2019年1月29日 (火)

ケーズデンキに行ったら店員から商品ではなくヘイトスピーチを薦めてきた件

ここ最近、済生会川口総合病院の麻酔科医大畑亮介、ニッカウヰスキー余市蒸溜所営業部長三上博康、高野山金剛峯寺の真言宗僧侶安田空源など、社会的立場のある人物が、その立場に相応しくない差別発言を重ねて組織が謝罪に追われる事態が頻発している。

そういえば、前回記事にまつわる調査研究で忙しかったので後回しにしていたが、2週間ほど前、びっくりすることがあった。

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1月12日、所用で府中に行った。その帰り、18時頃ケーズデンキ府中本店に立ち寄った。

以前から首都圏の下宿で使うパソコン用のモニターを探しており、その下見と相談のためである。

最初に、SHARPのテレビ販売担当の派遣社員と思われる「やなぎや」という中年で眼鏡をかけた男性店員が案内を申し出てきた。

その後、彼もPCモニターのコーナーに来て最近の機種の値段を確認しはじめた。私は「テレビは高価だし受信料の関係で置くつもりがないんだ」と言った。これは単純に下宿で受信料を払いたくないためで、政治的な意味ではない。

すると彼は「オフレコですが、NHKに受信料を払わないで済む方法があるのですよ」と言い、「NHKの偏向報道を集金人の前で糾弾し、警察に通報すればよい。我が家はそれで受信料を払ってないが見ている」と解説を始めた。

この時点では、この店員がどのような思想の持ち主かわからなかったので、「ほうそれで」と返してみたところ、次のような説明を受けた。

  • 在日の犯罪者をNHKだけが通名で報道している。
  • 韓国の芸能人がイスラエルと日本を茶化したのに、NHKは日本を茶化したことを隠している。
  • Youtubeで「NHKから国民を守る党」で検索を薦めてきた。何かあったらこの団体に連絡すれば安心して受信料を払わずにテレビを視聴できる。
  • 「NHKから国民を守る党」はNHKやマスコミの偏向報道、彼らの実態が在日であることがこれでもかと暴いている。日本は在日によって占領されつつある。危機感を持っている。

あーあ。

「アイヌが存在しない」等ヘイトスピーチ満載の極右団体、「NHKから国民を守る党」ですか。しかも接客相手に。

NHKの報道に問題があるのは分かるがそれは政権への過剰な忖度と調査報道の後退に起因しており、この店員の歴史観、政治感覚は悉くNGと言わざるを得ない。

特に歴史観。一言でいえば、極右が日頃主張する「明治以後、日本は悪いことをしていなかった」系の中身は悉く虚偽で、実際は全て手を染めたというのがこっちの認識だ。

在日の犯罪を通名で報道する、事実なら若干の違和感があるが、支払わないほどの理由ではない。当事者は逮捕されていることの方が重要な筈だが。一方で、日本人の政権に近い権力者は罪に問われることなく免責されている者が多く、311後、或いは安倍政権に入ってからその傾向は強まるばかりだ。くだらない。この十数年、ネット右翼が気に入らない人物を次々在日認定して回ったので、通名の話は情報に信ぴょう性が無いこともある。

サービス利用の薦め方としても不適切だ。説明通りに受信料を支払わなかったとしても、それをやった人達は訴訟で敗北しており、強制執行される可能性が高い。それとも、ケーズデンキは「NHKから国民を守る党」とタイアップでもしてるのかね。

大体、下宿ではテレビを見ないと言っただけで、それ以外の場所では報道チェックを兼ねてNHKも視聴している。例えば実家の受信料は払っており、止めるつもりもない。

そもそも、訪日客を大量に招こうという時勢に、もし私が外国人だったらどうするつもりだったのだろうか(仮に昭和時代に同じこと言われても私的にはNGだけど)。

とりあえず、平常に応対しつつ名前をメモして退店後、クレームを入れた。

ケーズデンキに人権に即した企業憲章の記述は無いようだが、2019年1月現在、キャラクターに「ちびまる子ちゃん」を使用してる。ちびまる子ちゃんの作品コンセプト、知ってるのだろうか。どうしても知名度の高い女性でPRするなら、指原莉乃の方がいいんじゃないの。

バカリズム、指原莉乃が外国人労働者問題で差別丸出し! 外国人の接客を嘲笑し“日本語がちゃんと喋れる人を”論(リテラ)

しかしまぁ、接客中にこんなことを言ってくるゴリゴリのネトウヨ店員というのは初めて見たね。

なお、モニターとテレビについても彼からは有用な情報を一切得られず、私が彼に解説した。特に4Kモニターについて何も商品知識が無かった。ま、NHKを監視するには、視聴しなければならないのも明らかなので、やなぎやさんはいろいろな意味で完全にアウトですがね。

ケーズデンキ府中本店に来ることは極めてまれなのだが、どの店舗も当分使わないことにした。派遣元か、ケーズなのか知らんが、これからは人権教育に手を抜くべきではないだろう。

前に類似の人種差別発言・誹謗中傷系モラルハザードから大企業の社員を告発した時も感じたが、企業社員向けネットリテラシー教育には、人権啓発の観点が欠落している例が少なくない。それどころか、「SNSに所属が分かる写真をアップすると、悪意あるユーザーが炎上させる」などと、さも自社の社員が被害者であるかのような「教育」をしている事例も見受けられる。

最近相次ぐ差別発言に、それが当て嵌まると思っているなら、大間違いだろう。感情的に追い込まれての一時の失言ならまだしも、差別思想に影響を受けてのことなら猶更だ。

結局、PCのモニタはLG製にした。顧客の潜在需要も掘り起こせず、適切なラインナップに失敗した国内勢の商品はアウトオブ眼中。何だかとっても残念だ。馬鹿な財界人が平均所得を抑え込んだまま、昔ながらのハイエンド家電ばかり出させたりするから、こういうことになるのだよ(了)。

以下の記事も是非お読みください(未公表ですが既に詳細情報も特定しています)。

東電原発は社員まで腐りきってるという話です。

2019年1月19日 (土)

【和製ブラウンズフェリー事故】北電火発が経験した浸水火災【再稼働に一石】

技術者が福島原発事故を眺めた時、一般防災に役立てられることを含めて、少しでも多くの教訓を抽出したいと考える。当然のことだ。

一方で、自らの能力を意図的に低く偽り、警告から目を背けた原子力村の住民がいる。

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往年のNHK教育テレビ番組『できるかな』のノッポさん。作者不詳の恫喝文句が付け加えられ、ネットで流通している。

検証や訴訟の場で責任を問われた者達が「実は工作が苦手だった」「はてはてフム~♪」と放言するのが流行っているが、それで済まされる訳がない。小さなお友達相手の番組じゃあるまいし。

近年、原子力規制庁が問題にしているHEAF問題もその一つだ。今回、HEAFに潜む盲点を明らかにしたい。

【そもそも、HEAFとは何か】

日本語では、「高エネルギーアーク損傷」という。

高電圧、高電流の放電によって金属が気化し、爆発する現象のことで、電源盤とか配電盤と呼ばれる機器の動力回路で発生する。他のケーブルや配電盤/電源盤に延焼するため、とても警戒されている。

アメリカでは2000年代初頭よりNRCが研究していたが、日本で注目されるようになったのは、311以降のことだ。その理由は、女川原発1号機で被災時に発生し、規制庁が研究課題に取り上げたからである。

経緯はこうだ。地震直後は外部電源が生きていた。しかし、発災10分後に常用系高圧配電盤の一部をHEAFによる電気火災で損傷し、起動変圧器が停止。これにより外部電源を受電できなくなったため、非常用ディーゼル発電機での電源供給に切り替えた。

Ntec20161002_fig21_2 NRA技術報告 NTEC-2016-1002『原子力発電所における高エネルギーアーク損傷(HEAF)に関する分析』原子力規制委員会 2016年3月

女川1号機の高圧配電盤がHEAFを起こした理由は、盤内に据え付けてあった遮断器が、地震動で壊れたからである。この遮断器は非常用ではなかったので、耐震性の低いタイプが使われていた。

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【参考1】HEAF火災発生防止対策(国内:女川1号機)『HEAF火災規制化(新知見)に対する事業者の取組み状況および今後の対応について』電気事業連合会
先ほどの写真の盤の中に、遮断器が収められていた。

電力各社や電気事業連合会は、この対策として次のような内容を考えている。

  • 原発の盤用遮断器を耐震性の高いタイプに入れ替える(女川他、各原発で実施済み)
  • 非常用発電機でHEAF火災が起こらないように遮断器(を収納した盤)を追加。
  • 電源盤が故障しても原子炉建屋の回路から切り離せるように、リレーを高性能なものにする。
  • 燃え移らないように、電源室を複数に分離したり、ケーブルトレイを発火源から離して設置する(以前より実施)。
  • 万一燃え移った時のために、難燃性ケーブルや延焼防止剤を使用する(以前より実施)。

対策は、事故が起きないようにする対策と起きた事故が拡大しないようにする対策の2種類がある。ただし、これから紹介する事例を読むと、前者は十分ではないことが分かる。

そう、地震動を気にして研究を開始したことにHEAF対策の欠陥が潜んでいるのだ。

【奈井江火力発電所を襲った水害】

本件が取り上げられなかった理由は単純で、「原子力発電所のトラブル」に拘り過ぎていたからだろう。

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【参考3】国内における火災事例『HEAF火災規制化(新知見)に対する事業者の取組み状況および今後の対応について』電気事業連合会

電事連が提出した資料はNUCIAから火災事例の一覧表を作っている。よって、火力発電所のトラブルは集計しなかった。だが、火発にも原発の参考になる事例はある。

1981年8月、台風12号の直撃を受け北海道電力奈井江火力発電所が冠水した。発災当時も電事連内部などで参考例として各社に情報共有がなされたと思われるが、ここでは、『北海道火力原子力発電ニュース』Vol.43(2000年)に掲載された所員の回顧録「台風12号の直撃を受けた奈井江発電所 」をもとに説明する。

奈井江火力発電所は台風襲来の直前に運転停止操作を実施し、所内の電力を賄うため、外部電源の受電に移行した。

その後、所内の冠水により機器操作用の直流電源が接地で故障し、起動変圧器用の遮断器が制御不能となった。

このため、特別高圧回路を開放することができず、本館1階の4kV高圧母線が短絡接地し、その短絡電流によるアークが室内の制御ケーブルトレイに燃え移って火災を起こし、全館停電となったのである。

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なお、炎上したケーブルは可燃性ケーブルであり、延焼防止剤も塗布されていなかったため、ケーブル延長の8割を焼損した。

【コラム:外部電源・所内回路・起動変圧器・遮断器・母線とは】
電気に慣れている読者には説明不要だが、以下解説。

外部電源とは屋外の変電所につながった送電線のこと。電気エネルギーは電圧が高いほどロスが少なく送ることが出来るので、送電線の電圧は17万Vとか50万Vなどとても高い(特別高圧という)。しかし、電圧が高いことは電気機器を使用する観点からは危険且つ不便なので、発電所の中では一般の工場と同じように低い電圧に降圧する。降圧後は所内回路と呼び、6900V,4160Vなどの所内高圧回路、480V,220Vなどの所内低圧回路がある。

いずれも3相交流だが、3本の線を回路図に書き込むと煩雑なので、1本に省略して表したものを単線(結線)図と呼ぶ。

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d-book 火力発電所・所内回路と付属変電所』P6より青字加筆。奈井江火力は建設時期から上図に準じた構成と推測される。

起動(始動)変圧器とは、発電開始前に外部電源を受電して、所内の様々な機器を動かすためのもの。その他、発電所が停止した際に外部電源を受電するためにも使われる。普通は、ボイラーや原子炉とは別の場所(屋外の場合も)に設置されている。

遮断器とは電気回路の入り切りをするための機器である。奈井江で制御不能となったものは(恐らく)特別高圧用。盤に収納するようなサイズではなく、屋外に設置されたがいしの化け物のような形をしたものをイメージすれば良い。これに対して、女川で壊れたものは所内高圧回路で使用するもので、盤内に収納されている。いずれも入り切りする回路の電圧は高いが、操作用に低圧の直流電源などを使用する。

なお各機器を表す図記号はJISで決まっているが、国際的なIEC規格と同じものを使う方向で2000年頃大きく変わっている。

母線とは、上記d-bookの単線図で横に渡っている線を指す。所内高圧回路や所内低圧回路の特に動力用に使用される導体(銅などでできた平板)。配電盤の奥に設けてあり、それ以外の部分もバスダクトという形で保護されているので、一見では分からない。建屋の外にある主母線になると、交流1相ずつ丸型の配管に収めてあり、相分離母線と呼ばれる。

詳しくは参考文献欄のd-book 火力発電所・所内回路と付属変電所』などを参照してほしい。

ボイラーを原子炉に置き換えれば、原子力安全の分野でよく知られている、ブラウンズフェリー1号機火災事故(1975年)と同様の問題と見ることができる。その原因がブラウンズフェリー事故の原因となったロウソクの炎が燃え移ったことでもなく、女川のような地震とも異なり、水害という所に特徴がある。しかもブラウンズフェリーと異なり、2階の電気室、3階の中央操作室も全焼していた。影響は大きい。

Karyokugensiryokuhokkaido2000no43_2 よって奈井江の事例は津波対策、HEAFの両方の視点から大きな意義を持つ。

【1980年代前半にとられた対策】

電力業界も無策ではなく、福島第一は1970年代末より順次ケーブルに延焼防止剤を塗布しており、6号機に至って全面的に難燃ケーブルを採用して建設された。

当然のことだが、奈井江火力復旧に当たっても、延焼防止剤の塗布や敷地、建屋への浸水防止策が講じられた。

また、奈井江の教訓を水平展開したのか、1983年に発行された『JEAG-3605 火力発電所耐震設計指針』の10章では、盤据え付け位置が配管破壊で冠水、浸水しないことが明記された。

Jeag36051983_p257_2 「10.3.2 屋内開閉装置」『JEAG-3605 火力発電所耐震設計指針』(1983年)
クリックで拡大可

更に、津波想定をしておきそれよりも高い位置に電気室を設けることも明記された。原発の場合は敷地全体を建設時の津波想定より上にする、ドライサイト原則があるが、火力の場合は重要な電気室だけは守るということであろう。

なお同指針は火力発電所の電気室が2階に設置されることが多いので2階に設置するとも述べている。地震の揺れを警戒して地下室に設定される傾向が大きい原発とは異なっている。ただし、原発でも電気室を2階に配置している事例は敦賀1号機などがある。

【外部電源が生きていたまま津波で浸水した場合、福島第一でも火災が発生した可能性がある】

以上、只の昔話ではないことが分かったと思うが、今日的な問題提起としては2つある。

一つ目は福島原発事故分析の盲点。2016年頃までホットな話題だったのは、大津波の想定は確実だったのか、という予見可能性の問題だった。民事・刑事裁判が進んでから言及されるようになってきたのは、「想定できたとして、対策は間に合ったのか」という回避可能性の問題である。訴訟では、回避可能性も後知恵抜きで証明する必要がある(個人的には、原告側にそこまで完全な証明を求めることは酷だと感じているが)。

さて、有名な2008年の15.7m試算だが、その前提条件は福島沖で明治三陸地震と同規模の津波地震が発生することである。津波地震とは、陸上での揺れはそれほど大きくないが、津波の規模が大きな地震を指し、明治三陸の場合、沿岸での震度は最大でも4に過ぎなかったとされている。したがって、この試算では揺れは問題となっていない。

実際の福島事故ではまず震度6強の地震動で外部電源がすべて破壊されたが、もし外部電源が生きていたまま津波が襲っていたら、奈井江と全く同じ環境条件が成立し、電気室、中央制御室等で電気火災の危険が大きかった。これは、後述のように他の被災原発と条件が異なるからである。

福島事故は地震動による電気設備の破壊と津波による施設全体の破壊などが重畳した複合災害である。そのことが却って、それぞれが個別に起きていた場合のリスクを見えにくくしている。このことは、得られる教訓も自ら絞ってしまうことにもなる。

とはいえ、複合災害に誤ったアプローチをしている人もいる。よく地震の影響を強調するあまり「津波は原因ではない。」と口走る研究家がいるが、津波災害に対し、大変傲岸不遜な態度だと思う。申し訳ないが、人間性すら疑わざるを得ない。事故分析はわかっていることから順番にやるしかないのである。

【15.7m想定を公式に採用していたら、福島第一は消防法令不適合となった】

ここからは、回避可能性の議論に戻る。「15.7m想定をもし採用していたら、どうなったか」という「もしも」を考えるということである。

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「壊すために作るんだよ!」――なつかしの工作番組「できるかな」のノッポさんが79歳にして大暴走。(ねとラボ)より

原子力施設も消防法令の規制は受ける。例えば、「発電用原子力設備の技術基準を定める省令」の4条の2には昔から火災による損傷の防止規定があり、その消火設備および警報装置の設備は消防法の規定を準用すると解説にある。

蓄電池(直流電源)は原発にとって最後の砦的な性格の電源だが、消防法施行規則12条では設置場所は雨水が侵入しない場所であることを定めている。

また、消防法を頂点とする法体系の下層には基礎自治体による火災予防条例があり、ここでは直流電源に加えて非常用発電機についても、水が入らない場所に設置するように定めている。

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消防法体系(能美防災株式会社HPより)

こういったことは以前より専門書で注意喚起もなされているものである。

  • 『工場電気設備建設マニュアル』電気学会,1981年 P437-438
  • 『実務に役立つ非常電源設備の知識』2005年8月、P165

なお条例は法律・省令では無いが、ハードロー(法律、省令)と実質同格に機能しているソフトロー(条例、企業憲章等)の代表例である。

なお、実際の例として、中越沖地震の際、柏崎市が柏崎刈羽原発に停止命令を出した。この時は、変圧器火災を早期に鎮圧できず、所内の危険物管理に問題があるとされた。停止直後、安倍首相や甘利経済産業大臣が発電所を視察し、東電会長だった勝俣以下、当時の首脳陣もメディア対応に当たった。結局原子力安全保安院は消火栓の整備や化学消防車の配備を決定し、消火栓は福島事故で注水に使用された。15.7m評価が東電内で揉まれる、前年のことである。

従って、15.7m対策を取る方針に転換した状況下で運転を継続するには、これら設置場所の水密化(水密扉への交換、ケーブル貫通穴のシール等)を完了させるまで、運転を停止する必要があった。消防法施行規則を無視するという選択肢は絶対にありえない。

奈井江で得た知見は15.7m想定を知らされた技術者や規制側の態度をダメ押し的に硬化させる効果を持ったと考えられる。保安院やJNESの溢水勉強会関係者にとっても、上述の民間規格JEAG3605や東電変電部門の「水害対策設計基準」等(後述)は、規制上参考になり得ただろう。

火力原子力発電技術協会で取り上げられた以上、知見の入手は容易であったし、日立と東芝により建設・災害復旧された発電所のため、メーカー経由でのノウハウ入手も可能であった。

また、『東電労組史』各巻の記録によると原子力開発初期に火力部門から多数を転籍させていた。また『電気情報』1993年3月号の池上亮元東電副社長インタビューによると、福島第一は他の原発と技術交流する以前より、東電の鹿島火力発電所とも技術交流していた。こうした事情から、福島第一は少し古い火発に詳しい者が多かったのである。

要するに、15.7m想定を採用した場合、福島第一は津波対策を終わらせて再稼働していたか、停止したままかの二択しかなく、回避可能性は十分に成立する。

  • 対策が終わっていた場合:過酷事故は起こらない。
  • 津波対策工事未了で停止していた場合:①調達に期間を要さない車両類、緊急資機材程度は高台に保管となっていたと思われる。②また、核燃料は十分冷却されており、電源復旧の対処時間には日単位での余裕が生じる。③更に、炉内圧力は大気圧に近いため、注水が極めて容易である。よって過酷事故には至らない。

だから、東電や国は賠償責任を取らなければならない。東電は法廷で、運転を継続しながらの津波対策を2008年から始めても間に合わなかった、という前提で主張しているが、そういうやり方は想定津波が主要な建屋の敷地より低い場合のみ(福島第一では10m以下)許されることだったのである。

Yomiuri20120219 『読売新聞』2012年2月19日より(『福島第一原発事故・津波被害に関するサイト』管理人撮影のものを引用)。

読売新聞が作った比較図を見ると違いが良くわかる。福島第一に記載してある6.1mは東電の正式な想定だが、捨てられた15.7m評価は他サイトと異なり、建屋の敷地高より上なのである。女川や東海第二は敷地高より津波想定が下なので、原子炉建屋の水密化は法令上も、また物理的にも必須では無かったのだ。

【再稼働の安全審査にも影響】

二つ目は、再稼働原発の安全審査にて、水害(津波,高潮,洪水,溢水等)或いは雪害,塩害,果ては工事用車両やヘリ、ドローン等の接触によるケーブル接地からの波及事故にどう対応するのか、ということ。

私もメーカー資料や工認図面を読める立場にないので、公開資料の範疇での議論となるが、規制委員会も電事連も、そのような観点でHEAFを扱っていないようだ。

Fupc_heaf_kangaekata2_20170613 2.電源系統設計を踏まえたHEAF火災対策の考え方『HEAF火災規制化(新知見)に対する事業者の取組み状況および今後の対応について』電気事業連合会

上図を見ると、起動変圧器や予備変圧器の上にある遮断器(長方形の図記号)でのトラブルについて何も設計上の見解を示していない。資料を読んでいくと、外部電源を受電中に所内高圧回路が故障した場合や、外部電源を喪失した場合のHEAFは想定しているが、水害等により外部電源そのものが悪さをし、HEAFに波及する可能性は考慮していないように思われる。

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【参考7】規制側質問回答補足(D/G受電遮断器の追加または移設を行う場合の課題)『HEAF火災規制化(新知見)に対する事業者の取組み状況および今後の対応について』電気事業連合会

もっとも、東海第二のように、元々電気室が狭いと建設記録にまで書かれているプラントで、遮断器を収めた電源盤の増設が出来るのかは疑問だ。電事連が資料にここまではっきり書くということは、日本原電の対応に困惑している証拠。

しかし今後は水害による地絡リスクそのものを減らす対策も必要だろう。

電気技術者の中には、HEAFの事例を見て、自家用電気設備内のトラブルが、地域の配電線全体を停電に追い込む「波及事故」を思い起こされる方もいるだろう。波及事故でも高圧電源の短絡はありふれており、浸水による制御電源の喪失も報告されているからである。つまり、それだけノウハウの蓄積はあるということも言える。

以下の観点から課題のみ示す。

【シーケンス制御的アプローチ】

制御電源(直流電源)の設計を見直すこと。例えば『受変電設備をシーケンス制御する』(電気書院,1981年6月)「5.4 制御電源」には、制御電源は運用パターンを考慮し、範囲を区切って分割しているのだという。また、保護の観点より見た地絡、電源喪失時の検出技術(64Dと呼ばれる地絡検出継電器による監視など)も確立していた。

ただし、同書刊行直後に発災した奈井江の例を見ると、検出だけでは十分ではない。制御電源の分散配置などによる回復や、遠方監視ではなく現場での手動を含む操作について考慮が払われていないといけない。例えば、全てを一か所から給電するのではなく水密化された電気室にパッケージ化された直流電源盤を設けることも検討に値するだろう。

柏崎刈羽などは蓄電池を多重化しているようだが、直流地絡対策としてどういう考え方をしているのか、資料を読んでも文章では明記されていない。一方で正興C&Eの資料などを見ると、地絡保護技術も年々進歩はしているようである。

遮断器側の検討も必要だ。「シーケンス図読み方のポイント」『産業技術者のためのシーケンス制御ガイドブック』(電気書院,1974年)には、「電源喪失時の動作は安全側か」という段落があり、対象機器の特性をよく検討しておく旨が記載されている。なお、雑誌記事をまとめた同書には遮断器、断路器の制御も詳しく記載されており、主回路に通電したまま操作出来ない断路器の場合は、インターロックが充実しているという。遮断器の場合も、水害を想定して安全側の動作をするようにインターロックを追加することも考えられる。

電事連の資料では非常用ディーゼル発電機は運転継続のため保護をパスするなどの設計思想があると述べているが、外部電源の場合は現行の規制での位置付け上、そこまでの運転継続性は求められていないと思われる。そういう点でもインターロックによる水害影響阻止の思想は受け入れやすい。

なお、制御電源に低圧交流を採用したり、古い設備では圧縮空気を使用しているケースもあるが、設計目標に厳しい水災害を考慮すべきという点では同じである。

【建築設備的アプローチ】

これは、建屋の内外で分けて考えるべきだと思う。

現状特に注意が必要と思われるのは建屋の外部である。開閉所等の屋外機器に配線されているケーブルなどだ。収容しているトラフやダクトの水密化、耐水ケーブル化が達成されているか、改めて検証する必要がある。

何故なら、規制庁や電事連の資料を見ても、原因に老朽化や施工不良は挙げているが、水害(災害)への言及は無いからである。なお、奈井江火力は被災時に運転開始10年程しか経過しておらず、老朽化が原因ではなかった。

東電が編纂した『変電技術史』(1995年)第11章を読むと、幸いなことに1977年「水害対策設計基準」を制定し、建屋外部の防護策についても色々定めていた。Tepcohendengijutsup563

「第11章第1節 変電所の設計」『変電技術史』東京電力(1995年)P563

また、同書P564によると1989年以降、周辺環境の変化等を踏まえ毎年各変電所の対策をチェックするように定めた。こうした事実は東電や規制委員会等の公開資料で触れていないので、発電所構内の変電設備に展開出来ているか(部門別に蛸壺となっていないか)を確認すべきである。

一方、建屋内部は福島事故後水密化工事済みであり、水災害リスクは根本的に除去されつつあるが、接地(地絡)防止処置については注意が必要だろう。

建物を水密化するには二重の防護策が取られている。第一が建屋外部への出入り口の水密化。第二が、出入口を開放しっぱなしで被災する等、建屋の中に水が入ってきた時に、重要な電気設備が置かれている部屋への浸水を食い止めるための、各部屋への出入り口の水密化である。

つまり、建屋の出入り口から水が入ってきて、各部屋の防水扉が最後の盾となっている時に、浸水した通路等に布設されているケーブルが接地して、事故を貰わないようにするにはどうするか。これを考えなければならない。

HEAF対策は、さほど大きな金額を投じなくても実施出来、作業員の被ばくリスクも基本的には存在しない。破局噴火など人類の科学水準では不可能なレベルの災害とは性格を異にする。しかしきちんと対処しておかなければ、また、どうでもいいようなトラブルが発展して大事故に至る。逆に言えば、水害型HEAFのような低いハードルは、電力と規制関係者の倫理水準がどの程度なのかを推し量る一つの材料ともなるのである。

【参考文献・Webサイト】

19/1/22:炉内圧力、および地絡について柏崎刈羽・正興C&Eへの言及追加。

19/1/23:中越沖地震で柏崎刈羽が消防法に基づき停止命令を出された件を追加。

自分が標的になると立派な発言をする指原莉乃さん

松本人志については以前「差別吉本芸人への怒り」という記事を書いて批判したが、また、『ワイドナショー』にて打ち切り検討レベルの問題発言が発生した。

以前、メンバーによる教唆があったと被害者から告発されているNGT48暴行事件で、HKT48の指原莉乃が松本人志から受けた侮辱を公然と批判している。

30年以上前、破天荒な大御所芸人に「チンピラ」と本質を見抜かれていた松本に媚びへつらう。そんなことが如何に無意味かを、3万に達するRT数と17万の「いいね」が示している。

指原さん、立派である。何せ1週間前は同じ番組で彼女自身が移民の仕草を差別していたからである。

バカリズム、指原莉乃が外国人労働者問題で差別丸出し! 外国人の接客を嘲笑し“日本語がちゃんと喋れる人を”論(リテラ)

女性は人数比で社会の大体半分を占めるが、「移民」は1~2%しかいないからね。目の付け所が流石です。私など外国人店員にそんなことしようなんて思いもつかなかった。

人間、自分は博愛だと思ってる者でも(多少の)差別感覚はあるもので、秋元康に対して「半世紀前なら女衒ですよね」と嬉しそうにインタビューしたキングスマンな外国のテレビ局(48系グループに対する認識が松本と同じ)やme too運動に便乗してる野良犬にもその片鱗は観察できる。だが、こうも短期間での急変を見せつけられると、悪いが率直には応援できませんね。同じ思いをして間違いに気づいた例として、最近では小説家の王谷晶とか、ネオナチを辞めたドイツ女性のインタビューなどがあるが、そういう内省が皆無。

下記は高須クリニック医院長に対するものだが、一脈通じるので紹介する。

そもそも、『ワイドナショー』などという、地上波でも突き抜けて下劣なコンセプトの番組にかかわって社会問題に首突っ込むから脳天にアホ毛のごとくブーメランが突き刺さるんじゃないの。俺みたいにアイドル関心無しで議論してる人一杯いる世界ですよ。松本の発言は事実無根の誹謗中傷だしレイア姫やってた人みたいに自分でネタにして遊ぶことがしなやかな生き方とも思わないが、指原さんとアイドル応援団は「ニーメラーの警句」を学んで、長い物に迎合した発言が多い自らのおかしさに気づいてほしい。

2018年12月30日 (日)

「その筋の権威な広河さん」を知らなくても社会運動は出来る

フォトジャーナリストの広河隆一がDAYSJAPAN編集部に出入りしていた女性達に性的暴行を働いたというスクープが週刊文春から出た。

反反原発は勢いづき、リベラル左翼陣営でも多くは広河を批判している。ともかく今のところ、被害者叩きの流れになっていないのはまだしもである。

そういえば、旧DaysJapanの版元だった講談社の漫画にこんなセリフがあった。

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藤島康介『逮捕しちゃうぞ』(講談社)2巻より

日頃から歴史修正の常習犯に事実を突きつけてきた論客、外教氏の指摘は的確だ。

しかし、Twitterを観察していた所、極一部に、党派性を剥き出しにして被害者そっちのけで反反原発の広河批判の揚げ足を取ろうとしている者がいた。著名な論客ではないので具体的な引用はしないが、止めておいた方が無難だろう。この件に関して一義に悪いのは広河、次に(権威主義的な)黙認者達だからである。

また、反反原発な人達や一部カメラマンによると、知らぬ存ぜぬを貫こうとしている人がいたようだ。

確かに、Twitterで言えば、社虫太郎氏のように四六時中ネトウヨの性規範を馬鹿にしてきた人にはばつの悪そうな話ではある。私もオタクを輩出してきた理工系出身だが、ネトウヨでも、性的なことに興味が無い、又は二次元ゲームの消費等に留まっている者は、ああいう物言いは言いがかりと取る。だから、暴行魔がリベラルから出ると容赦ない批判に繋がるのである。

一方で、自分のことを考えてみたが、右にも左にも彼のことを運動の司令塔であるかのように権威として評価してきた人達がいるようだが、「広河隆一って誰?知らんわ」という感じだったので、「知らぬ存ぜぬ」だったのは私だということになる。

そう、私は広河隆一の本を読んだことが無い。DAYSJAPANも買ったことが無い。

勿論情報を求めて本屋や図書館には通っている。だから、広河の著作は原発関係や国際紛争の棚で背表紙を見てはいたものの、後述の理由からノーマークだった。

ここで言いたいのは血統の良さを自慢する類の行為ではない。広河の影響など受けなくても、というか広河に限らず、その筋の権威をいちいち持ち出さなくても、社会運動も研究も出来るということだ。

311前に私が居た推進陣営でも似たような違和感を感じることはあった。あちらはあちらで特定の「先生」を祀り上げる信者達がいた。東電のへぼ担当だけがやっていた訳ではないのである。しかし、原発の構造を学ぶのに、その先生とやらの名前を印籠のように持ち出すことが必要だろうか?この違和感が後に専門家不信につながっていった。

原発の問題一つとっても、個別具体的な課題となると相応の勉強も必要だ。1人でカバーできる権威などいない。Twitterでは原発関係の問題なら何でも流暢に語っている人が多くいるが、ウォッチ歴が長いからそう出来ているか、ニュースを次々論評しているかが大半だ。自分で調べ物や取材をしながら「広汎に渡って」語ると言うのは、普通は出来ないことである。

ある原発関係の懇親会で、Twitterで人権・情報公開について立派なことを述べている著名な方が居た。私は当時、偶々その人が過去に手掛けた案件に近い問題を扱っていたので話を振ってみたが「ふーん。」で終わり。けんもほろろな対応を取られたことがある。まぁ、無名だからしょうがないけどね、と納得した物だった。Twilogで言行を確認したところ、広河やパフォーマンスに秀でた著名人達を持ち上げ続けた末、スクープ後に態度を急変させていた。正直自業自得ではないかと思う。

私の場合、広河に関心を持たなかったのは、彼がやっていることがこのブログで問題提起してきた領域と殆ど被っていないことにある。事故前の津波の問題や、再稼動の問題で、広河の言が役に立つ場面は殆ど無いと思われる。

もう一つ、このブログを書くにあたって、只の報道のコピーは避けていることもある。例えば被曝。私は個人としては20mSv帰還反対論に立ち、菊地誠等の言行には批判的だが、そのジャンルでの独自研究はしていないし、裏取りにリソースを要する分野なので、特に新規性の強い記事は書いていない。プラントの安全性の問題についても本業は原発設計者ではないので、格納容器内部の問題は、教科書的知識と対抗専門家の主張を確認・紹介するにとどめている。

更に辛辣なことを言うと、広河の主張自体も、誰かの拝借・後追いがかなりあると反原発側の一部には見なされていたように思われる。例えば、ある著名なジャーナリストの過去のネット書き込みを確認してみたが、広河への言及はゼロ。また、元プラント技術者で原子力市民委員会の筒井哲郎氏は、Amazonで公害、原発関係書を膨大な量レビューしており、中には広河と被る、福島やチェルノブイリの住民避難の問題や被曝の問題に触れた作品も多い。しかし、広河の著作のレビューは全く見つからない。過去に目にした記憶も無い。

広河は7人も被害者を出し、証言から常習性が高い。反被曝についても言行不一致の様だ。となると、70年代のイスラエルのキブツ時代から全部検証しなければいけないとすら思う。

おしどりマコ氏などの追記を読むと、仕事上の付き合いがある女性全般に声掛けしていたようだ。資生堂が『ダルちゃん』というマンガを自社ページに掲載していたが、その時の違和感に近い。何で、仕事上の付き合いしかない相手といちいち性的関係を持たねばならないのだろうか。職場恋愛を否定するものではないが、今回はそれですらなく、意味が分からない。

そして、未だに分かって無い者が左右に散見されるが、性犯罪は党派を選ばない。

縁起でもないツイートだが、広河と違って、普段よく参考にしている方がそういったトラブルを起こした場合のことは、一種の予防的思考として考えたことはある。上記の添田氏が当事者となったケースを想定すると、得意分野は情報開示なので、開示された文書自体は躊躇なく利用し続けるだろう。ただし、コメントを無批判に引用し続けるかと言えば、当然一言断るだろうし、代替性のある一般的コメントの場合は引用はしなくなるだろうね。

今回は、その筋の権威を知らなくても、元来それぞれが持っているカラーを維持したまま運動は出来ることを述べた。勿論、既に誰かが言っていることを自分が最初に思いついたように装って書いたり、無勉上等路線を奨励している訳ではないことは付け加えておく。

2018年11月27日 (火)

【TrinityNYCさん】出典明記しない奴が悪いというだけの話【要出典】

百田尚樹の『日本国紀』で引用元を明記しないコピペが相次いでいると指摘されている問題について、方々から突っ込みが入れられている。

編集者がストップをかけるよりはマシであろうよ。ネトウヨ(特に中高年)は期待するだけ無駄だし。

そう思っていたら、次のように話を続ける人がおり、違和感を感じた。

ああ、TrinityNYCこと通称鳥姉さんの自分棚上げ適当日本人論か(めいろまに似てきましたね)。

何故違和感を感じたかといえば、20数年前中学校で何かの作文を書いていた時、教師から引用とは何かを教えられたからである。

そう思って調べてみたら、今は学習指導要領に書かれているようだ。10年近く前に、文科省に設けられた「教育の情報化に関する手引」作成検討会で当時の指導要領が紹介されている。

1.小学校における各教科での情報活用能力の指導

<国語>

 国語科の目標は,「国語を適切に表現し正確に理解する能力を育成し,伝え合う力を高めるとともに,思考力や想像力及び言語感覚を養い,国語に対する関心を深め国語を尊重する態度を育てること」に置かれている。各学年において「A話すこと・聞くこと」,「B書くこと」,「C読むこと」を通じて情報を得たり,知識や情報を関連づけていくこと位置づけられている。国語科では,言語を中心に取り組まれるが,小学校第3,4学年の読むことでは,実際に引用や要約をする際に,文章の表現や情報だけに限らず,図表やグラフ,絵や写真なども含むことに留意し,引用する部分をかぎ(「」)でくくり,出典を明示することや,引用部分が適切な量になることなどについても指導することが求められる。このことは,著作権を尊重し保護することになる。」とされ,言語以外の情報も読み取ることが求められ,情報モラルの指導に関わる内容もとりあげられている。

教育の情報化に関する手引」作成検討会(第4回) 配付資料 2009年1月29日(文部科学省)

下記の資料を見ると、学年ごとに教える内容が深度化しているので、何度も機会は与えられているのだろう。学校によっては多忙を理由に教えて貰えないかも知れないけどね。

資料1(新学習指導要領における著作権に関する指導事項の整理

要するにあれですよ。大半の人間は学校で習ったことなんて、全部覚えちゃいない。私だって中学での話は偶々覚えていただけ。その一方で、人のミスは気になると。百田の場合は1個2個間違えたのレベルでは無いので、普通なら回収レベルのワースト例とは思うが、根本的にはそれだけの話です。

ついでに言えば、「引用の際は出典を明記すること」程度のガイドはFラン大でも載せており、「引用の仕方」などで検索すれば山のように出てくる。従って、少なくともこの点を理由に海外に留学する意味は無い。むしろ、陰険な学歴ブランド自慢の類と思われて嫌われるのがオチ。

まぁ、時と場合によっては今のように根拠のない噂で世相が乱れることもあるから、問題は問題ですがね。TrinityNYCさんみたいのはあまり有効な論法とは思えんです。

百田に突っ込みを入れてるアカウントを見てても、通称松田すんすけさんなど、自身が歴史認識で批判されている人がいる。そんな脛傷者混じりとは言え、百田とその本に群がるバカ共に対してはまず国内勢から突っ込みが入っているのに、この人は今更何を言ってるのだろうかという感じです。

まぁ元々、リベラルとか意識高い系も光があれば影の部分もあり、こういう所はあまり信用していないのだけどね。学歴や居住地、場合によっては職業経験をブランドと勘違いして頭使わず棍棒で殴ってるだけの人も多いから(頭が悪そうに見えるから辞めた方がいいのに)。めいろまこと谷口真由美氏を見ていれば分かるように、段々暴走して「ああ、単なるネトウヨの類友ですか」みたいになってしまう者も良く見かける。また、殴られたネトウヨの中でも地頭のいい奴は、その辺の機微に感付いて付け込んでいるのは興味深い。

TrinityNYCさんがネトウヨになるとは思えないし、ニュースを紹介してくれるのはありがたくもあるが、ブースカちゃんと同じで口の軽さは思想信条では無く性格の問題だから、反面教師にしか見えんのよね。

2018年11月10日 (土)

【おしどりマコ氏に加え】東電下請あさくら氏が晒したマンスプレイニング【あの妹まで】

あさくらめひかり氏(Twitterアカウント@arthurclaris氏、以下あさくら氏)は何故ネット上でPA(パブリックアクセプタンス、要は宣伝)に励むのだろうか。

Arthurclaris_1059097150036959232 ツイートURL:https://twitter.com/arthurclaris/status/1059097150036959232

冒頭で上記のようなツイートを固定する程の熱の入れようである。東電のかなり上位(一次位)の下請で働いているようだが、これほどの態度は関係者でもあまり一般的ではない。

【デマバスターとしてはセコい】

最近は2018年9月に立憲民主党から出馬を表明したおしどりマコ氏とその擁護者に反応して、日々上から目線でバトルを繰り広げている。

冒頭画像はその一例だが、下記のようなことも書いてる。

これらの反論ツイート、元を辿れば私のブログ記事「福島第一排気筒問題で一部作業員、偽科学関係者が振りまいた安全神話」という、おしどり氏の問題提起をフォローする目的で書いた記事にリンクしている。つまり、私のブログを確実に認知した筈なのに攻撃してこないのは、以前、私に社内資料自慢を晒されて恥ずかしいと思ってるとか、碌でもない理由なのだろう。

後、私のサイトも「放射線脆化で排気筒倒壊」とは書いてないのだが、ブログを紹介してくれる方やbotには多少言葉が拙くても感謝してるので、あさくら氏のやってることはその意味でも迷惑。

なお、「放射線劣化」と「マコ」を外して書き直したツイートには執筆時点で直の返信は無し。

妹様には感謝申し上げます。

【あのへぼ担当すら二の足を踏む筋悪な東電擁護】

論争から2年半経過したが、私の評価は基本的に変わらず、東電信者を信用していない。一例としては、あさくら氏は東電の目視検査を盲信し、何の懸念も表明しなかったが、1年後、東京新聞が新たな破断個所を報道した件について、沈黙していることがある。

正確には、この件以外を材料に非難ツイートするようになった。その前に礼の一つも述べたらどうか。

その後東電は、目視検査にドローンを投入し、破断個所が増えても耐震性は変わらないとの主張にシフトしたが、これも当てにならないと見るべきだろう。

何故なら、ドローンを使用したところで目視検査には限界があるからである。

煙突のエンジニアリング企業であるツカサテックのウェブサイトを改めて見てみる。

【鋼板製煙突】リンク

検査のランクはA~C型の3コースに分かれており、診断結果に確実性が持てるのは、厚さ計など各種検査機器を使用するC型だけとなっている。

【鉄塔支持型煙突】リンク

簡単な一次点検、詳細な二次点検に分かれ、一次点検では板厚は梯子、プラットホームを使用して、超音波板厚計により計測し、煙突内部のライニングも撮影する。一次点検で異常が見つかった場合は二次点検を実施。ゴンドラに人を乗せて板厚計、レンチ等の治具を用いる、となっている。

しかし、福島第一の排気筒は下部を中心に高線量部があるため、こういった検査は不可能だ。

原発の地震想定、基準地震動についての説明も同様で、「倒壊の危険があるから解体」と書いていないのも当然である。上記の事情を汲んだ霞が関文学と同種の、当たりさわりない表現に過ぎない。

強い言葉で否定して後から言い訳。これである。

なお、実は、一連の論争にて、お仲間から師匠格と目されているへぼ担当(アイコンはこちら)は、あさくら氏の主張を全く紹介していないし、自ら排気筒の件で弁明もしていない。

へぼ担当は腐っても技術者である。当然だろう。それだけあさくら氏の主張は筋が悪いのだ。

【排気筒問題は誰が議論してきたのか】

そんなことよりあさくら氏と排気筒の経緯を見ていて気付いたことがある。それは、相手が女性だとより攻撃的になるということ。いわゆる、マンスプレイニングである。

マンスプレイニングという単語は原子力や理工系で使用される語では無い。Wikipediaの説明をそのまま引くと、男を意味する「man」(マン)と解説を意味する「explain」(エクスプレイン)をかけ合わせたかばん語。一般的には「男性が、女性を見下ろすあるいは偉そうな感じで何かを解説すること」という意味である。

実は、排気筒の問題が議論されるようになったのは、おしどり氏の東洋経済記事が切っ掛けではない。以前から他の人達によって問題提起されていたことである。

著名な原発産業関係者・(元)技術者が排気筒問題に何時から参戦したのかを追ってみよう。

【2013年】

東電発表時に、ハッピー氏がこの問題に言及したのが嚆矢だろう。

そこにオノデキタこと小野俊一氏(元東電原子力部門技術社員)が続いた。

当時、ハッピー氏は福島第一で働く最も有名な原発作業員であり、小野氏もネット上では多くの耳目を集める存在だったから、あさくら氏が知らない筈はないのだが、彼が直接言及したツイートを発見することは出来なかった。(小野氏のツイートは拙いが、職歴等から判断すれば、セシウムのため人によるメンテが不可能という趣旨だと考える。)

【2014年】

化学プラント設計者の集まりである「プラント技術者の会」にて筒井哲郎氏がこの問題に対する技術提案を公開した。

IRID技術提案その1 1&2号機スタック転倒防止

筒井氏はTwitter上での知名度は低いかもしれないが、プラント技術者として半世紀にわたる経験を持っているばかりでなく、大変な勉強家でもあったため、311後の脱原子力運動で、技術問題を提起する中心人物の一人として活躍されている方である。

別に論争を煽るつもりは無いが、原発推進派の技術者にとって、反対派の技術者の方が論敵としての重要性は高いと考えるのが普通の相場観だと思う。しかし、この時もまた、あさくら氏は何ら言及も反論もしなかった。

なお、現在は東電がロボットとクレーンを用いた解体計画を策定したので、誰でも手軽にその内容を読み上げることができるが、当時、そのような便利な『台本』はPA師に与えられていなかった。

【2015年】

赤旗がこの問題を取り上げた。

福島第1原発 排気筒 耐用基準超えか専門家 腐食進み「危険な状態」倒壊なら放射性物質飛散も」『しんぶん赤旗』2015年2月20日(金)

この記事は直接は技術者の手になる訳ではないが、一般論として、日本共産党の情報収集力に一定の評価が与えられることも多いため、取り上げる。

上記のように、あさくら氏は赤旗を購読する家庭に育ち、現在も投票先は共産党と称している。後者は疑問だが、前者は人格形成上「親の思想に反発するというパターン」に合致するため、信頼性は高いと考える。そういう人は、赤旗電子版などの記事に目を通すものだ。

しかし、この時も彼は赤旗の排気筒記事に批判は加えなかった。

2018年11月に入ってからの言い訳。ブロックなどTwitter外から見ればどうということもない。何より、赤旗は政党機関紙ですがね。

【2016年】

おしどり氏が採り上げるとあさくら氏等は大騒ぎを始め、何かにつけて粘着するようになった。数が多いのでまとめのみ紹介する。

イチエフ排気筒の話 - Togetter

いや、2年半後の次のツイートだけは取り上げる。

支離滅裂。「悪くはなかった」なら今までの「おしどり氏に対する」誹謗は何だったんだろうね。

なお、東洋経済の記事を読むと、おしどり氏は広瀬隆氏からこの話を振られているのだが、解説をフォローした広瀬氏への批判はほぼ皆無だったことも付け加えておく。かつては社会現象までなった人物で、311後も活動されている方なのに。

また、Twitter上ではコロラド先生こと、工学博士で40年来の原子力業界ウォッチャーである牧田寛氏も参戦したが、あさくら氏は牧田氏にはあまり関心を示さず、おしどり氏への粘着を継続した。

おしどり氏への粘着の仕方も独特であった。彼女は複数の現場関係者の情報提供を受けていることは度々公言しており、それ故に公安も関心を示した。また、竜田一人を含めて、原発ライターや作業員の手記を見ても、東電の方針に反発する者の存在は何度も示されているが、あさくら氏はそうした支援者達には目もくれず、おしどり氏に異様な熱意を見せた。

なお2016年から2018年8月末まで2年半続いたバッシングは、全て彼女の政界進出宣言の前の出来事である。

この間、上杉隆が都知事選(2016年7月31日開票)に立候補したが、あさくら氏は上杉批判には、おしどり氏に対する程の労力を投じていないようだ。上杉氏に対する批判は立候補を表明する以前のツイートが目に付く(なお、私は上杉氏の活動には疑問を多く感じることを付け加えておく)。

「政治の場に上げるべきではない」は、後付の理由に過ぎなかった、という事も明白だろう。

【2018年】

11月、ネトウヨ兄のデマを正す妹bot (@demauyo_tadaimo) というTwitterアカウントがこの問題をテンプレート化して発信すると、真っ先に反応した。現在は、冒頭で紹介したように彼女への反論をツイートトップに固定している。なお、言うまでも無い事だが、ネトウヨ兄のデマを正す妹とはbotなのであり、作者が女性とは断定できない、筈である。にも拘らず反応した、という点に注目したい。

なお、原発問題全般において、彼が自発的に長期間攻撃している対象は、「反〇〇」(〇〇時事問題で変わる)といった大きな括りを除くと、あさくら氏に直接批判している人を除いて、余り数は多くない。

これを、マンスプレイニングと言わずして何と言うのだろう。

まとめると、あさくら氏はハッピー、小野俊一、筒井哲郎、牧田寛の各氏(それと私)のような男性技術者や原発作業員、赤旗の様な性別を感じさせないメディアの批判はスルーするが、おしどり氏や女性を模したbotには、技術者でなくても強い関心を示す人物である、ということだ。むしろ、技術者というハードルが無い相手だからこそ、お得意の東電エンブレムチューンで威圧出来ると考えたのだろう。

でも本物のエンブレムチューンがそうだったように、そういう態度はダサいよね。

【黙って廃炉作業してれば由】

以上が、この2年半で付け加わったあさくら氏の失敗だが、彼は最近、言動の横柄さで反感を買い、nagaya2013氏他数名のTwitterアカウントから猛烈な反撃を受ける結果となった。確かに馬鹿な奴だと思うが、東電の中枢や稼動中の原発で重要な職務に就いてる訳でもないので、私は勤務先や実名暴きまでしようとは思わない。なお、私は毎日新聞日野記者による復興庁参事官暴言ツイート暴露事件は、全面的に支持している。

ただ、あさくら氏が今後も突っ走り続けるのであれば、新たな攻撃者を呼び寄せることになり、以下のへぼ担当が辿ったものと全く同じ道を歩むだろうと警告しておく。

その時、東電は貴方を守るのだろうか。

18/12/7:牧田氏の指摘を反映し「30年」を「40年」とした(ちなみに、私自身は浜岡と電気の史料館、三菱重工みなとみらい技術館、港湾技研の津波実験見学、国会図書館初入館、電験初受験がいずれも2005年から2006年で、それ以前はウォッチと言える程のことは何もしていないからまだ13年である)。

2018年9月26日 (水)

【竜田一人】東電が決めたフクイチという愛称を穢れと罵る推進派【井上リサ】

最近福島第一原発の呼び方に関して、おかしな発言をみかけた。

「イチエフ」だってカタカナでは?

調べてみると前からそんなことを言っている。

井上リサさんは私設原発応援団として各地の原発周辺の小旅行を企画運営されているプロのPA師。今アカウント名を「— 井上リサ☆10.6柏崎刈羽紀行」にしてるみたいだけど、どうせならへぼ担当に事の顛末聞いてみたらどうだろうか?彼の最初の配属先は福島第二で、時期からすれば、後で紹介する小野俊一氏とは違い、リアルタイムに見聞していた筈なのでね。

こういった発言で思い当たる人物と言えば、竜田一人。代表作『イチエフ』の冒頭シーンのセリフ「1Fをフクイチなんて言う奴はまずまずここにはいない」である。まぁ後述のようにただのでまかせなのだが。

彼のツイートを読み進めていくと、フクイチという言葉が偉く気に食わないらしい。

彼等の様な怒れるPA屋(パブリックアクセプタンス、要は宣伝屋)達ばかりでなく、現役・元関係者にも変な固定観念が蔓延している。

・今日は俺たちの職場、"1F"に皆様をご案内しよう
・1Fは「いちえふ」と読む
・現場の人間 地元住民 皆がそう呼ぶ 1Fをフクイチなんて言う奴はまずまずここにはいない

 まさしくこのとおり。以前「フクイチ最高幹部の独白」と言った書物が出ましたが、現場の人間が自分たちのことを「フクイチ」と言うはずがないのです。一体なぜ、このような題名にしたのか(書かれている内容をよめば、確かに現場取材したことはわかりますが)私には理解できません。「いちえふ」「にえふ」と呼ぶのが、東電・地元の習わしです。この単語を間違って使っている人間は、100%現場の経験がないと断言してよろしい。

小野俊一「モーニング掲載「いちえふ」-元原発技術者としての目から」『院長の独り言』2013年10月22日

だそうである。

東京人が使うんだそうだ。

ところが、(残念ながら?)彼等の主張は誤りである。特に井上さん、「穢れ」とか安易に使うような話じゃない。

何故なら、「フクイチ」とは東電が1990年代から2000年代にかけて、地元向けPRで盛んに使用していた愛称だからである。

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論より証拠と言う感じでしょ。そのまんまのタイトルな広報誌があった。本店の社報ではここまで強調していないから、東京の言葉とは言いかねる。

次の画像も興味深い。

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『共進と共生 福島第一原子力発電所45年のあゆみ』P29

このように、地元住民への広報誌の他、1997年以降、毎年10月には発電所で『ふくいちふれあい感謝デー』なるお祭りもやっていた。ずっと住んでいる古株なら知っていると思うのだが、彼等は何をしていたのだろうか。

 

1993年には本店勤務となった小野俊一氏が1996年5月に初開催された『ふくいちふれあい感謝デー』を知らないのは無理もないことだ。

しかし、@mikunyoさんの場合は悪いが、ご尊父様の話をちゃんと聞いてたの?と言いたい。何せ、次の『政経東北』PR記事の最後の段を読むと、毎年4000人も来いてたそうだ。かなりの地元民が知っていることになる。

Seikeitouhoku199905

『政経東北』1999年5月号

ちなみに2001年には物揚場で「ふくいちふれあいフィッシング」も開催している。参加者は以前ブログで採り上げた剥き出し海水ポンプを背にして悠々と釣りを楽しんだに違いない。

これは、浜通りの方らしさを感じるコメントですね。

どうしてこの方の印象に残らなかったのかということについては、発信する側の問題もあったと思う。上記のイベントは2002年に東電が例のトラブル隠しの不祥事を起こして社長引責辞任、全プラントが検査で停止したのをきっかけに何年か自粛された。他に2001年に911テロもあったが、その年の10月13日にはふれあい感謝デーを開催しており、警備強化は最大の理由とは思われない。ふれあい感謝デーは2007年10月に再開された。

なお、2010年には「ふくにファミリーデイ」なる職場参観も存在した。

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「ワーク・ライフ・バランス」を考えるきっかけづくり”家族の職場参観”『電気情報』2010年4月

今思い返せば、中越沖地震対応とバックチェックで東電全体としては多忙だったと思われる時期に、よく開けたとある意味感心する。また、「ふくにファミリーデイ」が企画されたのは311後賠償問題で矢面に立ち、女性問題で辞任した石崎芳行氏が所長だった時だ。元々優秀なPAを打てる人物として、ある意味評価もしていたが、職場参観などを見ていても、ネットでのリンチを伴った恫喝的なPAよりは健全で好感も持てる。

どちらの呼び方も正当性がある以上、何を選ぶかは好みの問題。職場としていた方には「イチエフ」が愛着があるのは分かる。

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ただ、自業自得で親しみを込めた「ふくいち」(「ふくに」)のPRがしぼみ、311でトドメを刺された一方、業務でしか使わない「イチエフ」(「ニエフ」)という無味乾燥な言葉だけが生き残ったとは言える。これはある意味、地域社会との関係を表象している。311以来、原発周辺は文字通り仕事関係の人ばかりで、暢気に祭りなど出来る風景は無い。

「フクイチ」批判者にはそれが見えていない。見えていないばかりでなく悪意の無い関係者・元関係者まで地域の記憶を改ざんしかかっているのは、とても興味深い現象だと思う。

私は、発電所の呼称に拘って現場感を演出しても仕方がないと思っている。そもそも、「イチエフ」という呼び方も、1974年以降に生まれたものである。何故なら、その年まで福島には原子力発電所は1ヶ所しかなく、今の福島第一原子力発電所は単に「福島原子力発電所」と呼ばれていたから。古い文献ではその名前で載ってるから、CINIIで試してみるといい。

それが福島第二の建設準備が本格化し、建設事務所を開くことになって第一、第二という名称に変更されたのである。以前の略号は、号機単位では「NF-1」(福島1号機)、「NF-2」(同2号機)という塩梅だった。1号機を建設していた頃まで戻ると原子炉建屋を指して「TEPCO-1」などとも呼ばれていた。地元紙が「大熊原発」と名付けてみたこともある。まぁ、どれも定着はしなかったが、人に歴史ありならぬ、原発に歴史ありである。

コロラド先生こと牧田寛氏が言及していた「原子力村」の件と言い、どうしてPA屋は自分等の業界で発明した単語を憎悪するのか。リニアに邁進する葛西敬之氏ですら、「国電と言う言葉を使う人の話は信用しません」なんて言ってるのを見たことが無い。

それにしても、たかだか言葉1つに思い込みで憎悪をたぎらせてる井上リサと竜田一人には「バーカw」と言っておきたい。特に竜田氏。代表作のマンガで最初のコマから間違えちゃって赤っ恥ですなぁ。今更直しようもないと思うけど。

2018年8月19日 (日)

古本屋は専門司書でも研究者でもない訳だが

高知県立大学が図書館改築に当たり、38000冊の蔵書を焼却処分していた問題。読書家や研究者の間では深刻な問題と認識されている。

住友氏の感想がごく普通だと思う。だが、次のような古書店主の意見が流れている。

高知県立大学蔵書の処分は適切だったのではないか(note,閻魔堂)

私は古書店を長く利用し、発見した灰色文献の一部は公的な図書館に寄贈もしてきた者だが、上記のnoteには色々と違和感を感じた。社会における役割の違いといった、重要な指摘は既になされているが、それ以外の問題点も挙げながら、今回の事件について少しばかり論じてみたい。

【某古書店主の問題点1 団体史への決定的無理解】

「高知短大の20年史」「高知短大の30年史」学校史などももちろん大事な資料となりえますがですが、インターネットで沿革が閲覧できる昨今その手の需要はかなり薄くなっています。

戦前の学校史などであれば資料性が高いと言えますが…(高知短期大学は1953年に設置)

(中略)勿論リスト外のものもあるでしょうが
ちゃんと考えて整理されてるように思われます。ダブった本からを処分、優先順もって分かった人によって残されてますよね?

これは既に複数の突っ込みが入っているが、書き手自身が「ちゃんと考えていない」証拠だろう。HPに載っている程度の沿革と団体史としての校史は情報の総量に格段の違いがある。

また、第一報の高知新聞報道によれば、複本が無く完全に失われたものが8000冊あり、古書店主が指摘するような代替性は持ちえない。仮に別の図書館で所蔵していても、県内(出来れば高知市内)でなければ、利便性は大幅に低下する。

【某古書店主の問題点2 ネット公開資料は消滅リスクが高い】

「平和の礎」は総務省がPDFで全文公開していますね。

数年前から原子力規制庁で問題となっているように、官庁も都合が悪くなれば公開資料を非公開にしたりする。また、組織替えやサイト刷新の際に引き継ぎが上手くいかない事例も多い。民間企業やNPOが公開している場合は運営資金が枯渇すればENDである。こういった理由から近年でも、「公開から数年で閲覧不能になっている公的なリンク」が半分近くに達するといった報道もあった。

そのために国会図書館がWARPというネット上の公開資料保存事業を行っているが、網羅性は完全ではない。

【某古書店主の問題点3 研究者とは価値判断の基準も違う】

紙を処分するとなるとリサイクルでちり紙やダンボールにするか焼却くらいしかないでしょう。

この言葉には別の側面がある。

研究者との違いだが、そもそも、老舗であっても別に深い学問的知見が必要な商売ではない。中には、「ウチはね、19世紀の××学について現代の視点で議論したいような研究者を相手にしてるのですよ」などと言っている場合もあり、その見識には敬意を払う。

だが、古書店主は専門司書ではない。信州自由古書園のようにツイッターアカウントで得意分野の知見をPR出来る例は少数派と思っている。

私は、ここ数年原子力関係の技術史や重電関係を調査対象にしている。このジャンルで、理工系の古書を買い求める層は実務系の技術者が多いと思われ、技術史という点で関与する人がとても少ない。相談しても大抵は核の危険性を訴える総花的な本を示されるのが精々だ。実際に必要なのは高度成長期に到達した土木技術や電気設備工事の水準を推し量れるような文献である。そういう事情はあると思うが、新しい視点を得るのに効果的な灰色文献の調査で、古書店の知見はあまり役に立たなかった。

後、長く扱っている場合でも、買い付けの際、店主がCINIIで稀少性を確認するのはよくあること。そして、多数の大学で所蔵していると価格は落ちる。そういう意味では、古書店業界にとって適度に稀少な方が、価格を釣り上げ易いということはあるだろう。

ただ、複本の問題は、件の古書店の主張で説得力「も」あると感じた。根本に図書館を「半沢直樹シリーズの最新刊を只で読める場所」として多量の複本を購入させようとする(特に貧困でもない)層がいる。そういう連中は何故か「過去の話なんかどうでもいい」「都合の悪い話は亡くなってほしい」と臆面も無く口にする層ともある程度被っている。

そういう連中に文献調査について語っても無駄だし、図書館での調査を元にして生み出された知見が巡り巡って社会の安定と発展に繋がったとしても、フリーライドしてくるだけだ。流行っているから複本購入という弊害が高知県立大学であったかは知らないが、あれば是正しなければならない。

以下、閻魔堂以外の件で気になった点を取り上げる。

【視点1 国会図書館が持ってないことは結構ある】

この事件が発覚する数日前、太平洋学会という学術団体が刊行していた学会誌を国会図書館が全部そろえていない、という話があった。昼寝猫氏が示しているのは国会図書館のデジタルアーカイブである。学術誌はスキャンデータを館外公開しているが、この例のように所有していないので読めない号もある。

※訂正。本件は次のURLからその二が読めることに気づいた(CINII国会図書館デジタルアーカイブ)。まぁ定期刊行物でも欠号があれば読めない場合もあるということで(笑)。

【視点2 国会図書館は定期刊行物の新規寄贈を拒否する】

太平洋学会誌の場合は既に国会図書館が所有していることもあり、欠号でも寄贈があればいずれは問題も解消されるだろう。私もある業界団体の技報で欠号になっていたものを寄贈した経験がある。

しかし、定期刊行物の場合、国会図書館は発行元以外からの新規寄贈を拒否している。当ブログで挙げた文献で言えば、『日本原子力発電社報』を国会図書館は所蔵していないし、一般からの寄贈も不可能な状態。そのため、「読者が少なくても国会図書館が保有すればいいだろう」という思い込みで大学図書館が安易に焼却すると、読めなくなる定期刊行物が出てくる。

【視点3 倉庫を利用する古書店、焼却する高知県立大】

実は、店舗型の営業を取り止めてネット販売に特化している古書店もある。そこまでいかなくても、好事家、研究者を相手にし、メルマガ等で客層へのPRを欠かさないような古書店は、倉庫を導入している例が多いのではないか。

なお、複数出品されている古書であってもそれなりの値段が付けられていることが多いのは、店主の心理として、文献の保管管理コストを価格に上乗せしているからである。これは都内のさる老舗古書店から直接聞かされた話であり、その人のように、文化の維持にそれなりの矜持を持っている店主もいることはいる。

【視点4 自社の図書室も知らない元ゼネコン社員】

その元ゼネコン社員は無能だろう。何故なら、ゼネコンを含む旧来型の大企業は社内に図書室を設けて膨大なノウハウ蓄積の一助にしてきたからである。そして、そのこと自体は全く正しい。『情報の科学と技術』や『情報管理』といった図書・技術情報データベース系学術誌の主投稿者は企業だった。企業内学校が盛んだった20世紀後半、工場併設の場合などは「学生」の社員も利用したのではないだろうか。 外部に対して閉鎖された空間とは言え、社員達は図書室のメリットを享受してきた。「潰してやる」などとうそぶく人物は、一般の図書館を使わない層なのは大体鉄板だろうが、出身元企業に図書室があることも勿論知らなかったのだろう。

昔なら司馬遼太郎、今ネトウヨ本に血道挙げる「経営者」が「企業のDNA」などと放言してても、自社の情報資産にすら気配り出来ないような者は何処に行っても組織の資源を食いつぶすだけのフリーライダーと言って良い。

【視点5 ネット販売が常態化する古書店】

50代のヘビーユーザーで、私と同じように本業の傍ら実質的データマンをやっている方から「良書は東京の古書店が買い付ける」などと揶揄の声も聞いたことがある。だが、古書店に通い始めて数年でネット時代に移行した私の場合、余り地域偏在性の問題は気にしたことが無い。ウェブ上で在庫検索出来るようになったメリットはとても大きいからだ。まぁ、価格が5万を超えてくるとどうにかして現物を確認してからの購入になるのは家電と同じだが。

とまあ、数点挙げてみた。次に繰り出してくる言い訳は「日本は狭くて平地が限られ、土地が確保できない」理論だろうか。先回りで書いておくが、この屁理屈も子供のころから何の話題に対しても散々聞かされてきたが、バカバカしいものである。都内の大学は高層化著しいし、郊外にキャンパスを設けている大学は図書館程度の敷地は容易に捻出出来るからである。実際、まともな大学はそうやって図書館の容積を拡大している。

2018年7月30日 (月)

【規制庁も原電も】東海第二のケーブルは大量の傷がついていた【把握せず】

運転開始から40年を迎える東海第二原発の再稼働問題だが、2018年5月2日、市民団体(再稼働阻止全国ネットワーク)の申し入れにより、参議院会館にて第二回規制庁ヒアリングが行われた。

その際、市民団体側から明らかにされた重要な事実がある。東海第二原発は建設時にケーブルに大量の傷がついた、という指摘である。311後に限っても、日本原電が規制庁や茨城県に提出した資料は膨大なので遺漏はあるかも知れないが、この問題について自ら言及した文書は見かけた記憶が無い。

この件について更に調べたので取り上げる。

【1】ケーブル問題の分類

東海第二の問題に、ケーブルが挙げられているのは、関心を持っている方ならご存知のことかと思う。大きく分けると次のようになる。

  1. ケーブルの寿命は一般的には30年、特殊な個所に使用する原子力用でも40年であり、建設時のものは全て寿命が来ている。
  2. 建設時のケーブルは非難燃性(可燃性)であり、ケーブル火災や貰い火には脆弱である(同時期に難燃性ケーブルを採用可能だったのに、何もしなかった)。
  3. ケーブル布設時に大量の傷が付いている。
  4. 原電は再稼働に当たって立てた計画で、古いケーブルの交換は一部のみに留め、残りはケーブルトレイに防火シートを巻くだけの計画としている。

今回取り上げるのは、この内、建設時の布設に問題があり、大量の傷が付いているという話である。

【2】日立内部の記念資料に語られた布設時の失敗

傷の件はこれまで大っぴらには議論されてこなかった。古い資料に埋もれていたと言って良い。そこで、何時もなら古い『原子力学会誌』や『原子力工業』などをめくることになるが、そういったものは原稿の分量が少なく、中でもケーブルについて言及したものは今のところ見つけられなかった。

ところで、東海第二発電所の建設史・工事誌は原電が編纂したものと日立製作所が編纂したものの、少なくとも2種類が存在している。

このうち、ケーブルの傷が付いた過程について詳細に触れているのは、日立の編纂した『東海第二発電所建設記録』である。

Nt2construction_record_no4p432

(改ページ) Nt2construction_record_no4p433 「第13章 電気計装」『東海第二発電所建設記録』P432-433

しかも、『東海第二発電所建設記録』に記録された傷の数でさえ、過少申告の可能性があるのだ。

日立OBが回顧談を持ちよって2009年に『日立原子力 創成期の仲間たち』という記念誌を頒布した。その中のあるOBが東海第二のケーブル布設について語っており、傷の数は3000ヶ所と書かれているのである。

Hitachigensiryokusouseikip463

日立工事(現日立プラント建設)金田弘一「日立原子力 創成期の思い出」
『日立原子力 創成期の仲間たち』P463

【3】真の損傷個所は3000ヶ所以上の可能性も

私の推測では、真の傷の数は3000ヶ所でも済まないかも知れない。何故なら、上記の金田氏も述べているように、ケーブルトレイに布設後に破損個所を発見するのは難しいからだ。それに、補修せずにそのまま延焼防止剤を塗布してしまえば、傷を隠してしまうことは物理的には可能だろう。

『東海第二発電所建設記録』を読むと当時、設計のまずさから延焼防止剤を塗布した後にケーブル布設をやり直すことがよくあったことが分かる。そういう部位は、特に問題だろう。経年を経た物ではないとは言え、一度剥がした個所もあり、布設したケーブルの中には、そのままのルートで良しとされたり、別のトレイに載せ替えただけのものもあったのではないだろうか。その場合、剥離による損傷は容易に隠蔽出来る。

工期に余裕の無い中で、損傷個所を隠蔽する動機も生まれやすかったと思われる。現に、東海第二と福島第一6号機の建設工事にも参加した菊地洋一氏の『原発をつくった私が、原発に反対する理由』を読むと、配管工の間では不良施工や見えないリスクの隠蔽が横行していた。電設技術者は例外と言えるのだろうか。

なお、昭和電線の場合、関西電力との共同研究を経て経年固化した延焼防止剤の剥離剤を製品化したのは2001年のことである(「新製品紹介 延焼防止剤用剥離剤「ショウピールα」」『昭和電線レビュー』2002年No.1)。つまり、建設当時はそういう便利なものは無かった。

【4】発注者に黙って編纂?日立の記録を把握していない日本原電

なお、この話には余談がある。日立が建設記録の編纂を終えて発行したのは1978年11月だが、原電は当時、本社および発電所に設けた資料室(図書室)に収録していないのである。どうしてそれが分かるかと言うと、1970年代後半より社報に「資料室だより」というコーナーが設けられており、毎月の受入図書が掲載されていたからである。

なお、『日本原子力発電五十年史』(2008年10月)は社内外の広汎な文献を調査していることが巻末の参考文献一覧から分かるが、ここにも載っていない。

そのため、上記2図書の内容について原電にメールで問い合わせた際には、下記のように、情報提供への謝辞という形でしか返信が無かった。

送信日時: 2017年10月10日

岩見様

お問い合わせいただき、ありがとうございます。

関連書籍に関する情報をいただきまして、ありがとうございます。
貴重なご意見として承ります。

                                           日本原子力発電株式会社
                                                      地域共生・広報室

日本原電に限ったことではないが、電力会社はある意味親切でもあり、質問を投げると「~のように検討しています。」と自信を持って返信してくるのが通例である。このような返信は見たことが無い。

実務をやっていく上ではキングファイル等にまとめた設備管理の帳簿などを元にするだろうから、当時の原電担当者がそれらにきちんと記録をしていれば、日立の建設記録がなくても問題は無いが、反応を見ている限りでは、どうも把握すらしていないようである。

【5】当時の施工技術でも防止出来た

さて、当時の施工技術で布設時の傷を回避することは出来なかったのだろうか。次の理由から、可能だったと考えている。

  1. 『東海第二発電所建設記録』に前回サイトでの経験を反映できなかったと書かれている。つまり、ノウハウは存在しており、その水平展開に失敗した。また、『日立創成期 原子力の仲間たち』にも一旦ケーブル布設を中断して補修した後は、養生を厳重にするなどして傷がつかないようにした旨書かれている。
  2. 当時すでに延線工具の一部や入線潤滑剤が商品化されていた。つまり、工事業者にこれら設備を使用するように指示したり、社内で規定を採番・マニュアル化するべきだった。

1については、金田氏はその後の技術開発を自讃しているが、中味をよく読むと分離延線工法の成果は手間を減らしたことにあり、同工法以前に傷を付けずに布設出来なかった訳ではない。原子力プラントにおけるケーブルの布設は、分量こそ多いとはいえ、一般の建築物と同種の工事であり、担当する業者は原子力と兼業でやっている例が多く、慣れている筈だからである。

一方で原子力関係の技術書でケーブル布設に関する資料は限られており、過去のブログ記事で参照した『原子力発電所の計画設計・建設工事』(1979年)等にも傷を付けないためのノウハウの記載は無かった。

では、この程度のことも出来ていなかったのだろうか?勿論そんなことは無い。当時業者が用いていた手順書にも書いてあったが、やらなかっただけが真相だろう。

『東海第二発電所建設記録』の記述は上記の通りだが、『日立創成期 原子力の仲間たち』によれば、布設工事の再開後は養生したと書いているが、当たり前の予防措置に過ぎない。

なお、『日立プラント建設株式会社史1』(1979年)P224には火力発電所の3倍のケーブル布設量であり、工事計画や施工管理の上で、従来の経験では対応出来ない問題が多かったなどと書かれている。本当にそうなのかは疑問が残る。原発の建設は既に初体験ではないので何の説明にもなっていない。

東電子会社の関東電気工事が残した文献を読むと、上記の私の推測をある程度裏書することができる。

関電工は電設業者向け専門誌の『電気と工事』に度々技術記事を投稿していた。特に1976年は何回もケーブル布設に係わる投稿があり、特に11月号の「ケーブル延線作業の合理化と実務ポイント」は東海第二のケーブル布設最盛期に投稿された。ケーブルに傷を付けないための延線器具の使用法の他、布設時の注意点として「外観に損傷が無いか」「ケーブル相互の間隔は良いか」と明記しており、これを事前にコピーして現場に配布するだけでも以後の布設における損傷は防止できた筈である。

『関電工50年史』巻末の「主要実績工事」によれば同社は東海第二の電気設備電線管・ケーブル布設工事を日立プラント建設より11億4000万円で受注し、1973年11月から1978年8月まで従事したとなっている(運開と同時に電気メンテナンス工事も受注)。つまり、ケーブル布設の当事者である。

なお、関電工に先立ち中部電力も『電気と工事』1974年6月号に「金属管工事の基本作業」(電線管布設の記事)を投稿し、「電線は同時に入線すること」などと書いていた。電線を同時に入線しないと相互に擦れて傷が付くことが、現場のノウハウとして存在していたと思われる。

仮にそのようなノウハウを東海第二のケーブル布設に関わった全ての電設業者が知らなかったという、あり得ない仮定をしても、関電工の記事に書かれている通り、破損が無いか逐次確認していれば、3000ヶ所もの傷を作る前に、初期の布設時点で自分達のやり方に問題のあることに気づいた筈である。

筒井哲郎氏も自サイト『筒井新聞』の「原子力工学の対象範囲」で書いておられたが、原発建設工事の大半は一般産業施設の技術の範疇であり、それは先程書いたようにケーブル布設も同様である。原子力工学の参考書では頁数の制限もあり、省かれているのだろう。ダメ押しに化学プラントの仕様書の書式集なども調べたところ、1981年に発行された『プラント建設工事における標準仕様書』(IPC編)で例示すると、電気設備・工事の仕様だけで60ページ以上あり、布設時に傷を付けないようにするため、どのような設計・工事の配慮が必要なのか、一通りのことは書かれている。

例えば電線管については「金属管およびその付属品の内面および端口はなめらかにし、電線の被覆を損傷する恐れの無いものでなければならない。」「金属管内の電線は容易に引替えることが出来るように施設しなければならない。」などとある(同書P407)。

2は、特に分かり易い例として、入線潤滑剤を取り上げる。東海第二のケーブル布設工事には全く登場しないので、使用せずに布設されたと思われる。一方、『電気と工事』には電設業者向けの広告枠が毎号数十ページ確保されており、現代のネット通販サイトやメーカーカタログと同じような役割を果たしていた。これらを調べていくと、現在も使用されている延線工具の多くは1970年代末までに誕生していることが分かる。入線潤滑剤を日本で最初に発売したのはデンサン(商品名:デンサンウェット)で、同社Webサイトを見ると、1974年発売と書かれている。『電気と工事』をチェックしていくと広告は1976年まで登場しないが、当初の2年は一般には販売せず、大手業者限定だったのかも知れない。

1974年発売なら余裕だし、1976年からだったとしても、ケーブル布設の最盛期には間に合う計算である。

入線潤滑剤の特徴は可燃性ではないことなので、使用することによる副作用は考えにくいが、例えば布設後の延焼防止剤塗布工程に邪魔だったとしても、拭き取ってから延焼防止剤を塗布すれば良いだけだろう。ケーブルピットへ導入していく際の特定の角部と擦れないようにする等、使用箇所を限定しても効果は得られたはずである。なお、先ほど紹介した『プラント建設工事における標準仕様書』P407には入線潤滑剤の材質に関する制限規定が設けてあり、使用することが前提となっていたことが読み取れる。

【6】傷のついたケーブルを放置するとどうなるか。

最後に、ケーブルに傷が付くことによるリスクについて、電設業界や原子力業界がどのように認識しているかを、電気設備に代表的に使われているCVケーブルを例に示す。

Denkigijutsusha201601p24
「電気設備のトラブル事例と劣化診断について」『電気技術者』2016年1月P24

上記第6表によると、ケーブル内部への水分の侵入など、他の劣化を促進する要因とされている。また、同第9図から分かるように、地絡火災等を助長する要因として認識されている。

また、この表には記載されていないが、損傷個所を補修したテープとケーブルシースは異なる材質であり、40年間の間に固形劣化などで隙間が生じている可能性を考えないといけないだろう。『東海第二発電所建設記録』に登場するハイボンテープとはブチルゴムを加硫せず自己融着テープとした商品名で、かつて日立化成からも発売されていた。他社の同等品の説明によれば、耐候性に優れ、40年以上の使用が可能とされるが、それでは限界は何年であるかの説明はないので、保証出来るのは40年までと解さざるを得ない。

原子力業界でも損傷したケーブルの問題は311前から承知済みで、一足先に劣化した海外のプラントを対象にした研究では次のように解説している。

元来の施工が悪く,発熱や周囲との摩擦等により劣化加速されたような施工不良が26件(28%)と多い.
原子力発電所におけるケーブル故障の傾向分析」『INSS JOURNAL』2007年P312

これらは、防火シートを巻くことでは解決出来ない問題である。『INSS JOURNAL』では劣化診断を海外よりまめに行うことで、未然防止していると分析しているが、いわゆる故障率曲線で寿命末期に現れる摩耗故障は、件数が急激に伸長するとされているし、劣化診断随時行って一部のケーブルのみ補修するやり方では結局つぎはぎだらけとなり、計画的な保全の考えには適さない。

また、以前から何度もブログで言及しているように、東海第二の電気室は1ヶ所に集約されており、2001年の台湾馬鞍山での電源喪失トラブルのように、一ヶ所でも発煙火災を起こすと部屋全体に煙が充満して人による操作などは全く不可能となるし、難燃化されていないケーブルは難燃化の後に普及したハロゲンフリー化(有害な煙を出さない)もされていないので、健全な電気機器の接点なども発煙によるススが付着して不良となってしまう恐れがある。

【7】まとめ

高浜1,2号機などもケーブルの寿命や非難燃性では同じ問題を抱えている。一般的な技術論文に加えて、三菱系の灰色文献(『MAPIの想い出』他数種類)をチェックしたが、今のところ布設時の稚拙な施工により大量の傷が生じたという記録は発見出来ていない。よって、ケーブルの傷問題は、現在廃炉となっていないプラントの中では、東海第二特有のリスクと言えるだろう。このリスクが規制庁に提出された各種評価に織り込まれているとは、とても思えない。やはり早急な廃炉しかないだろう。

【参考】

本文に記載した以外を含め、下記を参考にした。

※2018年8月26日、【参考】節追加。

2018年6月17日 (日)

電気火災の脅威を力説し旧式原発3基の不安全を証明した東電原発職員へぼ担当氏

前回まで2回に渡り、東京電力柏崎刈羽原発技術職員しての立場を傍目には分からないようにして、(法的にも怪しげな)ポジショントークを重ねるへぼ担当を晒してきた。

しかし、彼も技術者の1人として平均以上に勉強を続けてきたのは、一つの事実である。

京都大学大学院原子核工学専攻を修了し、東電時代には原子炉主任技術者免状やボイラ・タービン技術主任者を取得した。

※最終学歴は京都大学大学院ではありませんでした。KURが他大利用者を受入れていることを忘れていました。京都大学関係者にはお詫び申し上げます。

つまり、組織防衛バイアスが働いていない場合、その技術的見解の正確性は上がる。

このような観点から、今回の記事では彼を権威が認めた現役の電力・原子力技術者とみなし、以下に旧式原発の電気火災に対する危険性を示す。

実は、へぼ担当は火災に大きな関心を示しており、かなりの数のツイートが残っている。今回はそれらを私の判断で話題別に再編集した。

なお、ここで言う旧式原発とは大半のケーブルが難燃性ではないことを意味し、再稼働の申請に合格したものとして高浜1,2号機、申請中のものが東海第二原発である。これらの原発はケーブルも設計寿命を超過しており、その点では近年新築された一般の建物よりも劣っている。

難燃性ケーブルは塩化水素を主体とした有毒ガスの発生量が多く、炎上は抑制されても煙が燻り人体には有害、視界も遮る。また、接点が剥き出しの電気機器にも煤のようにこびり付くと動作不良を招く。

これを緩和する根本対策はハロゲンフリー/ノンハロゲンケーブルを採用することで、原子力の分野では難燃化に遅れて1980年代中盤以降徐々に導入が進んでいった。もちろん、ぞれ以前のプラントは問題である。

実はそのことは彼自身もよく承知しているのだ。

所変われば態度も変えるという姿勢は一貫している。

原発に使われていると口を閉ざすが太陽光発電に使われていると饒舌。安全の観点からは「お金をどぶに捨てるだけ」とのこと。さて、難燃ケーブルを採用していない原発は?

ケーブル火災は一旦火が付くと消化が困難だそうである。

電線管も例外ではない。また、ネズミはあらゆる電気設備事故の定番。防鼠パテなども売られているが、施工がいい加減だと抜け・漏れが生じる。

強電回路ではおなじみ、ナイフスイッチも視点を変えれば故障要素である。

40Wの回路は、照明などのアクセサリ電源はありふれている。最早反文明論者と見分けがつかぬほどの警戒振り。もちろん、間違ってはいない。

感電の恐れがあるので、安易に放水も出来ない。

どうしてそんなに電気火災に拘るかと言えば、実際に脅威だから。発生した時の被害がシャレにならない。

彼が紹介しているYoutubeの動画は必見。発電所の電気室もこれと似たような雰囲気であり、規模が大きい。

続いて自治体消防が電気火災に無知との指摘。へぼ担当は下記のように完全同意。

 

これは、へぼ担当自身が柏崎市や新潟県の消防を信用出来ないと宣言したに等しい発言である。もちろん、他のサイトにも当て嵌まるだろう。

つまり、既存の消火設備と自衛消防隊依存となるが、外野から見れば、自衛消防隊こそ消防のプロとは言えないのでは?との疑問が沸く。その疑念を彼等自身も抱いているのか、電力各社は訓練の回数を誇っているが、別の観点として『原子力戦争』(ちくま書房,1976年)で告発されたような、ボヤの隠蔽をチェックすることも出来ないことになる。

隣接配線に延焼すると地獄絵図だそうである。原発の場合、このリスクを軽減するためケーブルルートの系統分離が徹底されるが、初期原発の場合は電源室が一か所の部屋に集中配置されるなど、ケーブルトレイを分離した程度では根本解決にならない設計が多い。東海第二原発がその典型である。

古典的なブラウンズフェリー事故はもとより、新潟県中越沖地震での所外変圧器火災(2時間)など、3時間以上あるいはそれに迫る時間燃え続けた火災事例は原発でも散見される。

2017年2月に発生したアスクルの倉庫火災に関しても、へぼ担当は防火シャッターと難燃性について興味深い見解を披露している。

シャッターの動作はそれなりに奥が深いようだ。この日の彼のツイートはまだ続く。

難燃ケーブル=不燃ではない、という事実は用心深い技術者なら知っていることだが、それを東電の原発技術者が率直に認めているのが素晴らしい。彼がこのように率直に物を言えるのは、柏崎刈羽原発が難燃ケーブルを多用し、日本原電に比較すれば新規制基準への対応に大量の資金を投じてきたからだろう。要するに「俺の職場は別」という考えが根底にあるように思われる。

また、これらのシャッター設計のノウハウが、旧式原発の建屋やサイトバンカ、経年を経た発電所の倉庫などにもバックフィットされているのかも興味深い論点となり得るだろう。烏賀陽弘道氏により再評価された『近代消防』に寄稿した元消防官のような対抗専門家の登場が待たれる。

私はプロフィール欄にも述べているように元々は推進派であったところを311により反対に転じた者である。よって、基本的には全ての原子力発電所は廃止されるべきと考えるが、その中で技術的プライオリティが付くことは避けられないとも思っている。そういう意味からは、へぼ担当の技術的知見は参考になるのである。

«東電柏崎刈羽原発技術職員へぼ担当が立場を明らかにせず呟いてきたこと

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