも不十分である。

【2】県原子力安全対策課ともメールを通じて問い合わせを重ね4月18日回答を頂いた。下記に特に重要な部分を引用する。

Q:民間事故調の当該記述は県の動きが十分に記載されているとお考えでしょうか。

A:書類として確認出来る事実は、県が作成した津波浸水想定区域図のみでありますことから、「茨城県による調査において(中略)水位高が2~7mと想定されたことを受け…」、と表現されたものと認識しております。なお、「茨城県沿岸の水位高が2~7m」という表現が、どの範囲のどの水位を示しているのか、この記述からは判断することができません。

この他、要請を口頭で行ったのは2007年10月、ハザードマップで示した津波高は「最大遡上高」との回答であった。

報道事例について2011年4月8日のNHKニュース、および2011年9月11日の茨城新聞による「危機防いだ1メートルの対策」という記事を教えていただいた。茨城新聞の記事は当事者の内情まで迫ったもので、これまで取り上げた問題ある報道とは一線を画す内容である。やはり、地元メディアについて私の予想は正しかった。

記事によれば上記山田氏は同課在籍通算27年のベテランでJCO臨界事故も経験していたとのこと。茨城新聞によると「本店も最初は『学会の評価を基に対策済み。県の予測は参考』との空気だった」というから、自発性に関する評価は更に低いものとなる。記事自体もその点に重みを置いている。全てを紹介はしないが他にも面白い記述がある。興味ある方は同紙を是非読んでみて欲しい。

※2014/4/23夜追記
日本原電のプレスリリースに合わせ、続編「東海第二発電所の津波対応をめぐる日本原子力発電との質疑」をアップした。

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