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2013年8月 6日 (火)

東電事故調への疑問(第4回)

【2-3】原案の設計を引き継いで311を迎えていたら

もしこの原案の思想を残して建設され、311を迎えていた場合どうなったかを考えてみた。ただし、ベント以降の事態は原則除外した。あくまで津波襲来を考えることが主体である。

まず、D/G本体は90年代に増設された物と同一の10.2mに据付されているため、架台などは被水するかも知れないが、機能を失うことは無かったと考えられる。ただしD/G用の海水ポンプは水没で機能を停止すると思われる。M/Cの据付高さは原案と実物で変化は無いので、同様に機能不全となる可能性が高いと言える。

P/C、直流電源については原案に描かれてない。実機でそれらが配置されているコントロール建屋は原案でも地下室を備えていることからB1Fにあったと考えることも可能ではある。

だが、電事連が挙げた米国の事例から、原案では1F以上の高さとしていた可能性の方が高いだろう。実際、原案ではコントロール建屋地下1Fまで給水ポンプが張り出している。
事故では地下階に配置されていなかったP/C、直流電源の幾つかが機能を維持したことから、1-4号機において米国の慣例に変更を加えなかった場合、配電盤関連も一部は機能を維持したと思われる。

実際には水冷の非常用D/G本体は全て被水してしまっているが、本体が生きていれば、
ポンプ車を固定の海水ポンプの代用として、復旧が試みられたかもしれない。また、M/CやP/Cで生き残った物があれば、空冷式D/Gや電源車から配線を仮設しての復旧はもっと楽なものになっただろう。実に惜しいことをした。

一方、制御室は原案で敷地高12mの高さにある。敷地高13mの5,6号機でも被水していることから、事前の気密設計が余程レベルの高い物でもない限り、被水は避けられないと思われる。敷地内での浸水高は場所により数mの相違があるが、場合によっては制御機材一式の機能停止(破壊)に留まらず逃げ場を失った運転員の溺死なども考えられる。仮に溺死が無かったとしても、まだ冬と言っても良い3月に濡れ鼠且つ空調も停止となると、運転員の作業環境は最悪である。言うまでも無く、事故初日の対応でとられたような、バッテリーを挿しての個別計器の読み取りなどは絶望的、照明の再点灯や電子データ・紙ログの回収も困難である。

制御室の敷地高は各種の事故報告でも言及が無いようだったので建設時の文献を探して引用したが、原案と比較すると結果として適切だった設計変更例として明記するべきだろう。

遠い米国では制御室の高さが低い場合もある、と考えるだけでは具体的なイメージを喚起するには不足であるだろう。「12mであったかも知れないのだ」と考えることによって、今後の対策もより現実感を伴った案が出てくると思われる。規制委員の示す第2制御室もこうした観点からは価値がある。

それほど重量が嵩まないとは言え、制御室のような重要施設の設置高さを高くした理由も興味あるところである。恐らく、制御室は岩着思想の影響を必要以上には受けなかったのだろう。

【2-4】東電事故調は原因の深掘りが足りない

D/G等の電気品については制御室の高さや(後述する)敷地高の変更とは異なる経緯で変更されているため、それらとは区別して検討する必要がある。

2号機以降はD/G本体だけではなくM/CやP/Cも専ら地下に設置する傾向が見て取れる。
この時期は従来、徐々に国産化を進め、GEの設計を日本独自のものとして咀嚼していく過程として捉えられてきたが、ここには典型的な「設計改善に潜む罠」を強めるような流れもあった。

一般的に、モノ作り、設計では設計変更により予期せぬ検討抜けや新たな脆弱性が生じる場合があることが知られている。つまり、耐震性の確保を念頭に岩盤に執着した結果、浸水対策にはマイナスとなってしまった。

米国でも地震の検討は一応されているし、1Fの設置であっても既に表層地盤は20m削られている。また、防振架台の採用と言った手もある。陸用内燃機関に関する文献を読んでいると、漸く世界水準に追いつくか追いつかないかという段階だったようだ。

そのような状況下18V40Xは開発された。中速機関としては当時世界最大出力である。一般産業向の非常用発電機であっても、その要求スペックは厳しいから、前回述べたように、それを満たすために何か技術的な不安要素があったのかも知れない。

最初の設置許可申請で記載されたスペックを見ると後のD/Gと異なる点が一つある。それは、8-9-(4)にある起動時間で、この時のD/Gが30秒となっているのに対し、変更許可申請以後のD/Gは他号機を含め、10秒となっていることである(※13/8/13追記。1967年9月に提出された2号機増設申請でも、起動時間は30秒であった)。

もっとも、起動時間10秒とはこの時代から一般向けの非常用D/Gでもポピュラーとなりつつある値ではあったようだ。ただ、日本側の神経質な原子炉専門家の誰かから、過渡解析か何かを根拠に30秒の間が空く(再起動を要する機器なら更に)のは不安があるとでも言われ、10秒起動を実現するため地震動に神経質となり、変更許可申請で大事を取って岩着させたのではないだろうか。台数増加により起動失敗確率を低減しようとしたところにも同様の思想を感じる。ただそれなら1Fに3台としたり防振台で何とかする手もあったろうとは思うが。結局、90年代にAM策としてそれに近い策を講じることになっている。

いずれにせよ、何故このような設計変更がなされたのか、前回書いたことを繰り返すが東電が本来するべきことは、当時の設計会議議事録を探し出しての検証だ。東電のような会社なら、普通軽微なものであってさえ、設計変更点管理を厳密にしている筈。事故報告にあたり何故ヒアリングと対外論文からの不完全な引用でお茶を濁し建設時の自社資料に当たらなかったのだろうか。実に不可解である。

更に言えばこの点は他の事故調も同レベルである。多くの関係者にヒアリングして事故時、或いは近年の事情についてこと細かく描き出したことは高く評価出来るものである。しかし、許可申請書類は公知の資料として誰でも閲覧できるものである。勿論申請書類だけを読んでいても分からないこともあるが、私がこのシリーズで使用してきた資料はどれも公開資料である。政府事故調中間報告の解説図もそうだが、あれだけのマンパワーを投じて国民にもその成果を問うているのに、何故図面のチェックをしないのか。こんなものは極論すれば只の絵の違いに過ぎない。原子力の専門知識とやらではなく、ちょっとした工学の知識があれば誰でも出来ることだ。オカルトを信じろとは言わないが、何か、おかしな思考の束縛が横行しているように思える。

原案との比較検討を行うと言う発想があれば、事故報告により多くの改善点を明記することが出来ただろう。

勿論、事故後に実施された電源多様化等の諸対策により、こうしたリスクは全体としては緩和された
が、更なる検討抜け、教訓の風化を防ぐためには設計過程の検証はより入念におこなっておくべきだろう。

だから、私は東電事故調に限ったことではないが、技術史的な面からの検証が甘いと思っている。

また、検討するべきである筈なのに報告書では参照不足となっているものは他にもある。大前研一が自慢にしていた女川などの、今回被災した他サイトのことではない。それは誰でも思い当たるし他の事故調でも何がしかは取り上げている。私が述べているのはモデルとされたと分かってるサンタ・マリア・デ・ガローニャ。今回の調査に当たりレイアウトや断面についても比較したかったが、スペインからの取り寄せなどは表立っては行われていないしどの事故調も報告に盛り込んでいない。

調査委員の間で30年記念文集の記述や豊田氏の証言で満足してしまった思考があるのではないか。

東電について言えば、自社で作成した事故報告を読み直して、自社の後進に自信を持って薦められる教材にするという意気込みに欠けているように思えてならない。本当にあれでいいと思えるのなら随分楽天的だ。

【2-5】非常用設備海没の原因はGEの責任とは言えない

また、ひとつ言えることとして、「ターンキー」に象徴化されている米国流設計に事故原因を求める風潮の誤りがある。既に述べたことからも明らかなように、今回の事故原因は、日本側の思想に適応させた「設計改善」が引き金となっている。また、電気関係のレイアウトをかなり変更したことや据付したB系のディーゼル発電機が新潟鉄工製であることからも明らかなように、全てが米国のコピーであるかのような説明は全くの誤りだ。

ターンキー説を声高に主張する者は、表層的には「猿真似した東電像」を描き出して非難しつつ、実際には「他国の責任を問うて有利な形で決着したい」という日本擁護の心理が働いているのではないだろうか。

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