原子力発電所で転倒防止・天井落下対策を取らないのは訴訟リスク

【はじめに】

原発再稼働に反対する層は今やどの世論調査でも6~7割に達し、私もその一人だが、実際には諸処の事情で再稼働してしまう原発は存在する。

政治的な働きかけ、訴訟、運動など色々行われているが、願望と現実は一致しないことの方が多い。

これまで、そのような状況下で提言されてきたことは専ら「原子炉の事故想定」や「核燃料サイクル」といった、身近でもなければ個人の手に余る話題ばかりであった。一方で所内の日常を観察すればするほど、再稼働が継続している状況で行政任せにせず、更にリスクを減らしていくための方策が必要であるように思われる。だが、インパクトに欠けるためその辺は推進派も反対派もあまり触れることは無い(取り組んでいる方もいる)。

私は、原発が再稼働した中で、実用的な提言とは何かを考え、まとめ記事を準備中である。だが、東電裁判を参考資料の一つにした事項については、読者の便を考えて単独のブログ記事にした。

この記事での主張を一言で言うと「電力会社各社は新規制基準対策で箱物を増改築してPRしているが、棚の転倒防止や事務所の天井落下防止措置は、全館に展開しておくこと、それを行わないと安全配慮義務違反などの訴訟リスクを生じる」である。

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出典:「オフィス家具類転倒防止対策」東京都防災HP 

地震に備えた安全なオフィスづくり Vol.5(JOIFA,日本オフィス家具協会)

職場の地震対策-事業所防災計画があなたを守る-(東京消防庁)

他にも多数図解あり。

その傍証として東電の例を示す。なお性質上、オフィスと呼ばれる全ての職場に通じる話である。

訴訟リスクは、下記のような記事を一瞥すれば一般的な災害でもあると分かる。高度な安全を要求され、躓きの連鎖によっては被害も巨大となる原発の場合は言わずもがな。

責任追及厳しくなる震災裁判、「天災」の免責はないと思え」『日経クロステック』2018.10.31

地震により自宅のブロック塀が倒れ、通行人に怪我を負わせた場合の責任(らい麦法律事務所)

【箱物は整備されていた福島第一の事務本館】

オフィスにおける地震対策が大々的に意識され出したのは阪神大震災の頃からである、と考える。業務用什器メーカーのイトーキは1978年宮城県沖地震の頃から取り組んでいたそうだが『セーフティオフィス―ソフト&ハード震災対策』(1995年11月)という本を出した。他、小川正明『工場の地震対策は大丈夫か』(1998年5月)なども出版された。学術面でも多くの調査がなされ、結果としてホームセンターで様々なタイプの固定器具が容易に手に入るようになった。

東電も阪神大震災から学んではいた。一例が福島第一の事務本館である。

だが、後になって検証してみると、箱物優先と言わざるを得ない。

事務本館に絞って解説した文書は見当たらないので、私が調査した範囲で歴史を概観しよう。

初代の事務本館は他の建屋と同様鹿島建設が担当したもので、1969年に竣工した。場所は、高台から10m盤に向かう、法面が特徴的な大熊通りを下り切った辺りである。

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出典:『鹿島建設月報』1969年10月P18

この初代事務本館は、後に左側に引き延ばされる形で増築した。

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出典:『東電設計30年のあゆみ』1991年7月P88よりトリミング

中央の、一部が原子炉建屋に隠れた低層の建物が初代事務本館。まだ鉄塔もあり、法面に黒い影が落ちている。東電のFacebook投稿に70mの送電用鉄塔重量が77tとあるので、送電線を支える必要のない通信用途の60mでもかなりの重量だろう(【超高圧送電線工事②】2014年10月29日)。

屋上から白い連絡橋が背面(北側)に伸びているが、これは10m盤よりは少し高い場所に建設された厚生棟(右の白い、真ん中に塔屋がある建物。1980年6月竣工、当初は1Fに大食堂があった)への渡り廊下である。その後、高台には研修棟も建設され、1995年3月に竣工。

初代事務本館をよく見ると鹿島建設月報の写真より左に横長となり、更にその左側に建物が新築されている。これらの増築は1980年代と推定。

なお、白赤に塗装されているのは1・2号機排気筒、事務本館に最も近いのが1号機原子炉建屋である。

政府事故調中間報告資料編の「福島第一原子力発電所1号機から4号機 配置図」では左に新築された建物を総合情報棟と記載。東電は1980年代に総合機械化と銘打ち全業務に計算機を導入したが、所内メインフレーム等を置いたものと推定。

もう一枚写真を引用する。原子炉建屋の爆発時、爆風で窓ガラスが飛散した(福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所における対応状況について(平成 24 年 6 月版)資料一覧 東京電力P49-50)。距離の近さも相俟って、屋外と変わらぬ汚染に晒されたため放棄され、所内を訪問する際は、遺構として案内を受けるようになり、比較的近くから撮影される機会が増えたのである。

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出典「放射線量は依然高く_津波や水素爆発の爪痕」『毎日新聞』2016年2月12日旧事務本館

佐藤栄佐久『福島原発の真実』(平凡社新書、2011年6月)P230によると、1~4号機の原子炉建屋は海を象徴したモザイク塗装に改められたが、初代事務本館ものそれに合わせたのか、水色系塗装に変わっている。

「がんばろう福島」のトラックがいる辺りから左側が建て増しされた部分。また、左端と中央部には近年ビルやマンションでよく追設される、耐震補強の鉄骨ブレース(筋交い状の肌色の部材)が入れられていたことが分かる。屋上にあった高さ60mのマイクロ波通信鉄塔は撤去されている(重量物の除去も耐震余裕を増す常套手段)。

写真を引用はしないが2011年3月24日に日本エアフォトサービスが撮影した高解像度の空撮、2011年12月に東電が公開した734枚の空撮写真(いずれも多くの報道で引用された)、2008年10月に撮影された構内写真(『Gigazine』記事等)などから、耐震補強は事故前に実施したものであると分かる。

なお、政府事故調中間報告資料編の「福島第一原子力発電所1号機から4号機 配置図」では旧事務本館のことを事務本館別館と記載。

だが、初代事務本館に代わる新事務本館が2001年7月に竣工した。

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出典:「写真⑤.事務本館の外観」『中間報告 資料編』政府事故調

位置関係は次のようになり、海抜はより高い。

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出典:「1)事故はどのようにして起きたのか」『1.福島第一原子力発電所の事故の概要』東京電力HP

2代目に改築した理由を明記した文書は見たことが無いが、阪神大震災の教訓の一つが「1981年新耐震基準以前のビルでは倒壊率が高い」ことだった。初代事務本館は10m盤に建っているので岩盤に近く、全体的な揺れは高台に比べれば小さくなる傾向だが、当時問題となっていたことは阪神大震災と同じ揺れが原発を襲ったら、ということだった。そうした命題だと掘り下げた場所での減衰は考慮しないことになるので、耐震補強するか、新築するかを迫られ、両方を選択したものと考える。

場所が初代事務本館に近い高台エリアなのは、業務上の利便性(初代事務本館に加え厚生棟や研修棟に近い)とP.P.(警備)上同じ防護エリアに配置する都合だろう。防護対象のエリアは柵で外周を囲うからだ(参考、『エネルギーレビュー』1996年5月P20)。

1980年代の訓練では緊急時対策所は適当な会議室に立て看板を持ってくる程度だったが、以前の記事で詳説したように、阪神大震災での関電の経験を踏まえ、本格的なテレビ会議施設を備えることが要求されるなど、オフィスとしても手狭になっていたのだろう。

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出典:『ふくいちメール』No.62 2001年8月

新事務本館の緊急時対策設備は会議室に据えられたので、式典などの行事にも使われたようだ。『共生と共進 福島第一原子力発電所45年のあゆみ』P32にはそうした写真が掲載されている。

その後、2007年7月の新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発の事務本館に設置した緊急時対策所の扉が歪んで開かなくなるトラブルがあった。その教訓から、2代目事務本館の隣接地に免震重要棟の建設が決定し、2010年に完成した。下記の写真のように緊急時対策所も改めて設置された。

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出典:『福島原子力事故調査報告書』東京電力 2012年6月20日P58(いわゆる東電事故調最終報告)

左奥に見えているのは2代目事務本館と思われる。

なお、廃炉が始まってから2016年に新築されたものは少なくとも3代目。以降はそれが新事務本館と呼ばれている(「第1原発の新事務本館公開 東電、廃炉作業の拠点に」『産経新聞』2016年9月30日 隣接の建物を事務棟にしていたとあるのでそれを数えれば4代目。事故対応については変遷が輻輳しているので、他にもあるかもしれない)。

場所は、かつてサービスホールと呼ばれた見学施設の辺りにあり、海岸からずっと内陸側である。

【転倒防止、天井落下対策は置き去りか】

このような設備投資を行う一方で、棚の固定は等閑だったようだ。事務エリアの写真はあまり多くないが、以下のピアレビューを自賛する社報記事に写真がある。時期から初代事務本館と思われるが、棚を観察すると固定金具らしきものを見ることはできない(勿論見えない位置で固定する可能性はあるが、通常は最上部且つ両端ではないか)。

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出典:『とうでん』2000年12月号

さて、ここまで設備を概観したが、福島事故後、東電は次のように揺れを描写した。

・ 11 日 14:46,地震発生。揺れは段々と大きくなっていった。事務本館では,各部署のマネージャーなどがメンバーに対して机の下に隠れるよう指示。各自,現場作業用のヘルメットをかぶるなどして,身の安全を確保した。
(中略)

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・ 揺れは長く続いた。天井のパネルは落下,棚は倒れて物が散乱,机は大きく動き,机の下に閉じこめられる人もいた。揺れが収まってから,閉じこめられた人を救出し,避難場所の免震重要棟脇の駐車場に移動した。1 週間程前に避難訓練を行ったばかりで,各自が避難通路,避難場所を把握していた。

福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所における対応状況について(平成 24 年 6 月版)資料一覧 東京電力 P1

・ サービス建屋屋上で運転員が津波の状況を監視する中,11 日 16:55,DDFPの設置されているタービン建屋地下階の消火系(以下,FP)ポンプ室へ運転員が確認に向かった。現場へ向かう途中,タービン建屋 1 階の廊下には地震や津波の影響で工具棚が倒れ,所々に海水が溜まっており,通行出来ない状況であった。それらを避けながらなんとか原子炉建屋の二重扉付近まで行ったところで,サービス建屋屋上で津波監視を行っていた運転員から,繋いだままにしていた PHS にて,津波が来るとの情報が入り,一旦引き返した。

福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所における対応状況について(平成 24 年 6 月版)資料一覧  東京電力 P37-38

同じ様な記述は他にもあるが省略する。政府事故調中間報告資料によれば、写真は2階総務部執務室とのこと。

少し拘るが、共同通信社原発事故取材班『全電源喪失の記憶』(新潮文庫、2018年3月)P26には吉田昌郎所長の視点から「ロッカーやキャビネットには転倒防止措置が講じられていたが、中の書類は散乱」と記載されてる。確かに所長室から外に出ると総務部のエリアだが、門田隆将『死の淵を見た男』(PHP研究所、2012年11月)P25では「ロッカーは倒れ」とあり、上記東電の記述でも倒れている。門田氏の政治的バイアスは私も以前指摘したが、この記述にその動機があるようには思われない。

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出典:「写真④.2階技術総括部執務室内」『中間報告 資料編』政府事故調

また、政府事故調の技術総括部の写真を見ると、棚が倒れた跡が明瞭に分かる。

福島第一は落下や転倒の影響で、怪我人も出した。

外に出てみると、思いのほか寒い。防寒着を羽織ってきて良かった。1週間前の訓練通り、所員たちは免震棟前の駐車場に集まっていた。
(中略)
寒空の下、言葉を交わす所員の数はあっという間に400人、500人と膨れ上がっていった。駐車場のアスファルトは地震の影響で波打ち、陥没しているところもあった。集合した所員の中には、落下物に当たったのか頭から血を流している者、ショックで震えている者、恐怖で泣いている女性もいた。

「第一章 3・11」『全電源喪失の記憶』共同通信社原発事故取材班 新潮文庫 2018年3月1日P29

その後、東電株主訴訟にて、(事務本館ではないが)棚が倒れたことでタービン建屋などへのアクセスが困難となった点が争いとなり、被告側は第28準備書面のP10にて東電の記述を引用し、事前の対策が不可能だった証拠として引用した。

それに対して、元原子力プラント設計者の渡辺敦雄氏は意見書を提出し、次のように反論した。

(2)棚の締結・固定すらしてなかった可能性がある
(中略)東京電力は転倒防止処置を知らなかったわけではなく、全館で展開しておけばよかった。棚の締結・固定などは一般のオフィス・事業所でも耐震対策としてよくおこなわれていることであり、金具類も容易に入手できる。東京電力は公式発表で地震時の棚の管理状況を明らかにしていないが、一般的な地震対策についても通常期待される管理(原子力施設に要求される高度なものでは無く、一般防災のレベル)すら放擲していたのである。

渡辺敦雄『東京電力株主代表訴訟における結果回避可能性に関する意見書』2019年3月14日

インフラ関係では復旧の記録を公開することがある。企業の姿勢を示すうえで大切なのは言うまでもないが、最初から固定しておけば訴訟で指摘されるようなことは起きない。冒頭で啓蒙書をダメ押しに引用したが、2000年代の感覚から言えば常識だろう。

【柏崎刈羽の被災時には明記され、福島第二は水平展開】

不思議で仕方ないのは2009年、電気協会から『その時、仲間たちは 中越沖地震・柏崎刈羽原発被災の真実』という本を出版しており、同書には前の節で述べた所員の自宅被害の他、キャビネット転倒から天井化粧板落下まで一通りの言及があり、啓発は特に重点的に行われていたことである。

P4849

引用箇所の記述と写真から、転倒防止対策を行っていたら変圧器の火災にも早く駆けつけることが出来たことが分かる。

福島第一は僅か4年前の自社教訓を生かさなかった。上記意見書では中越沖の例まで言及はしていないものの、原子力発電所とは思えない瑕疵を指摘することで、反論に加え、管理者としての防災意識も問うている。

比較して違和感を感じるのは、福島第二の事務本館ではこのような事態は起きていないことだ。

増田尚弘は(中略)震災当時は第二原発の所長として勤務していた。(中略)その日、所長室から離れた技術総括部で打ち合わせを行っていた。

(中略)増田は思わず身をかがめた。(中略)次の瞬間、建物全体が大きく揺れ始めた。
「地震が来たら机の下に隠れなさい」
子供の頃から言われてきた言葉が頭に浮かんだが、実際に入ったことなど一度もない。しかし、今回はまずいぞと思い、辺りを見回した。揺れは驚くほど大きく、長時間続いた。近くの部屋からは女性社員の悲鳴も聞こえてくる。すぐ前にあった机の下にもぐり込んだ。

(中略)中越沖地震の教訓からキャビネットなどはしっかり固定されていた。扉が開いて中のものが飛び出すということはあったが、ほとんど倒れていない。また、天井が崩れることもなかった。

「第一章 緊迫の四日間」『福島第二原発の奇跡』高嶋哲夫 PHP 2016年3月18日P26-27,P37-38

同書冒頭に言明されているが、著者の高嶋氏は原発推進派である。そのことを以って本書を価値がないかのように論評する人がいるが、こうした聞き書きがスタンスに影響されるとは到底考えられない。福島第二では棚の固定は行われていたので、一部しか倒れなかったのである。

余談だが、増田所長の描写からは学べることが色々ある。以前の振る舞いは褒められるようなものでは無かったが、学校の防災教育は言うことを聞かない生徒にも影響を与えていることである。こうした人はよくいるだろうから、気を付けた方が良い。

福島第二の場合、天井落下の報告も見当たらなかった。耐震天井をPRしていた桐井製作所の導入事例を見ると、2008年に福島第二原子力発電所で実施した旨の記述がある(後で一括して掲載)。柏崎刈羽の事務本館は1985年前後の築で、福島第二より数年新しく、1981年の新耐震基準を満たしいていたにもかかわらず大被害を被った。復旧に当たり、東電は柏崎刈羽で耐震天井を導入しており、その水平展開が福島第二の事務本館まで及んだのではないかと考える。

やや込み入った専門的な話となるが、 現状入手した情報から福島第二事務本館の耐震性についても考察する。

福島第二原発が組織として発足したのは1982年4月で1号機の営業運転開始と機を一にしている。同年6月24日には竣工式(『福島第二原子力発電所のあゆみ』2008年10月P84)。『原子力ふくしま』1982年7月号は当時の第二原発を内覧した記事があり、事務本館は竣工していた。

新耐震基準とは1981年6月1日以降に建築確認の通知書を受けている建物となる(昭和56年(1981年)以降の新耐震基準とは?旧耐震基準との違いについても解説

1年で設計を改めるのはかなりスケジュールタイトなので、第二の事務本館は旧耐震で建築された可能性もゼロではない。一般建築と見なした場合はそのように考える。

しかし、当時の原子力施設は実際にはワンランク上の耐震分類を「検討用」として掲げ、設計側も原子力関連施設の範疇に、事務建屋なども含めていた(『原子力発電所の耐震設計の考え方』武藤研究室 1983年3月P20,22-23)。武藤研究室は鹿島建設を通じてBWR陣営との関りが深い。福島第二の事務本館もこの考え方に倣っていたとすれば、建築基準法相当のCクラスではなく、Bクラス相当の耐震性を持たせて建設されたとも考えられ、その安全余裕が結果として1981年新耐震基準の建築物以上の耐震性能を持たせた可能性はある。

事務本館そのものの耐震性は電力会社も詳しく解説する機会が少ない。だが、常時多数の所員が勤務しているため、人命上からはその扱いについて丁寧な情報開示が必要となるだろう。

なお、他社の状況だが、女川原発の舞台裏を取材した町田徹『電力と震災』(日経BP 2014年2月)P29によると、東北電力の火力発電所の事務室でも棚が倒れていたそうで、やはりインフラ企業としてその点は甘かった。

一方で北陸電力志賀原発の中央制御室や中部電力浜岡原発の5号機では2008年には耐震天井を導入した。志賀原発は2007年能登半島地震で自動停止を経験し、浜岡は以前から原発訴訟でも大問題となり耐震強化で他のプラントより先取りしていたという背景があった。

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出典:天井の耐震対策>導入事例(桐井製作所HP)より2007-2008年頃を抜粋

福島第一の2代目事務本館が措置されていなかったのは、建築が中途半端に新しかったことによると思われる。天井の落下とその対策に関する研究記事は、2001年より前から投稿されているが、電力会社への納入が多い桐井製作所の導入事例は2006年以降であり、実用化が遅れたことが窺える。なお、初代事務本館の内部写真は見つからなかったので、内部をどこまで改装したのたかは不明。

当時の社内マニュアル(防災業務計画)では、緊急時対策本部の要員は免震重要棟に入るが、その他の所員は一旦屋外の避難場所に集合することになっていた(『福島第二原発の奇跡』P48)。そういう人の動きを見る限り、やはり固定は全館に展開すべき施策だろう。なお、2013年以降は国交省の動向もあり、桐井製作所以外にも多数のゼネコン等が天井耐震化を売り込んでいるのは、以前取り上げた記事に書いた通り。

東日本大震災以降も大きな地震が全国で続発しているが、対策をサボるなどして事務室で同じ様な被害を繰り返し、社員が死傷したら、安全配慮義務を問われ訴訟リスクとなる。また、その人が欠けることで原子炉の事故復旧も遅れるなどの悪影響にもつながりかねない。死亡者が出なかったとしても、ただ揺れが来ただけで通常の執務は不可能となってしまうし(危ないから当面入室不可なんて話になる)、所員への心理的打撃も大きい。しかし、転倒防止、天井落下対策を実施しておけば、これらの影響緩和にも益するところ大である。建築物の耐震改修に比較すれば遥かに容易であり、自宅の次に過ごす時間が長い場所でもある。だから、抜かってはならないのである。

2021年5月12日 (水)

「原発の耐震性は住宅に比べると低い」という主張は何が誤っているのか

原発再稼働の問題では有名な話だが、2014年に大飯原発訴訟というのがあり、福井地裁で原告が勝訴した。

この時の判決を下した樋口英明裁判官が退官後に講演したり著書を出している。それを報じた新聞記事などが発信源となり、「原発の耐震性は住宅以下」という主張が出回るようになった。

樋口氏の著書は1回読み、判決文も読んだ。その上で言うが、上記の主張は科学的には不勉強のそしりを免れないし、それを「衝撃のデータ」などと鵜呑みにしたメディア関係者達にも問題がある。

まず新聞記事を読んでみよう。

大飯原発の裁判で原発の耐震性を争点にしました。私の自宅でも3千ガル(揺れの勢いを示す加速度の単位)以上で設計されているにもかかわらず、当時の大飯原発はそれをはるかに下回る700ガルでした。全く見当外れの耐震性です。2000年以降、700ガル以上の地震動をもたらした地震は全国で30回ありました。原発は平凡な地震にも耐えられないのです。

「私が原発を止めた理由」は? 三重出身の元裁判官出版 聞き手・大滝哲彰『朝日新聞』2021年3月5日

※下線は筆者

他にもある。

これは一般住宅と比べてどうなのか。樋口さんは「三井ホームの住宅の耐震設計は5115ガル、住友林業は3406ガル。実際に鉄板の上で住宅を揺さぶる実験をして、ここまで大丈夫でした。これに対して原発の基準は上げたところで、この程度。ハウスメーカーの耐震性よりもはるかに低い。

元裁判長が示した「原発の耐震性」衝撃のデータとは 川口雅浩・毎日新聞経済プレミア編集長 2021年4月28日

樋口氏はそう考えた経緯も明らかにしているようである。

1日で決めたそうだ。だから高裁でひっくり返されたのだろう。

私は、反原発論者の山本義隆氏を思い出した。駿台のパンフレットに物理講師で紹介された時は「分からなければうんうん唸って考えるしかないのよ」と釘を刺していたからである。

なお樋口氏は他に、東京新聞、週刊金曜日、プレイボーイ等、他のメディアからも取材を受けている。

この主張の間違いは、「比較する際は物差しを揃えられるか検討する」のを怠ったことである。また、地震を振幅のみで捉え、周期と継続時間を無視している。私の専門は建築ではないが本記事で解説を試みた。構成は【1】~【4】で主たる論点を示し、【5】【6】で結論を与え、【7】に想定問答を付けた。【2】は長くて理系向けの話なので、飛ばして貰っても構わない。

【1】波には周期がある。

まず、地震は波である以上、加速度振幅の他に周期で評価するものである。

私が高校生だった90年代、理系を選択すれば波を学んだ。その程度の基礎教養だ。グラフに記録された地震波を見たことのある人は多いだろう。以下に、東日本大震災と阪神大震災の加速度波形を示す(境有紀「地震動の強さとは」(地震工学会HP リンク)。縦軸に加速度、横軸が時間だ。

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波形は一見無秩序に見えるが、短い周期の波もあれば長い周期の波もある。個々の周期で振幅も異なる。それらを足し合わせると地震波になる。地震波には色々なパターンがあると言われるのは、その振幅と周期の組み合わせが違っているから。

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出典:木下繁夫・大竹政和監修『強震動の基礎』(Webテキスト版)図3.2-2

一方で、物には固有の周期がある。建築物もそう。固有周期の波を受けると共振と言ってその大きさがどんどん増幅する。つまり、建物の固有周期は地震に弱い周期(卓越周期とも呼ぶ)と言い換えることが出来る。

原発の固有周期は0.1秒前後、住宅の固有周期は(実質的には)1秒前後であり、かなりずれている。一方が壊れた地震波なら他方も壊れるだろうと言えないのはそのためでもある。

それどころか、ハウスメーカー自らが単純なガル比較は意味が無いと説明している例がある(一条工務店 リンク)。

ハウスメーカーは自社のPRのため、なるべく大きな値を使いたい。大きな地震がある度その傾向は強まった。そうした著名メーカーをたしなめる「親切な」メーカーが登場するのは、当然と言えるだろう。

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阪神大震災と東日本大震災を比較すると、前者の方が周期1秒付近での揺れは大きくなる。このことが阪神で住宅が大量に倒壊した理由である。

樋口氏はハウスメーカーが阪神大震災以降に行った努力に繰り返し言及している。しかし、東日本大震災では古い住宅も大量に被災したが、加速度の激しかった地域でも倒壊率は低い。それが上記一条工務店が掲げたグラフの意味するところである。1978年宮城県沖地震の経験から仙台市のように耐震化が熱心だったとの指摘もあるが、全国平均と極端な差は生じていない(震度6強で全壊「少」の理由に迫る、リンク)。

つまり、東日本大震災で古く、且つ耐震補強もしていないような住宅が倒壊しなかったのは、住宅メーカーの努力ではない。固有周期の違いのためであり、樋口氏の主張は片手落ちなのである。

なお阪神大震災だが、1981年に新耐震基準が施行され、それ以後に建てられたビルは被害が少なかった。マンションで例示すると、9割が軽微以下の被害で大破は0.3%に過ぎない(耐震基準(旧耐震VS新耐震)建物を考える・・・、リンク)。被害の大部分は旧耐震基準以前に建てられた木造家屋である(阪神・淡路から20年。耐震基準が明暗をわけた、リンク)。当時から一般のビル以上に設計地震力が高く、全サイトではないにせよ、近年は更なる耐震補強を施されるケースも目に付く原発建屋が、阪神大震災の揺れで半壊・倒壊するとは私にも思えない。

理論は、以下も参考にしてみると良い。

構造コラム第5回「固有周期と共振現象」2016/10/21 株式会社U’plan

冒頭に示した波形は加速度と時間しかないので周期ごとの大きさは分からない。しかし、上記コラムに登場する応答スペクトルに変換すると、周期ごとの加速度を求めて比較することが可能となる。それを【2】で説明する。

【2】地震波はスペクトルと継続時間で理解するもの。

地震波は複数の波のから構成されているので、スペクトルを理解する必要がある。また、継続時間も考慮の必要はある。原発訴訟にはよく出てくるが、氏の発信したものにその情報は無い。

このことを一段深く知ると、ガルだけが絶対的指標にならないことが理解出来るが、躓く人は多いのではないだろうか。そのためか、原子力規制庁なども住宅メーカーの件で質問を受けた際、説明は回避しているようだ。本節ではこれらの基本的な解説をする。長いので飛ばして【3】を読んでも構わない。

まずはスペクトルから。大学生が耐震設計を学ぶ際、こうした問題を理解するため耐震工学、振動工学と呼ばれる分野を学習する。そのテキストはネットにも多数アップされている。26年前の阪神大震災で記録された地震波(神戸海洋気象台)が頻繁に使われているので、数式は余り使わず、これで例えよう。同じ地震波から様々な表現がなされることが実感できるだろう。

よく「〇〇地震では□□の地点で▽▽ガルを記録した」とある。【1】で述べた横軸に時間、縦軸に加速度値をとったものである。時刻歴波形、加速度波、強震記録などとも呼ばれ、時間軸に着目した場合は時刻歴データ、地表で測ったものは地動加速度などとも呼ばれるが、物差し(軸)は全て同じ(構造物の動的弾性応答と応答スペクトル、リンク)。

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神戸海洋気象台の場合は818ガルだが、最大の振幅を読み取っている。体感的には最も分かりやすい地震波のグラフと言えるだろう。

なお、この加速度からは、周期の情報を読み取ることは不可能だ。様々な周期を持つ波の合成値だからである。よって「最大〇ガルを取る加速度波の固有周期は?」と問われたら、「単調な正弦波ではなく、様々な固有周期の波が沢山混じっている」と答える。

※地震観測のデータはEW(東西)、NS(南北)、UD(上下)の3軸それぞれ加速度波のグラフがあるが、簡単のため一つの軸だけ考える。

だが、固有周期との関係を考えると、「周期◎◎秒で▽▽ガル」と分かる方が便利である。

つまり、地震波を加速度と周期で表したグラフがあると良い。

【1】で述べたように地震波は様々な周期の波を重ね合わせたものなので、これを周期ごとに分解することが出来る。その数学的操作をフーリエ変換と呼び、作成されたグラフをフーリエスペクトルと言う。横軸には周期、縦軸は加速度の振幅が表記される。

神戸海洋気象台の818ガルを記録した加速度波のフーリエスペクトルを示す(兵庫県南部地震の地震動と応答スペクトル、リンク)。

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これを見ると、周期0.7秒で600ガル程の最大値を取っている。各周期を足し合わせれば、最大値818ガルの地震波となることは直感的にも理解し易いだろう。

だが、耐震設計者は地震波が構造物に及ぼす影響を知りたい。それも、簡単なグラフがあれば非常に便利。そこで、次のように考えた。

理系で大学に進学すると、基礎教育で振り子に強制振動を与えた際の振る舞いを微分方程式で表現することを習う。強制振動を地震波とすれば、その振り子の振る舞いを描くことが出来る。なお当然、振り子には固有周期がある。

次に、様々な周期の振り子を用意して地震波(加速度波形)に対する最大の応答(振れ)具合を並べる。これを加速度応答スペクトルと呼ぶ。言い換えると「その地震に対して建物がどのような応答をするか」を表したものである。

※フーリエスペクトルは多くの理系学部で学ぶが、応答スペクトルは専ら耐震関連分野で使われているようだ。

地震を怪獣のように例えるなら、怪獣の咆哮で色々な固有周期を持つ街の建物がどのように揺さぶられるかを示したもの、と言ってもよい。ある団地は激しく振られてしまうかも知れないし、別の商業ビルはそれほど影響は受けないかも知れない。怪獣映画と違うのは、ビルが壊れるシーンまでは映らないこと、即ち塑性崩壊や非線形領域の応答は計算できないことである。

全体の関係は以下のようになる(構造物の動的弾性応答と応答スペクトル、リンク)。

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グラフを見ると最大加速度を取る周期からは少し離れてるにも拘らず、周期0.5秒で2068ガルもの大きな値を示している。

元の818ガルの地震波からは直感的にはイメージ出来ないのではないだろうか。

しかし、ここが肝心なところだ。フーリエスペクトルは地震波そのものを別の物差し(軸)を使って表してるだけである。応答スペクトルは、物差しの変更に加えて、指し示してる物が違う。しつこいが「応答」とは「地震波に対する振り子の応答」である。

逆に言うと、フーリエスペクトルでは振り子(構造物)の応答は分からない。強制振動の話ではないから、振り子が計算式に表れない。だから建築耐震分野ではあまり使われないのだ。

少しだけ具体的な計算をしてこの点が分かるように説明する。加速度応答スペクトルの各周期の値を加速度波の最大値で割ったものの絶対値を応答倍率と呼ぶ。神戸海洋気象台の場合は周期0.5秒で2.5、周期1.5秒で1.0となる。

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即ち、神戸海洋気象台で観測された地震波では、周期0.5秒の建物の方が揺れるということだ。

こうして作成した加速度応答スペクトルはその使い方を知っておくのが有用だろう。例えば、グラフを見て応答値の大きな周期からは固有周期が離れるように建物を設計することが考えられる。

また、グラフを読み取るだけで各固有周期での揺れの最大値が分かり、地震波の時刻歴を気にする必要が無いので、静的な加速度のように扱え、部材に必要な強度を計算する上で便利である。神戸海洋気象台の例で田守伸一郎信州大教授が計算例を載せているので、参考にしてほしい(応答スペクトルを用いた構造物の応答解析、リンク)。

原発の場合は、建物を一つの塊(質点)とみなした場合の応答スペクトルではなく、多数の質点により構成されたモデルを考え、建屋の基礎に地震波を入力した際は、各階ごとに床の応答スペクトルを算出する。ここまでがゼネコンの仕事であり、重電メーカーは各階に据え付けられる機器・配管などへどの位の力がかかるのかを床応答スペクトルを参照して計算する。各機器・配管はそれぞれ固有周期が違うので、応答値によってかかる力も変わる。それを元に算出された力に耐えられるような取付金具や基礎ボルトを選定するようだ(参考、後藤政志「格納容器から見た原発の技術史」『福島事故に至る原子力開発史』P144-145)。

ここで漸く本題。基準地震動はこの加速度応答スペクトルのグラフで描画されるものなのである。電力会社がネットにアップしている資料を見てみると、必ず載っていた。中国電力島根原発の例を示す(リンク)。

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まず、同じグラフに沢山の地震記録や地震予測の加速度応答スペクトルを何本も描く。次に、その線の束の最も大きな値を包み込むように直線や曲線で結ぶ。これで基準地震動の加速度応答スペクトルは完成。なお、大きな値はコントロールポイント(基準地震動の線が絶対に通らなければならない点)、直線や曲線で結ぶことを包絡とも呼ぶ。

黒の直線と曲線で結んだものが基準地震動、不定形の波形が様々な地震予測の加速度応答スペクトルである。

では、基準地震動を加速度波のように横軸に時間、縦軸に加速度で表現することは可能だろうか。勿論可能である。数学的処理は割愛するが、「模擬地震波作成」と言うのがそれに当たる。

一般的な例としては、模擬地震波を作成したらその加速度応答スペクトルを求め、設計用に決めた加速度応答スペクトルに近い形状となっているかを算定、ずれている場合はフーリエ係数などを補正して新たな模擬地震波を作成し、その加速度応答スペクトルを求める、というサイクルを繰り返すようである(模擬地震波作成処理の考え方 WANtaro氏、リンク)。

加速度応答スペクトルは振り子の先に記録ペンを付け、軌跡を描くようなものだ。本当にペンが付いていれば最大応答値より下側は塗りつぶされる。そういうものだから時刻に関する情報は消える。例えれば写真で動物や乗り物を露光で撮るのに似てる。動物や乗り物が地震波に当たる。

逆に言えば、ある加速度応答スペクトルがあった時、それを描く模擬地震波の時刻歴波形(加速度波)は、無数に存在する(下記鉄道総研資料、リンク)。

※L2地震動は、一般建築の基準地震動に相当。

L2

極端な話、同じ加速度波を2回繰り返してもその地震波の加速度応答スペクトルは変わらない。

_fig1-_

だから、構造物の設計に適した波形を作成する。

原発の場合は日本電気協会規格であるJEAG4601で規定。1987年版では2章に掲載されている。

1418

出典:原子力規制庁(リンク

JEAG4601と上記文書「時刻歴波形の作成方法」などにより、包絡線の形状を決定、その中に模擬地震波が収まってることが分かるだろう。突出して大きな加速度は取っていないが、最大値と比べそん色ない振幅を取る時間が長めである。

また原発の場合、模擬地震波の最大加速度は、報道される基準地震動の値(加速度応答スペクトルの周期0.02秒)に合わせてあるようだ。先の島根原発の例を示す。一方で、そういうことをしない分野もある。

2

これまでの説明から明らかなように、加速度応答スペクトルと加速度波は、物差し(グラフの軸)も、見ている物も異なるので無理である。比較するなら、どちらかの表示形式に揃えるしかない。

であるから、上記のような模擬地震波(加速度)波であれば、住宅メーカーが振動台に入力する地震波と最大加速度を同じ図で比較することは出来る。

これで物差しも揃って、基準地震動の作り方も理解して、良かったと思うだろう。

私も最初はそう思ったのだが、本当にそれでいいの?と考えるようになった。このことを本節の最後に述べよう。

第一に、住宅メーカーが振動台で使っているのは自然の地震である。

高層ビルには建築基準法告示1461号で定義された加速度応答スペクトル(告示波)があり、他に道路やダムにもそれぞれ定められたものがあるが、住宅には無い。だから、分かり易いPRにもなる過去の地震波を使う。加速度最大値が特定の固有周期の加速度応答スペクトルに一致するように調整されてはいない。

そのような地震波と、基準地震動から包絡線で整形した模擬地震波とを最大加速度のみで比べることに、どの程度の意味があるかは疑問だ。原子力規制庁も福井県の主催した説明会で「比較は出来ないと」回答している(原子力発電所の審査に関する説明会(2月9日)開催後の追加質問に対する 原子力規制庁の回答 リンク 質問No.1と7が該当)。

第二に共振の事を考えると、建物や機器の固有周期付近の値が最も重要となる。固有周期から離れた周波数帯域では、既往の地震波が基準地震動を上回っていても、共振しないのでダメージを受けない、というのが一般的な理解である。1秒以上での加速度が大きく、原発の固有周期と離れている例は【1】の阪神大震災である。

一方、近年極短周期が卓越する地震が相次いで観測され、原発機器の固有周期に近い。これらは本記事最後の【想定質問11】で詳細説明したが、見かけ上大きな数値を示していても、ダメージへの寄与が高くなるとは限らない、と私は考える。

第三に、最大振幅の継続時間の問題がある。加速度応答スペクトルは時間情報が無いので、最大応答値が分かっても最大値付近を取る加速度の継続時間は分からない。これが、極短時間であれば、大加速度が作用しても殆どの構造物は破壊には至らないという考え方に繋がる。下記に模式図を示したが、K-NET築館波を使った住宅実大耐震実験の動画を見ると更に良く分かる。

K-NET築館波の下に仮想的な強震動(60-90秒の振幅を大きくしたもの)を示す。このような波が実在すれば、破壊力は大きくなる。

なお、近年強震動パルス(SPGA)という、加速度が大きな地震動が問題視されている。SPGAは振幅が大きくなることで周期特性の寄与は小さくなる(想定される継続時間は阪神大震災並みに短いようだが)。この地震波は分かり易く誇張したものだからSPGAより更に破壊力は大きいが、振幅の寄与が大であることは理解できるだろう。

初期の原発で採用された鋼製の格納容器、特にPWRのものについては安物の空き缶のように、その体積に比べて板厚が薄く、しかも上部に重量物があるので、SPGAなどには弱いとの指摘もある。

しかし、退官後の樋口氏はそのような主張を展開しているわけではなく、単に過去の地表観測をベースとしている。また、大飯3,4号機は鋼製格納容器ではなくプレストレストコンクリート製原子炉格納容器である。

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なお、基準地震動も読み上げ方によっては人に異なった印象を与える。

加速度応答スペクトルのグラフに描かれた原発の基準地震動は0.02秒では最大値を取らず、0.1秒前後で最大値を取っていることが多い。主要な構造物の固有周期も最大値付近に集中している。

高知県の説明資料では伊方原発を例にしているが、650ガルとされる基準地震動は0.1秒では1600ガルとなる(リンク PDF6枚目)。

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※上図は横軸は周期だが、右上に向かう斜め線を加速度(応答スペクトル)、縦軸を速度(応答スペクトル)、左上に向かう斜め線を変位(応答スペクトル)として二次元のグラフで3つのパラメータを表現するために使われる3軸図(トリパタイト、Tripartite)と呼ばれるものである。本記事では加速度のみを議論するため、それ以外は無視している。詳しい解説は「pythonでトリパタイト(3軸図)を描く」(構造計画研究所、リンク)等を参照のこと。

大飯原発の場合、数年前まで採用されていた0.02秒で700ガルの基準地震動は、0.1秒付近で最大値2000ガルとなる。

樋口氏が犯した間違いの一つは住宅メーカーの誇張を真に受けたことでそれは次の【3】で説明する。だが、上記のような読み取り方も一つの誇張であるという点は似ている。

【3】計測位置(高さ)を揃えるためには明記が必要

地震加速度は、計測条件が揃っていなければ比較に意味が無い。

樋口氏が引用した三井ホームのWebサイトを確認すると5115ガルについて「※入力地振動の数値ではありません。実験時に振動台で計測された実測値です」(ママ)と書かれている。「地+振動」というタイプには苦笑いだが、これだけではよく分からない。最初、屋根で測ったのかと思った位だ。

住友林業の場合は現在PRしているBF工法について、下記の2通りの記述があるが、動画に加速度波が描画されていることから加振値と推定。技術文章の表現としてはNGである。

東日本大震災と同等の最大加速度2,699galの揺れはもちろん、その数値を大幅に上回る3,406galの揺れを記録しましたが(リンク

東日本大震災の最大加速度2,699galおよび、最大3,406galの揺れを加えてもなお(リンク

3406ガルの根拠は分からない住友林業にも問い合わせメールを出したが脱稿前に回答は無かった。

地震計(加速度強震計)のセンサ自体はそんなには大きくは無い。地震計メーカーのミツトヨが出してるカタログを読むと、20cm角位のサイズで、地下から最上階の何処にでも取付可能である(リンク)。当然屋根にも付けられるだろう。

三井ホームは「2016年7月11日・12日・13日 /国立研究開発法人 土木研究所」と試験場所を書いてあった。そこで土木研究所の振動台について調べたところ、水平方向について「最大加速度2Gで任意波形の加振」となっていた(リンク)。

 ※地震動は通常水平方向が垂直方向より大きい。振動台もそれに対応したものが殆どである。

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更に念の入ったことに「実際にはテーブル面で上記の数値を超える加速度等が計測されることもありますが、上記の数値を超える波形を入力することはできません。」とまで明記している(リンク)。

2G≒2000ガルである。それでは、5115ガルを計測した入力値はどうなっているのだろうか。

三井ホームに問い合わせたところ、2Gは100t搭載時に正弦波で加振した場合の1軸の能力であり、実験では(単調な正弦波ではなく)地震波を入力したので定格以上の加速度が計測されている。5115ガルは振動台表面での計測値との回答を頂いた。三井ホームはこの実験に関する論文投稿もしておらず、入力地震波は非公開とのことだった。

これでは、調べようがない。それに、3軸それぞれの最大加速度を示した時刻が同一だとしても、合成すればかなり大きな計測値を示す可能性はある。分かり易く2軸で例示すると、NS方向:3000ガル、EW方向:4000ガルの合成加速度はピタゴラスの定理から5000ガルとなる。

Ns4000ew30005000

この件について調査中、ある脱原発系のライターから「住宅メーカーは丁寧な説明をしている」と反論を受けた。だが、その説明はお粗末そのもの。白抜き部分もあるとはいえ、原子力規制庁に説明するため分厚い審査資料を用意する電力会社とは比べ物にならない。

なお、ハウスメーカーが耐震化に熱心となったのは、先に述べたように阪神大震災で旧耐震基準を中心に大被害が出たためである。そのため、木造住宅については2000年に建築基準法を改正し新・新耐震基準が施行されたが、2016年熊本地震で一部に倒壊するケースがあったので、熊本で得た地震波で実験をしているのである。つまり元々が脆弱過ぎたから改善に努力したのである。一方、鉄筋コンクリート建築についても設計改善などはされているが、耐震基準自体は1981年以来あまり大きな変更はない。

参考に、計測位置を示している数少ない例がミサワホームである。阪神大震災を参考に1000ガルを入力したところ、「屋根の部分では2,500~3,000ガルに達する加速度が加わっていた」とある(リンク)。入力に対する増幅率は3倍。上の階の方が大きく揺れるのは常識だが、それを裏付ける。だから計測位置の確認は重要なのである。

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本来はミサワホームのような記載が最低ラインであり、それを満たさないメーカーは、広告上問題がある。

更に、ベテランの住宅コンサルタントによると、実大実験には基礎がついてないことが多く、実際の建築では基礎との堅結状態が問題になるとのこと(本当に地震に強いハウスメーカー・工務店を選ぶ秘訣(U-hm株式会社)リンク)。そこが弱ければ揺れは大きくなるだろう。

また、振動台実験を行っている住宅は理想的な標準設計に基づく。実際の住宅は顧客のオーダーで壁の量と配置バランスが崩れることがあるし、店舗付き住宅や車庫付き住宅の場合は1階に巨大な開口部があり、脆弱となるが、そのような形状の実験はPRの対象外である。

他にも、建築技術者が住宅メーカーの耐震試験の問題点を指摘したブログなどもある。

※2018-11-22 ハウスメーカーの実大振動実験から各社の耐震性はわかるのか? (バッコ博士の構造塾)

【4】岩盤(第3紀層)と地表の地震動には差がある。

樋口氏は著書でこの点は紹介しているが、インタビュー記事などでは省略されているので当記事でも説明する。

一般の建物、特に住宅はどこにでも建てられているが、原発は岩盤(第3紀層)の上に建てられる。地表まで岩盤が露出していなければ敷地を掘り下げたり、岩盤まで建屋を埋め込む。文献によっては岩着とも呼ぶが同じ事である。

理由は、表層の柔らかい地盤より強固な岩盤に建設する方が揺れが小さくなるから(北海道電力の説明より下図引用 リンク)。

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これは「福島第一原発が30mの崖を10mに削って建てた」理由でもあった。地震の脅威が希薄な国々では岩盤まで掘り込まず建てているサイトもあり、岩着は日本に特徴的な考え方のようだ。福島事故後、知ってる人は増えたと思っていたが、Twitterでの反応を見ている限りは、そうではなかったのだろう。なお福島第一の場合、その差は2.5倍程度と建設時に言われていた。

実は、岩着思想の観点から樋口氏を批判したPowerpc970plus というアカウントの説明がTogetterにまとめられている(togetter.com/li/1678458)。ただし、【5】で示すように岩着だけでは反論になり得ないし、周期の話は私が次のようにヒントがてらガルのみ問題にすることに疑問を呈した後、急遽付け加えている。それも自らの言葉ではない。

なお「地表の3000」とは東日本大震災で築館にて観測された地表での強震観測記録(K-NET築館の2933ガル)を指す。

地震観測網として最もポピュラーなのはK-NET(Kyoshin Network:全国強震観測網)国立研究開発法人防災科学技術研究所(防災科研)が運用し全国に1000ヶ所設置されているが、計測高さは地表である(リンク)。なお地震波は0.02秒ごとに記録する(リンク)。

一方、基準地震動は地下の固い岩盤面(解放基盤表面)で地震の揺れを設定するものである。

解放基盤表面の深さはサイトによってまちまちである(具体的にはリンクの通り)。柏崎刈羽のように原子力発電所の地下階と100m以上かけ離れている場合もあり、そのようなサイトでは深さの違いを明記している(リンク)。

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東電作成の図(リンク)を見れば分かるように、岩盤には建っているが、岩盤と解放基盤表面は厳密には定義が異なることには注意が必要である。岩盤なら全て解放基盤表面として扱われる訳ではない。

なお、北海道の泊と西日本のサイトでは建屋の地下=解放基盤表面となっているケースが多い。この場合は上図の岩盤=解放基盤表面と見なして差支えは無い。

さて、樋口氏の本を買うべきでは無いとPowerPC970plusは主張する。しかし著書では「推進派の弁明」を批判する形で頁を割いていた。無知だとも書いているが、失当である。樋口氏が言及していない【1】~【3】の点を指摘するのが適切だったと考える。

何故Powerpc970plusは推進派から批判されないのか。それは以前から次から次へと論点をずらして粘着することが特徴のネット弁慶として知られているためだろう。実務家と思しき数名は【1】【2】を理解していたようだが、Powerpc970plusと揉めたくないのと、上記まとめが拡散されたのでノータッチにしたのだろう。【3】について言及していた関係者は見当たらない。

【5】福井地裁判決文はセーフだが、退官後の主張はアウト

裁判とは原告と被告が言い分(準備書面等)を出し合って裁判所に判断を仰ぐ仕組みである。よって、基本的に裁判官自身が何か独自に証拠を調べ出すことは無い(職権証拠調べの禁止)。精々提出を促すのが限界である。樋口氏もこの点を著書で言及している。

そこで判決文を読むと、【1】~【3】の点は元々俎上に上っていない。【4】についてのみ議論している。

「岩手内陸地震の際に地表で観測された4022ガルと同じ地震波が原発に来る」ことが趣旨の文章と解釈すれば、確かにNGである。

だが私には、岩手内陸は参考例に過ぎず、岩着効果だけでは「基準地震動以上の地震波が来ないことの証明は不可能」という論旨に読める(リンク 特にPDF45枚目および54~55枚目等)。 その証拠に、各地の原発で基準地震動以上の地震が来た例も挙げられている。

退官後、話を拡張して住宅との比較を行い、【1】~【3】の問題を抱え込んだのが、樋口氏と一連の報道の失敗なのである。

【6】原発と住宅を報道された数値だけで比較するのは無理

【2】で説明した通り、単位がガルでも、加速度波なら加速度波、加速度応答スペクトルなら加速度応答スペクトルで比較すべきである。

それが出来たとしても、【1】で述べたように住宅が破壊する固有周期は1秒前後だが、原発の固有周期は0.1秒前後ということもある。

ハウスメーカーは過去の有名な地震で記録された加速度波形を振動台テーブルから入力しているが、計測した加速度波形をK-NETやKiK-NET(防災科学研究所が日本全国に設置した地震観測網)のように公表してないので、その意味でも基準地震動との比較は不可能である。

また、高さ、地盤、基礎の有無等の条件も確認する必要はあるだろう。

そして、表現されている物の意味を理解し、誇張の型を学んでおくことだ。

例えば【2】で述べたように、加速度応答スペクトルから最大加速値のみ抜き出して比較すれば、基準地震動は2.5倍程度大きな値を取るし、模擬地震波の最大加速度は0.02秒での加速度応答スペクトル値と合うように調整されている。

住宅の地震動については【3】で述べたように屋根や2階での記録値は入力加振値の3倍程度まで増幅する。

私は第三者の個人だから持っている情報は限定される。現時点ではこれ以上のことは言えない。

ただし、樋口氏が問題提起していること、一部の訴訟で原告から疎明(説明)するように問いただされた以上、電力会社は彼等なりにきちんとした回答は出すべきである。

【7】想定質問

【想定質問1】

色々書いているが、基準地震動より大きな地震が来て原発に被害が出たらお前の説得力はゼロだ。

→今日取り上げたのはグラフや条件を読み誤ってる話が主。例えば活断層や地下構造の評価で基準地震動は大きく変わることが知られているが、その話はしていない。私も基準地震動より大きな地震や未経験の特性を持つ地震で原発に被害が出る可能性はあると考える。

なお、過去に原発の地震想定や耐震設計に疑問を呈するブログ記事は書いたが、それらは電気設備やケーブルラック等の脆弱さを論じたもの。建屋が倒壊するとは主張していない。これらは、更新や補強を行うことで現状の想定に追従することは可能である。

更に、私がよく参照する東海第二訴訟では圧力容器や格納容器に損傷を生じる旨の主張をしているが、それら構造物の耐震問題は準備書面が充実しているので当ブログで扱ってない。後藤政志氏が阪神大震災など過去の地震で鋼製の橋脚やタンクに座屈を生じたケースを挙げているが、例えば橋脚の場合は1971年以前の古い耐震基準で建設されたものが大きな損傷を受けた(神戸線三宮駅付近高架橋など、リンク)。同時代PWRの鋼製格納容器ならば技術水準が近いこともあり、同じ様な事は想定し得るのだろう。

【想定質問2】

普段原発を推進しているゼネコン技術者も何も言ってこないが。

→本当にそうなら、自社に住宅部門があり、会社や業界の悪口に繋がるので黙っているだけと考えられる。就業規則で自社の悪口を禁じている企業は多い。公共の利益を意識して問題提起すれば別だが、SNSで憂さ晴らしを目的に行っているケースでは、正体が明らかになると過去の書き込みからその種の悪口も露見してしまうのだ。

その他には、コミュニケーションスキルの不足で相手の立場に立った説明が出来ないとか、自分が苦労して勉強したので人に教えたくないと言った理由なのだろう。

勿論、応答スペクトルなどは説明が煩雑となり、比較の物差しを揃えることが難しいこともあるだろう。

【想定質問3】

・原発建屋はある程度地下に埋め込まれ、深さによっては揺れが半減する研究もある。実験した住宅に地下室は無い。お前は知ってるのか。

・原発建屋に大地震が来るとコンクリートに無数のヒビが入り、建設時の強度を維持できない。お前は知ってるのか。

→確かにそういう話はありますが(リンク)、今回の件から外れるので説明を省略した。

※他、関係無い話への話題逸らしも同じ回答とする。

【想定質問4】

Twitterでの説明と変わってるところがあるようだが。

→今回調べ直し、応答スペクトル関係など訂正したところはある。特に4月以前は少し違うことを言っていたかも知れないが、その場合は本記事を最終回答として欲しい。

【想定質問5】

住宅との比較を準備書面に出してしまった。黙っていてくれないか。

→貴方の訴訟団で検討すること。他所の訴訟を巻き添えにされる方が困る。

社会通念の一例として示したところもあるが、正確には「住宅業界が生み出した」社会通念と言うべきだろう。社会通念を言うなら【1】【3】程度は高校までに学習する内容で理解出来、浸透度合いは比べ物にならない。【2】に関してもそれを解説した大学生向け教科書では「分かるように書く」ことを目標にしており、「~が分かる本」といった参考書も含め無視は出来ないだろう。「社会通念上」と言う言葉を使い過ぎた反動から、今後訴訟の場でも「社会通念とは何か」についての議論が深まっていくのだろうが、よく考えて準備書面を出すべきである。

なお、原子力情報資料室をはじめ、以前から学習を重ねてきた脱原発運動家や団体は「固有周期」「応答スペクトル」が何か?は理解した上で、耐震問題の批判を行っている。それに学ばなかったことを猛省して貰いたいね。

【想定質問6】

もうこの主張にメディアで相乗りしてしまった。黙っていてくれないか。

→貴方の問題。何故複数の原発ウォッチャーが黙っていたのか、よく考えること。

【想定質問7】

もっともらしく応答スペクトルの話をしているが、お前は頭が悪いだろ。文系なのか?どこの大学を出たんだ?耐震設計の実務経験は?取得資格は?投稿論文は?

→資格・経歴自慢が目的ではない。なお、理系大卒で専門は非建築系だが、本記事の調査で苦労したことは良い経験になった。フーリエスペクトルを経由したのも建築畑以外への配慮から(気象庁などに類する説明法 リンク)。

【想定質問8】

加速度の話ばかりで速度や変位の解説が無い。地震が来れば振られたものはスピードがつくし、元の位置からもずれる。速度や変位の応答スペクトルもある。加えて減衰定数の話も無い。式が殆ど無いので時刻歴応答解析も無ければニューマークのβ法による模擬地震波作成への話題展開も無い。不十分では。

→目的に沿わない事項は省略している。一般的な構造物は無論、鋼製の橋脚や格納容器の座屈にも大きな速度や変位が関係してくるが、その話はしなかった。樋口氏が加速度にのみ関心を持っていたことへの反論として速度や変位も大切だと説明しても良かったが、他の解説を優先した。

不足と思った知識は幾らでもネットに解説がある。好きなだけ勉強してください。

【想定質問9】

長文の癖に小難しい!!!お前は本当は頭が悪いんだろ。

→御免なさい。今後も精進します。テクニカルターム?それは覚えてくださいとしか。

【想定質問10】

ハウスメーカーに学ぶことは無いのか。

大地震が繰り返し襲来することを前提に実物モデルで何度も加振したことは見習うべきと考える。

ただし、本文に書いた通り、ハウスメーカー各社の情報開示は不十分で比較は困難である。私の知る限り、基本的な情報を論文等で開示しているのはミサワホームだけ。技報などで明らかにしているなら、広告ページに論文名位は明記はするべきだろう。

なお、ミサワホームも東日本大震災前の少し古い情報が主で、中越沖地震や熊本地震で観測された倒壊率の高い地震波で加振実績がないため、U-hm株式会社のような住宅コンサルタントからの評価は一段階低い(2021年5月現在)。

【想定質問11】

ハウスメーカーが引き合いに出す東日本大震災でのK-NET築館加速度波(最大2933ガル)の加速度応答スペクトルを確認したところ、短周期側で6000ガルを超え、グラフから上端がはみ出している。多くの原発の基準地震動よりも上の値であり、危険なのでは。

→グラフを正しく読めているようで何より。エイト日本技術開発がこの波について解説しているが周期0.24秒で13000ガルとのこと。

ただし、以下の2点からこの数値をそのまま評価には使えない。

(1)極端な増幅効果

これが記録されたK-NET築館の観測点をエイト日本技術開発が機材を持ち込んで確認した所、近くの文化会館駐車場と比べると1.5m程高い位置にあり、短周期の地震波が増幅されていることが分かっている。掲載されてるグラフはHz表記。周期0.25秒=4Hzなので、4Hz付近の比を見ると、概ね2倍程度、更に短周期側(高周波数側)では3倍以上増幅されている(東北地方太平洋沖地震の概要(地震と地震動)、リンク)。

Knet

なお、周囲の建物に被害は少なかった。同社による2008年の現地写真を見ると、かなり脆弱そうな住宅も目につく(K-NET築館(MYG004)、リンク)。

(2)一般に建築物は極短周期の波では壊れないこと

簡単な説明は気象庁にもある(リンク)。原発の場合共振周波数は0.1秒前後と比較的短周期だが、これはよく言われるように、分厚いコンクリート建築、機器は太いボルトで強固に取り付けているから(剛構造)。加えて、短周期成分且つ最大加速度の継続時間が短いと、一般建築でさえ影響は軽微になるのだろう。

直感的には(特に建築物には)正しいと考える。仮に築館波で原発を加振しても、多くのサイトでは停止操作を妨げるような損傷が発生するとは思えない。

鉄道総研によると杭基礎を有する構造物の場合、地盤の動きが拘束され、入射される地震動が低減される効果があり、築館波の場合でも極短周期で最大50%程度減少するとしている(「耐震設計の静的解析における入力損失効果の評価法の開発」で検索すると成果物PDFをダウンロード出来る、ここではサマリーのURLをリンク)。

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原子力安全推進協会は米国の基準を援用し、0.1秒以下の固有周期が影響することは実質的にないとしている(10Hzを超える地震動成分と機械設備の健全性に関する考察、リンク)。

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鉄道構造物では現状、短周期成分が卓越することを前提に耐震設計することとされており、その点は原子力安全推進協会の主張とは異なるが、【2】の後半で例示したように、最大加速度に近い状態で長い時間揺れないと、脅威にはならないと考える。

【余談】

SNS上の情報拡散で気づいた問題点だが、一見情報を広く収集しながら不都合な情報には拒絶反応を示す内田川崎なるアカウントを確認したところ、twilogに樋口氏の主張をたっぷりRTした跡が残っていた。彼と親しい著名な運動家達も碌に言及をしていない。彼等にこの件でチェック能力を期待することは出来ないことを付記しておく。

※21/6/8:【2】中心に説明を修文。

2020年11月25日 (水)

コロラドこと牧田寛氏による私への根拠なき呟きについて

牧田寛氏とは20年6月に完全に袂を分かった。数日前Twitterでブロックをしてきたので、こちらもブロックで応じている。

私も時間を無駄にしたくないので、今後、特に牧田氏には関わらないようにしたいと思っているが、以下のような発言については要点を絞って記録し、訂正を加える。

私はTwilogを取っているが、そのような呟きは記録されていない。また、記憶になるがPCR原理主義に関した呟きも削除していない。


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また、PCRに肯定的な感想のみを持っていた頃はオノデキタ(小野俊一)氏のブログ、2020年夏にツイッターアカウント開設後は世界黒幕氏のTogetter(最新版のリンク)に書き込んだ。牧田氏を名指しで「PCR原理主義」と書いた記憶はなく、また、全てではないが再確認したが、そのような投稿記録も無かった。

なお、牧田氏を含む数名の知己とやり取りに使用していたメールアカウントにて「PCR原理主義」で検索したが、一言も記録されていない。

勿論こちらの記憶違いの可能性もあるが(これ重要)、「ばらまいている」となると、複数回の書き込みは必要ではないだろうか。

実は、Twitterでエゴサーチをすると「PCR原理主義」という言葉を使っている人達がたくさん見つかる。殆どは所謂検査抑制論者が、拡大論者を批判する文脈だった。岩田健太郎氏は「僕が「PCR」原理主義に反対する理由 幻想と欲望のコロナウイルス」という本を出している。

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通りで私が書く筈がない訳である。コロナ禍でPCR検査の効能を知ってから、抑制論者だったことはないからだ。世界150位というのは蔓延度合いが欧米ほどではないことを考慮しても少ないのでは?と素人なりに感じている。

200名以上が牧田氏の呟きに「いいね」をしたようだが、よく確認もしないリベラル派なのだろう(リベラルであっても私と親交のある人達を筆頭にいいねをしていない人も沢山いる)。

なお、牧田氏は世界黒幕氏に対して「Fukushima50と自称した」と以前から主張しているが、同氏は否定している。あなた本当に大丈夫?

【追記】ただし、「原子力・核に関する話題を提供するメルマガ」でありながら、コロナ特集が既配信号の半分近くを占めて発行を続けるなど、コロナに関して執着し、その中でPCR検査を猛烈にアピールし続ければ、批判は免れないだろう。そのことで「PCR原理主義」と呟く人も出てくるかもしれない。

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画像はゲゼルシャフトのサイトより。

2020年6月30日 (火)

マスクに執着するコロラド先生、その本当の姿

コロラド先生は2019年12月頃を境に、極論を弄び社会性を喪失しかねない程攻撃的となった。2019年の夏に原発キャラバンでツイキャスした際も相当なものだったが、現在は比べ物にならない。

原因が生物学的なものか、社会的なものかは分からないが、変化の生じた時期からして、コロナ禍による恐怖ではない。

私への中傷は杜撰な早合点によることを「瀬川深医師の新型コロナ見解は信頼できない」に示したが、黙殺している。フォロワーの前で大見得を切ったからだろう。しかしこれでは、神奈川県医師会が削除したコロナ通信の糾弾など説得力無いのでは。

最近よく呟いている「属人性が希薄だから」はまぁ世間の平均よりはそうだろうなと思っている。でも、昔なら事実関係を正しく確認した上で意見していたので、それだけ思考が浅くなっていることを示している。

ともあれ、私も非はあった。この2年程高密度で連絡を取っていたが、岩波書店『科学』への登場後も順調にいっていたように見えたので、コロナが無かったとしても、この春一杯で潮時と考え、スケジュールを伝えていた。その間に、なれ合い、節度が失われていたことは事実である。

知財の懸念があったようだが、当方にそういう目的は無い。原発研究はセカンドワークとするには不向きである。期待できる金銭的利益も小さいので、ゼロ円とした。公共目的は意識しているが、形態的には趣味、ということである。

一方で、先生が準備しているネタについて呟くのは、知財保護上、重大なリスクだろう。一日のツイートが200を超えるのはざら。売文業としては極めて珍しい。

「あなた変わったね」という感想を持つのは、傍観者や敵対者にもいるようである。内田川崎氏がまとめた以外のTogetterを非常に嫌っているようだが、表現こそきついものの、時期的な差分を見ているコメントは多い。

そこで今回は、コロラド先生のマスク問題への姿勢を中心に問題点を指摘する。

なお、冒頭に断っておくが、私はPCR検査拡大派。また、先生の犠牲者100万人予想が外れた件は、当時東アジアでの感染者抑制傾向が知り得ない情報だったことや、北海道大学西浦氏の42万人説など、無対策の場合に似た犠牲者数を予想する例があったことから、問題とは考えていない。コロラド先生の独自性を色付けるそれ以外の主張にこそ、問題が隠れていたと考えるものである。

【メッセージ発してない→ポスターに明記】

そんなコロラド先生、最近次のように呟いた。

完全なデマ。

サージカルマスクが不足していたのであって、感染第一波の元で他のマスクを含めて推奨は一貫していた。国は企業・学校・公共施設等の衛生担当者用にPDFのポスターを用意し(縦長、横長など)、無数に印刷できる。最も一般的なもの『感染症対策へのご協力をお願いします』のPDFは3月21日付けである。だが、インフルエンザシーズンには毎年同じようなポスターが掲示されているため、少し調べると過去のマスクポスターが出てくる(進撃の巨人のものなど)。学校や職場、公共施設に足を運んだ人なら、誰でも目にしている筈である。

なお、中国からの輸入急減に対応して菅官房長官がマスク調達について述べたのは2月中旬だったが、その時点では反安倍にも過剰在庫の積み上がりを懸念する声があった。

そもそも、他人と接触して働いていれば、自主的に着用する人の他に、権威をバックに命じないと着用しない人がいるのは直ぐに分かる。皆着用したということは、政府の呼びかけと無関係ではないのである。

中国からの輸出が途絶えたということは、中国の保健当局がマスクを重視したということなのだが、世界のニュースを目にしている筈のコロラド先生にはそのような観点が希薄だったようである。

デタラメ混じりになってしまったのがコロナ問題でのコロラド先生である。その典型がマスク。

【トランプを歓迎していた男】

期待していた政治家の当てが外れて落胆。よくある話だが、普通にしていれば問題のないことだ。私も311以前自民党を支持し、相当態度は悪かったから、原発事故後に考えを変え、態度を改めましたと答えている。

コロラド先生もコロナで同じ失敗をした。

マスク着用におかしな理屈をつけ、国の最高指導層が不要論に傾斜しているのはアメリカである。ところで、コロラド先生は2016年大統領選の時、外国人の立場でトランプを支持していた(開票日の様子)。「長年見てきたから」とのことだったが、大統領選当時から、トランプ批判など山のように存在していた。不安は的中した。トランプの政権運営は非科学的で、差別の塊だったのである。

そしてコロナが来ると、井伏鱒二の小説のように引き篭もり、アメリカや日本の惨状を「見物」などとうそぶいた。在米諸氏の言う通りだったことを認めた方が、好感が持てると思うのだが。最近のコロラド先生はリベラル冷笑主義と呼べるだろう。

もっと酷いなと感じたのは、130回目位の連載にて過去40年共和党は反科学の姿勢を強めてきたと記述していることである。今更そういう話を出すのか、と思った。

付言すれば、コロラド先生はアメリカに色々期待していたようだが、海外のコロナ優等生となったのはベトナム、ドイツ、韓国などであった。医療物資の輸出で世界に貢献したのも中国であった。アメリカはマスクの買い占めなど、自国中心主義が目に付いた。

長期間の海外ウォッチを誇る人物についても、どのような総括を著作で見せているのか、チェックするのが大切と言うことだ。

【元は不要論に加えて・・・】

本当のところ言うと、今回のコロナ禍初動から、コロラド先生の言動、公共的に悪影響なものが混じっており非常に迷惑した。私は技術者向け見本市(大規模)を警戒して2月18日にブログ記事を書き「せめてマスク着用義務化を」と説いたが、同時期にコロラド先生は次のように呟いていたのである。

一見してすぐ気づいた。重大な問題を抱えた主張である。何故か。

もし、本当にサージカルマスクが役に立たない物だったなら、輸出しても決して日本の利益になることは無いからである。むしろ、ゴミが挟まっていたアベノマスクのように、怨嗟の対象となる。「買い付け前に忠告する」が不要論者にとっての正解。

コロラド先生さんよ、日頃ヘイトスピーチの蔓延で社会が茹で上がってると悲憤して見せながら、何で中国人に向かって腹抱えて嘲笑してんだお前?

「お買い上げありがとう」って、マスク不要が前提なら随分アコギな商売だな。信頼感皆無の焼き畑商法。そんな商売勧奨して日本の産業盛り返すんか。スゲーびっくりだわ。

中古の自動車などが海外に輸出するのは、年式が古くても役に立つ(走る)からである。

あるツイッタラ―の書き込み。情報バラエティで引っ張りだことなった岡田晴恵氏は、最初期からマスク着用を呼びかけていた。

対するコロラド先生、2月の呟きから4か月半後(7月2日)に何と言ったかを見てみると、やはり、しっかりと歴史修正していた。

嘘つけ。

【高性能で海外を席巻→500億枚で揉み潰される】

なお、コロラド先生は2か月半後(4月30日)のHBOL連載で次のように述べた。

高性能不織布マスクの価格が上昇していると言うことは、極めて優秀な日本の不織布マスクの競争力が回復していると言うことです。日本におけるパンデミックを4-6週間も遅滞させた超高性能を謳い、Japan Maskが世界のPPE市場で大暴れできればと筆者は願います。

マスクプロパガンダにまつわる真っ赤な嘘と、日本製高性能不織布マスクの大きな商機

どうせ中国の事だから桁違いの生産量で「大暴れ」しており、日本の参入余地など乏しいだろうと思っていたら、案の定、中国が感染第一波の3か月程の間に500億枚ものマスクを生産していたことがニュースとなった。赤っ恥である。

ネトウヨでなくとも誰しも何かしら差別的な感情は持っているとはいえ、正に想定外な発想に驚き呆れた。松下政経塾出身者をよく「コッカシドーシャ」と馬鹿にしていたが、コロラド先生も同類だ。

その言葉、四国の山椒魚にそっくりお返ししよう。

【中国製でも99%を謳う製品多数】

後に配信したメルマガ第118回では中国製サージカルマスクを軽トラに例えて小馬鹿にしていたが、その根拠は特に示されず、訳が分からない(品質の悪いマスクがあるとのニュースは流れているが、区別する方法が分かる訳ではない)。頭が良いと自称して何をするのもいちいち馬鹿にかかるのは、往時の軍事マニアの犯した失敗である。それを熟知している割には悪用しか出来なくなり、日本製品を称賛する時でさえ、その手法を手放そうとしない。

中国は日本のJIS規格に相当するGB規格にマスクを制定して品質向上に励んでいる。GB /T 32610-2016 という名前だから、少なくとも4年前には制定されていた。規格値はPFEやVFE95%以上だが、自主基準で99%を謳う製品も多数存在する。

業界標準どまりの日本に比べて、ある意味進んでいる。もし日本でもJIS規格化していれば、この種の商品流通のパターンからして、性能表示無しの野良マスクは急速に淘汰され、100円ショップ以外から姿を消しただろう。規格制定委員会で扱うから、統一した技術見解も残る(論文中で参照文献リストや本採用した方法以外の考え方なども記述され、海外文献も追いやすくなる)。

4月から5月にかけて12種類程の5~10枚入りマスクを入手したが、日本製は2種類に過ぎなかった。どのみち、今の日本は中国製マスクに頼らざるを得ず小馬鹿にする余裕はない。

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私が購入したマスク。右端の2種類のみが日本製。上段の10枚入りと書かれている品以外は業界自主基準で99%カットを謳う。なお上段左から3枚目が後述するアイリスオーヤマのもの。やはり中国製である。

【日中合同生産を目指す日本最大手】

アイリスオーヤマは以前から中国でマスクを生産しているが、同じマスクを日本の角田市で製造するべく準備を進めている。メディアで報じられた中では日本最大の生産規模である。この一事をもってしても、中国を見下すことは出来ない。9000社近い新規参入組の品質に疑問があったのは事実だが、アイリスオーヤマのように元々海外生産していたケースでは、工場を指定し所定の品質を確保しているのが常識だ。

日中で同じ仕様のマスク、それをクリーンルームに据えた自動機械で製造するのに、コロラド先生は何故軽トラになぞらえたのだろうか。

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アイリス物語 第六話 一大決心~社名変更・角田工場建設」アイリスオーヤマHPより
※小高い森を切り開いて造られている。建屋への水害の心配は無いが・・・

そう言えば、アイリスオーヤマは菅野サロン出身である石垣のりこ議員の地元、宮城県の企業だ。また角田市は昨年の台風19号水害で被災している。報道発表時、血相変えてすぐ位置を確認したが、Web社史や工場祭りの様子から阿武隈川を望む高台の森を造成し、標高30m以上あることを知ってほっとしたものだ。しかし、物流網の被災や社宅、猿などの野生動物感染リスク等はある。

【不要警察を探すが、頻発していたのはマスクの奪い合い】

コロラド先生は4月からメルマガでコロナ特別編を開始し、数回はマスクが主題だったが、当初、自分自身がマスク不要と判断していたことを書かなかった。認めたのはメルマガに遅れてスタートしたHBOLでのコロナ連載である。その上で、主にネット上のマスク不要論者を攻撃した。何故無料のHBOLの方が話者の信頼性を諮るのに有益な情報が載っているのか、私には分からない。

新規契約した読者向けなのか、マスク情報の更新も配信され、第120回(メモランダム25)では米国の権威がマスク不要論を流していたことを紹介している。引用元の日付は2月29日で、コロラド先生は米英の不要論に影響される前から不要と見なしていたと思われる。なお、2月中旬頃までは米英一般も対岸の火事モードだった。幾らメディアが体制を敷いても自国内に感染者が殆どいなかったのだから、自ずとそうなる。

また、日本国内においてマスクを着用している人に外すように暴力を振るう事案を証明しようと、執着した。

しかしマスクを着用しているアジア人を感染者予備軍として暴力事件が相次いだのは、マスク不要論がまかり通っていた頃の欧米であり、不要論自体もトランプ支持層と結びつき、6月になっても再燃の兆しがある。

日本で起きていたことはその真逆。マスクを着用しないでくしゃみをした人間とのトラブルや、ドラッグストアでの殺伐としたマスク奪い合いの方が、恐らく圧倒的に多かった。ドラッグストア開店前の行列も『山椒魚』状態では実感できなかったろうが、ネットで動画も流れていた。なお、私も生活者としてこれらを概ね目撃している。

リベラル左翼的視点から評すれば、まずは限られた防疫用品を奪い合うことへの批判(分配公平化など)となった筈だし、そのような書き込みは幾つか目にした記憶がある。

コロラド先生を見ていると痴漢冤罪に執着するインセル(独身者男性のこと)の振る舞いを彷彿させる(例え話として挿入したがそのようなインセルは当然害悪である)。

【見えてきた法則】

瀬川深氏もそうだが、一連の言行を見て判ったのは、次のような法則である。

  1. 最初に自分がデマを撒く。
  2. その後、何処かで学習して意見を変える。
  3. デマを撒いたのは敵対者達だと宣伝する。

極めて悪質で、御両人ともコロナ禍での振る舞いは、理系研究者とはとても思えない。3で思い切り罵倒したいのなら、2の段階で明確な転向表明があるべきだろう。

コロナ関係はマスク以外にもあからさまな矛盾が垣間見える。

自分が間違いを指摘された時には「ありがとう」で済ませておきながら、人が間違えたと判断すると、鬼の首でも取ったように誹謗してきたのには驚いたが、上記の法則と照合するとしっくりくる。

メルマガの冒頭には毎号、邦文に信頼できる情報は無いと謳いながら、消毒液の有効性に関しては厚労省の文書を根拠にした。

また、WHOを邦文より信用出来るかのように謳いながら、最近の号ではWHOを罵るなど、連載のポリシーと連載内容にさえ大きな矛盾がある。

だが、疑うことを知らない新規顧客はコロナ特別編のメルマガを契約し、彼の『正論』に感激したのである。私から見れば、原発プロパガンダやヒロセタカシ現象(チェルノブイリ事故直後数年続いた反原発運動の盛り上がり)から「学んだ」結果にしか見えない。

まぁ、知己だった人物のメルマガでもあるから、論評の真偽を確かめたいのであれば契約してくださいというところだが、コロナに負けないために必須な情報とは思わない。

なお、彼が秘伝として公開しているオゾン発生器や殺菌灯は確かに消毒効果が高いが、安全設計をしないで個人で自作すると最悪死傷に至る(コロラド先生も痛い目に遭っている)。そもそも、装置を理解できない同居人(子供や認知症の高齢者)がいる場合は完全に不向きであるが、連載ではその観点は希薄。乗り物の改造や電子工作好きの独身者が自己責任で行うのが精々。また、アルコールは可燃物のため、備蓄量はよく検討すること。今後第2波が襲来しても、通商関係が不安定にならない限りは入手出来る。それが第1波との大きな違いだ。

なお、コロナ問題を全般的に見ていると、速報解説としては、オノデキタ氏のブログ(無料)の方が遥かに優秀な結果を残している。技術解説においても、PCR検査機の能力や製造元に関する情報の紹介、特異度デマの発見を早々に済ませ、問題のある専門家のリストアップも早い。

以下に示すのは現行の日本の医療体制を肯定する、私と立場は違うアカウントだが、技術的観点とは別の面からも批判をしている。

私は金銭は第一要因ではないと考えているが、上記のような評が出てくるのは仕方無い。なお、自己紹介がかなり変わっているが、要はデーモン小暮閣下のようなものだろう。ただし、危険な話で死傷者が出る可能性など、批判には傾注すべきものがある。前々回コロラド先生の盲信をしている信者の愚かさを説いたが、そのような信者を好んでRTするので、相変わらずと言う感じだ。

話を戻すと勿論、リベラル派はこんな人達ばかりではない。例えば、農水省が新型インフルの時に作成した万全一家の備蓄マニュアルを紹介してくれたおしどりマコ氏など、超絶有り難かったものだよ。あれ私も何十部もばら撒いたからね。

※7/3:歴史修正を行ったツイートを一つ追加。

※7/4:トランプ支持についての根拠を追加。

※2021/11/15:本記事執筆時点では、「風邪を治すワクチンは無い」という一般的な世間の評判を聞いていたので、ワクチンの威力については考慮外であり、PCR検査についても、それだけで抑え込むには必要な検査数が膨大になり過ぎること、コンタミや社会的対応(虚偽行為を含む)などの問題があり、私自身は2020年秋頃より徐々に評価を下げたことを付記しておく。なお、マスクのJIS規格化は2021年6月に実現した。

2020年6月20日 (土)

【検査必要ない】瀬川深医師の新型コロナ見解は信頼できない【三日寝て】

オノデキタ氏のブログでは、最近神奈川県医師会がコロナ通信という出鱈目な啓蒙ページを削除したことを取り上げている。その記事にPCR検査不要論者をリストアップしてあったので、数名追加し、瀬川深医師も実は信用できないと書いたところ、何故か第三者のコロラド先生がご立腹のようである。確かに、平日朝方書いたあの一文だけでは根拠が何もない。先方のコメント欄で話を引き伸ばすのは止めて、自分のブログで説明することにした。

まず、瀬川氏が最近根拠にしている5月4日付のnoteは、新型コロナが来て数ヵ月経ってから書かれたものである。既に、検査について派閥分けも完成した時期の作品。勉強と経験があれば、あのように要領よくまとめることは出来るだろう。

だが、以前は違っていた。そのことがこのnoteには一切出てこない。

【兆候】

瀬川氏については昨年も環境活動家グレタ・トゥーンベリ氏の件で評したが、軽率で差別的と思っている。小国に感謝を強要して、周囲も当然視しているらしい。

他者に対しての印象を呟く時にも感覚最優先のようで、根拠に乏しいことがある。故に、リベラル左翼に耳障りの良い言葉を並べていても、それ程信用はしなくなっていった。私が取り上げたこと以外でも、成果を大きく見せたりする(例:dadaなる思想的に対立するアカウントの住所を発見したと吹聴した件)からだ。

また反反被曝で知られる菊池誠を難詰するため、何故か大阪に戦術核を落としたいと呟いてからツイ消ししたり、暴言が知り合いに突き刺さるのでツイ消ししたとのスクリーンショットも上がっている。既にしてここから、神奈川県医師会によく似てる。表現としては幼稚だが、消すほどの事でもないだろう(なお、アイマスというゲームに同じ名前のキャラがいることが元ネタらしい)。商業マンガ家の平野耕太はイギリス旅行の際に嫌な思いをして自作品でロンドンを破壊したそうだが、そのマンガが発禁・絶版となった話は聞かない。

そして今回。医療分野で黒(検査必要ない)と呟いた後、白(最初から検査派だったとする主張)であったかのように振舞い、嘲笑したということだ。

ともあれ、時系列順に私が信用に値しないと判断した契機となるツイートを紹介していくことにする。

【2月】

発端は、安倍内閣が検査を奨励するコメントを出したニュースのRT。

武漢の様子が日々伝えられ、PCR検査の解説が入り、DP号から感染者が帰宅する頃の話である。岡田晴恵氏が「どんどん検査させるために」生放送で半ギレしたのもこの頃だっただろうか。

NHKニュースの写しを読むと、先手の対応で検査拡大という表明自体は間違っていなかったことが分かる。勿論、安倍は掛け声だけという悲観的予想は流れていたが、その後に起こったことは医療界各所の消極性が原因していたようだ。この時点では知りようもない事実である。

要は、相手が安倍だからネガティブな意見を表明しているように見える。

また、瀬川氏がいわゆる抗体検査的な考えの持ち主であったこと、臨床医ではなく研究医としての目線で評価していたこと、いつものように社会のせいにして「三日間寝て待て」などという、後に検査否定派が常用する考えを持っていたことも分かる。抗体検査は感染者の炙り出しには役に立たないので、世界中でPCR検査が使われている。

連続するツイートを見てみよう。

この見解は現体制を是とする御用、ネトウヨの思考に酷似している。だが、制度は人が作るから、間違ってるかもしれないと考えは直ぐに出てくる。この時もそうだった。

いよいよただ事ではないと世間も認識し始め、安倍首相が全国の学校に休校要請を出した頃には次のように呟いている。

PCR検査をせよと断言することにためらいが感じられる。このことは注意しておこう。

【3月】

3月になっても後に見せる姿勢に比べると歯切れが悪いが、その中で致命的な本音を呟いた。

「無理に検査する必要が無い派」だそうです。しかも「臨床的に」。臨床的とは平たく言えば、研究者目線ではなく、開業医などの現場目線だと。でも、上記の「感染症のサーベイ」や2月の呟きにあった「疫学的調査」って研究医の目線じゃないですかね。

WHOのテドロス氏はパンデミックを宣言した際、「検査」を連呼していた。WHOも大国の意向に左右され患者に寄り添わないと批判されたが、それと比べても当時の瀬川氏のスタンスは明らかに違う。都の医師会が検査センターを設ける動きに出たのは3月末頃だったが、これも臨床医からの切実な要求に基づくこと。

なお5月4日のnoteでは検査不要論を「臨床的直感にも反する」と態度を転換している。

「必要無い」の翌日のツイート。何でインフルエンザの時と同じように検査受けたいだけなのに、嫌味言われなきゃならんのか。そういう流れを作ってきたのは医療界自身である。新型コロナ患者を「駄々っ子」呼ばわりした村中璃子と何が違うのかね。

しかし、3月中旬頃を転機に、PCR拡大派への地歩を固めて日頃の嘲笑芸に取り込んだようである。

瀬川氏も軽蔑している軍事ライターJSFが福島原発事故で呟いた「馬鹿は黙ってろ」から9年。これである。

御当人は良いこと言ったつもりなのだろう。「シロートの外野は座ってて!」という言葉が社会的に何を意味し、どれだけ忌み嫌われているかも理解していないことが良く分かる。そういえば通称「コミケ医者」Calci@Calcijp氏が大好きなんだよねこの言葉。

でもさ、コロナ問題でも、専門家風を吹かす人物は結局憎悪の的にしかならなかった。原発周りから参入した人達は、そのこと骨身に染みてると思うんだけど。だから私はなるべく使わないように注意している。『科学者に委ねてはいけないこと』位買えば。

大体、2月に見せた消極発言の舌の根も乾かぬ内に「検査して医療崩壊」をあざ笑う。「やめてけれ」つったのは誰だよ。

3月21日になると更に旗色を鮮明にした。

「風向きの変化を感じる」のはネトウヨの側だけでなく、瀬川氏であったことをよく示している。

それにしても、検査を嫌がり「三日間寝て待て」と呟いた人物が「家で寝てりゃ」を笑うのかね。瀬川氏の頭の中にある痛さが期待される人間像、自分自身なのでは。

以後、原発被曝問題で例えるとbuvery/酋長仮免厨化が進む。Twitterやってない層向けに例えるとはだしのゲンの鮫島伝次郎といったところか。

【4月】

4月にはこんなことを言うようになった。

2月に何を呟いてましたかね。「コロナの検査をためらう理由」を並べてたのは貴方でしょ。

じゃあマイコプラズマの可能性があっても予防的にPCR検査すればいいだろ(笑)。

【5月】

GW中も舌好調。

初期に検査希望者を邪険にした辺り、自己言及にしかなっていない。職業病を論じるなら彼自身もその対象となる。医師免許に加えて研究職という属性があり、Twitter発信と言う自己顕示を行っているのだから、より業(執念)は深そうである。

GWが明けると次のような主張を披露した。

「一貫してPCRジャンジャンやれ」「宰相がどう言おうがどってことない」「変節漢」だそうである。2月17日、宰相の言葉をRTして何を呟いてたか。311のアレは何だった。

皆さんはこういう人をどう思いますか。

勿論、コロナ以前と変わらず方々に嘲笑的、冷笑的なツイートをたっぷり振りまいてますよ。

どの口が言うのだろうか。

【否定し、嘲笑し、馬鹿にすることのリスク】

私も部外の素人ながらPCR検査拡大派の一人だが、一連のツイートを読んでから5月4日のnoteを読み返すと「よく出来た作文ですね」という感想しか出てこない。本音はnoteの外にあったからである。

「今はPCR拡大論を分かりやすく解説しているのだから良いじゃないか」。そういう考えもありだとは思うよ。常々人の態度が変わる様を悪し様に罵ってる人を弁護するには説得力皆無だけど。

どなたか忘れたが、PCR拡大派に転じた際に「フェーズが変わった」とか「今更2週間前の話を」と言い訳する人がいたね。今考えると、しょうもないなりに、理由は作っていた。自分の過去に正直。対して瀬川さん、どうなんでしょうかね。

前に黒と呟いたことをある時からずっと白だったかのように呟いてしまうのは、まずネトウヨ(と彼が思っている大衆)を如何に嘲笑するかが先にあって、そこに自分の意見を合わせているからでは。

検査の要否、どちらの側に立っても信用に値しない、私はそう受け取る。

神奈川県医師会は極短期間とは言え、謝罪もしたそうだ。瀬川さんが、ポジションを変えると表明したのかは知らない。ネット全部見てる訳じゃないから。でも、第三者が比べてそんなに腹立てるかね。

コロラド先生の観察力が急激に衰えているのは既に指摘済み

残念かも知れないが、今回は、只のオタクコンテンツ叩きへの反発ではない。そりゃ少しは消費しているが、私は本業があるのでコロラド先生程テレビっ子ではない。瀬川氏に比べると、コミケの出展申請書いたことも無く、オタク文化度は低い。瀬川氏がPCR検査機の使用を含めた医療の専門家だから、という公共的な問題意識からの意見に過ぎない。

【ライター志望者じゃありませんけど】 

それと、次のツイートに関しても一言。

ぽかーん、て感じ。

私が学会誌、科学のような準論文誌、世界、月刊日本、AERAみたいな総合誌、果てはゲゼルシャフト通信等々へ投稿応募をして回りたいかのような誤解を受けると困る。以前私信でも述べたがそのようなことはしていないので、あしからず。参考にアクセス解析結果を述べると、岩波書店などが私のサイトを読みに来ることは年に数回程度。プライベートでの接続状況は分からないが、多分認知もしてないでしょう。ネットの運動家や趣味人が、誰も彼も同じ夢見てコンテンツ作ってると思ってるのだろうか。

 

上記のようなツイートで思うこと。この記事を読んで、私に投げつけた言葉と同じ強度の批判を瀬川氏に投げつければ、コロラド先生の言論の信頼性も回復するかもしれないね。検査に消極的な輩には「人殺しの大嘘つき」呼ばわりが習慣なのだから、本来は3月に済ませておくべきことだ。

6/21:【兆候】に加筆。末尾にツイート引用一つ追加。

2020年6月 5日 (金)

テレビ会議全盛時代に省みる福島原発事故-何故菅内閣に進言しなかったか-

コロナ禍においてプラスの効用を認められたものに、Zoomに代表される一般社会へのテレビ会議の普及が挙げられる(厳密にはWeb会議と言うべきだが)。

実は、コロナ禍になった後も細々と福島原発事故の研究を続けているのだが、今回発掘した資料と共に触発されることがあった。

【首相が東電本店に乗り込んで知ったテレビ会議】

福島原発事故発生から数日間、震災対応を行う首相官邸は不満がくすぶっていた。東電からの情報が中々上がらず、内容も要領を得ないものだったからである。

事態が好転したのは、3月15日朝に菅首相が東電本店に乗り込んだためである。一般的には、東電に対して撤退阻止の演説を行ったことが強調されてきた。当ブログの提案を読んだのかは分からないが、公開1ヵ月でネット配信に踏み切り、人気をものにした『Fukushima50』でも「首相のドタバタ」として描かれている。

だが、この出来事のハイライトはそこには無い。

映画『太陽の蓋』を見ると明瞭に表現されているが、東電が本店に設けた自社の対策本部には、テレビ会議システムの大画面が鎮座していた(知名度が低いのでAmazonPrime版へのリンクを貼っておく)。

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原子力防災訓練(本店における訓練状況)」東京電力HP(2015年3月18日)。 室内配置が良く分かる一枚。

菅内閣は東電テレビ会議の存在を官邸に詰めていた東電の武黒フェローから知らされていなかった。乗り込んで初めて「それ」を目にし、政府としても活用することにしたのである。

テレビ会議は東電の3原発に接続されており、かの吉田所長も参加していた。最初からこれを知らされていれば、ヘリなど飛ばす必要は無かった。

ここまでは、この事故を少しでもまともに学んだ人なら、おさらいに属する話である。

【何故東電テレビ会議は政府に知らされなかったのか】

しかし一部で批判されているように、テレビ会議の存在を武黒だけが伝達し得た、と無意識の前提に考えるのはどうだろうか。これが今回のテーマである(結果だけ先に述べると、官邸スタッフには実務に疎い政治家を補佐する責任があるが、テレビ会議の件ではその役割を果たしていない。この記事は以下でそれを論証する)。

東電テレビ会議の存在を伝えるだけなら高い地位の人物は必要ない。平社員、3種国家公務員などでも十分な仕事である。

政府事故調中間報告では次のように記されている。

b 情報収集の問題点
今回のような事態が発生した場合、原災マニュアル上は、原子力事業者はまずERC(引用者注:緊急時対応センター。経産省庁舎に設置され、原災本部事務局を担う)に事故情報を報告し、しかる後ERC 経由で官邸へ情 報が伝達されることとなっている。ERCには、3月11日の地震発生直後から、東京電力本店から派遣された四、五名の社員が常駐しており、 彼らを通じて福島第一原発の情報がERCへ伝えられていた。 当初、ERCに参集していた経済産業省や保安院等のメンバーは、東京電力からの情報提供が迅速さを欠いていたことに強い不満を感じて
いた。しかし、東京電力本店や福島第一原発近くに設置されたオフサイトセンターが同社のテレビ会議システムを通じて現場の情報を得ていることを把握している者はほとんどおらず、同社のテレビ会議シス テムを ERCへも設置するということに思いが至らなかった。また、情報収集のために、保安院職員を東京電力本店へ派遣するといった積極的な行動も起こさなかった。

東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会 中間報告本文P470
※下線は引用者による。

一方、政府事故調の記述が官僚・政府関係者に甘い傾向はこれまでも指摘されている。従って、今回は上記の記述の背景を検証し、テレビ会議が見かけの印象以上に普及していたことを示す。

通信技術の変化は激しいので、技術史として語る必要もあると感じて作成した。

東電テレビ会議はジャーナリストが公開を迫った経緯もあり、一方向から書かれたものが多い(典型例として、福島原発事故記録チーム 編『福島原発事故 東電テレビ会議49時間の記録』岩波書店 2013年9月(試し読み))。だが、今回は一味違うものに仕上がったと自負している。

【テレビ会議の実用化と電力会社への導入】

事故当日の話はここで一旦止めにして、テレビ会議の歴史を紐解いてみよう。

1960年代後半には、将来実現すべき技術目標として通信事業、放送関係者には認識されていたようだ。日本で商業化されたのは1984年のNTT(旧電電公社)が嚆矢。電力会社では、NTTと同時期に東電が本店とシステム研究所間で実用化した。こぞって導入し始めたのは1990年代前半からである。電力会社の場合、平時の使用の他、最初から災害時の使用を前提に考えていたことが当時の技術記事から伺える(参考文献一覧参照)。

ただし、東電は以下の記事から1992年の段階でもマイクロ波無線通信網と山間地対策の衛星通信を主としており、テレビ会議の使用を前提に入れてないことがうかがえる。

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「東京電力における防災対策」『電気情報』1992年3月P20より。

一方で1979年3月のスリーマイル島原子力発電所事故後、日本では、原子力安全委員会が52項目の対策事項を発表し、その38項目目で「緊急時連絡」として電話回線、それ以外の連絡方法を整備するように求めていた。52項目の対策の元になったのは『米国原子力発電所事故調査報告書,第2次』という文書で、私も青焼きを1回だけ読んだが、連絡方法の一例にテレビ会議を明記していたような記憶がある。

そのためか、東北電力が1988年に導入した第一世代のテレビ会議システムは小規模なものだったが、女川原発には当時から接続されていた。

【阪神大震災での使用】

テレビ会議が災害時に活用された初期の事例で記録に残っているものは、阪神大震災(1995年1月)である。

関電は震災に関して「阪神・淡路大震災における電力ライフラインの復旧について」、他数本の技術記事を投稿している。J-stage等で読めるこれらの記事は自社の通信網が使用できたので、神戸支店、本店との間の情報連絡を密にしたことは述べているものの、その伝達手段は特に言及していない。だが『153時間 阪神・淡路大震災応急送電の記録』というビデオを見ると、機能を維持していた社内電話の他、テレビ会議を開いている姿が映されていた。

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『153時間 阪神・淡路大震災応急送電の記録』(関西電力)より。本店と神戸支店(右側CRT)を接続。

なお、行政側でもNTTからの供与により、兵庫県と被災6市との間でテレビ会議システムを構築・運用したと記録にはある。

当時のテレビ会議システムは伝送にISDNを採用していれば「進んでる」と見なされた時代。画像は(当然)NTSC。東北電力の場合、CIFというビデオデータ向け映像フォーマットで、解像度は低かった(352X288)。

これはアナログテレビ放送(640x480)と比較しても3分の1の情報量だ。一般のテレビが株式市況の数値をずらりと並べて放送していたことから類推すれば用は足りたのだろうが、図表を映す場合に情報量の制約はある。2Kに満たない地上波デジタル報道(1440X1080)でも、細かいフリップを大画面に映し出せる現代では考えられないことである。技報や論文は未達成の課題をあまり語らないが、このことは宿題として残った。

【阪神大震災の教訓を取り入れた東電】

関電神戸支店は元々5階に対策本部を設けていたが、建物が損傷したため、急遽地下1階の食堂にテレビ会議他の指揮機能を移転した。

この教訓を取り入れ、東電は震災後、新橋の本店2階に常設の非常災害対策本部室を設け、テレビ会議用のスクリーンを設置した。高い場所は一般的に揺れが大きいということだろう。後年、福島事故でハイライトを浴びた舞台は、同業他社の被災経験に学んで生まれたのである。

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『とうでん』2002年3月号より。

上述の経緯から、少なくとも阪神大震災後は、テレビ会議を通信連絡手段に加えたものと思われるが、支店や発電所関係者でも、定期の防災訓練で連絡班等に割り振られたことのある社員は、テレビ会議システムを触ることになる。

【社内テレビの普及(参考)】

一方、社員への周知について忘れてはならないのが紙に残らない手段。1990年代は社内テレビシステム/テレビ会議システムの普及が年毎に伸びていた時期で、1986年10月に導入した東電もこれらを活用し、社内外に情報発信を恒常的に行っていた。こちらも参考に取り上げておく。

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上に引用したのは『とうでん』1994年10月号。社内テレビ設置台数は社員10人に1台の割で、管内くまなく配備されていた。テレビ会議に縁の無い社員でもこちらは確実に記憶にあった筈である。ネット隆盛以降なら社内HPに掲載するようなお知らせも、当時はテレビで行っていたと思われる。

また、社内テレビとテレビ会議のシステムを共通の技術基盤で構築する導入事例が論文に取り上げられていた。推測だが、東電もそうだったのではないだろうか。端末を共通化すれば、会議室に社内テレビを配置することで1画面限定の1:1の通信主体とは言え、テレビ会議が開けるからだ。本店の訓示などは社内テレビとして流し、A支店とB支店間で会議を行う場合は、テレビ会議システムとして使える。

以上より、電力会社にとって、テレビ会議システムは相当前から普及していた仕組みだったということだ。官邸・ERCに詰めていた東電社員にとっても、同じである。にもかかわらず、彼等は本店の社員とも異なる認識で動いていた。このことは後で触れる。

【通産省のテレビ会議導入】

なお、原子力推進官庁である通産省は本省と地方機関とを結ぶテレビ会議システムを1996年に導入し、災害時の運用を視野に入れていた。

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『電気と工事』1996年10月号より記事冒頭部。

上記記事に技術仕様の詳細解説が載っているが、会議室に50インチのCRTを3台も並べるなど、大掛かりなシステムだった。既に、H.320をはじめとする規格の標準化も進んでいたが、他省庁や民間との接続については特に書かれていない。

【中央防災無線網のIP化】

インターネットの商用化から数年するとテレビ会議にも90年代後半にはIP化技術が持ち込まれ、H.323という規格も整備され変わっていった。

主に日本無線の技報に基づき2000年代の政府関係の防災システム導入状況を概括すると、まず、内閣府防災担当の所管で、元々中央防災無線網というものがあり、基幹ネットワークと位置付けられていた。そして、2004年度からIP化を開始し、Webアプリやテレビ会議システムの利用も順次可能となっていった。また、中央防災無線網は官邸から各省庁、指定公共機関を接続するものとなっており、東京電力も含まれていた

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5.アナログ放送終了後の電波利用 5-2.自営通信の取組み」『映像情報メディア学会誌』2008年No.5
※ネットワーク構成図のみ引用。東電は中央防災無線網に直結。なお、自治体の防災無線は事実上動画伝送能力が無かった。

他省庁もこの流れに乗った。防災の主役となる国交省を例にとると、同省の東北地方整備局が発行していた『月報とうほく』にも、2005年度より情報通信技術課を設けて通信インフラ整備を進めるとある。

これは、全国に光ファイバ網を張り巡らし(一部他省と共用)、河川・道路の監視映像を本省に流したり、テレビ会議を行うことが目的だった。2006年の技術記事では「映像情報収集システム」と呼ばれ、既に実用に供されていたことが分かる。当時IP化されたカメラだけで全国に5000台。テレビ会議と併せて、それらを自由に取捨選択できる優れものだった。

更に「映像情報提供システム」を整備して地方機関からテレビ局に伝送回線の整備も行われていたという。このような努力があったので、テレビ局や官邸の危機管理センターに情報を配信することも可能だった。

ライフライン関係機関との接続も多岐にわたり、縦割りの超克が意識されている。

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関係機関との接続概念図「国土交通省の防災情報システム」『電気設備学会誌』2006年4月P22
※先ほどと同じネットワークを国土交通省から見た姿。IP化で動画伝送能力を整備していた。

上述の事情なら、官邸との間でテレビ会議を開けるように準備しておくことも造作もないことだったと思われる。

総務省が2000年代後半に設けていた「安心・安全な社会の実現に向けた情報通信技術のあり方に関する調査研究会」の「最終報告書(案)」によると、「旧式のネットワークは、音声、FAX、データ、映像等の伝送用途毎に独立して運用。複数映像伝送など災害対策のニーズに応じた柔軟な伝送に課題。」とされていた。しかし仮に容量上の問題があったとしても、国土交通省とテレビ局間に引かれたものと同様の専用線を、中央防災無線網と指定公共機関の間に引けば良かっただけである。

菅直人氏は回顧の中で、官邸と東電本店の距離の近さに改めて驚いた旨を述べているが、このことは延線工事の容易さを示してもいる。JR,NTT,電力など相手なら都心の本社・東京支社との接続になるからだ。

【新潟県中越沖地震(2007年7月)】

2007年7月に発生した中越沖地震では柏崎刈羽原発が被災した。この時、地震発生直後に発電所の緊急時対策室ドアが歪んでしまい、屋外に対策本部を仮設せざるを得ず、新潟県からの要望もあって免振重要棟の建設に繋がったことはよく知られている。だが、ドアをこじ開けて3時間後には緊急時対策室で執務可能となったことはあまり知られていない。朝日新聞『生かされなかった教訓』には9月のプレス公開写真が載っており、室内にモニタらしきものはある。

また、本店2階の非常対策本部には多数の社員が詰めていたが、新聞社が出版した書籍2冊を読んでもテレビ会議システムの描写は無い。当時朝日新聞で原発取材を担当していた添田孝史氏にもメールで尋ねたが、記憶にないとのことだった。

どうも後述の『とうでん』を読むと、テレビ会議は有効に機能しなかったようである。

一方、新潟日報の取材によれば、原子力安全・保安院の現地事務所は職員2名を発電所に派遣したが、渋滞で到着に2時間40分を要した。つまり、到着後間もなく緊急時対策室が使用可能となった。推測だが、検査官は室内を目にしており、本店との連絡方法について所員と会話したと思われる。

だが、原子力安全・保安院は中越沖地震の教訓化が出来ず、後述するオフサイトセンターのように電力会社のテレビ電話・テレビ会議回線を現地事務所や東京に接続することは無かったようである。もし、接続していれば、政府事故調は上記のような記述とはならなかっただろう。

言い換えると、政府事故調もまた、中越沖地震がテレビ会議システム拡大の機会だったとは見なしていないのである(何も触れてない)。

更に問題なのは、武黒がこの地震で得た教訓を社員にどのように伝えたのか、である。

武黒は中越沖地震対応で柏崎に駐在するなど、防災対策の中核におり、その考えは『とうでん』を通じて全社に広報された。

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『とうでん』2007年10月より冒頭引用。社内に顔が知られていたことを示す一枚。

既に忘れている方が多いと思うが、中越沖地震では屋外の変圧器火災が発生し、テレビ放送で強烈な印象を与えていた。武黒は上記インタビュー記事の後半で課題と教訓として次のように述べた。

社会のみなさまが原子力発電所で火災が発生したと聞けば、大きな事故が発生したのではないか、大きな事故に発展するのではないか、と不安に思われるのは当然のことだと思います、そういった不安を解消するためにも、円滑かつ適切な情報提供ができるような仕組みを構築していきたいと思います。

(中略)メディアでは、どうしても目に見える被害が発生した箇所の映像を中心に報道されますが、発電所全体としては、そのような部分は一部であって、重要な部分は健全性を確保しているということをご覧いただけるようにしていただければと思います。

今回の記事では武黒の心理を掘るのは主目的ではないが、彼と少なからぬ東電社員達が黙り始めたのはこのような「教訓化」が真相だと思う。3月12日15時半に原子炉建屋が爆発してからは、それまで黙っていた手前、伝える機会を逸したのだろう。

そのような認識は、後述するように、実は、東電本店と比べても異質な物だったのである。

【原子力防災訓練(2007年10月)】

さて、福島第一・第二周辺での原子力防災訓練が初めて開催されたのは1983年のこと。1991年以降は毎年開催された。予定調和と揶揄されることの多いイベントだが、実務者に仕事を覚えさせるという観点からは、それなりの意味はあったものと考える。

2007年の防災訓練は『とうでん』の12月号で特集されていた(下記。クリックで拡大)。

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訓練ではオフサイトセンター、発電所の緊急時対策室、本店を結ぶテレビ会議を構築した。中越沖地震の教訓を取り入れることに重点が置かれ、本店を交えた接続はこの年からとのことである。また、初期対応支援チームのヘリを本店から飛ばすことも行っている。

福島事故の日、菅首相に先んじて武藤栄副社長が福島にヘリで急行したのだが、それはこのシナリオに沿ったもので、発電所がヘリを受け入れる体制は想定内だったのだ。それが政府のヘリに代わったところでどうということは無いだろう。

また、この訓練には当時の副社長だった武黒も参加し、模擬記者会見を行っていた。

【原子力防災訓練(2008年10月)】

2008年10月の防災訓練では首相官邸とのテレビ会議が行われた。県庁かオフサイトセンターに接続したと思われる。

当時は自公政権の麻生内閣、経産大臣は二階俊博。状況から考えて大臣達は顔見せに過ぎなかっただろう。二階は、共産党の吉井英勝議員の津波質疑を受けて立った経産大臣でもあるが、小泉政権以降特に目に付くようになった自民党閣僚の例に漏れず、社会に対する見方がぬるいのではないかとも思っている。

それは、2020年春のコロナ禍において世界中がロックダウンする中、「人との接触を8割削減」という目標を示され、つまらなさそうに「出来る訳ない」と答えた姿に端的に表れている。

【原子力防災訓練(2010年10月)】

2010年の原子力防災訓練は10月に福島第一で行われた。テレビ会議は県庁、オフサイトセンター、各市町村役場、原子力安全保安院と接続している。オフサイトセンターには事業者ブースにテレビ電話を設置して、発電所と本店との連絡調整に使用したとある。

訓練は第三者機関として、JNES(原子力安全基盤機構)が評価を行った。JNESは保安院から業務移管を受けて成立した独立行政法人であり、過去の経緯から電力会社からの出身者も多かった。つまり、電力社員としての経験から、テレビ会議システムの存在を知っているJNES職員はおり、彼等と密接に仕事をしている保安院へも伝わっていたと思われる。

技術的トピックとしては、東電のテレビ会議システムが6月に更新され、社外接続を視野に入れていた。また、ハイビジョン画質の端末を使用することで表情やホワイトボードの文字読み取りがし易くなったという(『とうでん』2010年7・8月号)。H.323に準拠するのは最低限の条件として、それ以外にも公衆回線で使用出来ることなど、システム的に整えておくべき要件があったらしい。

なお、国会事故調本文の「東電の社内テレビ会議システム」という節を読むと、端末の移動を容易に行い、福島県庁や官邸に持ち込んだことが記されており、更新の目的である現場からの映像伝送能力を活用していたことが分かる(官邸への持ち込みは、菅首相の東電本店乗り込み後)。

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『とうでん』2010年7・8月号より。クリックで拡大。

ただし、この頃の東電は以前と異なり、導入一番手ではなくなっていた。

ハイビジョン画質(HDTV,解像度1280X720)で、異なる会社のテレビ会議システムに接続可能なパッケージは、中国電力がノルウェーTANDBERG社(当時。2010年、Ciscoに買収)のシステムを2007年までに導入していた。

2009年になると、東北電力が1994年から運用していたISDN回線による第二世代のシステムを、やはりTANDBERGのフルハイビジョン(2K,解像度1920X1080)の第三世代に更新し、メディアにも露出していた。同社のシステムは災害運用を前提に、インターネット、携帯電話回線等との接続を謳い、現場からの映像配信も視野に入れていた(もっとも、こうした機能は当時としては一般的なソリューションである。テレビ会議関連技術論文・記事を検索すると汎用PCを用いたコスト削減に関するものや、日経BP社によるサービス多様化等の取材記事などが散見される)。

東電が更新したシステムはハイビジョン。システム構成などの見えにくい部分は別としても、対外発表する程の技術的新規性は無かったのだろう。オノデキタ氏が語る「技術に輝く東電」は、彼が在職していた1980年代の姿に影響された見方なのである。

日経コンピュータの取材に対し東北電力は「災害時の情報共有では、現場の緊迫感や切迫感を伝えることも重要だ。社員の目つきを見れば、彼らに余裕があるのか、事態がどれほどの緊急性を帯びているかが伝わる。テレビ会議システムを高画質化することで、現場の臨場感も伝わるようになる」と述べている。「表情の分かりやすさ」は東電も意識していたのは上述の通り。この頃は電子メールも行き渡り、何年か過ぎているので、動画に付加価値を付けるための流行りだったのだろう。

だが、公開された映像は専ら室内の俯瞰で撮られている。もしフルハイビジョンだったら本店に正しくニュアンスが伝わったのかは、考察を深める余地がありそうだ。

【行政側のテレビ会議導入状況(2009~2010年)】

ここまで読むと、菅内閣(政治側)だけが、知らずにいたということになる。副大臣クラス以上となると、仕事のやり方に古さが残るのは仕方がない。海外でもIT導入期に似たような話はあった。上述の通り、官民のスタッフが補佐する話である。

コロナ禍で台湾のIT大臣が注目を浴びているが、安易に真似ても原発事故が提起したもう一つの問題、「専門バカ」を頭に据えただけの結果に終わると思う。ネット黎明期からそうだが、Twiiterを見ていても、老若男女・思想の左右を問わず、IT関係者には知識の優位を無闇に誇示したがる浅はかな人物が非常に目に付く。それも最近は「メールを使える」「エクセルを編集できる」「SNSをやっている」、なのに老害は使えないなど、下らない話ばかり。

とは言え、政治家が本当にテレビ会議を利用した事が無いかと言うと、違ったのである。儀式的な利用機会は増えていた。

以下、Twitter上より報道発表とそのRTを示すが、存在感は急速に高まっていた。

 鳩山、続いて菅首相も度々使用していた

『Fukushima50』の小説版で言及されている浜岡での防災訓練でもテレビ会議を儀式的に行っている。

産経新聞に掲載されたと思しき首相動静を見ると、やはりこの年も、首相は15分だけ出席の儀式的なものだったようだ。なお、9月1日(防災の日)に行われる総合防災訓練では会場の伊東市を往復していた。官僚組織も歴史的経験に基づきスケジュールを組んでいるようだ。

有用性は各方面で認知され、2010年11月には全国の自治体で導入することとなった。

東電事故調は最終報告書で次のように述べた。

報道では、官邸のTV会議システムは使用されていなかったとされているが、それが事実でシステムが活用されていれば、当社は原子力安全・保安院へ要員も派遣して情報を提供しており、より早い段階で官邸の政府首脳は情報を入手でき、より的確な対応ができたものと考える。

政府と距離を置く立場の国会事故調もこの点は東電事故調と一致している。中央防災無線網を通じて接続はしていたのだから、事実だろう。

このことは東電テレビ会議でも確認できる。3号機が爆発した3月14日11時の映像には「官邸もリアルタイムでつないでおいて」と要請する声が収録されている。菅首相来店の前の日の話だ。本店の社員達の意識は切り替わっていたのである。

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「音声はわずか30分・・・初公開も「まだ隠ぺい」」(FNNニュース 2012年8月6日頃)より。(録画よりキャプチャー

※東電は「本37-1」という番号を振って公開(URL)。FNNは短縮編集しており、「官邸も」の後に別の人物の発言が10数秒挟まるが一文としてはこれで成立している。発話者は小森常務と思われる。OurplanetTVによる編集版ではカット。オノデキタ氏の解説(2014年10月21日。20分30秒付近から)でも触れていない。

澤昭裕氏は、指示の名宛て人を明示せずに「○○という作業、誰かやってくれ」と発話する場面が多いことなど、技術以前の基本的な進行の不味さを挙げていたが、この発言も正にそれで、しかも他者の発言に被されて伝わらなかったのである。

私がこの件で官邸スタッフに厳しく、政治家に同情的なのは、実務家とは一線を画す職能上の問題からだ。機材をセッティングする訳でもなければ、会議の開催準備をするでもない。それは彼等の仕事ではない。事故後にこういった防災訓練での振る舞いに触れて、菅内閣を難詰する自民党議員も現れたが、二階氏を見ればわかる通り、同じ穴の狢なのである。

しかもその後、政権に返り咲いた安倍自民党内閣が災禍の度に見せる堕落振りは、菅内閣の比ではない。かつての自民党内閣に比べても劣っていると感じる。

【官邸に詰めていたスタッフ達の責任】

一連の記録を読むと、官邸に詰めていたスタッフとその周辺者は次のようにまとめられる。

  • 原子力安全・保安院:職員達は電力会社がテレビ会議を使ってるとよく知っていた。
  • JNES:電力会社出身者はテレビ会議の存在を知っていた。
  • 官邸地下危機管理センター:自らが中央防災無線網とテレビ会議を運用する立場にあり、思い至って当然だった。
  • 他省から内閣府への出向者:自省のシステムから、存在を類推可能だった。

「思いが至らなかった」という政府事故調の言葉から受けるよりずっと蓋然性が高い。ルーチンワークを崩したくないとか、「サヨク政権」への政治的な反感から意図的に黙っていたのではないだろうか。

【東北電力とのシステム接続も無し】

残された疑問は他にもある。

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【参考資料】当社テレビ会議システムの構成イメージ」(東京電力HP、2012年8月9日)

福島事故時の東電テレビ会議システム構成を示す。良くできている図で、繋がってないものを考える役にも立つ。政府の他にあるべきものは何か。

同業他社、殊に福島を管内とする東北電力である。

東北電力も東日本大震災発生時には上記の新鋭テレビ会議システムを縦横に活用したが、東電とは接続していなかった(直ちに接続したという情報を持っていないので、そのように判断している)。

その弊害はあった。福島第一に一番乗りした電源車は東北電力が福島県内の営業所に配置していた4台で、3月11日22時の到着だった。東電の電源車より2時間以上早かった。だが、東北電力の電源車は活用されなかった。瓦礫に邪魔されたことが理由とされているが、その瓦礫は下請の重機により急ピッチで撤去が進められていたので、本当の原因は事前の擦り合わせ不足だろう。

東北電力福島支店と福島第一間でシステム接続をしていればそのようなことは無く、建屋内の給電がより早期に復活したかも知れない。電気が来ると、電動弁(MO弁)やポンプの制御が回復し、計器の読み取りも可能となり、照明が灯る。ベント作業一つとっても、空気作動弁(AO弁)は人の操作に頼るままだとしても、MO弁の突入部隊が不要となり、明かりも取れて作業負荷は大幅に軽減される。

事前準備で事無きを得たから良かったものの、日本原電東海第二原発ともテレビ会議システムの接続をした記録はない。もし何かあったら、通信連絡上も福島を上回る問題を生じていた可能性がある。

事故前に、業界団体の電気事業連合会や原子力安全・保安院が音頭を取ろうとしていたのかは、そういう観点から調査をした人がいないようなので、分からない。事故後、反反原発活動に勤しむITオタク達をネット上でよく見かけたが、彼らは別に何か調査をしてくれる訳でもないので、役に立たなかった。

だが、東北電力がシステム更新をした際、エネルギーフォーラムの取材に対して「災害時に他電力同士がテレビ会議に参加することで復旧への迅速な対応化が図られるのではと期待しており、そうしたシステムの連携に向けた検討を進めていきたい」とコメントしていた。その後、水面下では隣接会社の東電と技術仕様を擦り合わせたと考えられ、要は宝の持ち腐れに終わっていたのではないかと思われる。

2013年に原子力規制庁が導入したテレビ会議システムが、多数の電気事業者と接続するように作られたのは、このような背景に基づいている。

【もし、東電テレビ会議が最初から菅内閣に知られていたら】

官邸が初動から東電テレビ会議を知っていたとしても、できることと、できないことがある。例えば、電源車。3月11日深夜にプラグが電源盤と合わないという話があったが、これはテレビ会議があっても解決できない。震災の前に繋がるかどうかチェックしておくことが必要である。

また、電源車を遠方から呼び寄せるとタイムラグが生じ、メルトダウンには間に合わない。あらかじめ発電所に配置して、移動時間を省く必要がある。これも、テレビ会議では解決できないことだ。

しかし、避難誘導や注水資機材提供の面で、より迅速で的確な連携が望めたことは疑いない。条件が良ければ上述のようにベント作業にも好影響を与える。

主要4事故調の報告書が出揃って8年、どうして今日に至るまで、テレビ会議での会話にばかり注目が集まり、「使われ方」について技術面を含めての再検証が無かったのだろうか(私も全ての文献に目を通せたわけではないが。例えばテレビ関係者ならむしろ得意分野だろうと考える)。その結果責任を「東電の武黒」のみに押し付けることは、高級官僚に留まらず、官吏の言い分を鵜呑みにすることと同義である。彼等の不作為を考えていくうえで、重要な視点だろう。

武黒も悪いがスタッフも同罪。それで初動が遅れ、事故調相手には言い分と情報の小出しに終始した。対して、無知だった官邸の政治家は本店に乗り込んだことで速やかに事態を改善し、情報インフラのポテンシャルを引き出すことに成功した。結論として、「イラ菅」は役に立ったのである。

【参考文献】

情報検索の際は「テレビ会議」の他、「TV会議」や「ビデオ会議」を併用すると良い。

・斉藤良博「東京電力におけるテレビ会議システムの検証実験について」『テレビジョン学会技術報告』1987年11月

・「社内テレビシステムが店所へも拡大」『とうでん』1988年4月P17

・鹿志村修, 矢原義彦(北海道電力)「ISDNテレビ会議システム」『テレビジョン学会技術報告』1992年16巻54号

・山口昇「中部電力における画像伝送システムの導入と活用」『テレビジョン学会技術報告』1994年18巻48号

・「特集 東響電力の?を探る」『とうでん』1994年10月

・山本益生「電力会社における設備監視システムの現状と今後の画像利用」『テレビジョン学会誌』1995年3月

・臼田修「阪神・淡路大震災における電力ライフラインの復旧について」『電気学会誌』1995年9月

・「特設記事1 官庁のテレビ会議システムを見る ①通商産業省の設置導入事例」『電気と工事』1996年10月

・「2-05.都市基盤・サービスの復旧 【05】電話の復旧」『阪神・淡路大震災教訓情報資料集』(PDF)内閣府防災情報

・「特集”ライフラインを守る”という使命を果たすために PART1 当社の防災対策を知る」『とうでん』2002年3月

導入事例詳細 CASE STUDY 中国電力株式会社 様(株式会社 メディアプラスHP)

・「国土交通省の防災情報システム」『電気設備学会誌』2006年4月

・「タンバーグが対面会議と同等の臨場感を得られるテレビ会議製品」『日経コミュニケーション』2007年2月20日

・「特集 新潟県中越沖地震に負けない PART3 この難局を乗り越えるために何をすべきかを明確にして業務に取り組んでほしい」『とうでん』2007年10月

東北電力がフルHDのテレビ会議システムを導入、122拠点に配備(日経コンピュータ 2009年3月2日配信)

・新潟日報社 特別取材班「第1章 止まった原子炉」『原発と地震―柏崎刈羽「震度7」の警告』講談社 2009年1月

・「東北電力 テレビ会議システム革命!社内コミュニケーションの高度化へ」『エネルギーフォーラム』2009年5月

・「東北電力、タンバーグのHD対応ビデオ会議シ ステム導入」『CNA Report Japan』Vol.11 No.21 2009年11月15日

・『平成22年度 福島県原子力防災訓練の記録』福島県

・「第1章 柏崎刈羽原発が揺れた」『生かされなかった教訓 巨大地震が原発を襲った』朝日文庫 2011年6月文庫化

・「防災行政無線システムの変遷」『日本無線技報』2011年

・「15.2 事故対応態勢」『福島原子力事故調査報告書 本文』(東京電力 2012年6月20日)

・「3.2.4 情報共有におけるツールの活用状況」『国会事故調 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会 報告書』2012年7月5日

・菅直人「第一章 回想 東電本店へ乗り込む」『東電福島原発事故 総理大臣として考えたこと』幻冬舎新書 2012年10月

・「原子力発電所事故時の組織力とは —「検証 東電テレビ会議」(朝日新聞出版)と公開画像—」澤昭裕Blog 2013年1月8日

・町田徹「第二章 創業」『電力と震災 東北「復興」電力物語』2014年2月
 ※東北電力のテレビ会議対応、電源車派遣について参照。

・共同通信社原発事故取材班「第二章 爪痕」『全電源喪失の記憶』(2015年3月単行本の文庫化。2018年3月)
 ※3月11日夜の瓦礫撤去について参照。

テレビ会議システムの歴史をわかりやすく解説!(ITトレンド、2020年3月4日)

CIF(Common Intermediate Format) とは(Web会議・テレビ会議システムのLiveOn > 用語集,ジャパンメディアシステム株式会社)

・鈴木康人「ISDN(INS)とは|ISDNの歴史と終了の背景を解説」(トラムシステムHP)

学識者、原告団等で参照資料必要な方にはPDFを提供する。

直接の参考にしたのは上記だが、この他にも情報通信関連の文献を色々読み返したり調べたりした。私事ながら、日本データ通信協会が推奨する資格スキル維持の役にも立った。

※2020年6月6日:FNNニュースより本店の認識を追記。

※2020年6月11日:エネルギーフォーラム記事および澤昭裕Blogの内容を反映。

2020年5月19日 (火)

【マスクしないで】元厚生技官の木村盛世氏はネトウヨに感染【激飛ばす】

日本政府の滅茶苦茶なコロナ対応を決死擁護した医療従事者、(外形的な)専門家は数多い。それらの言行をまとめる動きも活発である。巷間有名な御用は岩田健太郎氏や村中璃子氏だが、その他にもたくさんいる。

ここで大切なのは「沢山」の一言で片づけてると自分も同レベルの間抜けとなる、ということだ。その内すぐに「沢山」=「全員」とすり替わり、無敵の人になり果てる。

その一端を知るため、オノデキタ氏の挙げている人達を示す。

もう一つ気を付けなければならないのは、「容姿」「経歴」は批判の理由にはならないことである。また、態度についても、単に偉そうにしているだけならスルー。パワハラ的な態度は結果責任を問われて当然だが、「偉そうに」PCR拡大を主張する者もいるため、内容で判断だろう。基本的にはPCR検査の邪魔をしているか、サージカルマスク、衣料用ガウン、人工呼吸器の調達を妨害しているか、が最も重要な論点となる。

特に検査の邪魔をしている上記の連中を社会的に抹殺するだけでも、状況は改善するだろう。

さて、井田真人氏が次のように述べているのを見た。

 

木村盛世氏が何故そうなったのか、ここで彼女の身上を詳細に洗うことはしない。だが、非常に自己顕示欲が強いので、TV受けするとは言える。これは官僚一般の特徴に反している。省から追われたのかはよく分からないが、残っていたら後述の主張から見て、より酷い行政指導が発信されただろう。

それより彼女の発言を洗っていくと、面白いことが分かった。PCR検査だけを否定しているのではなく、マスク着用すら否定するかなり徹底した人物で、しかもネトウヨなのである。

一見、ただ専門家会議を批判してるだけのように見えるので、困りものですね。彼女の提案の方がより酷い。

ビジネスネトウヨのほんこんを「敬愛」。「一芸に秀でてるので後ろ髪引かれる気持ち」なら、まだわかるけどね。ほんこんて、千原せいじと同じで芸人の癖に何の芸も無い枠やろ。

外国人差別で知られる『HANADA』に投稿。

『死の淵を見た男』の角川文庫版にサインを貰い狂喜。

上記以外にも「木村もりよ マスク」で検索するとテレ朝系「ワイドスクランブル」「TVタックル」でマスク不要論を展開していたことが複数の証言から確認出来る。

その後、TV各局がソーシャルディスタンス確保、透明アクリル板と遠隔中継を相次いで導入したことは御存知の通り。「マスゴミ」すら木村の妄言など信じなかった。

まるで、ハンストした人に治療する必要は無いという意味の言葉を放った「EARLの外科医」こと、福家良太氏のようだ。

別に木村氏が原発事故の戦犯だとか思ってはいないが、物事の上っ面に飛びつく浅はかな人物であるとはいえる。きっと、特定のキーワードを耳にすると37.5℃以上の発熱が4日以上続き、倦怠感に襲われるのだろう。

以前「【Fukushima50】吉田所長の津波無視を庇う門田隆将の話には嘘がある【原作者】」に示したように、門田隆将は都合の悪い話を書かないばかりでなく、単なる嘘を書いている人物。だが、そんなことを知らなくても、何で大津波で電源喪失したのが東電の原発だけなのか、位の疑問は持ってしかるべきだろう。そこから少し調べれば、東電だけが対策を怠ったという結論にはすぐに辿り着ける。

だから、今回もPCR検査を大量にやるのが発展途上国まで含めた世界のすう勢であり、東アジアでマスクが感染拡大防止に効果を挙げたことも学ばななかった。これらの理屈は全て小中学生でも分かる程度の話だから今更詳説はしないが、全自動の検査機を輸出しまくっていたのが実情だったのに、国力低下とは恐れ入る。

コロナの件でというより、今後はネトウヨだから批判していく方が良さそうだ。

※そもそも、TVタックルなどとっくの昔に思想クラスターになっているが。あの番組の出演者、大竹まこと以外まともなことを言うレギュラー出演者をとんと見かけなくなった。

【番外編】

TVを見て木村盛世の主張が邪悪だと思った私の母もかなり大概であった。経歴を聞かされるなり「こいつは元共産党員に違いない」である。理由を聞くと「公務員には元々隠れ共産党が多い。こいつも共産党仕込みでトンデモを主張するようになった。頭のおかしい奴は大抵元共産党員だ。」とのこと。典型的な高齢ネトウヨの戯言である。

彼女は勉強のし過ぎで愚民見下し技官になっただけだと思うけどなぁ。

勿論、親切な息子である私は、東ドイツが西ドイツを吸収合併した世界にこの半毒親を連れて行ってあげるつもりなど毛ほども無かったので、事実を示した後「ネットやってなくても思考がネトウヨじゃん」とお伝えしたのであった。

不思議なのは、色々視聴はするもののPCR拡大派の番組に好感を持ってることである。BS-TBSの報道1930とか岡田晴恵さんが出演している番組やサンデーモーニングなど。邪悪な者は共産党出身だという人種差別にも似た思考は何処からくるのだろうか。その癖、御近所様の共産党議員には「数十年来見ているけどあの方は筋を通して立派」などという(その人が立派だとは私も思う)。

要は、完全に認知が歪んでいるのである。

若い頃役所関係の仕事をしていたので、昭和末期の職業経験を絶対化してこうなったものと思われる。学生時代にテストの成績が良かったり、キャリア官僚をやり込めたらしいが、そのことで自分を頭が良いと思ってるので始末に負えない。反面教師にしたいところだが。。。

2020年5月14日 (木)

医療報道評価におけるコロラド先生の誤りと欠如モデル理論の限界

コロラド先生は精力的にコロナ取材をしているが、原子力に比べると経験の蓄積が希薄なのか、誤りが見受けられる。

 

このニュースを見て、コロラド先生は次のように呟いた。

まず、彼のことを最近知った人に教えるが、彼は日本のTV報道はネット経由でしかチェックできない。何故ならNHKに対する不信感もあってか、受信契約をしていないからである。テレビを使っていないので、民放も電波経由ではチェックし得ない。これらの確認は各局のネット報道経由となる。

私はコロナ禍前、月に何度か帰宅していた実家でTVを見ていたが、体感的に彼の報道チェックがおかしいと感じることがあった。

その前提を元に今回の主張についてチェックを行う。

結論から先に述べると現場を放送していないというのは誤りであり、BBCと遜色ない鮮度、深度の報道が複数ある。また、「欠如モデル」で語ろうとしたことにも、今回の失敗の一因が見いだされる。

いわゆる、海外は日本より先進的だから真似るべきだと言う考え方をネットスラングで「出羽守」というが、これを医療科学報道に当て嵌めると「欠如モデル」の一種となる。

つまり「院内の実態を報道していないからコロナに危機感を持たないのだ。放送すれば危機感が広まり政策も欧米型に近づく」という考え方である。

しかし、最近の日本の保守層・無関心層の動向を分析すると、欠如モデルで説明できる範疇は限られるのではないか、という指摘がコロラド先生の周辺でも以前から見られる。

院内取材の件は正にそれだろう。

後程示すが、視聴者の多くは院内取材について何らかの報道を視聴したことがあると考えられる。日本のコロナ対策が欧米に比べて遅れを取っているのは、現場の映像が周知されないからではなく、別の理由を検討した方が良い。例えば(1)報道バラエティにおいて、一部出演者が安全神話を垂れ流している、(2)視聴者の何割かが映像を見ても内容を理解出来ない、(3)世論は対策の充実を求めているが安倍政権がサボタージュしているなどの要因である。

特に、橋下徹・村中璃子のような出演者や安倍政権の消極性が起因していることはまず確定と言ってよい。その点においてコロラド先生と私の間に認識の相違はないのだが、私は欠如モデルで理解させるには疑問がある、ということだ。

現状必要なのは、デモやロビー活動、或いは制度の目詰まりからゴミを取ることではないだろうか。

ここからは、冒頭の「病院の実態ルポが無い」が事実か具体的な検証に入る。

まず、コロラド先生はBBCが聖マリアンナ医科大学病院を取材したニュースを称賛している。

だが、BBCが報道したのは4月24日だ。

実はそれ以前の4月14日、NHKが聖マリアンナ医科大を取材している。

クローズアップ現代+ 2020年4月14日(火)
新型コロナウイルス 救える命を救えるのか  ~医療崩壊リスク・現場の訴え~
30分

この放送では他の病院も取材しているが、全体としては、ベッドが満床に近づいていること、感染症指定医療機関だけでは足りず、一般病院にも搬送されていること、救急がたらい回しにされていること、医療資材が払底していること、治療に要する設備の解説など、基本的な問題は大体取り上げられていた。

BBCの報道は日本国内に関しては只の後追いだったのである。10日後なら、患者増加で疲弊した姿は撮りやすかったかもしれないが。

また、聖マリアンナ医科大としては、BBCのみに「独占取材」させる必要もなかった。BBCの報道と前後する4月23日には新聞のカメラも入っていたし、数日後にはTBS他民放各局の取材も受け、先行する局とほぼ同様の放送がなされていることが、Youtubeにアップされた報道からも確認できる。「独占」の必要が無いのは他の病院も同じだろう。

聖マリアンナ医科大は近年、入試で女性差別に基づく点数操作を指摘されて開き直ったばかりであり、汚名挽回による動機が他の病院よりも強かったと思われる。

 

 

これらはBBCの東京駐在員なら知り得た情報にも拘らず、只のサファリツアーでしかなかったのは残念なことである。「裏口から入学する程度のオツムなのに、ECMOが操作できるのか」位聞くのがジャーナリズムだろう。

なお、日本国内での現場取材したテレビ報道は当然これだけではない。例えば4月13日のTBSサンデーモーニングでも小特集が組まれている。

TBS サンデーモーニング(4/13)
日本にも迫る医療崩壊
4分58秒(魚拓

BBCは3分30秒だったのに対してこちらは約5分。警鐘に重点を置いているが、対策の充実に資する報道という意味からは、極端な差があるとは思わない。

更に言えば、2~3月の初期段階では、海外報道の買い取りが、現場取材の代役を果たしていたと考えられる。その時点では患者があふれ出すような修羅場が国内には少なかったのだから、海外を素材に使うことになる。

他、BBCと同日や、1日遅れで聖マリアンナ医科大以外に現場取材した結果が放送されている。ICUまで踏み込んだり、予防策を業界内外に紹介出来るような放送は他にも色々ある。

【例1】
今週もすごかった『情熱大陸』のドキュメント!新型コロナの感染予防に取り組む「超・スーパー看護師」
4/20(月) 9:36
>病院内での感染予防対策の一部始終が撮影されていた。
>聖路加国際病院で院内感染予防の最前線に立っている。

【例2】

MBS NEWS
院内感染防ぐ“ゾーニング”された病棟の姿...大阪の感染症指定医療機関を取材 『医師と感染患者』の最前線(2020年4月23日)
6分25秒(魚拓

【例3】報道特集4/25
https://trend-at-tv.com/word/52789
80分

【例4】

ANNNewsCH
新型コロナ“最前線の教訓”自衛隊の病院公開(20/04/30)
8分53秒

自衛隊が行ったのは報道公開なので、以下の例のように他局も放送している。ここは防護徹底で「悲惨な素材」が取れなかったので、そういう意味では官製報道と言っても良いかも知れない。だが、各局とも別のニュースで問題事例は報じており、この件は良好事例を紹介するという意図の方が強いと考える。



TBS News
【現場から、新型コロナ危機】自衛隊「見えない敵との長期戦」(5/8)
3分52秒(魚拓

SBSは断続的に特集を組んでいる。

【例5】

SBS news 2020/04/24
【特集】新型コロナと闘う医療現場 院内感染を防ぐために
5分52秒(魚拓

【例6】

SBS news 2020/04/27
【特集】新型コロナと闘う医療現場 人も資材も消耗
 6分36秒(魚拓

【例7】

SBS news 2020/04/28
新型コロナと闘う 医療現場③ PCR検査と医療体制
5分34秒(魚拓

5月に入っても自衛隊病院以外の追加取材は続く。

【例8】

TBS【報道特集】新型コロナ重症患者~容体急変も 集中治療室の最前線 2020/5/08
12分8秒(抄録と思われる、放送時間は80分)(魚拓

【例9】

ANN News
看護師が語る“コロナ最前線”疲弊する現場の実態(20/05/12)
3分38秒(魚拓

【例10】

関テレ『報道ランナー』 2020年5月13日(水)
治療現場「レッドゾーン」の内部 新型コロナ重症患者と向き合う医療従事者
10分30秒(魚拓

中にはICUを映している時間が少ないといった欠点を指摘出来る報道もあるだろうが、ある国の報道というのはニュース1本、テレビ局1局で評価するものではない。ICUは映していなくても臨床医のコメントが補足しているとか、医療資材について報じた分量は多いなど、特徴もある。

更に、ネット時代であることを受け、医療側自らがYoutubeに動画を流す事例も見られる。日本赤十字、自衛隊病院などがその代表だ。

【日本赤十字社】新型コロナウイルス感染症 医療の最前線からのメッセージ 2020/04/30
3分27秒(魚拓

特に自衛隊病院は、ガウンやマスクの着脱法についても啓蒙しており、価値が高いと思われる。

感染管理認定看護師による医療従事者用動画の紹介① ~ガウンの着脱編~魚拓

啓蒙と言えば、そもそも院内感染拡大を防止するための発熱外来設置例などの放送も欠かせない。この点でもノウハウを紹介する報道は早期から存在している。

TBS News
【院内感染防ぐクリニックの対策とは・・】2020/03/12
4分20秒(魚拓

上で紹介されているのは、この後BS-TBS報道1930などにも度々出演したPCR拡大派のインターパークである。同業にとっては、学ぶものは多い筈だ。全てではなくても、クリアファイルでの受け渡しなど真似をしやすい工夫はあるし、サーキュレーター等を使って空調の流れを改善することも出来るだろう。

以上は、Youtubeにアップされた単発ニュースが主体である。つまり局によっては方針でアップされていないものもある。これらの他に、報道番組および報道バラエティの特集内でVTR編集された事例や中継でコメント取りしている例が多数観察される。

当然のことながら、新聞報道もTV報道に呼応するように、文字数を費やした現場取材が行われている。冗長になるので1本だけ紹介するが、BBCの放送と同日の毎日新聞は、東京臨海病院への取材記事を載せており、4600字を費やしている。新聞記事としては詳細な分量で、種々の数量報告を交え具体的だ。

毎日新聞 4月24日
治療最前線「ぎりぎりの精神状態」 患者や社会の無理解… 東京臨海病院・院長に聞く

以上のように、日本の医療現場を取材し、そこで取られている予防策、起きている問題を拾い上げることは素人でも十分可能であることを示した。諸事情で自宅で時間を余らせている向きは、数多くの動画をルポを比較し「A病院ではやっているがB病院ではやっていないこと」などの差分を取ってみるのも良いだろう。コロナ禍を一日でも早く終わらせるための知恵はそういった観察から生まれる。コロラド先生に反論するだけなら2つ3つで良いところ、10以上のルポを引用した理由はそこにもある。

こう見てくると、問題にすべきでことは何か、明らかだろう。

コロラド先生の言だからと簡単に信じ込んでしまう人達こそ、欠如モデルの対象層である。もしTVを見る習慣があるとすれば、目にしている内容が理解出来ない疾患を疑うべきだし、TVを見ないのにさも見てきたかのように思い込んでいるとすれば、論理的思考力に欠落があることになる。

実はこうした思考欠陥は出羽守と対立する「自称普通の日本人」に多く指摘されてきたことでもある。思考パターンは実質的に相似ということだが、何故彼等の主張なるものがスルーされるのか、自分が同じようなことをして相手が耳を傾けると思うのか、もう一度よく考えてはどうだろうか。

2020年3月17日 (火)

【Fukushima50】吉田所長の津波無視を庇う門田隆将の話には嘘がある【原作者】

【『Fukushima50』は何故批判されるのか】

3月6日、シネコン各社が一席空けて鑑賞するように注意喚起する中、映画『Fukushima50』が公開された。本作に限らず「コロナ不況」で観客の出足は極めて低調だが、最初の土日は動員トップだったようである。

本作について、作り手は「どちらにも偏らない」といったお決まりの文句で宣伝を図っているが、ここ数年の原作者の極右化や、映画化を提案した故津川雅彦氏(公式パンフレットによる)の所業等から、原発関係者を翼賛するため右派が企画したことはばれてしまい、猛烈な反発を受けている。

反発を受けている理由は色々あるが、最も大きいと考えられるのは次の2点。

  1. 吉田氏が、事故前に本店で原発津波対策の責任者として、大津波の想定を先送りした当事者であることに触れていない。
  2. 日本原電の東海第二原発や東北電力の女川原発が津波想定・対策をして事故を回避した事実に触れていない。

これを無視して話を組み立てても、全て無駄だし、マイナーな話でもないのですぐにばれる。

「現場のことを知ってください」といったPRも傲岸だろう。「だったら東電のロゴ位正しいものを使え」と言いたくなるし、現場を取材した人は沢山いる。その言動自体が「門田だけが現場を知っている」かのような商業臭の強いものだ。

とまぁ、色々と論点はあるけれども、今回は門田氏が本店時代の吉田所長をどのように見ているかを検証する。昔からのブログ読者にとってはおさらい記事となる。

【「偏った意見」と「嘘」の違い】

本題に入る前に、普段から思っていることがある。

偏った意見を述べている人は、嘘つきなのだろうか。

ざっくり議論する程度なら、嘘つきと表現することも差し支えないと思う。万国共通で世の習いだから。しかし厳密に解釈すると-イメージとしては相手を裁判にかけるとか、学術レベルで検証するといった場面を想像すれば良いのだが-嘘つきとは言えない場合がある。

今回の門田氏が正にそれで、不都合な事実を述べなかったとしても、厳密には「考え方が東電に偏っている右の人」となる。彼を批判する添田孝史氏がHBOLに投稿した記事の題名も「福島核災害を「美談」に仕立て上げた映画『Fukushima50』が描かなかったもの」である。

勿論、偏った主張だけでも、社会的には問題だ。簡単に言えば、大量殺人犯がたまたま日常生活では親切な人だったからと言って、そこだけを取り上げて善人だと言い張ったら、大変な事だろう。だが、政治・社会問題ではこの手の印象操作は頻発する。

だから、今回門田氏の主張を精査し、氏が都合のいい事実だけ取り上げているのみならず、主要な部分で嘘が混じっていることを示す。

【「大胆な計算法」は本当か】

上述のように、門田氏は『死の淵を見た男』で本店時代の吉田氏を描かず、『Fukushima50』でもそうなっている。私はコロナウイルス予防のため、映画を見ることが出来てないが、クランクアップ時の記者会見、予告、有料パンフレット(結構ボリュームはある)、周木律氏によるノベライズ版をチェックした。いずれも本店時代の描写は無く、津波は「想定外」とされている。映画を見た人達の報告も同じである。

実は門田氏は原作出版後、本店時代の吉田氏について文章を公開していた。核心部分を引用する。

いま、吉田さんが「津波対策に消極的だった人物」という説が流布されている。一部の新聞による報道をもとに、事情を知らない人物が、それがあたかも本当のようにあれこれ流しているのである。

私は、吉田さんは津波対策をきちんととるための「根拠」を求めていた人物であると思っている。新聞や政府事故調が記述しているように、「最大15.7メートル」の波高の津波について、東電は独自に試算していた。これは、2002年7月に地震調査研究推進本部が出した「三陸沖から房総沖の海溝沿いのどこでもM8クラスの地震が発生する可能性がある」という見解に対応したものだ。

そもそも、これはなぜ「試算」されたのだろうか。これは2008年の1月から4月にかけて、吉田さんが本店の原子力設備管理部長だった時におこなわれたものだ。

それは実に大胆な計算法だった。どこにでも起こるというのなら、明治三陸沖地震で大津波を起こした三陸沖の「波源」が、仮に「福島沖にあったとしたら?」として試算したものである。

もちろんそんな「波源」は福島沖には存在しないので、「架空」の試算ということになる。だが、それで最大波高が「15.7メートル」という数字が出たことによって、今度は、吉田さんは、これをもとに2009年6月、土木学会の津波評価部会に対して波源の策定についての審議を正式に依頼している。

つまり「架空の試算」をもとに自治体と相談したり、あるいは巨額のお金を動かすことはできないので、オーソライズされた「根拠」を吉田さんは求めていたのである。この話は、私は3回目の取材で吉田さんに伺うことにしていたが、その直前に、吉田さんは倒れ、永遠にできなくなった。

故・吉田昌郎さんは何と闘ったのか」(門田隆将公式ブログブログ「夏炉冬扇の記」2013年7月14日)

この見解はその後、対談や吉田調書に関する単行本などでも踏襲されている。

「大胆」という言葉の意味をネットの国語辞書で引くと「普通と違った思い切ったことをするさま。」とある。

これに照らすと先の引用で下線を引いた部分は嘘である。考え方に新規性が無く、ありふれていたからである。それを時系列順に挙げていこう。

【「架空の津波」を対策に活かした先達の知恵】

そもそも、大津波が何故起きるのかというと、学校で習ったプレートの沈み込みをイメージしてもらえば良いが、プレート境界となる海溝沿いで大規模な地滑りが起こり、大量の海水が上下に動くから、である。明治三陸津波は岩手県沖の日本海溝で起こった。日本海溝はその南側にずっと続いているから、同じような地滑りで同じような津波が起きるだろうと言うことは、プレートテクトニクスに沿った考え方としては常識だった。勿論、日本海溝ばかりではなく、簡単に言ってしまうと世界中の海溝で同じような津波が起きる恐れがあると考えられていた。

だから、明治三陸地震の波源を他の領域に移して津波シミュレーションを行うことは、1980年代から行われていたのである。

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  • 「津波に関する研究 その2」(1983年)についてはこちらの記事で詳説
  • 「宮城県津波被害想定調査」(1986~1988年)についてはこちらの記事で詳説

いずれも、明治三陸の波源を南に移設したシミュレーションである(精度に問題があったり、規模を小さくしたことで、15.7mに匹敵する波高を福島沖で得ることは出来ていない)。なお、電力業界全般としては、やはり同時期に津波シミュレーションに手を出していたが、東電は当時の技報を全て非公開としているので、社外のシミュレーションを見てどんな試算をやっていたかは闇のままである。普通の企業なら古い技報位は公開しており、子会社を含めてお蔵入りを続けている東電の姿勢は異常だ。

ともあれ、東電が試算する25年も前に公開されている計算法は、全く「大胆」ではない。

「門田氏が言い過ぎたにしても架空は架空だったろ」と粘る人もいると思う。

しかし、そのうちの一つは宮城県が防災のために行った津波想定である。2000年代の津波想定では別の波源に代わったが、それまでは門田氏の言う「架空の波源」が津波対策を講じる根拠になっていた。

門田氏が紹介している2002年の地震調査推進研究本部の考え方も、これに沿ったものだ。

また、土木学会は2004年に福島沖で地震が起きるか専門家などにアンケートを取ったことがあるが、添田氏によれば、その時も多数派は起こると考えていたことが明らかとなっている(『原発と大津波』P78~P79)。

更に、2004年に発生したスマトラ沖地震津波を他山の石として、国土交通省は5か年の緊急対策を立案、その根拠には日本海溝沿いのどこでも大規模な地震津波が起きる、という前提に立ち、GPS波浪計配置や閘門管理システム等の予算を執行した。

GPS波浪計広域配置計画の検討で利用する断層条件は次の通りとする。

(1)日本海溝沿いの地震断層
日本海溝沿いのプレート間大地震は 1611 年三陸沖、1677 年房総沖、1896 年三陸沖が知られており、大きな津波を引き起こしている。地震調査研究推進本部の長期評価によれば、これらの地震は同じ場所で繰り返し発生しているとは言いがたいとのことであり、配置計画を検討する際の想定断層は、三陸沖から房総沖の日本海溝沿いに海溝軸に沿って並べて配置する。

 

Kokukou2005tsunmitohokufig213

本編1 P2-24(リンク)(平成17年度国土施策創発調査費 津波に強い東北の地域づくり検討調査

見ればわかるように、地震研究推進本部の長期評価をそのまま引き継ぎ、M8級断層が日本海溝に沿って房総沖まで切れ目無く直列に想定されている(本件についての詳説はこちらの記事)。

この他、日本原電が「根拠は十分」と判断して如何なる学会にも諮らず、津波対策を実施していたことは上述の通りである。

実は、日本原電に津波対策をするように働きかけたのは、茨城県だった。茨城県は中央防災会議が「根拠が薄い」と捨てた波源を使って津波シミュレーションを実施し、県内の原子力施設に危険を感じたのだった。県の考え方は事実上「架空の試算」に頼ったようなものである。

また、東電社内にも「津波対策をきちんととるための根拠を求めていた人」より積極的に立ち回った人がいた。津波想定の実務を担当した社員(高尾誠氏、原子力部土木調査グループマネージャー)や、高尾氏より高い役職についていた山下和彦氏である。彼等は、15.7m想定を弾き出した時点で津波対策に乗り出すべきと考えており、一旦は経営陣もその方針で動いていたが、2008年7月に上層部の「ちゃぶ台返し」で葬られたことが裁判で開示された資料により明らかとなっている。彼等に比べれば、吉田氏は地震津波の知識も無い只の消極的なおっさんに過ぎなかった。詳しくは、LEVEL7での添田氏の公判傍聴記や取材レポートを参照されたい。

【まとめ】

門田隆将氏が吉田氏を庇おうとして主張した内容は嘘だったと言える。

今回引用した文章全体の意義も崩れてしまう。「それは実に使い古された計算法だった」では締まりがない。

関連して冒頭の「事情を知らない人物が、それがあたかも本当のようにあれこれ流している」も実際は「詳しい内情に基づく本当の話」であった。端的に言えば添田氏の方が門田氏より詳しい。「『架空の試算』をもとに自治体と相談したり、あるいは巨額のお金を動かすことはできない」も事実に反しており、結局門田氏の主張は嘘ばかりだった。

氏は右派論客として原発事故以外にも様々な物議を醸している。そのことは別の場で批判されてきたし、これからも続いていくだろう。だからここで腹いせ的に「歴史や政治で問題発言をしているので、よく知らないが原発でも嘘つきに違いない」といった雑駁なことを言うつもりはない。しかし、きちんと検証してみても吉田所長の件では、氏の主張に信憑性は無いと考える。

2020年3月 6日 (金)

【虫けらどもは】TrinityNYCさん、千の丘ラジオを放送して本性を晒す【ひねりつぶせ????】

原発研究の宿題消化中に、コロナ騒ぎと、忙しかったので、今日は閑話休題。心の毒なので、あまり政治宣伝にはなりません。

トランプ政権の先を占うスーパーチューズデー、その情勢分析を語っている在米アカウントは多い。

たかが民主国家内の政敵ごときに「ゴキブリ」か。殺虫剤の広告まで持ってきてご丁寧なこと。勿論魚拓はGETした。

権威勾配考慮しても、私はそれは禁句と考えている。ルワンダ虐殺の引き金を引いた千の丘ラジオの有名なプロパガンダが「ヒトだと思えば躊躇うこともあるが、ゴキブリだと思えば殺しても大したことないだろう」(大意)だったから。トランプ政権の後ろにはそれなりの支持層もいる。反安倍にも共通するが、指導者にその支持層を重ねて論じる、或いは敵からそう受け止められるのはよくあること。しかも殺虫剤。チクロンBの歴史的意味位知っとけよ。

維新が気にくわなくて大阪に原爆落とせと書き込んで逃亡したセレブ医者の瀬川深様や(他にも奇怪な言行多数)、コロナに過剰な期待して日本だか首都圏をエスニッククレンジングしたがってる匿名社会学教授の社虫太郎(鬱屈して駅前で刃物振り回してるおっさんにしか見えないです、ごめんね)並の社会観だな。Trinty婆さんを含めて今書いたような連中を知〇〇〇リベラルと言う。

これでは、百田とかと同じ土俵に落ちてしまった可哀相な人達である。なお私が右派著名人、著名アカウントの批判記事をあまり書かないのは、反安倍の諸氏が遥かにセンスの良い叩き記事を量産しているからで、別に心の底で百田等に同調しているからではない。後、ネトウヨに効くのは訴状、令状、暴露であって、話をする価値無いしね。

で、Trinityさん、実名で同じこと言って、アメリカ社会でそれ持つのかな???

私は反安倍で、その繋がりで他国のことながら反トランプということになるが、彼等のことをゴキブリに例えようとは思わない。「クズ」「無能」いった汎用性の高い表現が世の中にはあるからね。安倍の例で言うと過去の経緯から「森羅万象」とか変化球の表現もある。だがそこに批判はあってもいずれも差別とは縁が無いものである。

大体、敵を人間だと認識しておかないと、大変な目に遭うと思うけどね。まして安倍ではなくて狡猾さでは上のトランプでしょ。

それともう一つ分かったこと。

Trinityさんてやっぱり、劣等感の塊なんだろうな。めいろまよりは物は見えるけど、根本的には同じ箱。この無意味な攻撃性はそう考えないと説明が付かないね。

でなきゃ、こんなの思い付かん。中身も考えずに安易に人の言うことに同調する。「共感性」か知らんが実に痛々しい。ていうか、TLに流れてくる在米フェミニスト垢でもこんな酷いの見たことないので、主義思想由来でなく、個人の人格なんだろう。

元々、海外住みで日本の問題点をあれこれ言ってる人は一杯いる。馬鹿ウヨ以外には当たり前のことだけど、私はそれが悪いとは思わない。でも、Trinityさんみたいに、余計な邪念が混じってると思しき人って、やっぱ只の出羽守だと思う。

ま、もっと悪いのは、海外在住経験を売りにして、「普通の国になろう」と言わんばかりに右派言説を煽ってくる連中だけど。これは結構多い。私が出羽守が嫌いなのは、字義通りの言葉の定義に従うとそういう連中も入るからである。特に現代の米軍を手本にしたがる連中は、かなりの高確率でアレ。

そう言えば、元バンクアナリストがサンダースを嫌っている構図も実に分かり易い。私はアメリカ国民ではないが、やはり民主党の候補者ならサンダースがベストだろう。もしアメリカが彼の考えるような平等性の高い社会を作ることに集中してくれれば、いずれはショックドクトリンと新自由主義に毒されて世界中に戦火を振りまく悪癖も、影を潜めていくと考えるからだ。他の候補では、そこまでは難しいのでは。どこかで棍棒外交が顔を出す。

サンダース自身は最近女性に対する差別発言で味噌をつけたようだが、あの社会主義的思想自体は、フェミニズムが目指すものと被る部分はあるだろう。女性議員を含め、サンダース的な人士が増えていけば良いことと思う。まぁそれは、日本も同様なんだけど。

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