へぼ担当の正体が判明したため、東京電力柏崎刈羽原子力発電所に抗議した

以前当ブログで告発したへぼ担当(TwitterID:@hebotanto)だが(この記事この記事など)、その後彼自身および元妻、軍事ライターdragoner氏(PN:石動竜仁氏)等が公開している情報から正体(実名・詳細経歴等)が判明した。彼は本当に東電原子力部門社員としてツイッターで問題行為を続けていた。

このため、証拠となる文書を添えて東京電力柏崎刈羽原子力発電所に抗議した。

以下、メールの一部を公開する。

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2018/07/04

突然のメール、失礼します。
岩見と申します。

ネット上を主な活動の場にしているへぼ担当というハンドルネームの人物が、東電グループ社員であることを仄めかし守秘義務違反を含むモラルハザードを続けている件について、連絡します。
近年はTwitterでhebotantoというアカウントを取得し活動しているようです。

彼の問題ですが、数々の暴言、安全神話、異論者との対話拒否、守秘義務違反、同僚後輩の悪口、インサイダーへの異常な関心等です。それらについては下記にまとめています。
http://iwamin12.cocolog-nifty.com/blog/2018/06/dv-cc1d.html
http://iwamin12.cocolog-nifty.com/blog/2018/06/post-c042.html

(中略)奥様が東京電力健保組合に言及して、社員であることが当人以外の発言でも証明されています。

http://archive.is/0RQFk

また彼は、(中略)以上の条件を加味して推定すると、A氏(注:メールでは実名)が該当します。

A氏が本名で登録している幾つかのSNSを見ると、職務経歴、現在の居住地(中略)、B氏との関わりが載っています。これらはへぼ担当のtwitterの書き込みと完全に一致しました。

彼は(中略)炉主任を取得、他に技術士、ボイラ・タービン技術主任者を取得、技術評価の仕事の他、311後はガスタービン発電機車の保守業務などにも関わったようです。

(中略)原子力安全にとって重大な脅威であり、処分をお願いします。

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設楽 親
2018/07/04
To 村田, 大嶋, 自分

情報ありがとうございます。

こちらでも調べて対処致します。


********************************

東京電力ホールディングス(株)

 柏崎刈羽原子力発電所

         設楽 親

(中略)
********************************

責任を全うするため技術力の向上と組織力の強化に取り組みます

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2019/03/28

柏崎刈羽原子力発電所
設楽様

御無沙汰しております。岩見です。
根拠について添付ワードにまとめましたので、送ります。

様々なウェブサイト、SNSに記録を残していること、
古い版とは言え〇〇〇〇会名簿に東電社員として記載されていること等が根拠です。

不躾な連絡であったとはいえ、予想通り半年以上部下の方を含め返信も無く、呆れております。

特に今年に入ってから顕著ですが、ニッカウヰスキー、済生会病院、世田谷年金事務所、立憲民主党などSNS上の問題発言が原因で有名企業、団体等の人物が相次いで処分を受けたり、著名政党が新人の推薦を取り下げるなどの事例が相次いでいます。

数年前には復興庁参事官、東日本大震災直後には東電社員も同様の問題発言で処分されていますね。

A氏の一連の発言も同様のソーシャルメディアリスク事案です。
近年では世論に加え、法制度的にもこのような問題への視線は厳しいものとなっています。
機密情報漏洩リスクもさることながら、下記に示すように、社外の委員会において反対派を出席させるものの結論は予め準備したものとし、口封じ対策する旨のツイートは、東電の信用を根本から破壊するものです。

20150118_hebotantobougen

注:元ツイートは以下
https://twitter.com/hebotanto/status/556644728066699264(魚拓:https://archive.fo/DgCBN)
https://twitter.com/hebotanto/status/556652836017020929(魚拓:https://archive.fo/yNfuF)


色々な宿題が残っていると当の反対派などから不満が表明されている新潟県の技術委員会に対してどのように説明するつもりでしょうか。

事はA氏本人だけの責任では済まないと考えます。(後略)

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さて、メールで示したように他の類似案件では調査期間は長くても数日である。従って、これは本店と現場が連動した、東電の意図的なサボタージュに他ならない。

A氏の社会的属性は下請の作業員ではなく、高卒が多く採用される一般の原子炉運転員とも異なり、原子炉主任技術者・ボイラ、タービン主任技術者である。少し古い情報源ではあるが、東電内では、福島事故でも議論となった運転操作基準の改訂にあたり、改訂案を審査承認出来るだけの技能を有するとされていた。実務における技術的重要度は極めて高いと考える。

そのような重責を担当し得る人物が関与したネット工作の継続期間、趣味・業界人への浸透度合いも過去問題発言をした一般の人士と桁違いである。

なお、彼の技術力自体は高いので、批判記事だけではなく次のような記事もアップしている。

電気火災の脅威を力説し旧式原発3基の不安全を証明した東電原発職員へぼ担当氏

このような問題を抱えておりながら、東京電力は柏崎刈羽原子力発電所の再稼働がスムーズにいくと考えているのだろうか。再稼働の前にはA氏が嘲笑した委員会のひとつである、新潟県技術委員会の調査が完了することが必要とのことだが、その役割は完全に形骸化したと見るべきだろう。なお、同委員会委員の田中三彦氏他によれば、東電はこの委員会で提起された多くの技術課題の解明に消極的な対応を続けているそうだ。

私は次の処置以外に解決策は無いものと考える。

  • 柏崎刈羽原子力発電所の安全審査が完了した6,7号機を含む全基の廃炉
  • A氏はもとより、上記メール前に通報した東電お客様相談窓口で調査を放棄する旨の回答をした部門の関係者、設楽所長以下発電所関係者の処分

実は、この8か月間、私は改めて東電の態度を観察していた。電気火災の記事を読めばわかるが、A氏の暴言には地元の消防の能力を嘲笑した書き込みも含まれる。ところが東電は、2018年秋にトンネル内のケーブル火災を起こし、早期に鎮圧出来なかった。かつて、2007年の中越沖地震後、火災に対する可燃物の対策が不備との理由で、柏崎市は消防法を理由に柏崎刈羽原発の運転停止を命じている。A氏がその意趣返しをしたかったのかは分からないが、不必要な舌禍であり、自衛消防隊の能力に見合わない発言だったことは疑いないものである。

ある意味では、A氏の個人的な非違行為が問題なのではない。これは、福島事故を経験した後の、東電の安全文化がどのようなものなのかを示すための、一種の試験だったのである。その結果は上記のように、相も変わらずの無視・無為・無策である。社外から何度も津波対策を求められても吉田所長以下一丸となって拒否を続けた事故前と、何ら変わるところが無い。むしろ「そんな金があるか」という意味の言葉を吐き捨てた吉田氏より一段と悪くなっている。

どのような高度な技術を駆使しても、根本的なモラルが破綻している集団に責任を全うして原発を運営することは不可能である。誰の目にもよくお判りいただけると思う。

同時に、この情報を2018年夏の時点で掴んでいながら、何の裏取りの努力もしなかった一部の「原子力問題に詳しいジャーナリスト」についても猛省を求めるものである。例えばかつて復興庁参事官暴言ツイート事件を暴いた毎日新聞は、子会社が電力会社の広告を受注してきた過去からかは不明だが、何の反応も示さなかった。広河隆一を持ち上げ続けた挙句、態度を急変させた某ライターもそうであった。

結局、こういった人達は、ネット時代以前の旧来の党派性に凝り固まった取材しかできないのではないか、私はそう疑問に感じている。

※文中、敢えて個人名を示さなかった個所がある。添付した文書をアップしないのも同様の理由である。ただし一部市民団体・弁護士・牧田寛・添田孝史氏他数名の原子力問題ライターには回送している。

2019年6月 2日 (日)

東電裁判被告の武藤栄に原子力損害賠償制度の検討委員をしていた過去

福島原発事故の責任を巡って刑事・民事に渡り、様々な訴訟が提起されている。その中でも当時の東電会長であった勝俣恒久、取締役副社長原子力・立地本部長からフェローに転じた武黒一郎などは刑事訴訟や株主代表訴訟の被告に名を連ねている。取締役副社長(代表取締役)原子力・立地本部長だった武藤栄もその一人だ。

ところで、こういった幹部を含む原子力部門の重鎮達が、その出世の過程でどんな仕事をしてきたのかだが、津波対策についてはかなり解明されたものの、その他の点は断片的な裏話が目立ち十分に解明・論評されていない。

武藤の場合、2000年代初頭に電事連原子力部長に出向し、原子力損害賠償制度に関する調査に参加していたが、これもまた、ネット上で話題になっていない。

事の発端は、2001年度予算で、原子力委員会が原子力損害賠償制度に関する調査を三菱総研に発注したことに始まる。その調査の検討委員の一人が武藤だった。紙版の報告書は入手し、冒頭には配布対象者に向けて「引用、転載には承認が必要」といった(著作権法の観点から第三者には完全に無意味な)文言があるが、内閣府がネット上で全文公開している。

 原子力損害賠償制度検討会報告書 平成14年3月(内閣府HP)

内容は国家間で原子力損害賠償について共通のルールとして生み出されたパリ条約・ウィーン条約を、アジア地域に適用するにあたっての課題を調査したものであった。あまりなじみのない条約だが、ヨーロッパを中心に締約国を増やしてきた。日本、アメリカ、ロシアといった(当時の)原子力大国は入っていないが、日本の場合は無限責任制度であるのに対し、条約の方は有限責任制度であること、損害賠償額の上限が原陪法に比較しても低すぎることなどを理由としていた。それが2000年代に入る頃には「無限責任制度を有する国であっても法的整合性の面で特段の問題が無いように改められ、また、賠償措置額も大幅に改善された」ため、このような検討が行われた。

ただし、チェルノブイリ原発事故や福島原発事故に対応できるような内容ではないので、一部の法研究者以外は注目してこなかった。

しかし、原子力損害に関する業界周囲の考え方を知る上では参考になる点もあるし、武藤氏の脳内にどのような知見がインプットされているかを確認する上でもこのレポートは重要である。よって、現在進行中の訴訟を意識し、特徴的な記述を抜き出してみよう。

なお、「パリ条約/ウィーン条約」に関しては(推進側を含め)解説サイトが幾つかある。また、本文中で触れる東電の動向についてはLEVEL7や福島原発告訴団/支援団掲載の裁判傍聴レポートを読むと深く理解できる。

【原子力損害賠償の一般的性格】

4.わが国を含めたアジア地域原子力損害賠償制度の必要性
(1)制度構築のニーズ
  原子力損害は、人身および財産に与える影響が甚大であることが予想されるとともに、その性質上、損害原因の特定および結果の予測が非常に困難である、という特殊性を有している。
 こうした特殊性を有する原子力損害の賠償処理を、従来の過失責任ルールの下で行おうとするならば、被害者は、非常に困難な加害者の特定及び過失の立証に直面することとなり、被害者の救済は実際問題として非常に困難となる。また、仮にこの問題が解決されたとしても、加害者である事業者に賠償資力が備わっていなければ、被害者の救済は画餅に帰すこととなる。


 したがって、被害者救済を迅速かつ十分に行うためには、まず第一に、1)無過失責任制度、2)原子力事業者への責任集中、3)この責任の履行を担保するための損害賠償措置の事業者への強制、を柱とする、原子力損害賠償制度を確立することが必要不可欠であるといえる。


 そして、原子力事故が越境損害に結びつく可能性があることを勘案するならば、原子力施設を有する国のみならずその周辺の国々においても、原子力損害賠償に関する適切な法制度が整備されることが重要である。このとき、大規模かつ複雑な賠償処理において、国家間での賠償の公平性が担保されるようにするために、その制度内容は国際的・地域的に統一されたものとすることが望ましい。

具体的な賠償額と範囲を除けば、方向性としては正しい記述である。

【越境損害に対する見解】

2.国際的原子力損害賠償諸制度の沿革及び概要
(1)歴史的背景
国際的な原子力損害賠償制度は、各国の国内法とほぼ同時に整備されてきた。原子力損害賠償制度の確立に取り組む先進諸国は、越境損害の問題に対応するためには共通の国際的枠組みが必要であると考え、国際条約の整備についても原子力開発の初期の段階から着手した。この結果、1960年には経済協力開発機構(OECD)により、原子力の分野における第三者に対する責任に関する条約(以下「パリ条約」という。)が採択され、(発効は1968年)、1963年には国際原子力機関(IAEA)の下で、原子力損害の民事責任に関するウィーン条約(以下「ウィーン条約」という。)が採択された(発効は1977年)。


ところが、1986年に発生した旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所における事故は、国際的な原子力損害賠償制度のあり方について大きな問題を投げかけた。チェルノブイリの事故の際、旧ソ連政府は、越境損害に対する損害賠償を規定している国際条約に加盟していないことを理由に、国外で発生した損害に対しては、何らの賠償をも行わなかった(国内では2000年までに2,000億ルーブル以上を支払ったとされる。)。すなわち、それまで30数年をかけて整備されてきた国際的な原子力損害賠償制度は、チェルノブイリ事故に対して機能し得なかったのである。このような事情の下、IAEAを中心として、損害賠償措置額の増額、条約締結国の拡大の必要性等について、活発な検討が開始された。その結果、パリ条約とウィーン条約との連携により被害者救済措置の地理的範囲の拡大を図ることを目的としたウィーン条約及びパリ条約の適用に関する共同議定書(ジョイント・プロトコール)がIAEAとOECDの原子力機関(NEA)との共同作業により1988年に作成され、また1997年にはウィーン条約の改正議定書及び原子力損害の補完的補償に関する条約(以下「補完的補償条約」という。)がIAEAにおいて採択された。

※下線は筆者による。

越境損害に言及しているのも興味深い。当たり前だが、彼等は安全神話を利用する一方で、実際に事故が起きたらどのようなハレーションを生むのかについても、知見の更新を続けていた(詳細は割愛するが業界は、越境損害に関して本レポートの他にも様々な研究を行っていた)。

このことは後程もう一度取り上げる。

【原陪法3条但し書き削除の提案】

2) 免責事項
 原賠法においては、「異常に巨大な天災地変」又は「社会的動乱」による原子力損害について、原子力事業者は免責とされている。


 一方、ウィーン条約改正議定書においては、「武力紛争行為、敵対行為、内戦又は反乱」に直接起因する原子力損害について、運転者は免責とされている。したがって、我が国がウィーン条約改正議定書を締結する場合には、少なくとも「異常に巨大な天災地変」による原子力損害の扱いについて、何らかの調整を行う必要がある。


 条約を締結するに当たっては、原則として、条約の規定に過不足なく対応できるよう措置する必要があることから、ウィーン条約改正議定書締結についての対応策としては、「異常に巨大な天災地変」による原子力損害を、原賠法の免責に関する規定から削除することが必要になるものと考えられる。


 この対応をとる場合、従来、免責となっていた事項についてのリスクは、責任集中されている原子力事業者が負うこととなる。しかしながら、この点については、原子力事業者は、その結果、何らかの追加的負担が生じることに強く反対している。従って、その主張に従えば、原子力事業者に追加的な負担が生じないような仕組みが可能であるか否かを検討することが必要となる。

「5.条約と国内法との関係 (1) ウィーン条約改正議定書との関係」

驚くべきことに、ウィーン条約には事故を起こした原子力事業者の免責条件として「異常に巨大な天災地変」が規定されていないので、削除が妥当と書かれているのだ。ただし、規定を削除したことによるリスクの追加に対して原子力事業者は反対とも記されている。

検討委員会に入っていた現役の原子力事業者の代表者は武藤だけである(他に原電の顧問が一名)。業界における東電の立場が盟主であったこと、他社は東電よりのりしろを付けて予防的に対応する傾向があったこと、武藤の社内での地位を考えると、ただのメッセンジャーであるとは言い難く、武藤個人の意思も反映された意見と考える(盟主扱いは事故前より一般紙にも見られる。例えば「原発耐震補強 迷う東電」『日経産業新聞』2007年8月21日32面)。

レポートが作成された2001年度は土木学会で「原子力発電所の津波評価技術」が審議されていた時期に被り、翌2002年に安全率を1にして(不確実性を見込まないで)発行されたのはよく知られた事実である。また、2002年には東電の津波想定実務の担当者(高尾誠)が原子力安全・保安院に40分も電話で抵抗して大津波の想定を拒否したことが、裁判の過程で明らかになっている。本レポートの「原子力事業者の見解」はこれらの動きと軌を一にしている。即ち異常に巨大な天災地変に対応するための追加コストはそれが予防のためであれ賠償であれ支払いたくない、ということだ。

高尾氏は数年後には反省したのか、2008年には大津波の想定を認めて対策するように社内で活動するのだが、武藤が出席した御前会議は津波対策を延期を決定した。「原子力事業者にとりマイナスになることは一切行わない」という考えを変えなかった。

また、原子力委員会や国も、無限責任を基本とし、災害多発国でもある日本の原賠制度から、「異常に巨大な天災地変」による免責事項を削除する代わりに、必要な天災リスクを予防するための資金を電力会社に助成したり、国家が肩代わりすべき賠償積み立て金を確保する等の措置を行わなかった。そもそも、条約加盟国が本当に天災リスクの少ない国ばかりなのかという点も考慮した形跡がない(欧州でも南部は地震リスクが存在し、洪水リスク等も常々指摘されている)。彼等もまた、東電同様に逃げたのだと言える。

【その後の推移】

その他、このレポートの後にどのように事態が推移したのだろうか。

  • パリ条約、ウィーン条約共にチェルノブイリ事故レベルの損害を補償するためのスキーム(賠償額の桁単位での引き上げ)は行われなかった。
  • 日本はパリ条約、ウィーン条約、補完的補償条約いずれも署名も批准もせず、越境損害賠償についてのスキームを整備しなかった。
  • 原子力損害賠償法から異常に巨大な天災に関する規定は削除されなかった。

上述のように、武藤や電事連が補償の拡大充実について調査研究・ロビー活動に積極的だった事実は見当たらない。

そして福島原発事故直後の2011年3~4月には、案の定東電から「異常に巨大な天災地変」なので免責規定を適用すべきとの主張がなされた。かつて、武藤を通じて追加のコストを支払うことに反対した、あの異常に巨大な天災地変に東日本大震災が該当するというのだ(当ブログ他で指摘されているように、予見も回避も可能だったため、そのような指摘は当たらない)。

この件で、原電出身で自民党から転じた与謝野馨経済財政相と枝野官房長官は怒鳴り合いう事態となった。しかし枝野氏が押し切り、東電は免責されることは無かったものの、後に業界の巻き返しで経営破たんの形は採らず、半国有化されるに至った。

【事故後8年経って振り返った時の視点】

訴訟の場においても原陪法3条但し書きの精神を引き継ぐ形で「異常に巨大で回避不可能な災害」という観点に収束するように、被告側弁護団が論じている。

しかし、そもそも条約への整合化がなされていれば、最初からこのような論理がまかり通る余地は皆無だったと言える。免責という法益をちらつかせることで無駄な議論や『免責法理のプロパガンダ』を生み、時間稼ぎをしてきた東電・政府関係者の罪は大きい。

むしろ、このレポートの存在により電事連はもとより、武藤個人も原子力損害賠償制度について、通常の東電原子力部門社員より詳しく知った状態で、津波対策の延期を決定した東電経営陣の2008年の「御前会議」に出席していたことが分かる。当時のことに関して言えば、原賠制度のスケールの大きさから、真面目に論じる必要があったのは最高幹部達であり、勝俣、清水といった面々も武藤からレクされていた可能性を考えておくべきだろう。

勿論、この調査が原子力委員会による発注だったことも重要な観点である。制度の運用者で制度設計や立法にも官僚などと共に影響を与える者が、電事連の代表者と共にレポートを作成していたことは、訴訟における彼等の正当性~当時の制度に従っただけ~といった論理に重大な問題が潜んでいることを示す。

越境損害についての考慮も同様である。本文を読めばどちらの国で裁判を行うかについてもこのレポートは制度化の必要を認めている。

4) 裁判管轄、単一法廷

 原賠法においては、裁判管轄に関する規定が、特に置かれていないことから、国際裁判管轄に関する判例法によれば、原子力損害賠償請求訴訟についての裁判管轄としては、被告の住所地(本拠地)国に加え、事故発生地国及び被害発生地国に認められることになる。


 一方、ウィーン条約改正議定書においては、裁判管轄について「その領域内で原子力事故が生じた締約国の裁判所のみに存する」と規定されるとともに、「自国の裁判所に裁判管轄権が存する締約国は、一の原子力事故に関して自国の裁判所のうち一の裁判所のみが裁判管轄権を有することを確保しなければならない」と規定されている。


 このため、同議定書を締結する場合には、我が国以外の締結国における原子力事故の被害が我が国に及んだ場合に当該事故発生国に裁判管轄権が特定されることに関して、問題点等の検討を行っておく必要がある。
 この場合、我が国国民は、外国で訴訟を行うこととなり、我が国において訴訟を行うことに比べ、言語の問題、旅費等の経済的負担、事故発生国と我が国との民事訴訟に関する裁判手続における法令の定めや慣習等の内容の差異等が生ずることが考えられる。
 しかしながら、同議定書締結により、

  • 同議定書に規定される原子力損害については、越境損害であっても確実に 合計3億SDRまでは賠償措置が講じられることとなることから、同議定 書を締結しない場合に比べ確実な被害者の救済が図られること、
  • 前述の被害者の訴訟に伴う負担等に関しても、同議定書に規定された被害発生地国による代位請求や紛争処理手続により、かなりの程度、緩和されることとなると考えられること
等から、同議定書の締結は我が国にとり十分な利点を有していると考えられる。

 我が国が同議定書を締結する場合には、裁判管轄の一元化を実現するため、我が国が事故発生地国である場合に、裁判手続法上、一つの原子力事故による原子力損害について裁判管轄権を有する我が国の裁判所を一つに特定するための国内法上の措置を講ずる必要はある。

 

「5.条約と国内法との関係 (1) ウィーン条約改正議定書との関係」

※下線は筆者

越境損害で被害を受けた国民が外国で訴訟を起こすことになる・・・これが現実化したのがトモダチ作戦に参加した米兵訴訟である。条約に未加入、或いは未署名という点では米国も日本と同じ状態であり、日米共に、法の欠缺を放置していたことになる。

東京電力ホールディングスは6日、東日本大震災の支援活動「トモダチ作戦」に参加した米空母乗務員らが福島第1原発事故で被曝(ひばく)したとして、医療費に充てる基金創設などを東電に求めた2件の訴訟の判決で、いずれも米国の裁判所が訴えを却下したと発表した。

東電によると、2件は米カリフォルニア州の南部地区連邦裁判所に提訴されたもので、それぞれ10億ドル(約1120億円)の基金を求めていた。判決は4日付で、裁判所は却下の理由を「審理する管轄と権限を有しない」とした。

東電は「当社の主張が認められたと理解している」とコメントした。〔共同〕

トモダチ作戦の訴え却下 原発事故で米裁判所」『日本経済新聞』2019年3月6日

トモダチ作戦訴訟についてはネットメディアでも数件報じられているが、裁判の管轄権が主要な争点となり、原告側擁護の立場から河合弘之弁護士は渡航にかかるコスト、日本側の裁判制度の瑕疵などを指摘し、米国での提訴につなげた経緯がある。しかしそもそも論として、事前に被害者に寄り添った制度化をしておかないから、このような時間と議論の年単位での空費が起こるのである(なお、米国はウィーン条約には参加していないが、上述の「補完的補償条約」は福島事故までに批准していた)。

今後、海洋汚染の拡大が確認された時点で、同様の事態が他国とも生じる恐れが高い。

なお、業界側は事故後、「原子力損害賠償制度に関する今後の検討課題~東京電力(株)福島第一原子力発電所事故を中心として~」(日本エネルギー法研究所、2014年)にて事故前の議論についても触れている。事故被害の巨大さから津波想定の問題をはじめ、かなり踏み込んだ法的検討はしているが、原陪法3条但し書きに関する議論や裁判管轄権に関する制度の不備を放置したこと等について、事故前の知見を批判的に分析はしていない。ADR等の裁判外の賠償手続きについても迅速性を強調する等の自賛?が目立つ。

今後、注意を払うべきなのは、原発事故訴訟が提起されてから、武藤が法的知見と経験を被告および補助参加人、弁護団と共有してきた可能性が高いことだろう。彼らの構築するロジックを細部まで検討すると「単なる津波対策の免責」という観点だけでは理解しがたい文言が見つかると、弁護士やウォッチャーの間でしばしば指摘されている。これらを素朴なカルト信仰の変形として理解する向きも多いが、今回のレポートやその他の業界内でクローズする専門知見を反映した行動と見るのが、被災者に対して公正な被害補償を達成するうえでは適切と考える。

2019年5月 2日 (木)

性加害者をえこひいきするフェミニズム運動だとすれば、信用は全くない

私は元々、フェミニズムやme too運動は関わりが無い。過去記事の通り、是々非々で臨んでいる。よって、急激な運動の拡大に伴って種々の矛盾が生じていることは批判的に見ている。

有名な事案としては、昨秋の御茶ノ水女子大のトランスジェンダー受け入れ表明に伴うトイレを発端とした論争がある。これは、フェミニストを文字通り二分したらしいが、TERFと呼ばれる過激派がトランスの方に誹謗中傷を続けた結果、どちらに理があるのかははっきりしていると思う。

上記の件は運動内部でも様々な反省があったが、TERFを批判したフェミニスト達についても、ここ数年、幾つかの問題で明らかに頬を被っている人が多くみられる。

【運動には清濁がある】

以下、私が理があると考える事案とそうでない事案を数例ずつ挙げる。

【me too運動やネットフェミニスト全般に理があると考えられる案件】

  • 選択的夫婦別姓化、同性婚の容認に関わる運動全般
  • 刑法改正による非申告罪化の他、捜査手法の改善やケアの充実等を求める運動全般(伊藤詩織さん事件を含む)
  • 政治におけるクオーター制の採用等、差別的慣習を是正するための運動全般
  • 入試・就職活動における性差別の是正を求める運動全般
  • 日本軍が戦時中に犯した種々の性犯罪や外部業者をも含めた慰安婦問題の清算(像の設置から個別請求権の容認までを含む)

【me too運動やネットフェミニストに理が無いと考えられる案件】

  • 同一の法制度下にある日本国内での統計的有意差を何も示すことが出来ず、只の地域差別に終わった「九州男児」批判。
    ※他の性差別問題は多くが九州以外で発覚している。「日本の男性は問題が無い」という反論ではないことに注意。
  • ジェンダー法学会での不規則発言に代表される、問題解決能力の無さ。
  • 社民党のある女性市議の服装にまで細かな注文を付け続けて辞職に追い込んだ「古参活動家」の問題。
    ※当該の地域で真面目な人材を1人使い潰し、無能な候補者が生き残る結果となった。現実に響いている以上大問題。
  • 大した基準や事実確認も無しに一部の漫画・アニメ・ドラマ作品等を批判する「お気持ちヤクザ」
  • 他の社会問題で得られた知見への鈍感さ。一例としては薬害/公害問題で散々指摘されている肩書や専門家への過剰な依存。
    (田嶋陽子やその支持者に見られる)ネオリベ/極右的思想の肯定。

「毎日内部批判だけしていろ」と言うつもりはないが、上記の問題に向き合うことなく、自らに都合の良い「性差別案件のニュース」を賛意RTし続けていれば、信用が無くなるのは当然だろう。周辺の意識高い系全般に言えることだが、馬鹿な奴等だ。

世のあらゆる運動には付いて回る話であり、例えば脱原発運動も似たような問題は抱えているのだが、敵対者の書いたものを見て正すべき点は取り入れるのが良い。最近知ったが「女性の90%は名誉男性」という愚かな主張をしている「フェミニスト」もいるようである。井の頭沿線辺りで仕入れた古い文献で正当化したところで救いが全くない。

【ネットフェミニスト達に生じた疑惑】

前置きが長くなったが、最近あるネットフェミニストアカウントが性加害者としての過去を隠し、社会一般への批判を続けているのではないかという疑惑が持ち上がっている(関連まとめ)。その件についての検証作業も始まり、過去の書き込みの発掘など、種々の公開情報が集積され、一部の仲間は正体を知っていたのでは?とも言われている。情報の突合せをしているのは極少数だが、野次馬の中にはネット右翼も多数混じっている。

公益性の観点から言えば、当該は事実関係の是非にコメントすればケリがつくので余り関心が無い。再犯が発覚した訳ではないからだ。従って、本件についての問題は社会的モラルの範疇に留まる。その点から見て問題と思われるのは、当該と顔合わせもしてきた周囲の同調者達、更にその周囲に蝟集しているネットフェミニスト全般のことである(参考ツイート)。いずれも、エビマークを付けているから証拠能力が高いというような愚昧な考えの持ち主で、真面目な研究者、ライターなどと異なり信用していなかったが、案の定まともな反論がない。

一方でその間にも、過去の性犯罪被害者による告発証言に対し、無条件で恫喝や誹謗中傷している者がいる。

止めた方が良い。ネット上のme too運動を徹底的に傷付けることになるだろう。

残念だが、検証結果は具体的である。彼等を支持してきた側が行うべきことはただ一つ、疑惑が事実であるかを確かめること、もし事実なら、それを認めて(距離を置いた)別の形での贖罪に切り替えるよう促す事だろう。

前から思っていたことだが、広い意味での安倍政権支持者やネット右翼は基本フェミニズムに敵対的だが、彼等が直接的な性犯罪者である確率は一般人並に低いと思われる。何故なら、右翼的な考え方はこの国の主流であり、毎日女叩きに異様な熱意を見せる者から、FOXが作る社会派映画並に平等思想を受け入れる者まで性的な価値観にはかなりの濃淡が観察されるから。

そこにオピニオンリーダー達が「お前も社会構造を作ってる一員なのだ」と身内向けトークで甘やかしたところで、大したみそぎもせずに加害者を匿ってるなら、説得力はゼロである。

【理由もなく相手によって扱いを変えれば信用は無い】

ところで、仮に事実であったとして、違和感があるのは当該の周辺者達。要は菅野完のような他のケースとの扱いの差である。ここ数年、論壇人や著名政治家・ジャーナリストの性的不祥事が相次いだが、菅野の場合は事実関係と責任をすぐに認めている(同様の例として、一般的な認知度は極楽山本のような芸能人の方が高いだろうが、当ブログは政治系の話題の方が主なので菅野の例を挙げる。もっとも、訴訟では言論の自由の制限を要求されたこともあって揉めていたようだが)。

ある極左・脱被曝系アカウントが「性犯罪に軽重は無い」といった書き込みをしていたのを思い出すが、同根ではあっても現実社会では同列には扱われない。法的な問題の他、発覚前後で示した態度も世間的な評価の対象になるのは当然のことである。菅野完事件の発覚当時、それを報じたメディアの関係者が性犯罪被害者を鉄砲玉として使い潰した一件があったが、その時「黒幕や周辺者の嫉妬だろ」との声が聞かれた。今回の件は、それが正しいかどうかも問われるのである。

この件について周辺者達はあらゆる対話をブロックしているそうだが、さっさと問題を解決した方が自身のためだろう。虚偽ならそう示せば事は終わる。事実なら、理念と現実に生じた矛盾は解消すべきだ。菅野の件や詩織さん事件が好例だが、ネットフェミニストでも過激な発言で注目を浴びてきた者達は、右側の性的不祥事は正当化し、事態公表後の経過を無視する野次馬と変わりがない。

方向性や発言の過激度に違いはあるものの、社虫太郎やあららといった(男性)オピニオンリーダー達や、一部の極左系個人アカウントについも同様である。元号批判のような時事ネタも結構なことだが、本件からは目を逸らしているように思える。広河隆一と違って自らに近い存在だったのかも知れないが、大概にしておけと忠告しておく。

まぁ、大概にしておけと言うのは追及側も同じだが。

残念だが山本氏は政治家になる前に会っていたとしても違和感はない。で、彼以外の発言は貶める目的でツイートしてるのかね。

2019年1月29日 (火)

ケーズデンキに行ったら店員から商品ではなくヘイトスピーチを薦めてきた件

ここ最近、済生会川口総合病院の麻酔科医大畑亮介、ニッカウヰスキー余市蒸溜所営業部長三上博康、高野山金剛峯寺の真言宗僧侶安田空源など、社会的立場のある人物が、その立場に相応しくない差別発言を重ねて組織が謝罪に追われる事態が頻発している。

そういえば、前回記事にまつわる調査研究で忙しかったので後回しにしていたが、2週間ほど前、びっくりすることがあった。

Ksdenki_2

1月12日、所用で府中に行った。その帰り、18時頃ケーズデンキ府中本店に立ち寄った。

以前から首都圏の下宿で使うパソコン用のモニターを探しており、その下見と相談のためである。

最初に、SHARPのテレビ販売担当の派遣社員と思われる「やなぎや」という中年で眼鏡をかけた男性店員が案内を申し出てきた。

その後、彼もPCモニターのコーナーに来て最近の機種の値段を確認しはじめた。私は「テレビは高価だし受信料の関係で置くつもりがないんだ」と言った。これは単純に下宿で受信料を払いたくないためで、政治的な意味ではない。

すると彼は「オフレコですが、NHKに受信料を払わないで済む方法があるのですよ」と言い、「NHKの偏向報道を集金人の前で糾弾し、警察に通報すればよい。我が家はそれで受信料を払ってないが見ている」と解説を始めた。

この時点では、この店員がどのような思想の持ち主かわからなかったので、「ほうそれで」と返してみたところ、次のような説明を受けた。

  • 在日の犯罪者をNHKだけが通名で報道している。
  • 韓国の芸能人がイスラエルと日本を茶化したのに、NHKは日本を茶化したことを隠している。
  • Youtubeで「NHKから国民を守る党」で検索を薦めてきた。何かあったらこの団体に連絡すれば安心して受信料を払わずにテレビを視聴できる。
  • 「NHKから国民を守る党」はNHKやマスコミの偏向報道、彼らの実態が在日であることがこれでもかと暴いている。日本は在日によって占領されつつある。危機感を持っている。

あーあ。

「アイヌが存在しない」等ヘイトスピーチ満載の極右団体、「NHKから国民を守る党」ですか。しかも接客相手に。

NHKの報道に問題があるのは分かるがそれは政権への過剰な忖度と調査報道の後退に起因しており、この店員の歴史観、政治感覚は悉くNGと言わざるを得ない。

特に歴史観。一言でいえば、極右が日頃主張する「明治以後、日本は悪いことをしていなかった」系の中身は悉く虚偽で、実際は全て手を染めたというのがこっちの認識だ。

在日の犯罪を通名で報道する、事実なら若干の違和感があるが、支払わないほどの理由ではない。当事者は逮捕されていることの方が重要な筈だが。一方で、日本人の政権に近い権力者は罪に問われることなく免責されている者が多く、311後、或いは安倍政権に入ってからその傾向は強まるばかりだ。くだらない。この十数年、ネット右翼が気に入らない人物を次々在日認定して回ったので、通名の話は情報に信ぴょう性が無いこともある。

サービス利用の薦め方としても不適切だ。説明通りに受信料を支払わなかったとしても、それをやった人達は訴訟で敗北しており、強制執行される可能性が高い。それとも、ケーズデンキは「NHKから国民を守る党」とタイアップでもしてるのかね。

大体、下宿ではテレビを見ないと言っただけで、それ以外の場所では報道チェックを兼ねてNHKも視聴している。例えば実家の受信料は払っており、止めるつもりもない。

そもそも、訪日客を大量に招こうという時勢に、もし私が外国人だったらどうするつもりだったのだろうか(仮に昭和時代に同じこと言われても私的にはNGだけど)。

とりあえず、平常に応対しつつ名前をメモして退店後、クレームを入れた。

ケーズデンキに人権に即した企業憲章の記述は無いようだが、2019年1月現在、キャラクターに「ちびまる子ちゃん」を使用してる。ちびまる子ちゃんの作品コンセプト、知ってるのだろうか。どうしても知名度の高い女性でPRするなら、指原莉乃の方がいいんじゃないの。

バカリズム、指原莉乃が外国人労働者問題で差別丸出し! 外国人の接客を嘲笑し“日本語がちゃんと喋れる人を”論(リテラ)

しかしまぁ、接客中にこんなことを言ってくるゴリゴリのネトウヨ店員というのは初めて見たね。

なお、モニターとテレビについても彼からは有用な情報を一切得られず、私が彼に解説した。特に4Kモニターについて何も商品知識が無かった。ま、NHKを監視するには、視聴しなければならないのも明らかなので、やなぎやさんはいろいろな意味で完全にアウトですがね。

ケーズデンキ府中本店に来ることは極めてまれなのだが、どの店舗も当分使わないことにした。派遣元か、ケーズなのか知らんが、これからは人権教育に手を抜くべきではないだろう。

前に類似の人種差別発言・誹謗中傷系モラルハザードから大企業の社員を告発した時も感じたが、企業社員向けネットリテラシー教育には、人権啓発の観点が欠落している例が少なくない。それどころか、「SNSに所属が分かる写真をアップすると、悪意あるユーザーが炎上させる」などと、さも自社の社員が被害者であるかのような「教育」をしている事例も見受けられる。

最近相次ぐ差別発言に、それが当て嵌まると思っているなら、大間違いだろう。感情的に追い込まれての一時の失言ならまだしも、差別思想に影響を受けてのことなら猶更だ。

結局、PCのモニタはLG製にした。顧客の潜在需要も掘り起こせず、適切なラインナップに失敗した国内勢の商品はアウトオブ眼中。何だかとっても残念だ。馬鹿な財界人が平均所得を抑え込んだまま、昔ながらのハイエンド家電ばかり出させたりするから、こういうことになるのだよ(了)。

以下の記事も是非お読みください(未公表ですが既に詳細情報も特定しています)。

東電原発は社員まで腐りきってるという話です。

2019年1月19日 (土)

【和製ブラウンズフェリー事故】北電火発が経験した浸水火災【再稼働に一石】

技術者が福島原発事故を眺めた時、一般防災に役立てられることを含めて、少しでも多くの教訓を抽出したいと考える。当然のことだ。

一方で、自らの能力を意図的に低く偽り、警告から目を背けた原子力村の住民がいる。

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往年のNHK教育テレビ番組『できるかな』のノッポさん。作者不詳の恫喝文句が付け加えられ、ネットで流通している。

検証や訴訟の場で責任を問われた者達が「実は工作が苦手だった」「はてはてフム~♪」と放言するのが流行っているが、それで済まされる訳がない。小さなお友達相手の番組じゃあるまいし。

近年、原子力規制庁が問題にしているHEAF問題もその一つだ。今回、HEAFに潜む盲点を明らかにしたい。

【そもそも、HEAFとは何か】

日本語では、「高エネルギーアーク損傷」という。

高電圧、高電流の放電によって金属が気化し、爆発する現象のことで、電源盤とか配電盤と呼ばれる機器の動力回路で発生する。他のケーブルや配電盤/電源盤に延焼するため、とても警戒されている。

アメリカでは2000年代初頭よりNRCが研究していたが、日本で注目されるようになったのは、311以降のことだ。その理由は、女川原発1号機で被災時に発生し、規制庁が研究課題に取り上げたからである。

経緯はこうだ。地震直後は外部電源が生きていた。しかし、発災10分後に常用系高圧配電盤の一部をHEAFによる電気火災で損傷し、起動変圧器が停止。これにより外部電源を受電できなくなったため、非常用ディーゼル発電機での電源供給に切り替えた。

Ntec20161002_fig21_2 NRA技術報告 NTEC-2016-1002『原子力発電所における高エネルギーアーク損傷(HEAF)に関する分析』原子力規制委員会 2016年3月

女川1号機の高圧配電盤がHEAFを起こした理由は、盤内に据え付けてあった遮断器が、地震動で壊れたからである。この遮断器は非常用ではなかったので、耐震性の低いタイプが使われていた。

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【参考1】HEAF火災発生防止対策(国内:女川1号機)『HEAF火災規制化(新知見)に対する事業者の取組み状況および今後の対応について』電気事業連合会
先ほどの写真の盤の中に、遮断器が収められていた。

電力各社や電気事業連合会は、この対策として次のような内容を考えている。

  • 原発の盤用遮断器を耐震性の高いタイプに入れ替える(女川他、各原発で実施済み)
  • 非常用発電機でHEAF火災が起こらないように遮断器(を収納した盤)を追加。
  • 電源盤が故障しても原子炉建屋の回路から切り離せるように、リレーを高性能なものにする。
  • 燃え移らないように、電源室を複数に分離したり、ケーブルトレイを発火源から離して設置する(以前より実施)。
  • 万一燃え移った時のために、難燃性ケーブルや延焼防止剤を使用する(以前より実施)。

対策は、事故が起きないようにする対策と起きた事故が拡大しないようにする対策の2種類がある。ただし、これから紹介する事例を読むと、前者は十分ではないことが分かる。

そう、地震動を気にして研究を開始したことにHEAF対策の欠陥が潜んでいるのだ。

【奈井江火力発電所を襲った水害】

本件が取り上げられなかった理由は単純で、「原子力発電所のトラブル」に拘り過ぎていたからだろう。

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【参考3】国内における火災事例『HEAF火災規制化(新知見)に対する事業者の取組み状況および今後の対応について』電気事業連合会

電事連が提出した資料はNUCIAから火災事例の一覧表を作っている。よって、火力発電所のトラブルは集計しなかった。だが、火発にも原発の参考になる事例はある。

1981年8月、台風12号の直撃を受け北海道電力奈井江火力発電所が冠水した。発災当時も電事連内部などで参考例として各社に情報共有がなされたと思われるが、ここでは、『北海道火力原子力発電ニュース』Vol.43(2000年)に掲載された所員の回顧録「台風12号の直撃を受けた奈井江発電所 」をもとに説明する。

奈井江火力発電所は台風襲来の直前に運転停止操作を実施し、所内の電力を賄うため、外部電源の受電に移行した。

その後、所内の冠水により機器操作用の直流電源が接地で故障し、起動変圧器用の遮断器が制御不能となった。

このため、特別高圧回路を開放することができず、本館1階の4kV高圧母線が短絡接地し、その短絡電流によるアークが室内の制御ケーブルトレイに燃え移って火災を起こし、全館停電となったのである。

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なお、炎上したケーブルは可燃性ケーブルであり、延焼防止剤も塗布されていなかったため、ケーブル延長の8割を焼損した。

【コラム:外部電源・所内回路・起動変圧器・遮断器・母線とは】
電気に慣れている読者には説明不要だが、以下解説。

外部電源とは屋外の変電所につながった送電線のこと。電気エネルギーは電圧が高いほどロスが少なく送ることが出来るので、送電線の電圧は17万Vとか50万Vなどとても高い(特別高圧という)。しかし、電圧が高いことは電気機器を使用する観点からは危険且つ不便なので、発電所の中では一般の工場と同じように低い電圧に降圧する。降圧後は所内回路と呼び、6900V,4160Vなどの所内高圧回路、480V,220Vなどの所内低圧回路がある。

いずれも3相交流だが、3本の線を回路図に書き込むと煩雑なので、1本に省略して表したものを単線(結線)図と呼ぶ。

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d-book 火力発電所・所内回路と付属変電所』P6より青字加筆。奈井江火力は建設時期から上図に準じた構成と推測される。

起動(始動)変圧器とは、発電開始前に外部電源を受電して、所内の様々な機器を動かすためのもの。その他、発電所が停止した際に外部電源を受電するためにも使われる。普通は、ボイラーや原子炉とは別の場所(屋外の場合も)に設置されている。

遮断器とは電気回路の入り切りをするための機器である。奈井江で制御不能となったものは(恐らく)特別高圧用。盤に収納するようなサイズではなく、屋外に設置されたがいしの化け物のような形をしたものをイメージすれば良い。これに対して、女川で壊れたものは所内高圧回路で使用するもので、盤内に収納されている。いずれも入り切りする回路の電圧は高いが、操作用に低圧の直流電源などを使用する。

なお各機器を表す図記号はJISで決まっているが、国際的なIEC規格と同じものを使う方向で2000年頃大きく変わっている。

母線とは、上記d-bookの単線図で横に渡っている線を指す。所内高圧回路や所内低圧回路の特に動力用に使用される導体(銅などでできた平板)。配電盤の奥に設けてあり、それ以外の部分もバスダクトという形で保護されているので、一見では分からない。建屋の外にある主母線になると、交流1相ずつ丸型の配管に収めてあり、相分離母線と呼ばれる。

詳しくは参考文献欄のd-book 火力発電所・所内回路と付属変電所』などを参照してほしい。

ボイラーを原子炉に置き換えれば、原子力安全の分野でよく知られている、ブラウンズフェリー1号機火災事故(1975年)と同様の問題と見ることができる。その原因がブラウンズフェリー事故の原因となったロウソクの炎が燃え移ったことでもなく、女川のような地震とも異なり、水害という所に特徴がある。しかもブラウンズフェリーと異なり、2階の電気室、3階の中央操作室も全焼していた。影響は大きい。

Karyokugensiryokuhokkaido2000no43_2 よって奈井江の事例は津波対策、HEAFの両方の視点から大きな意義を持つ。

【1980年代前半にとられた対策】

電力業界も無策ではなく、福島第一は1970年代末より順次ケーブルに延焼防止剤を塗布しており、6号機に至って全面的に難燃ケーブルを採用して建設された。

当然のことだが、奈井江火力復旧に当たっても、延焼防止剤の塗布や敷地、建屋への浸水防止策が講じられた。

また、奈井江の教訓を水平展開したのか、1983年に発行された『JEAG-3605 火力発電所耐震設計指針』の10章では、盤据え付け位置が配管破壊で冠水、浸水しないことが明記された。

Jeag36051983_p257_2 「10.3.2 屋内開閉装置」『JEAG-3605 火力発電所耐震設計指針』(1983年)
クリックで拡大可

更に、津波想定をしておきそれよりも高い位置に電気室を設けることも明記された。原発の場合は敷地全体を建設時の津波想定より上にする、ドライサイト原則があるが、火力の場合は重要な電気室だけは守るということであろう。

なお同指針は火力発電所の電気室が2階に設置されることが多いので2階に設置するとも述べている。地震の揺れを警戒して地下室に設定される傾向が大きい原発とは異なっている。ただし、原発でも電気室を2階に配置している事例は敦賀1号機などがある。

【外部電源が生きていたまま津波で浸水した場合、福島第一でも火災が発生した可能性がある】

以上、只の昔話ではないことが分かったと思うが、今日的な問題提起としては2つある。

一つ目は福島原発事故分析の盲点。2016年頃までホットな話題だったのは、大津波の想定は確実だったのか、という予見可能性の問題だった。民事・刑事裁判が進んでから言及されるようになってきたのは、「想定できたとして、対策は間に合ったのか」という回避可能性の問題である。訴訟では、回避可能性も後知恵抜きで証明する必要がある(個人的には、原告側にそこまで完全な証明を求めることは酷だと感じているが)。

さて、有名な2008年の15.7m試算だが、その前提条件は福島沖で明治三陸地震と同規模の津波地震が発生することである。津波地震とは、陸上での揺れはそれほど大きくないが、津波の規模が大きな地震を指し、明治三陸の場合、沿岸での震度は最大でも4に過ぎなかったとされている。したがって、この試算では揺れは問題となっていない。

実際の福島事故ではまず震度6強の地震動で外部電源がすべて破壊されたが、もし外部電源が生きていたまま津波が襲っていたら、奈井江と全く同じ環境条件が成立し、電気室、中央制御室等で電気火災の危険が大きかった。これは、後述のように他の被災原発と条件が異なるからである。

福島事故は地震動による電気設備の破壊と津波による施設全体の破壊などが重畳した複合災害である。そのことが却って、それぞれが個別に起きていた場合のリスクを見えにくくしている。このことは、得られる教訓も自ら絞ってしまうことにもなる。

とはいえ、複合災害に誤ったアプローチをしている人もいる。よく地震の影響を強調するあまり「津波は原因ではない。」と口走る研究家がいるが、津波災害に対し、大変傲岸不遜な態度だと思う。申し訳ないが、人間性すら疑わざるを得ない。事故分析はわかっていることから順番にやるしかないのである。

【15.7m想定を公式に採用していたら、福島第一は消防法令不適合となった】

ここからは、回避可能性の議論に戻る。「15.7m想定をもし採用していたら、どうなったか」という「もしも」を考えるということである。

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「壊すために作るんだよ!」――なつかしの工作番組「できるかな」のノッポさんが79歳にして大暴走。(ねとラボ)より

原子力施設も消防法令の規制は受ける。例えば、「発電用原子力設備の技術基準を定める省令」の4条の2には昔から火災による損傷の防止規定があり、その消火設備および警報装置の設備は消防法の規定を準用すると解説にある。

蓄電池(直流電源)は原発にとって最後の砦的な性格の電源だが、消防法施行規則12条では設置場所は雨水が侵入しない場所であることを定めている。

また、消防法を頂点とする法体系の下層には基礎自治体による火災予防条例があり、ここでは直流電源に加えて非常用発電機についても、水が入らない場所に設置するように定めている。

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消防法体系(能美防災株式会社HPより)

こういったことは以前より専門書で注意喚起もなされているものである。

  • 『工場電気設備建設マニュアル』電気学会,1981年 P437-438
  • 『実務に役立つ非常電源設備の知識』2005年8月、P165

なお条例は法律・省令では無いが、ハードロー(法律、省令)と実質同格に機能しているソフトロー(条例、企業憲章等)の代表例である。

なお、実際の例として、中越沖地震の際、柏崎市が柏崎刈羽原発に停止命令を出した。この時は、変圧器火災を早期に鎮圧できず、所内の危険物管理に問題があるとされた。停止直後、安倍首相や甘利経済産業大臣が発電所を視察し、東電会長だった勝俣以下、当時の首脳陣もメディア対応に当たった。結局原子力安全保安院は消火栓の整備や化学消防車の配備を決定し、消火栓は福島事故で注水に使用された。15.7m評価が東電内で揉まれる、前年のことである。

従って、15.7m対策を取る方針に転換した状況下で運転を継続するには、これら設置場所の水密化(水密扉への交換、ケーブル貫通穴のシール等)を完了させるまで、運転を停止する必要があった。消防法施行規則を無視するという選択肢は絶対にありえない。

奈井江で得た知見は15.7m想定を知らされた技術者や規制側の態度をダメ押し的に硬化させる効果を持ったと考えられる。保安院やJNESの溢水勉強会関係者にとっても、上述の民間規格JEAG3605や東電変電部門の「水害対策設計基準」等(後述)は、規制上参考になり得ただろう。

火力原子力発電技術協会で取り上げられた以上、知見の入手は容易であったし、日立と東芝により建設・災害復旧された発電所のため、メーカー経由でのノウハウ入手も可能であった。

また、『東電労組史』各巻の記録によると原子力開発初期に火力部門から多数を転籍させていた。また『電気情報』1993年3月号の池上亮元東電副社長インタビューによると、福島第一は他の原発と技術交流する以前より、東電の鹿島火力発電所とも技術交流していた。こうした事情から、福島第一は少し古い火発に詳しい者が多かったのである。

要するに、15.7m想定を採用した場合、福島第一は津波対策を終わらせて再稼働していたか、停止したままかの二択しかなく、回避可能性は十分に成立する。

  • 対策が終わっていた場合:過酷事故は起こらない。
  • 津波対策工事未了で停止していた場合:①調達に期間を要さない車両類、緊急資機材程度は高台に保管となっていたと思われる。②また、核燃料は十分冷却されており、電源復旧の対処時間には日単位での余裕が生じる。③更に、炉内圧力は大気圧に近いため、注水が極めて容易である。よって過酷事故には至らない。

だから、東電や国は賠償責任を取らなければならない。東電は法廷で、運転を継続しながらの津波対策を2008年から始めても間に合わなかった、という前提で主張しているが、そういうやり方は想定津波が主要な建屋の敷地より低い場合のみ(福島第一では10m以下)許されることだったのである。

Yomiuri20120219 『読売新聞』2012年2月19日より(『福島第一原発事故・津波被害に関するサイト』管理人撮影のものを引用)。

読売新聞が作った比較図を見ると違いが良くわかる。福島第一に記載してある6.1mは東電の正式な想定だが、捨てられた15.7m評価は他サイトと異なり、建屋の敷地高より上なのである。女川や東海第二は敷地高より津波想定が下なので、原子炉建屋の水密化は法令上も、また物理的にも必須では無かったのだ。

【再稼働の安全審査にも影響】

二つ目は、再稼働原発の安全審査にて、水害(津波,高潮,洪水,溢水等)或いは雪害,塩害,果ては工事用車両やヘリ、ドローン等の接触によるケーブル接地からの波及事故にどう対応するのか、ということ。

私もメーカー資料や工認図面を読める立場にないので、公開資料の範疇での議論となるが、規制委員会も電事連も、そのような観点でHEAFを扱っていないようだ。

Fupc_heaf_kangaekata2_20170613 2.電源系統設計を踏まえたHEAF火災対策の考え方『HEAF火災規制化(新知見)に対する事業者の取組み状況および今後の対応について』電気事業連合会

上図を見ると、起動変圧器や予備変圧器の上にある遮断器(長方形の図記号)でのトラブルについて何も設計上の見解を示していない。資料を読んでいくと、外部電源を受電中に所内高圧回路が故障した場合や、外部電源を喪失した場合のHEAFは想定しているが、水害等により外部電源そのものが悪さをし、HEAFに波及する可能性は考慮していないように思われる。

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【参考7】規制側質問回答補足(D/G受電遮断器の追加または移設を行う場合の課題)『HEAF火災規制化(新知見)に対する事業者の取組み状況および今後の対応について』電気事業連合会

もっとも、東海第二のように、元々電気室が狭いと建設記録にまで書かれているプラントで、遮断器を収めた電源盤の増設が出来るのかは疑問だ。電事連が資料にここまではっきり書くということは、日本原電の対応に困惑している証拠。

しかし今後は水害による地絡リスクそのものを減らす対策も必要だろう。

電気技術者の中には、HEAFの事例を見て、自家用電気設備内のトラブルが、地域の配電線全体を停電に追い込む「波及事故」を思い起こされる方もいるだろう。波及事故でも高圧電源の短絡はありふれており、浸水による制御電源の喪失も報告されているからである。つまり、それだけノウハウの蓄積はあるということも言える。

以下の観点から課題のみ示す。

【シーケンス制御的アプローチ】

制御電源(直流電源)の設計を見直すこと。例えば『受変電設備をシーケンス制御する』(電気書院,1981年6月)「5.4 制御電源」には、制御電源は運用パターンを考慮し、範囲を区切って分割しているのだという。また、保護の観点より見た地絡、電源喪失時の検出技術(64Dと呼ばれる地絡検出継電器による監視など)も確立していた。

ただし、同書刊行直後に発災した奈井江の例を見ると、検出だけでは十分ではない。制御電源の分散配置などによる回復や、遠方監視ではなく現場での手動を含む操作について考慮が払われていないといけない。例えば、全てを一か所から給電するのではなく水密化された電気室にパッケージ化された直流電源盤を設けることも検討に値するだろう。

柏崎刈羽などは蓄電池を多重化しているようだが、直流地絡対策としてどういう考え方をしているのか、資料を読んでも文章では明記されていない。一方で正興C&Eの資料などを見ると、地絡保護技術も年々進歩はしているようである。

遮断器側の検討も必要だ。「シーケンス図読み方のポイント」『産業技術者のためのシーケンス制御ガイドブック』(電気書院,1974年)には、「電源喪失時の動作は安全側か」という段落があり、対象機器の特性をよく検討しておく旨が記載されている。なお、雑誌記事をまとめた同書には遮断器、断路器の制御も詳しく記載されており、主回路に通電したまま操作出来ない断路器の場合は、インターロックが充実しているという。遮断器の場合も、水害を想定して安全側の動作をするようにインターロックを追加することも考えられる。

電事連の資料では非常用ディーゼル発電機は運転継続のため保護をパスするなどの設計思想があると述べているが、外部電源の場合は現行の規制での位置付け上、そこまでの運転継続性は求められていないと思われる。そういう点でもインターロックによる水害影響阻止の思想は受け入れやすい。

なお、制御電源に低圧交流を採用したり、古い設備では圧縮空気を使用しているケースもあるが、設計目標に厳しい水災害を考慮すべきという点では同じである。

【建築設備的アプローチ】

これは、建屋の内外で分けて考えるべきだと思う。

現状特に注意が必要と思われるのは建屋の外部である。開閉所等の屋外機器に配線されているケーブルなどだ。収容しているトラフやダクトの水密化、耐水ケーブル化が達成されているか、改めて検証する必要がある。

何故なら、規制庁や電事連の資料を見ても、原因に老朽化や施工不良は挙げているが、水害(災害)への言及は無いからである。なお、奈井江火力は被災時に運転開始10年程しか経過しておらず、老朽化が原因ではなかった。

東電が編纂した『変電技術史』(1995年)第11章を読むと、幸いなことに1977年「水害対策設計基準」を制定し、建屋外部の防護策についても色々定めていた。Tepcohendengijutsup563

「第11章第1節 変電所の設計」『変電技術史』東京電力(1995年)P563

また、同書P564によると1989年以降、周辺環境の変化等を踏まえ毎年各変電所の対策をチェックするように定めた。こうした事実は東電や規制委員会等の公開資料で触れていないので、発電所構内の変電設備に展開出来ているか(部門別に蛸壺となっていないか)を確認すべきである。

一方、建屋内部は福島事故後水密化工事済みであり、水災害リスクは根本的に除去されつつあるが、接地(地絡)防止処置については注意が必要だろう。

建物を水密化するには二重の防護策が取られている。第一が建屋外部への出入り口の水密化。第二が、出入口を開放しっぱなしで被災する等、建屋の中に水が入ってきた時に、重要な電気設備が置かれている部屋への浸水を食い止めるための、各部屋への出入り口の水密化である。

つまり、建屋の出入り口から水が入ってきて、各部屋の防水扉が最後の盾となっている時に、浸水した通路等に布設されているケーブルが接地して、事故を貰わないようにするにはどうするか。これを考えなければならない。

HEAF対策は、さほど大きな金額を投じなくても実施出来、作業員の被ばくリスクも基本的には存在しない。破局噴火など人類の科学水準では不可能なレベルの災害とは性格を異にする。しかしきちんと対処しておかなければ、また、どうでもいいようなトラブルが発展して大事故に至る。逆に言えば、水害型HEAFのような低いハードルは、電力と規制関係者の倫理水準がどの程度なのかを推し量る一つの材料ともなるのである。

【参考文献・Webサイト】

19/1/22:炉内圧力、および地絡について柏崎刈羽・正興C&Eへの言及追加。

19/1/23:中越沖地震で柏崎刈羽が消防法に基づき停止命令を出された件を追加。

自分が標的になると立派な発言をする指原莉乃さん

松本人志については以前「差別吉本芸人への怒り」という記事を書いて批判したが、また、『ワイドナショー』にて打ち切り検討レベルの問題発言が発生した。

以前、メンバーによる教唆があったと被害者から告発されているNGT48暴行事件で、HKT48の指原莉乃が松本人志から受けた侮辱を公然と批判している。

30年以上前、破天荒な大御所芸人に「チンピラ」と本質を見抜かれていた松本に媚びへつらう。そんなことが如何に無意味かを、3万に達するRT数と17万の「いいね」が示している。

指原さん、立派である。何せ1週間前は同じ番組で彼女自身が移民の仕草を差別していたからである。

バカリズム、指原莉乃が外国人労働者問題で差別丸出し! 外国人の接客を嘲笑し“日本語がちゃんと喋れる人を”論(リテラ)

女性は人数比で社会の大体半分を占めるが、「移民」は1~2%しかいないからね。目の付け所が流石です。私など外国人店員にそんなことしようなんて思いもつかなかった。

人間、自分は博愛だと思ってる者でも(多少の)差別感覚はあるもので、秋元康に対して「半世紀前なら女衒ですよね」と嬉しそうにインタビューしたキングスマンな外国のテレビ局(48系グループに対する認識が松本と同じ)やme too運動に便乗してる野良犬にもその片鱗は観察できる。だが、こうも短期間での急変を見せつけられると、悪いが率直には応援できませんね。同じ思いをして間違いに気づいた例として、最近では小説家の王谷晶とか、ネオナチを辞めたドイツ女性のインタビューなどがあるが、そういう内省が皆無。

下記は高須クリニック医院長に対するものだが、一脈通じるので紹介する。

そもそも、『ワイドナショー』などという、地上波でも突き抜けて下劣なコンセプトの番組にかかわって社会問題に首突っ込むから脳天にアホ毛のごとくブーメランが突き刺さるんじゃないの。俺みたいにアイドル関心無しで議論してる人一杯いる世界ですよ。松本の発言は事実無根の誹謗中傷だしレイア姫やってた人みたいに自分でネタにして遊ぶことがしなやかな生き方とも思わないが、指原さんとアイドル応援団は「ニーメラーの警句」を学んで、長い物に迎合した発言が多い自らのおかしさに気づいてほしい。

2018年12月30日 (日)

「その筋の権威な広河さん」を知らなくても社会運動は出来る

フォトジャーナリストの広河隆一がDAYSJAPAN編集部に出入りしていた女性達に性的暴行を働いたというスクープが週刊文春から出た。

反反原発は勢いづき、リベラル左翼陣営でも多くは広河を批判している。ともかく今のところ、被害者叩きの流れになっていないのはまだしもである。

そういえば、旧DaysJapanの版元だった講談社の漫画にこんなセリフがあった。

You_are_under_arrest_file31

藤島康介『逮捕しちゃうぞ』(講談社)2巻より

日頃から歴史修正の常習犯に事実を突きつけてきた論客、外教氏の指摘は的確だ。

しかし、Twitterを観察していた所、極一部に、党派性を剥き出しにして被害者そっちのけで反反原発の広河批判の揚げ足を取ろうとしている者がいた。著名な論客ではないので具体的な引用はしないが、止めておいた方が無難だろう。この件に関して一義に悪いのは広河、次に(権威主義的な)黙認者達だからである。

また、反反原発な人達や一部カメラマンによると、知らぬ存ぜぬを貫こうとしている人がいたようだ。

確かに、Twitterで言えば、社虫太郎氏のように四六時中ネトウヨの性規範を馬鹿にしてきた人にはばつの悪そうな話ではある。私もオタクを輩出してきた理工系出身だが、ネトウヨでも、性的なことに興味が無い、又は二次元ゲームの消費等に留まっている者は、ああいう物言いは言いがかりと取る。だから、暴行魔がリベラルから出ると容赦ない批判に繋がるのである。

一方で、自分のことを考えてみたが、右にも左にも彼のことを運動の司令塔であるかのように権威として評価してきた人達がいるようだが、「広河隆一って誰?知らんわ」という感じだったので、「知らぬ存ぜぬ」だったのは私だということになる。

そう、私は広河隆一の本を読んだことが無い。DAYSJAPANも買ったことが無い。

勿論情報を求めて本屋や図書館には通っている。だから、広河の著作は原発関係や国際紛争の棚で背表紙を見てはいたものの、後述の理由からノーマークだった。

ここで言いたいのは血統の良さを自慢する類の行為ではない。広河の影響など受けなくても、というか広河に限らず、その筋の権威をいちいち持ち出さなくても、社会運動も研究も出来るということだ。

311前に私が居た推進陣営でも似たような違和感を感じることはあった。あちらはあちらで特定の「先生」を祀り上げる信者達がいた。東電のへぼ担当だけがやっていた訳ではないのである。しかし、原発の構造を学ぶのに、その先生とやらの名前を印籠のように持ち出すことが必要だろうか?この違和感が後に専門家不信につながっていった。

原発の問題一つとっても、個別具体的な課題となると相応の勉強も必要だ。1人でカバーできる権威などいない。Twitterでは原発関係の問題なら何でも流暢に語っている人が多くいるが、ウォッチ歴が長いからそう出来ているか、ニュースを次々論評しているかが大半だ。自分で調べ物や取材をしながら「広汎に渡って」語ると言うのは、普通は出来ないことである。

ある原発関係の懇親会で、Twitterで人権・情報公開について立派なことを述べている著名な方が居た。私は当時、偶々その人が過去に手掛けた案件に近い問題を扱っていたので話を振ってみたが「ふーん。」で終わり。けんもほろろな対応を取られたことがある。まぁ、無名だからしょうがないけどね、と納得した物だった。Twilogで言行を確認したところ、広河やパフォーマンスに秀でた著名人達を持ち上げ続けた末、スクープ後に態度を急変させていた。正直自業自得ではないかと思う。

私の場合、広河に関心を持たなかったのは、彼がやっていることがこのブログで問題提起してきた領域と殆ど被っていないことにある。事故前の津波の問題や、再稼動の問題で、広河の言が役に立つ場面は殆ど無いと思われる。

もう一つ、このブログを書くにあたって、只の報道のコピーは避けていることもある。例えば被曝。私は個人としては20mSv帰還反対論に立ち、菊地誠等の言行には批判的だが、そのジャンルでの独自研究はしていないし、裏取りにリソースを要する分野なので、特に新規性の強い記事は書いていない。プラントの安全性の問題についても本業は原発設計者ではないので、格納容器内部の問題は、教科書的知識と対抗専門家の主張を確認・紹介するにとどめている。

更に辛辣なことを言うと、広河の主張自体も、誰かの拝借・後追いがかなりあると反原発側の一部には見なされていたように思われる。例えば、ある著名なジャーナリストの過去のネット書き込みを確認してみたが、広河への言及はゼロ。また、元プラント技術者で原子力市民委員会の筒井哲郎氏は、Amazonで公害、原発関係書を膨大な量レビューしており、中には広河と被る、福島やチェルノブイリの住民避難の問題や被曝の問題に触れた作品も多い。しかし、広河の著作のレビューは全く見つからない。過去に目にした記憶も無い。

広河は7人も被害者を出し、証言から常習性が高い。反被曝についても言行不一致の様だ。となると、70年代のイスラエルのキブツ時代から全部検証しなければいけないとすら思う。

おしどりマコ氏などの追記を読むと、仕事上の付き合いがある女性全般に声掛けしていたようだ。資生堂が『ダルちゃん』というマンガを自社ページに掲載していたが、その時の違和感に近い。何で、仕事上の付き合いしかない相手といちいち性的関係を持たねばならないのだろうか。職場恋愛を否定するものではないが、今回はそれですらなく、意味が分からない。

そして、未だに分かって無い者が左右に散見されるが、性犯罪は党派を選ばない。

縁起でもないツイートだが、広河と違って、普段よく参考にしている方がそういったトラブルを起こした場合のことは、一種の予防的思考として考えたことはある。上記の添田氏が当事者となったケースを想定すると、得意分野は情報開示なので、開示された文書自体は躊躇なく利用し続けるだろう。ただし、コメントを無批判に引用し続けるかと言えば、当然一言断るだろうし、代替性のある一般的コメントの場合は引用はしなくなるだろうね。

今回は、その筋の権威を知らなくても、元来それぞれが持っているカラーを維持したまま運動は出来ることを述べた。勿論、既に誰かが言っていることを自分が最初に思いついたように装って書いたり、無勉上等路線を奨励している訳ではないことは付け加えておく。

2018年11月27日 (火)

【TrinityNYCさん】出典明記しない奴が悪いというだけの話【要出典】

百田尚樹の『日本国紀』で引用元を明記しないコピペが相次いでいると指摘されている問題について、方々から突っ込みが入れられている。

編集者がストップをかけるよりはマシであろうよ。ネトウヨ(特に中高年)は期待するだけ無駄だし。

そう思っていたら、次のように話を続ける人がおり、違和感を感じた。

ああ、TrinityNYCこと通称鳥姉さんの自分棚上げ適当日本人論か(めいろまに似てきましたね)。

何故違和感を感じたかといえば、20数年前中学校で何かの作文を書いていた時、教師から引用とは何かを教えられたからである。

そう思って調べてみたら、今は学習指導要領に書かれているようだ。10年近く前に、文科省に設けられた「教育の情報化に関する手引」作成検討会で当時の指導要領が紹介されている。

1.小学校における各教科での情報活用能力の指導

<国語>

 国語科の目標は,「国語を適切に表現し正確に理解する能力を育成し,伝え合う力を高めるとともに,思考力や想像力及び言語感覚を養い,国語に対する関心を深め国語を尊重する態度を育てること」に置かれている。各学年において「A話すこと・聞くこと」,「B書くこと」,「C読むこと」を通じて情報を得たり,知識や情報を関連づけていくこと位置づけられている。国語科では,言語を中心に取り組まれるが,小学校第3,4学年の読むことでは,実際に引用や要約をする際に,文章の表現や情報だけに限らず,図表やグラフ,絵や写真なども含むことに留意し,引用する部分をかぎ(「」)でくくり,出典を明示することや,引用部分が適切な量になることなどについても指導することが求められる。このことは,著作権を尊重し保護することになる。」とされ,言語以外の情報も読み取ることが求められ,情報モラルの指導に関わる内容もとりあげられている。

教育の情報化に関する手引」作成検討会(第4回) 配付資料 2009年1月29日(文部科学省)

下記の資料を見ると、学年ごとに教える内容が深度化しているので、何度も機会は与えられているのだろう。学校によっては多忙を理由に教えて貰えないかも知れないけどね。

資料1(新学習指導要領における著作権に関する指導事項の整理

要するにあれですよ。大半の人間は学校で習ったことなんて、全部覚えちゃいない。私だって中学での話は偶々覚えていただけ。その一方で、人のミスは気になると。百田の場合は1個2個間違えたのレベルでは無いので、普通なら回収レベルのワースト例とは思うが、根本的にはそれだけの話です。

ついでに言えば、「引用の際は出典を明記すること」程度のガイドはFラン大でも載せており、「引用の仕方」などで検索すれば山のように出てくる。従って、少なくともこの点を理由に海外に留学する意味は無い。むしろ、陰険な学歴ブランド自慢の類と思われて嫌われるのがオチ。

まぁ、時と場合によっては今のように根拠のない噂で世相が乱れることもあるから、問題は問題ですがね。TrinityNYCさんみたいのはあまり有効な論法とは思えんです。

百田に突っ込みを入れてるアカウントを見てても、通称松田すんすけさんなど、自身が歴史認識で批判されている人がいる。そんな脛傷者混じりとは言え、百田とその本に群がるバカ共に対してはまず国内勢から突っ込みが入っているのに、この人は今更何を言ってるのだろうかという感じです。

まぁ元々、リベラルとか意識高い系も光があれば影の部分もあり、こういう所はあまり信用していないのだけどね。学歴や居住地、場合によっては職業経験をブランドと勘違いして頭使わず棍棒で殴ってるだけの人も多いから(頭が悪そうに見えるから辞めた方がいいのに)。めいろまこと谷口真由美氏を見ていれば分かるように、段々暴走して「ああ、単なるネトウヨの類友ですか」みたいになってしまう者も良く見かける。また、殴られたネトウヨの中でも地頭のいい奴は、その辺の機微に感付いて付け込んでいるのは興味深い。

TrinityNYCさんがネトウヨになるとは思えないし、ニュースを紹介してくれるのはありがたくもあるが、ブースカちゃんと同じで口の軽さは思想信条では無く性格の問題だから、反面教師にしか見えんのよね。

2018年11月10日 (土)

【おしどりマコ氏に加え】東電下請あさくら氏が晒したマンスプレイニング【あの妹まで】

あさくらめひかり氏(Twitterアカウント@arthurclaris氏、以下あさくら氏)は何故ネット上でPA(パブリックアクセプタンス、要は宣伝)に励むのだろうか。

Arthurclaris_1059097150036959232 ツイートURL:https://twitter.com/arthurclaris/status/1059097150036959232

冒頭で上記のようなツイートを固定する程の熱の入れようである。東電のかなり上位(一次位)の下請で働いているようだが、これほどの態度は関係者でもあまり一般的ではない。

【デマバスターとしてはセコい】

最近は2018年9月に立憲民主党から出馬を表明したおしどりマコ氏とその擁護者に反応して、日々上から目線でバトルを繰り広げている。

 

冒頭画像はその一例だが、下記のようなことも書いてる。

これらの反論ツイート、元を辿れば私のブログ記事「福島第一排気筒問題で一部作業員、偽科学関係者が振りまいた安全神話」という、おしどり氏の問題提起をフォローする目的で書いた記事にリンクしている。つまり、私のブログを確実に認知した筈なのに攻撃してこないのは、以前、私に社内資料自慢を晒されて恥ずかしいと思ってるとか、碌でもない理由なのだろう。

後、私のサイトも「放射線脆化で排気筒倒壊」とは書いてないのだが、ブログを紹介してくれる方やbotには多少言葉が拙くても感謝してるので、あさくら氏のやってることはその意味でも迷惑。

なお、「放射線劣化」と「マコ」を外して書き直したツイートには執筆時点で直の返信は無し。

妹様には感謝申し上げます。

【あのへぼ担当すら二の足を踏む筋悪な東電擁護】

論争から2年半経過したが、私の評価は基本的に変わらず、東電信者を信用していない。一例としては、あさくら氏は東電の目視検査を盲信し、何の懸念も表明しなかったが、1年後、東京新聞が新たな破断個所を報道した件について、沈黙していることがある。

正確には、この件以外を材料に非難ツイートするようになった。その前に礼の一つも述べたらどうか。

その後東電は、目視検査にドローンを投入し、破断個所が増えても耐震性は変わらないとの主張にシフトしたが、これも当てにならないと見るべきだろう。

何故なら、ドローンを使用したところで目視検査には限界があるからである。

煙突のエンジニアリング企業であるツカサテックのウェブサイトを改めて見てみる。

 

【鋼板製煙突】リンク

検査のランクはA~C型の3コースに分かれており、診断結果に確実性が持てるのは、厚さ計など各種検査機器を使用するC型だけとなっている。

【鉄塔支持型煙突】リンク

簡単な一次点検、詳細な二次点検に分かれ、一次点検では板厚は梯子、プラットホームを使用して、超音波板厚計により計測し、煙突内部のライニングも撮影する。一次点検で異常が見つかった場合は二次点検を実施。ゴンドラに人を乗せて板厚計、レンチ等の治具を用いる、となっている。

しかし、福島第一の排気筒は下部を中心に高線量部があるため、こういった検査は不可能だ。

原発の地震想定、基準地震動についての説明も同様で、「倒壊の危険があるから解体」と書いていないのも当然である。上記の事情を汲んだ霞が関文学と同種の、当たりさわりない表現に過ぎない。

強い言葉で否定して後から言い訳。これである。

なお、実は、一連の論争にて、お仲間から師匠格と目されているへぼ担当(アイコンはこちら)は、あさくら氏の主張を全く紹介していないし、自ら排気筒の件で弁明もしていない。

へぼ担当は腐っても技術者である。当然だろう。それだけあさくら氏の主張は筋が悪いのだ。

【排気筒問題は誰が議論してきたのか】

そんなことよりあさくら氏と排気筒の経緯を見ていて気付いたことがある。それは、相手が女性だとより攻撃的になるということ。いわゆる、マンスプレイニングである。

マンスプレイニングという単語は原子力や理工系で使用される語では無い。Wikipediaの説明をそのまま引くと、男を意味する「man」(マン)と解説を意味する「explain」(エクスプレイン)をかけ合わせたかばん語。一般的には「男性が、女性を見下ろすあるいは偉そうな感じで何かを解説すること」という意味である。

実は、排気筒の問題が議論されるようになったのは、おしどり氏の東洋経済記事が切っ掛けではない。以前から他の人達によって問題提起されていたことである。

著名な原発産業関係者・(元)技術者が排気筒問題に何時から参戦したのかを追ってみよう。

【2013年】

東電発表時に、ハッピー氏がこの問題に言及したのが嚆矢だろう。

そこにオノデキタこと小野俊一氏(元東電原子力部門技術社員)が続いた。

当時、ハッピー氏は福島第一で働く最も有名な原発作業員であり、小野氏もネット上では多くの耳目を集める存在だったから、あさくら氏が知らない筈はないのだが、彼が直接言及したツイートを発見することは出来なかった。(小野氏のツイートは拙いが、職歴等から判断すれば、セシウムのため人によるメンテが不可能という趣旨だと考える。)

【2014年】

 

化学プラント設計者の集まりである「プラント技術者の会」にて筒井哲郎氏がこの問題に対する技術提案を公開した。

IRID技術提案その1 1&2号機スタック転倒防止

筒井氏はTwitter上での知名度は低いかもしれないが、プラント技術者として半世紀にわたる経験を持っているばかりでなく、大変な勉強家でもあったため、311後の脱原子力運動で、技術問題を提起する中心人物の一人として活躍されている方である。

別に論争を煽るつもりは無いが、原発推進派の技術者にとって、反対派の技術者の方が論敵としての重要性は高いと考えるのが普通の相場観だと思う。しかし、この時もまた、あさくら氏は何ら言及も反論もしなかった。

なお、現在は東電がロボットとクレーンを用いた解体計画を策定したので、誰でも手軽にその内容を読み上げることができるが、当時、そのような便利な『台本』はPA師に与えられていなかった。

【2015年】

赤旗がこの問題を取り上げた。

福島第1原発 排気筒 耐用基準超えか専門家 腐食進み「危険な状態」倒壊なら放射性物質飛散も」『しんぶん赤旗』2015年2月20日(金)

この記事は直接は技術者の手になる訳ではないが、一般論として、日本共産党の情報収集力に一定の評価が与えられることも多いため、取り上げる。

 

上記のように、あさくら氏は赤旗を購読する家庭に育ち、現在も投票先は共産党と称している。後者は疑問だが、前者は人格形成上「親の思想に反発するというパターン」に合致するため、信頼性は高いと考える。そういう人は、赤旗電子版などの記事に目を通すものだ。

しかし、この時も彼は赤旗の排気筒記事に批判は加えなかった。

 

2018年11月に入ってからの言い訳。ブロックなどTwitter外から見ればどうということもない。何より、赤旗は政党機関紙ですがね。

【2016年】

おしどり氏が採り上げるとあさくら氏等は大騒ぎを始め、何かにつけて粘着するようになった。数が多いのでまとめのみ紹介する。

イチエフ排気筒の話 - Togetter

いや、2年半後の次のツイートだけは取り上げる。

支離滅裂。「悪くはなかった」なら今までの「おしどり氏に対する」誹謗は何だったんだろうね。

なお、東洋経済の記事を読むと、おしどり氏は広瀬隆氏からこの話を振られているのだが、解説をフォローした広瀬氏への批判はほぼ皆無だったことも付け加えておく。かつては社会現象までなった人物で、311後も活動されている方なのに。

また、Twitter上ではコロラド先生こと、工学博士で40年来の原子力業界ウォッチャーである牧田寛氏も参戦したが、あさくら氏は牧田氏にはあまり関心を示さず、おしどり氏への粘着を継続した。

おしどり氏への粘着の仕方も独特であった。彼女は複数の現場関係者の情報提供を受けていることは度々公言しており、それ故に公安も関心を示した。また、竜田一人を含めて、原発ライターや作業員の手記を見ても、東電の方針に反発する者の存在は何度も示されているが、あさくら氏はそうした支援者達には目もくれず、おしどり氏に異様な熱意を見せた。

なお2016年から2018年8月末まで2年半続いたバッシングは、全て彼女の政界進出宣言の前の出来事である。

この間、上杉隆が都知事選(2016年7月31日開票)に立候補したが、あさくら氏は上杉批判には、おしどり氏に対する程の労力を投じていないようだ。上杉氏に対する批判は立候補を表明する以前のツイートが目に付く(なお、私は上杉氏の活動には疑問を多く感じることを付け加えておく)。

「政治の場に上げるべきではない」は、後付の理由に過ぎなかった、という事も明白だろう。

【2018年】

11月、ネトウヨ兄のデマを正す妹bot (@demauyo_tadaimo) というTwitterアカウントがこの問題をテンプレート化して発信すると、真っ先に反応した。現在は、冒頭で紹介したように彼女への反論をツイートトップに固定している。なお、言うまでも無い事だが、ネトウヨ兄のデマを正す妹とはbotなのであり、作者が女性とは断定できない、筈である。にも拘らず反応した、という点に注目したい。

なお、原発問題全般において、彼が自発的に長期間攻撃している対象は、「反〇〇」(〇〇時事問題で変わる)といった大きな括りを除くと、あさくら氏に直接批判している人を除いて、余り数は多くない。

これを、マンスプレイニングと言わずして何と言うのだろう。

まとめると、あさくら氏はハッピー、小野俊一、筒井哲郎、牧田寛の各氏(それと私)のような男性技術者や原発作業員、赤旗の様な性別を感じさせないメディアの批判はスルーするが、おしどり氏や女性を模したbotには、技術者でなくても強い関心を示す人物である、ということだ。むしろ、技術者というハードルが無い相手だからこそ、お得意の東電エンブレムチューンで威圧出来ると考えたのだろう。

でも本物のエンブレムチューンがそうだったように、そういう態度はダサいよね。

【黙って廃炉作業してれば由】

以上が、この2年半で付け加わったあさくら氏の失敗だが、彼は最近、言動の横柄さで反感を買い、nagaya2013氏他数名のTwitterアカウントから猛烈な反撃を受ける結果となった。確かに馬鹿な奴だと思うが、東電の中枢や稼動中の原発で重要な職務に就いてる訳でもないので、私は勤務先や実名暴きまでしようとは思わない。なお、私は毎日新聞日野記者による復興庁参事官暴言ツイート暴露事件は、全面的に支持している。

ただ、あさくら氏が今後も突っ走り続けるのであれば、新たな攻撃者を呼び寄せることになり、以下のへぼ担当が辿ったものと全く同じ道を歩むだろうと警告しておく。

 

 

 

 

その時、東電は貴方を守るのだろうか。

18/12/7:牧田氏の指摘を反映し「30年」を「40年」とした(ちなみに、私自身は浜岡と電気の史料館、三菱重工みなとみらい技術館、港湾技研の津波実験見学、国会図書館初入館、電験初受験がいずれも2005年から2006年で、それ以前はウォッチと言える程のことは何もしていないからまだ13年である)。

2018年9月26日 (水)

【竜田一人】東電が決めたフクイチという愛称を穢れと罵る推進派【井上リサ】

最近福島第一原発の呼び方に関して、おかしな発言をみかけた。

「イチエフ」だってカタカナでは?

調べてみると前からそんなことを言っている。

井上リサさんは私設原発応援団として各地の原発周辺の小旅行を企画運営されているプロのPA師。今アカウント名を「— 井上リサ☆10.6柏崎刈羽紀行」にしてるみたいだけど、どうせならへぼ担当に事の顛末聞いてみたらどうだろうか?彼の最初の配属先は福島第二で、時期からすれば、後で紹介する小野俊一氏とは違い、リアルタイムに見聞していた筈なのでね。

こういった発言で思い当たる人物と言えば、竜田一人。代表作『イチエフ』の冒頭シーンのセリフ「1Fをフクイチなんて言う奴はまずまずここにはいない」である。まぁ後述のようにただのでまかせなのだが。

彼のツイートを読み進めていくと、フクイチという言葉が偉く気に食わないらしい。

彼等の様な怒れるPA屋(パブリックアクセプタンス、要は宣伝屋)達ばかりでなく、現役・元関係者にも変な固定観念が蔓延している。

・今日は俺たちの職場、"1F"に皆様をご案内しよう
・1Fは「いちえふ」と読む
・現場の人間 地元住民 皆がそう呼ぶ 1Fをフクイチなんて言う奴はまずまずここにはいない

 まさしくこのとおり。以前「フクイチ最高幹部の独白」と言った書物が出ましたが、現場の人間が自分たちのことを「フクイチ」と言うはずがないのです。一体なぜ、このような題名にしたのか(書かれている内容をよめば、確かに現場取材したことはわかりますが)私には理解できません。「いちえふ」「にえふ」と呼ぶのが、東電・地元の習わしです。この単語を間違って使っている人間は、100%現場の経験がないと断言してよろしい。

小野俊一「モーニング掲載「いちえふ」-元原発技術者としての目から」『院長の独り言』2013年10月22日

だそうである。

東京人が使うんだそうだ。

ところが、(残念ながら?)彼等の主張は誤りである。特に井上さん、「穢れ」とか安易に使うような話じゃない。

何故なら、「フクイチ」とは東電が1990年代から2000年代にかけて、地元向けPRで盛んに使用していた愛称だからである。

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論より証拠と言う感じでしょ。そのまんまのタイトルな広報誌があった。本店の社報ではここまで強調していないから、東京の言葉とは言いかねる。

次の画像も興味深い。

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『共進と共生 福島第一原子力発電所45年のあゆみ』P29

このように、地元住民への広報誌の他、1997年以降、毎年10月には発電所で『ふくいちふれあい感謝デー』なるお祭りもやっていた。ずっと住んでいる古株なら知っていると思うのだが、彼等は何をしていたのだろうか。

1993年には本店勤務となった小野俊一氏が1996年5月に初開催された『ふくいちふれあい感謝デー』を知らないのは無理もないことだ。

しかし、@mikunyoさんの場合は悪いが、ご尊父様の話をちゃんと聞いてたの?と言いたい。何せ、次の『政経東北』PR記事の最後の段を読むと、毎年4000人も来いてたそうだ。かなりの地元民が知っていることになる。

 

Seikeitouhoku199905

『政経東北』1999年5月号

ちなみに2001年には物揚場で「ふくいちふれあいフィッシング」も開催している。参加者は以前ブログで採り上げた剥き出し海水ポンプを背にして悠々と釣りを楽しんだに違いない。

これは、浜通りの方らしさを感じるコメントですね。

どうしてこの方の印象に残らなかったのかということについては、発信する側の問題もあったと思う。上記のイベントは2002年に東電が例のトラブル隠しの不祥事を起こして社長引責辞任、全プラントが検査で停止したのをきっかけに何年か自粛された。他に2001年に911テロもあったが、その年の10月13日にはふれあい感謝デーを開催しており、警備強化は最大の理由とは思われない。ふれあい感謝デーは2007年10月に再開された。

なお、2010年には「ふくにファミリーデイ」なる職場参観も存在した。

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「ワーク・ライフ・バランス」を考えるきっかけづくり”家族の職場参観”『電気情報』2010年4月

今思い返せば、中越沖地震対応とバックチェックで東電全体としては多忙だったと思われる時期に、よく開けたとある意味感心する。また、「ふくにファミリーデイ」が企画されたのは311後賠償問題で矢面に立ち、女性問題で辞任した石崎芳行氏が所長だった時だ。元々優秀なPAを打てる人物として、ある意味評価もしていたが、職場参観などを見ていても、ネットでのリンチを伴った恫喝的なPAよりは健全で好感も持てる。

 

 

どちらの呼び方も正当性がある以上、何を選ぶかは好みの問題。職場としていた方には「イチエフ」が愛着があるのは分かる。

 

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ただ、自業自得で親しみを込めた「ふくいち」(「ふくに」)のPRがしぼみ、311でトドメを刺された一方、業務でしか使わない「イチエフ」(「ニエフ」)という無味乾燥な言葉だけが生き残ったとは言える。これはある意味、地域社会との関係を表象している。311以来、原発周辺は文字通り仕事関係の人ばかりで、暢気に祭りなど出来る風景は無い。

 

「フクイチ」批判者にはそれが見えていない。見えていないばかりでなく悪意の無い関係者・元関係者まで地域の記憶を改ざんしかかっているのは、とても興味深い現象だと思う。

私は、発電所の呼称に拘って現場感を演出しても仕方がないと思っている。そもそも、「イチエフ」という呼び方も、1974年以降に生まれたものである。何故なら、その年まで福島には原子力発電所は1ヶ所しかなく、今の福島第一原子力発電所は単に「福島原子力発電所」と呼ばれていたから。古い文献ではその名前で載ってるから、CINIIで試してみるといい。

それが福島第二の建設準備が本格化し、建設事務所を開くことになって第一、第二という名称に変更されたのである。以前の略号は、号機単位では「NF-1」(福島1号機)、「NF-2」(同2号機)という塩梅だった。1号機を建設していた頃まで戻ると原子炉建屋を指して「TEPCO-1」などとも呼ばれていた。地元紙が「大熊原発」と名付けてみたこともある。まぁ、どれも定着はしなかったが、人に歴史ありならぬ、原発に歴史ありである。

コロラド先生こと牧田寛氏が言及していた「原子力村」の件と言い、どうしてPA屋は自分等の業界で発明した単語を憎悪するのか。リニアに邁進する葛西敬之氏ですら、「国電と言う言葉を使う人の話は信用しません」なんて言ってるのを見たことが無い。

それにしても、たかだか言葉1つに思い込みで憎悪をたぎらせてる井上リサと竜田一人には「バーカw」と言っておきたい。特に竜田氏。代表作のマンガで最初のコマから間違えちゃって赤っ恥ですなぁ。今更直しようもないと思うけど、公益性の観点から批判した次第。

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